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「脂肪肝」とひと口に言っても、実はアルコール性と非アルコール性があるのをご存知でしょうか? しかも 中には肝硬変や肝がんに進行する脂肪肝もあるといいます。詳しく解説します。
油断してはいけない脂肪肝!! 脂肪肝の正しい知識
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160303-45400205-trendy-hlth
日経トレンディネット 3月3日(木)12時36分配信
ビジネスパーソンが注意するべき“病気”について、専門家に解説をしてもらう連載です。健康診断や人間ドックで「脂肪肝」と指摘されたことはありませんか? もし指摘されたら、どうしたらいいのでしょうか? 駒沢公園内科クリニック 坂本夏子先生に解説してもらいます。
●成人男性の3人に1人、女性の5人に1人が脂肪肝
皆さんは、職場の健康診断や人間ドックで「脂肪肝」と診断されていませんか?
近年、脂肪肝と診断される方は増加しており、健診・人間ドックの受診者の約30%が脂肪肝と診断されるといわれています。また、成人男性の3人に1人、女性の5人に1人が脂肪肝という報告もあります。
それでは脂肪肝とは、どのような病気なのでしょうか。
脂肪肝とは、肝細胞に主に中性脂肪が蓄積した状態を言います。もう少し厳密にいうと、肝細胞の20%以上に、脂肪滴という細胞中に存在する、脂質やタンパク質などを含む球形の液滴が沈着していると、脂肪肝と診断されます(脂肪滴 には、脂質をため込む役割があるのです)。実際には、腹部超音波検査やCT検査で、容易に診断できます。
脂肪肝は現代病の一つといえます。その発症要因が、肥満やメタボリックシンドロー ム、そして飲酒にあるからです。実際、脂肪肝患者さんは“肥満でメタボリックシンドロームを有する、飲酒歴 のある中年男性”に多いです。ただし、アルコールを飲まなければ安心、ということではなく、“飲酒習慣のない、肥満やメタボリックシンドロームを有する人”にも多く認められることが、近年注目を浴びています。
どう違う? アルコール性の脂肪肝と非アルコール性の脂肪肝
脂肪肝はお酒が関与するアルコール性と、非アルコール性に分けられます。では、両者の違いはどうなっているのでしょう?
アルコール性の脂肪肝と診断される飲酒量は、エタノール(純アルコール)換算で男性60g/日以上、女性で40g/日以上とされています。具体的にはビール中瓶(500ml)3本、日本酒3合、焼酎2合以上がそれぞれ相当量となります。例えば毎日、日本酒を3合以上飲んでいる脂肪肝患者さんは、アルコール性脂肪肝と診断されます。このタイプはアルコールそのものによる肝障害も伴うため、肝硬変や肝がんへの進行が懸念される疾患です。
ではそんなには飲んでないよ、という方の場合。脂肪肝と診断された患者さんのうち、エタノール換算20g/日未満(ビール500ml未満/日)の方が、「非アルコール性脂肪性肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease: NAFLD)」に分類されます。これらの多くは肥満、糖尿病などの生活習慣病が原因です。現代は生活習慣病が急増していますから、飲酒習慣がなくウイルス性肝炎(B型肝 炎、C型肝炎)や自己免疫性肝炎のような明らかな慢性肝疾患が存在しない、NAFLD (狭義の脂肪肝)と診断される人は増えています。
また近年メディアなどで「非アルコール性 脂肪性肝炎(Non-alcoholic steatohepatitis:NASH)」という疾患が話題になることがあります。頻度はNAFLD患者さんの10〜20%です。この疾患は、肝硬変や肝がんに進行していくという、注意が必要な脂肪肝です。
お酒を飲まなくてどうして脂肪肝に? 低糖質ダイエットが脂肪肝を引き起こすことも!?
すでに述べたとおり、アルコール性の脂肪肝ならアルコールが主要な原因になります。これに対して非アルコール性脂肪肝(NAFLD)の場合は、70%以上が肥満(BMI≧25)を伴います。過栄養による肥満が、大きな要因なのです。さらにNAFLDの原因として、高血糖、高脂血症、高血圧などのメタボリックシンドロームや、睡眠時無呼吸症候群、内分泌疾患なども、挙げられます。
一方で、過栄養ではなく、逆に低栄養も脂肪肝の原因になることが分かっています。これを「低栄養性脂肪肝」と呼んでいます。そのメカニズムは以下に記す通りです。
食事で摂った糖質や脂肪は腸で吸収され脂肪酸に変わり、肝臓で中性脂肪に変えられます。そして肝臓にたまった中性脂肪はタンパク質の働きによって血液中に流れ出ていきます。それが、極端な食事制限でタンパク質が不足すると、肝臓から脂肪が血液中に排出しにくくなった結果として肝臓に脂肪がたまり、「低栄養性脂肪肝」となるのです。
これは今はやりの低糖質ダイエットにも同様のことがいえます。糖質を摂らなくなると筋肉に含まれるタンパク質を糖質に変えてエネルギーにしようとするため、タンパク質不足が起きます。この結果、同様のことが起こるのです。
非アルコール性脂肪肝(NAFLD)の自覚症状は? 予後は?今、話題となっているNASHとは?
