シャープ株大幅上昇−鴻海が買収額7000億円規模に引き上げとの報道 2016/01/15 11:03 JST (ブルームバーグ):シャープ株が一時、約2カ月ぶりの上昇率となった。台湾の鴻海精密工業がシャープに対する買収提案額を7000億円規模に引き上げる方向で調整していると一部で報じられた。 シャープ株は一時、前日比17%高の128円まで上昇、昨年11月24日以来の高い日中上昇率となった。午前 10時47分現在は15%高の125円。 15日付の読売新聞朝刊によると、鴻海は同日にも買収を再提案し、これまで上限5000億円としていた買収 額を7000億円規模に引き上げる方向という。また共同通信は、シャープの今期(2016年3月期)の連結決 算で営業損益が数百億円規模の赤字になる可能性があると伝えた。 SBIアセットマネジメントの運用本部長、木暮康明氏は鴻海の案の全体像は分からないと断りつつも「 金額だけ見ればよい提案」だと話した。またシャープと交渉中の革新機構も鴻海に対抗する提案をする可 能性があると述べた。 シャープは昨年10月、今期の営業利益予想を800億円から100億円に下方修正。前期に2223億円の巨額純損 失を計上し、経営再建に向けた3カ年の中期経営計画を同年5月に発表したばかりだったが、中国市場向 けスマートフォン用中小型液晶の不振が響いた。昨年10月の発表資料によると、9月末の有利子負債は 7587億円に上る。 シャープ広報担当の関喜文氏は電話取材に、鴻海の買収額引き上げについてはコメントする立場にないと 述べるとともに、現時点で通期業績予想に変更はないと語った。 記事についての記者への問い合わせ先:東京 天野高志 tamano6@bloomberg.net 記事についてのエディターへの問い合わせ先:大久保義人 yokubo1@bloomberg.net 中川寛之, 林純子 更新日時: 2016/01/15 11:03 JST http://www.bloomberg.co.jp/news/123-O0YXBC6KLVRG01.html 日本の小型株、波乱相場で大型をアウトパフォーム−増益率優位も (1) 2016/01/15 11:03 JST
(ブルームバーグ):人民元安や上海株急落など中国市場の混乱、中東情勢など地政学リスクへ の警戒から年始につまずいた世界の株式市場。日本株も東証再開の1949年以降初めて大発会からの6日続 落を経験した中、規模別でみると小型株が大型株に対し底堅い動きとなっている。海外市場の影響を受け にくい特性に加え、来年度の増益率が大型株を上回るとの期待感が要因だ。 2016年年初から14日までの東証マザーズ指数は6.9%安、TOPIXスモール指数は8.4%安と、同期間の コア30指数の9%、ラージ70指数の10%安、TOPIX100指数の9.5%安などをいずれもアウトパフォー ムしている。世界的株安の震源地だった中国上海総合指数は15%安。 みずほ証券エクイティ調査部の三浦豊シニアテクニカルアナリストは、「小型株は内需的な銘柄が中心の ため、海外の影響を受けにくい」と指摘。海外市場の急落局面では「大型株が動きにくいため、日々売買 している個人投資家が小型の方にいっている。大型が不安定な間、中小型が強い動きになる」と話す。 世界株波乱の中で日本の小型株が大型株に対し堅調に推移する動きは、昨年夏に中国株が急落した場面で もみられた。中国人民銀行が人民元の切り下げを行った8月11日から9月29日までにTOPIX100が19 %下げた一方、スモールは14%安、ミッド400指数は16%安だった。 今年初も人民元切り下げの材料があったほか、昨年12月の米国利上げを受けたマネーフローの変化に警戒 が強まり、リスク回避姿勢から為替市場で円がドルや元に対し上昇。ドル・円は一時1ドル=116円70銭 と昨年8月以来の円高水準を付けた。円高進行の場面では電機、自動車といった輸出セクターへの投資は 業績への懸念から敬遠されがちで、相対的に内需セクターの多い中小型株に投資家の目が向かいやすい。 