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米アマゾンの株価は、上場初値から303倍まで上昇(撮影:尾形文繁)
「19年で株価303倍」を実現する企業をどう見抜くか
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160129-00102066-shikiho-biz
会社四季報オンライン 1月29日(金)20時41分配信
前回の連載で、自動運転車が普及して自動車事故が激減すれば、損害保険会社のビジネスモデルが根底から覆ってしまう懸念を取り上げた。このように、会社の売上が半減するような大きな環境変化は、これまでにも多くの業界で生じてきている。
たとえば、デジカメの普及で写真フィルムがなくなる危機が迫るなか、富士フイルムHD <4901> は思い切った業態転換を図った。一方、業態転換に失敗した米国のイーストマン・コダックは2012年、経営破綻に追い込まれている。
「近未来を見据えた投資術」とは、こうした様々な変化を読み取り、株式投資に活かしていくことだ。しかし、それは「時代の変化に上手く対応していく企業に投資していくこと」ではない。かつて富士フイルムの古森会長・CEOが述べていたように、本当に強い企業とは、「変化に対応していく企業」ではなくて、「自ら変化を作り出せる企業」だからである。
ジャーナリストのケン・オーレッタが著した『グーグル秘録』(文春文庫刊)に、以下のような一節がある。1998年、「ウィンドウズ98」を出荷して絶好調のマイクロソフトを率いるビル・ゲイツにオーレッタがインタビューした際のエピソードだ。「最も恐れている挑戦者は?」と尋ねると、ゲイツはダイエットコーラをすすりながら、静かにその問いを反芻していた。沈黙を破ってゲイツの口をついて出たのは、ネットスケープ、サン・マイクロシステムズ、オラクル、アップルといった数多くのライバルたちの名前ではなかった。「怖いのは、どこかのガレージで、まったく新しい何かを生み出している連中だ」と答えたという。そしてまさにこの時、シリコンバレーのガレージでラリー・ペイジとサーゲイ・ブリンの2人の若者がグーグル株式会社を設立していたのだ。
■ イノベーションが企業価値を異次元へとワープさせる
2〜3年前のことだったか、スタンフォード・ビジネススクールのガース・サローナー学長が来日した際、夕食を共にしたことがある。「ビジネススクールのミッションステートメントは何か」と質問すると、彼はこう語った。「世界を変える奴を1人でもいいから育てたい」。実際、シリコンバレーに行くと毎回感じることだが、この地で出会うナップサックを背負い自転車で通学する大学院生たちの多くは、本気で「世界を変えたい」と考えている。かつてのビル・ゲイツや、グーグル創業者たちがそうであったように。
「世界を変えたい」と考えている連中がイノベーションを起こす。こうした人たちによって牽引される企業こそが、かつて富士フイルムホールディングスの古森会長・CEOが語っていた「自ら変化を作り出せる企業」なのである。
世界の企業の時価総額ランキングを見てみよう(2015年12月末現在;カッコ内は時価総額)。
1位 アップル(時価総額5870億ドル)
2位 アルファベット(グーグルが社名変更、5220億ドル)
3位 マイクロソフト(4430億ドル)
4位 バークシャー・ハサウェイ(3260億ドル)
5位 エクソン・モービル(3250億ドル)
6位 アマゾン(3170億ドル)
7位 フェイスブック(2960億ドル)
8位 GE(2940億ドル)
9位 ジョンソン&ジョンソン(2840億ドル)
10位 ウェルズ・ファーゴ(2780億ドル)
かつてはチャイナ・モバイル(中国移動通信)、ペトロ・チャイナ(中国石油天然気)、ICBC(中国工商銀行)などが世界トップ10の一角を占めていたこともあった。しかし今ではこれら中国勢のすべてが姿を消した。ノバルティスなどの欧州勢も圏外に落ち、上位10社はすべてアメリカ企業になっている。
ここで気がつくのは人々の暮らしを根底から変えるようなイノベーションを生みだした企業が上位を占めていることだ。今ではわれわれはスマホ(アップル)を肌身離さず持ち、調べたいことは検索(グーグル)する。買い物はオンライン(アマゾン)で済ませ、友だちとはSNS(フェイスブック)で繋がる。仕事でパワポやワード(マイクロソフト)を使うが、息抜きに動画(ユーチューブ;グーグルが所有)を見たりもする。
企業はイノベーションを生みださない限り、企業価値、株主価値を異次元のレベルへと引き上げることは出来ない。投資家もこれらの企業の株を事前に購入しておかない限り大儲けできない。イノベーションこそが投資価値を異次元にワープさせるキーなのである。
■ 資本主義の第3段階ではイノベーションがキーになる
経済学者の岩井克人東大名誉教授は、資本主義を発展段階によって3分類した。彼の共著書『経済学の宇宙』(日本経済新聞出版社刊)によると、第1段階の「商業資本主義」では、企業は安く買ったモノを高く売って利潤を生む。第2段階の「産業資本主義」では、企業は大量生産と低賃金をもとに利潤を生む。いまの中国がこれにあたる。農村の人たちが仕事を求めて都会に流れてきて、大量生産の工場で安い賃金で働く。そして第3段階では、企業のイノベーションが利潤の源泉になる。岩井教授はこれを「ポスト産業資本主義」と名付けた。
