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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ
“自覚なし”だからこそ危険 「慢性腎臓病」はこんなに怖い
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/176447
2016年3月3日 日刊ゲンダイ
慢性腎臓病とは「腎臓の働きが健康な人の60%以下に低下」「タンパク尿などの尿異常など」の両方、あるいはどちらかが3カ月以上続く状態をいう。進行すれば慢性腎不全になって人工透析が必要になったり、心筋梗塞、脳卒中といった命にも関わる重大病にしばしば陥る病気だが、自覚していない人が多いのが問題だ。
■「無症状」でも安心できない
むくみや疲労感が症状として挙げられる慢性腎臓病だが、「無症状だから問題なし」と考えるのは間違いだ。筑波大学付属病院腎泌尿器内科・山縣邦弘診療グループ長が言う。
「慢性腎臓病にはさまざまな原因があり、たとえばネフローゼ症候群などの疾患がある場合は、進行しなくてもむくみなどの症状が出ることがあります。しかし、いま増えているタイプの慢性腎臓病は、症状がまったくないケースがほとんどです」
それは、生活習慣が関係したものだ。高血圧、糖尿病、脂質異常症、痛風・高尿酸血症といった血管にダメージを与える生活習慣病を放置すると、動脈硬化が進み、血液の流れが悪くなる。腎臓にはトータル200万個といわれる「糸球体」(毛細血管でできた微細な球状の組織)があるが、動脈硬化の進行によってこれが壊れていく。
糸球体は「血液から老廃物を濾過して尿を作る」腎臓の働きに欠かせない組織だ。糸球体の破壊によって、尿中にタンパクが漏れるようになったり、腎機能が落ちていったりし、慢性腎臓病と呼ばれる状態に至る。そうなると自分の腎臓だけでは老廃物の濾過ができなくなり、その働きを代替する人工透析が必要になってしまうのだ。
■人工透析へ一直線のデッドライン
「人工透析が必要な直前まで自覚症状がまったくない人もいます。むくみ、息切れなどの症状が出てきた時は腎機能が相当落ちていると考えた方がいい場合もあります」
壊れた糸球体は元に戻らないので、慢性腎臓病を完治させる方法はない。人工透析になると、週3回通院して行う血液透析や、在宅で行う腹膜透析を一生続けるか、健康な腎臓を移植する腎移植しかない。「人工透析で腎臓が健康になって元通りの生活に」とはならないのだ。
「慢性腎臓病で最も重要なのは、早い段階で腎機能低下に気づき、生活習慣を変えるとともに、薬物治療などでこれ以上、機能が落ちないようにすることなのです」
まずは健診や人間ドックなどでタンパク尿と血清クレアチニン値を調べる。血清クレアチニン値は、腎機能の程度を見る「推算糸球体濾過量(eGFR)」のもとになる数値だ。
ただ、健診では血清クレアチニン値のチェックが義務ではないので、行われていないところも。血液検査でわかるので、少なくとも40歳以降は年1回、調べておくべきだ。
特に高血圧、糖尿病、脂質異常症、痛風のいずれかがある人は、知らないうちに腎機能が低下している可能性がある。半年に1回は血清クレアチニン値やタンパク尿を調べた方がいい。さらに糖尿病の人は、尿中アルブミン検査など、早期発見をもっと可能にする検査も受けるべきである。
日本慢性腎臓病対策協議会のサイトには、年齢、性別、血清クレアチニン値を入力すれば、eGFRがすぐにはじき出されるページ(http://j-ckdi.jp/ckd/check.Html)がある。eGFRの区分が「G3a」(尿異常があれば「G2」)以降だと慢性腎臓病の可能性がある。少なくとも、ここまでに食い止めることが重要だ。また、タンパク尿の程度とeGFRは、脳卒中・心筋梗塞のリスクを測る指標にもなるから要注意。
「動脈硬化が進行して腎機能が低下し、eGFRの数値の悪さとして表れる。eGFRが低下していれば、動脈硬化は全身に起こるものですから、腎臓だけでなく心臓や脳に行く血管も動脈硬化が進んでいると考えられます」
つまり、脳卒中、心筋梗塞になりやすい。残念ながら、専門医以外では、腎機能を示す数値を重視していない医師もいる。自分で知って、自分で身を守るのだ。
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