来期は2桁増益予想、ブロックチェーンなど話題性も TOPIXの業種別ウエートをみると、11.5%の電機がトップで、10.6%の輸送用機器が2位。3位以下 の銀行(9.2%)、情報・通信(7.7%)、化学(6%)などに対する数値の大きさが目立つ。一方、マザ ーズ指数のウエート上位はCYBERDYNE、そーせいグループ、ミクシィ、タカラバイオ、FFRI などで、ロボットスーツや創薬ベンチャー、遺伝子研究、インターネットといった内需系企業がマザーズ 市場全体に対し影響力を持っている。 為替との相関性は大型株に比べ小型株の方が薄い。過去3年間のTOPIX100のドル・円に対する相関 係数は0.652。これに対しスモール指数は0.548、ミッド400は0.615だった。係数は1に近づくほど関係性 の深さを示す。 相対的に小型株のパフォーマンスが良い背景には、来期業績への期待感もある。三菱UFJモルガン・ス タンレー証券のまとめでは、17年3月期の中小型株の経常利益予想は前期推定比10.2%増と、大型株の 6.6%増を上回る。古川真シニアポートフォリオストラテジストは、「来期の増益率が2桁予想かつ大型 株と比較して高い点は注目される可能性がある。特に大型株の業績鈍化や株価の上値の重さが意識される 状況になれば、中小型株は大型株をアウトパフォームする場面もあるだろう」とみる。 CLSAの日本担当ストラテジストのニコラス・スミス氏は小型株の堅調について、海外投資家が目を向 けていないことが一因と分析した。「アベノミクスが始まった当初に市場が動いた際、海外勢はコア30指 数を購入し、その後買い入れ対象を拡大していったが、中小型株市場で何が起きているのか注視している 海外投資家は少ない」と言う。 14日時点のコア30銘柄の年初来パフォーマンスは全てマイナス、最も下落率が小さいのは1.8%のNTT ドコモだ。一方、マザーズ指数では構成210銘柄のうち、がん免疫治療薬研究のグリーンペプタイドの株 価がこの短期間にほぼ2倍となった。TOPIXスモールの上昇率トップは2.5倍のさくらインターネッ トで、改ざん不可能なセキュリティ環境などの構築コストを削減するブロックチェーン関連銘柄として注 目を集める。 SMBC日興証券の阪上亮太チーフ株式ストラテジストは、中長期視点でも中小型株の相対的優位性を指 摘。13年以降、中小型株が持続的にアウトパフォームし続けているとし、「アンダーカバー銘柄の方が低 バリュエーションとなる傾向が強く、株価の上昇ポテンシャルが大きい」との認識を示す。過去10年間の 平均増益率の分布からも、「中小型株の方が大型株よりも大幅増益となる企業の割合が高い」ため、今後 も中小型株のアウトパフォーム傾向は強まる方向にあるとみている。 一方、米国のケースをみると、日本とは逆の現象が起きている。小型株で構成されているラッセル2000種 指数は直近高値から10%以上下落し、対S&P500種株価指数のパフォーマンスは6年ぶりの低水準付近 だ。 記事に関する記者への問い合わせ先:東京 竹生悠子 ytakeo2@bloomberg.net;東京 Yuji Nakamura ynakamura56@bloomberg.net 記事についてのエディターへの問い合わせ先: Sarah McDonald smcdonald23@bloomberg.net 院去信太郎 更新日時: 2016/01/15 11:03 JST http://www.bloomberg.co.jp/news/123-O0TTZ06K50XS01.html PIMCOが日本国債で年40%の収益率、超長期物に強気を維持 2016/01/15 09:27 JST (ブルームバーグ):運用資産1.47兆ドルを抱える米国の債券ファンド、パシフィック・インベ ストメント・マネジメント(PIMCO)は、日本の超長期国債に引き続き強気だ。日本銀行による巨額 の国債購入に世界的な市場の混乱も加わり、超長期債の運用で年初から突出した収益率を上げている。 