日本を含む現在の先進国は、すでに「ポスト産業資本主義」の時代にある。つまりそこでは、企業は従業員の創造性を喚起してイノベーションを起こし、結果的に大きくおカネを儲けるという仕組みを組織として創り出すことが重要になってくるという。
■ 日本企業のイノベーションは力不足
問題は、はたしてこうした「ポスト産業資本主義」時代の到来を日本企業がきちんと認識し、それに合致した経営を行っているかどうかだ。第2段階の「産業資本主義」的な行動様式を旧態依然として続けているとするならば、中国勢などに対抗できない。生産コストが安いからと中国や他のアジア諸国に工場移転しているだけの日本企業は、実のところ第2段階の「産業資本主義」的な行動を取っているに過ぎない。これだけではいずれ先細りになってしまう。
別な見方をすると、こういうことだろう。もしも日本企業が然るべき形でイノベーションを生みだしているのであれば、「世界の時価総額ランキング上位10社に1社も登場してこない」などといった事態は、本来であれば、ありえないのではないだろうか。
たしかにトヨタ自動車 <7203> はかつてハイブリット車を生みだし、燃料電池車も世界に先駆けて商品化した。東レ <3402> の炭素繊維はボーイングの旅客機に採用されているし、富士フイルムは医療や化粧品などの分野で画期的製品を開発している。しかしながら、たった12年前に設立されたフェイスブックがなぜトヨタ自動車の1.4倍もの時価総額を持つに至ったのだろうか。世界の投資家たちは、投資先企業が「世界を変える」イノーベーションによって巨大な利潤の鉱脈を掘り当てることを期待している。こうした彼らの目線からすると、日本企業が起しているイノベーションはいまひとつ力不足であると映ってしまう。
■ 「投資先がイノベーションを生みだしているか」の嗅覚
現代社会においては、お金には国境がなくなってきていて、日本の投資家はいまでは米国株に対しても日本株と同じように簡単に投資することができる。2012年5月18日、フェイスブックが上場した時の初値は42.05ドル、当時の為替レートで円換算すると3,340円だった。それが4年後の今では円ベースで約3.5倍の値をつけるに至っている。フェイスブックについては上場する前に日本のマスコミでも相当騒がれたので、上場時に購入した日本の投資家も多いと思う。
主な企業の上場初値と本年1月22日現在の株価を比べてみよう(カッコ内は何倍になったかを記している。なおここでは為替レートの影響は捨象して考えている)。
・97年5月 アマゾン上場 初値1.97ドル 現在596ドル (19年間で303倍)
(注:97年の時点では日本人による米国株投資は難しかった。98年4月の外為法改正で米国株投資が自由化された。98年4月時のアマゾン株価は7.1ドルで、この時に購入していれば、その後の18年間で84倍になっていたことになる)
・00年4月 楽天上場 初値249円 現在1178円 (16年間で5倍)
・04年8月 グーグル上場 初値50ドル 現在745ドル (12年間で15倍)
結果的に、アマゾンやグーグル、フェイスブックなどの株を上場後に買った投資家は資産を大きく増やすことができた。日本企業だろうと米国企業だろうと、ポイントは「世界を変えるようなイノベーションを起こしているかどうか」だ。投資家として成功できるかどうかは、これを嗅ぎ分ける嗅覚があるかどうかにかかっている。
■ 従業員の自由な時間帯で生まれたグーグルのGメール
では、どうしたら我々投資家はこのような嗅覚を身に付けることができるだろうか。先に述べたように岩井教授は、企業が従業員の創造性を喚起するような仕組みを創り出しているかどうかがポイントであると述べている。
こうした点からすると、例えばグーグルや3M(スリーエム)の仕組みが参考になる。グーグルでは創業以降、13年まで、従業員は勤務時間の20%を自分が重要だと考える独自のプロジェクトに充てることができた(3Mの場合は15%)。これによって創造性に磨きがかかり、Gメールなどの革新的プロダクトが、従業員の自分勝手な時間に生まれたという。またCBSテレビやパラマウント映画を傘下に擁するバイアコムの社長がグーグルを訪れたとき、共同創業者のブリンはローラースケートでミーティングの場所に滑り込んできたという。こうしたカルチャーも社員の自由な発想を引き出す上で役立っているかもしれない。
われわれが投資(候補)先企業のウェブサイトや、決算報告、IRのプレゼンを見る際には、その企業がイノベーションを起こすことにどういった工夫をしているかといった点にも注意してみる必要がある。
いわさき・ひでとし●プライベート・エクイティ投資と経営コンサルティングを手掛けるインフィニティ代表。22年間の日本興業銀行勤務の後、JPモルガン、メリルリンチ、リーマンブラザーズの各投資銀行を経て現職。日経CNBCテレビでコメンテーターも務める。近著に『残酷な20年後の世界を見据えて働くということ』(SBクリエイティブ刊)。
※当記事は、証券投資一般に関する情報の提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。
岩崎 日出俊
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