非アルコール性脂肪肝(NAFLD)の多くは、無症状です。あったとしても、軽い倦怠感や上腹部症状のみであり、放置される傾向にあります。確かに、NAFLDのみで命にかかわることは、ほとんどありません。しかし、NAFLDの患者さんは、脂肪肝でない患者さんと比較し、肝疾患で亡くなられる確率が約6倍に増加します。つまりNAFLDにならないようにすることがとても大切です。
さらに先に述べた通りNAFLDのうち10〜20%は非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)に進展し、その約3分の1が、肝硬変や肝がんを引き起こします。
NASHとは肝臓の組織に中性脂肪の沈着の他、線維化を伴うものをいいます。
診断のステップとしては、まずは腹部超音波検査で脂肪肝を確認します。血液検査では、AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)、ALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)、γGT(γグルタミルトランスペプチダーゼ)、血小板など一般的な肝機能に異常値をきたすことが多く、血清フェリチンや肝臓線維化のマーカー「IV型コラーゲン7S」も高くなる傾向となります。このスクリーニングでNASHが疑わしい場合は、肝臓組織をみる肝生検で確定診断を行います。肝生検は一般的に入院をして行われます。
NAFLDのうちどのような患者さんがNASHになるかは、現時点はあまり分かっておりません。このためNASHへ進展予防は、NALFDを改善することが一番大切です。ですからNASHの予防のためには、自覚症状がなくても定期的に血液検査や腹部超音波検査などの画像診断を受けることが大切なのです。
NAFLD/NASHにならないように…食事療法は?
ではNAFLD/NASHは、どうしたら予防・改善できるのでしょうか?
まず改善すべきは日常生活における食生活の見直しと、運動不足の解消です。肥満や糖尿病、高脂血症、高血圧などのメタボリックシンドロームの合併症がある場合には、まずそちらの治療を行いますが、いずれにしても食事療法、運動療法なくして改善は見込めません。
食事療法では、摂取カロリーは標準体重あたり30kcal/kg程度、脂肪摂取は総カロリーの20〜25%に制限します。
脂肪の摂取方法としては、バターや生クリームなどの乳製品やラード、肉の脂身などの飽和脂肪酸の摂取を抑えましょう。肉でいえばサーロインや豚バラなどは飽和脂肪酸が多いので、控えるのが好ましいです。
●運動はどれくらいすればいいもの?
一般的にはウォーキングやサイクリングに代表される有酸素運動が効果的です。有酸素運動で大切なことは運動強度、運動種目、運動継続時間、運動頻度の4つの要素を可能な限りその人の体力レベルやライフスタイルに合わせて設定することです。とくに脂肪肝のある方は肥満の合併頻度が高く、体力レベルが低いことも少なくないため個人、個人で配慮が必要です。
また有酸素運動だけでなくレジスタンストレーニング(筋トレ)を併用するとさらに効果的です。
レジスタンストレーニングは、脂肪量の減少、除脂肪体重(筋量)の増加、減少した体重の維持(基礎代謝量の増加)といった効果が報告されています。
病院に通えば治せる?
NAFLD/NASHは病院に通って何か薬を飲めば治る、というものではありません。
ただし、通院することで脂肪肝に対する意識が高まり、これまでの食生活や運動不足を解消するきっかけになります。また肥満や糖尿病、高血圧、高脂血症などのメタボリックシンドロームに対する治療も可能となります。
具体的には、定期的な血液検査や、1年に1〜2回は腹部超音波検査で肝臓の状態を把握します。まずはNALFDの状況さらにはNASHへの移行が見られないか評価を行っていきます。
これらの評価に関しては、消化器内科や肝臓の専門医の受診をお勧めします。こうした専門医は種々の検査からNASHの可能性の高い患者さんを拾い上げ、必要ならば肝生検の等の精密検査を行うことができるからです。
現時点ではNAFLD/NASHに対する“特効薬”はありません。しかしながら、適切な食事療法、運動療法で体重を管理することで改善することが期待されます。
健診・人間ドックで脂肪肝と診断された方は、この機会に受診してみてはいかがでしょうか。
(文/駒沢公園内科クリニック 坂本夏子)
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