日銀は2014年10月の追加緩和以降、残存期間25年超の国債購入額を5倍超に増やしている。超長期債の利 回り低下余地は残存期間の短い国債をなお上回る、とPIMCOは予想する。米バンク・オブ・アメリカ (BOA)メリルリンチの指数によれば、昨年2.5%だった残存10年超の収益率は年初来1.2%で、年率換 算すると40%程度に上る。一方、10年以下では、昨年が0.4%、今年が0.2%程度にとどまっている。 ピムコジャパンのポートフォリオマネジメント責任者、正直知哉氏は12日のインタビューで、異次元緩和 で恩恵を受ける戦略が重要だと指摘し、「超長期債のオーバーウエートが有望だ」と話した。「イールド カーブのフラット化は足元ではスピードが速いので多少は調整が入るだろうが、方向性としては蓋然(が いぜん)性が極めて高い」と言い、「すでに比較的人気のある取引だが、まだ行き過ぎには至っていない 」と述べた。 大量の国債購入を続ける日銀も、より長めの年限に軸足を移している。5年物と20年物の利回り格差は13 日に90ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)台を割り、約1年前に付けた08年6月以来の低水準に 迫った。日銀の黒田東彦総裁は14日、世界の金融市場は「やや騒がしい」状況だと発言。必要と判断すれ ばさらに思い切った対応を取る用意があると述べた。 中国経済の減速懸念や人民元切り下げ、原油安などを受けた投資家のリスク回避で、株安や金利低下が世 界的に進行。年初に入ってからのTOPIXは前日までに9%を超える下げとなり、日本の長期金利の指 標となる新発10年物国債利回りは過去最低を付けた。新発20年債や30年債など、長中期物の利回りも昨年 1月以来の水準まで下げている。 正直氏は「確かに足元の円高・株安で追加緩和の可能性は上がっているが、よほど調整しないと日銀は動 かない」とした上で、日本発ではない世界的な株安を「日銀だけが動いて反転させていくのは、まずもっ て無理だ。効かなければ、よりダメージが大きい」と語った。日銀による巨額の国債購入は「どこかで限 界に至る可能性」もあり、黒田総裁は必要なら対応するという「言葉で何とか時間を稼ぐ可能性が高い」 と読む。 異次元緩和下の国債購入は追加緩和がなくても巨額で、昨年12月に導入することを決めた補完措置によっ て買い入れ年限の長期化が可能になったと、正直氏は指摘する。16年度の国債発行額は減る見通しで、「 もはや日本経済のファンダメンタルズとは全く関係ない水準」まで低下している10年債利回りは、「需給 主導で、さらに下がる可能性がある」とみる。 日銀は13年4月に2%の物価目標を達成するため「量的・質的金融緩和」を導入した。翌年10月末の追加 緩和では国債保有増を年80兆円と、政府が16年度に発行する新規財源債の2倍超に拡大した。昨年12月に は買い入れの平均残存期間を7−12年程度に長期化するなどの補完措置を示している。今年の国債買入額 は約120兆円と16年度の市中発行額の8割超に及ぶ見通しだ。 記事に関する記者への問い合わせ先:東京 野沢茂樹 snozawa1@bloomberg.net;東京 Kevin Buckland kbuckland1@bloomberg.net 記事についてのエディターへの問い合わせ先:山崎朝子 tyamazaki@bloomberg.net 崎浜秀磨, 山中英典 更新日時: 2016/01/15 09:27 JST http://www.bloomberg.co.jp/news/123-O0YF6L6S972G01.html 長期金利が一時1週間ぶり高水準、株高や流動性供給入札が重し 2016/01/15 10:29 JST (ブルームバーグ):債券市場では長期金利が一時、約1週間ぶりの水準に上昇した。前日の米 国株式相場が反発して世界的なリスク回避の流れが一段落したことや、流動性供給入札に向けた売りが先 行している。 15日の現物債市場で長期金利の指標となる新発10年物国債の341回債利回りは、日本相互証券が公表した 前日午後3時時点の参照値より2ベーシスポイント(bp)高い0.245%で開始。いったん0.25%と6日以来 の水準まで上昇した。その後は0.235%まで戻している。前日は一時0.19%を付け、2015年1月20日に記 録した過去最低の0.195%を更新した。 新発20年物の155回債利回りは4bp高い0.995%と、昨年12月末以来の高水準を付けた後、一時0.97%まで 戻し、その後は0.975%で推移している。新発30年物の49回債利回りは4.5bp高い1.275%と4日以来の水 準で開始後、1.255%まで戻している。 UBS証券の井川雄亮デスクストラテジストは、「昨日、長期金利が過去最低を付けたので、いったん達 成感が出た。下落していた株価も戻ってきているので、債券は売りに転じている。昨日がピークだった印 象は否めない。今日は流動性供給入札があるので午前は警戒感もある」と説明した。もっとも、「ボラテ ィリティは上昇しているものの、昨年1月ほど上がっているわけでもない。金利が上昇したら買いたい余 力がある人もいる」と語った。 長期国債先物市場で中心限月3月物は前日比2銭安の149円36銭で取引を開始し、一時149円26銭まで下落 した。その後は上昇に転じ、一時2銭高の149円41銭を付けた。 14日の米国株式相場は反発した。エネルギーやヘルスケアの銘柄を中心に買いが入り、S&P500種株価 指数は前日比1.7%高で引けた。米株高を受けて、この日の東京株式相場は上昇。日経平均株価は300円を 超す上昇幅となる場面があった。 流動性供給入札 財務省はこの日午前10時半から、流動性供給入札を実施。投資家需要の強い既発国債を追加発行する入札 で、今回の対象銘柄は残存期間15.5年超から39年未満。発行予定額は3000億円程度となる。 みずほ証券の辻宏樹マーケットアナリストは、流動性供給入札について、「超長期債の需要を確認する上 でも注目が集まりそうだ」と言う。ただ、「前場に調整すれば、昨日金利がすでに上昇していることもあ り、一定の需要を喚起できる可能性はあるだろう」とみている。 記事に関する記者への問い合わせ先:東京 池田祐美 yikeda4@bloomberg.net;東京 山中英典 h.y@bloomberg.net 記事についてのエディターへの問い合わせ先: Garfield Reynolds greynolds1@bloomberg.net 山中英典 , 崎浜秀磨 更新日時: 2016/01/15 10:29 JST http://www.bloomberg.co.jp/news/123-O0YS6C6KLVRD01.html マネーフォワード、「手の上にフィンテック」 マネーフォワード|家計簿ソフトなど金融関連ネットサービス 2016年1月15日(金)河野 祥平 金融機関と連携し、出入金などのデータが即時に反映される「全自動家計簿」を提供。日々積み重ねるサービス改善と矢継ぎ早の事業展開で、「フィンテック」の分野で注目を集める。 出入金を自動で反映 カード払いの買い物は項目ごとに自動的にグラフ化され、節約のポイントを把握できる。現金払いの場合はレシートを撮影して情報を記録する(写真=竹井 俊晴) 日々の家計のやりくりや資産運用、確定申告まで、お金に関する悩みや苦労は尽きない。「なるべく無理をせずにお金をためたい」「もっと手軽に資産を管理したい」。近年はそうした個人や企業の課題を解決すべく、IT(情報技術)を駆使したサービスを提供する動きが広がってきた。 金融(Finance=ファイナンス)と技術(Technology=テクノロジー)を融合したサービスの総称は「フィンテック(FinTech)」と呼ばれ、欧米をはじめ日本でも多くのベンチャー企業が誕生している。その中でひときわ注目を集めているのが2012年設立のマネーフォワード(東京都港区)だ。 「クレジットカードをつなぐだけで、食費も光熱費も全部自動で…めっちゃすごい!」。お笑い芸人の徳井義実さんがテレビCMなどでアピールするのが、同社が手がける家計簿アプリの「マネーフォワード」。2012年12月のサービス開始からわずか3年弱で利用者数は250万人を突破した。 わずか3年弱で250万ユーザーを突破 ●個人向けサービスの利用者数 連携サービスは2500以上 スマートフォン(スマホ)向けに星の数ほどもある家計簿アプリ。競争が激化する中でマネーフォワードが選ばれる大きな特長が、使い勝手の良さと幅広い金融機関との連携だ。 利用者は会員登録した上で、自分の銀行口座や証券口座、クレジットカードを選び、それぞれのIDやパスワードを登録する。すると、アプリが各口座と連携し、例えば給与が銀行口座に入ったり飲食店でカード払いをしたりすると、そのデータが自動的に家計簿に反映される。 連携するのは銀行や証券会社、カード会社のほか、アマゾン・ドット・コムといった通販サイト、電子マネー、年金と様々。その数は国内最大規模の2500以上だ。現金で買い物をした場合はレシートをスマホのカメラで撮影すると、購入した商品が自動的に項目ごとに分類されて家計簿に反映される。 こうしたデータは単に記録するだけでなく、グラフ化して「いつ、どのように、どれだけ」お金を使ったかが可視化される。節約ポイントが一目で分かることで月々の収支管理がしやすくなり、同社のユーザー調査では利用者が月に平均約1万1600円の節約を実感できているという。アプリには人工知能が組み込まれており、使えば使うほど出入金データの分析や振り分けの精度が向上するようになっている。 利用は原則無料。月額500円の「プレミアム会員」になるとデータを1年以上さかのぼって利用したり、月次リポートを受け取ったりできる。 創業したのは辻庸介社長だ。大学卒業後に入社したソニーからネット証券のマネックスグループに転じ、同社の松本大社長の下でネット金融のイロハを学んだ。「人々のお金に関する悩みや不安をテクノロジーで解決することで、人生をより豊かにする手助けをしたい」と感じ、2012年に独立した。 辻庸介社長は「日々のサービスの改善がユーザーの信頼につながる」と強調する 最初のサービスは金融とSNS(交流サイト)を組み合わせ、会員が匿名で資産や金融取引などの情報を交換し合うというもの。だが、「お金は極めてパーソナルな分野で、匿名であっても情報を公開したい人はいない」(辻社長)。鳴かず飛ばずで起業の難しさを痛感した。 そうした失敗を重ねながら開発したのがマネーフォワードだ。全自動家計簿のシステムを急ピッチで構築しつつ、証券会社時代の人脈を活用して各金融機関への協力を要請した。結局、わずか3カ月程度でサービスを作り上げてリリースにこぎつけた。 開始後もユーザーからの要望やクレームに細かく対応してアプリを改良。「全ての利用者からの意見を分析し、毎日アップデートを繰り返した」(辻社長)。 特にセキュリティー面は徹底してこだわった。利用者が登録するのは、各金融ネットサービスのサイトにアクセスするためのIDやパスワードだけ。例えば銀行の口座番号やカード番号、決済に使うワンタイムパスワードを預ける必要はない。データはすべて暗号化され、アプリには指紋認証も利用できる。こうしたセキュリティーの取り組みは専門機関の認定も受けている。 社員約100人のうち半分以上はエンジニアやクリエーター。彼らをサービスの項目ごとに3〜4人の小チームに分け、権限を委譲して高速で分析・改良を繰り返す体制にしている。辻社長は「顧客の要望に即時に対応することで、信頼性を高め続けるため」と説明する。 マイナンバー制度にも対応 2013年後半からは企業向け有料サービス「MFクラウド」も本格的に開始。クラウド型の会計・確定申告ソフトを皮切りに、請求書の作成ソフトや給与計算ソフトを次々に投入している。 クラウドのため、例えば給与は制度改正に伴う料率などの変更も自動的に反映。中小企業や個人事業主らユーザー数は既に47万を超えた。税と社会保障の共通番号(マイナンバー)制度の番号通知が今年10月に始まったのに合わせ、いち早く関連ビジネスにも参入。企業に代わり番号の収集、保管、廃棄などを担う代行サービスをIT大手の10分の1程度の料金で提供している。 急成長に金融業界などからの熱視線も集まる。今年8月にはSBIホールディングス、静岡銀行と資本・業務提携を結び、10月には三井物産や三菱UFJ信託銀行などが総額約6億円の出資を発表した。辻社長は「フィンテックでは競合サービスもどんどん出てくるが、日々のカイゼンを積み重ねて信頼を得ていきたい」と強調する。 (日経ビジネス2015年11月9日号より転載) 企業研究 『日経ビジネス』に掲載された、企業にフォーカスした記事の中から読者の反響が高かったものを厳選し、『日経ビジネスオンライン』で公開します。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/278209/011300017/?ST=print 2016年1月15日 加藤 出 [東短リサーチ代表取締役社長] キャッシュレス化の急先鋒_北欧では「現金」消失議論まで 1支店を除く全支店で、現金受け渡しの停止を発表したノルウェー大手行のノルデア銀行。現金の取り扱いはほぼATMに限られる?Photo:REUTERS/アフロ ?経済のキャッシュレス化によって、銀行が窓口での現金取り扱いを停止してしまう──。日本では当面考えにくい話だが、北欧ではすでに現実のものとなりつつある。 ?ノルウェーでは、消費者の現金決済比率はたった6%だ(米国は47%)。残りは、クレジットカード、デビットカード、モバイル決済などの電子決済である。 ?昨年10月に、ノルウェー2位の大手行ノルデア銀行は、オスロ中央駅支店を除く全店舗において窓口での現金受け渡しを停止すると発表した(ATMでの現金受け取り、支払いは当面継続)。ノルデア銀行幹部は、「社会は一段とデジタル化に向かっており、他の銀行も追随するだろう。時間の問題だ」と地元紙に話している。 ?スウェーデンでは、大学生の多くが現金を持たずとも日常生活に問題はないと考えている。教会もキャッシュレス化だ。日曜日に信者たちが教会に集まり、寄付の時間になると、大きなスクリーンに教会の口座番号が映し出される。 ?ストックホルムの街中で雑誌を販売しているホームレスも、モバイルカードリーダーを使った電子決済で代金を受け取っている。あるホームレスはそれを使うようになってから、この2年で売り上げが30%伸びた。通行人の多くが現金を持っていないからだ。 ?こうした状況なので、現在スウェーデンの多くの銀行がATMを撤去中だ。また、大手銀行の半分以上の支店が現金を準備していない、または現金を顧客から受け取らない状態になっている(米紙「ニューヨーク・タイムズ」)。 ?デンマークでもキャッシュレス化は大きなトレンドだ。コペンハーゲンでは、ホットドッグの屋台ですら電子決済が大半である。昨年5月にデンマークの財務省は、食料品店、病院、郵便局などを除く一般の小売店は、2016年1月から現金での支払いを拒絶できるようにしてはどうかと提案した。 ?デンマーク中央銀行は紙幣とコインの製造を今年で停止し、必要に応じて外注する予定だ。30年にはデンマークから現金が消えるとの予想も聞かれる。 ?ただし、こういった北欧における急速なキャッシュレス化は、流れについていけない地方のお年寄りを困惑させている。電子決済に伴う新たな詐欺も急増している。また、現金がなくなった世界では、全ての支払いが記録に残るため、プライバシーの侵害を懸念する人々もいる(企業や金融機関は逆にそのデータを欲しがっている)。 ?そういった問題がありながら、北欧各国が競い合ってキャッシュレス化を推進しているのは、(1)小売店にとって現金管理のコスト負担は重い、(2)銀行は警備コストから解放される上に、電子決済の手数料が入る、(3)世界最速でキャッシュレス化を実現しつつデジタル革命の最先端を走っていくことは今後の経済成長にとって重要、といった考えが背景にある。 ?日本銀行は北欧とは逆に、マネタリーベース(現金+準備預金)を増やすと経済が活性化する、という考えで量的・質的緩和策を実施している。昨年11月、スウェーデンの現金流通高GDP比はわずか1.8%だったが、日本は20%もあった。しかし、その大半は使われずに退蔵されている。 ?国際通貨基金(IMF)は今年の経済成長率について、スウェーデンは3%、日本は1%と予想している。おそらく北欧の人々は、マネタリーベース増加で経済が成長するといわれてもピンとこないだろう。 (東短リサーチ代表取締役社長?加藤 出) http://diamond.jp/articles/-/84457
安東泰志の真・金融立国論 【第65回】 2016年1月15日 安東泰志 [ニューホライズン キャピタル 取締役会長兼社長] 深まるユーロ危機は 世界恐慌の引き金になりかねない
ギリシャへの第3次支援は乗り切ったが、ユーロの危機は依然続いている 昨年7月、EU諸国はギリシャへの第3次支援を綱渡りで乗り切ったが、南欧諸国は緊縮財政を強いられ国民の不満が鬱積している。こうした意思決定を事実上差配しているのは、強国ドイツであることは周知の事実だ。一方、昨年2度にわたってフランスで起きたテロを契機に、移民への反発が強まっている。 これまでEUの盟主としてユーロを守ってきたメルケル首相は、南欧諸国から恨まれるだけではなく、南欧への支援や移民政策などをめぐって国内からも批判されることが増えてきた。ドイツがどういう立場を取るのかによってユーロの運命は決まる。もしユーロの存続が危機に陥った場合、世界経済の不安定性はいっそう増すことになる。もちろん日本への影響も計り知れない。 ギリシャのみならず国内からも強まる批判 メルケル首相に向けられる冷たい視線 昨年7月に決定されたギリシャへの第3次支援に際しては、長く続けられてきた緊縮財政への不満がギリシャ国民の間に充満した。第二次世界大戦中のドイツの行為に対する賠償支払い(損害賠償と当時の融資の合計で約1600億ユーロ=約21兆円)が公然と議論され、メルケル首相をヒトラーに例える風刺画が出回るなど、険悪な雰囲気に陥った。 なぜドイツに不満が向かうのか。EUには公式には欧州委員会、理事会、欧州議会があるのだが、その意思決定は結局各国の利害調整に終始し、迅速に行動できない状況にある。そのため、ギリシャ危機のような緊急時には、ドイツ・フランスに、ECB(欧州中央銀行)、IMF(国際通貨基金)などが加わった「インナーサークル」が事実上物事を決めており、特にドイツが最終判断しているからだ。 リーマンショック後に行われたギリシャへの第1次・第2時支援に伴い強制された緊縮財政も、ギリシャ国民から見れば、メルケル首相による暴挙と映るのは無理もない。しかし一方のドイツ国内では、いわば「ナマケモノ」の南欧への支援には反対意見も多く、同首相としても難しい判断だったことは間違いない。 加えて、昨今は中東の混乱による難民問題でも利害が激しく対立する中、メルケル首相がドイツはもちろん、EU各国が難民を積極的に受け入れるべきとの方針を示してきたことについても、批判が出ている。もちろん同首相も苦渋の決断ではあったはずだ。そもそもEUの出発点が、2つの大戦を経て欧州の融和と人種差別の排除というドイツの決意から生まれたものであり、メルケル首相自身が東ドイツの出身で人権問題にそれなりに敏感であったことなどの背景があったのだろう。 だが、その後、難民に紛れてIS(いわゆる「イスラム国」)の戦闘員が入っている、あるいはドイツ国内で犯罪を実行したといった事例が出てくるにつれて、国内外からの批判がますます強まっている状況だ。そしてこれらのことから、長くドイツのみならず欧州の盟主として君臨してきたメルケル首相の、今年中の降板さえもささやかれる状況が生じている(1月1日付Financial Times)。 仮にもそうした状況に陥った場合、ドイツのEU、そしてユーロへのコミットメントに変化が生じる可能性があり、それは、ただでさえ年初から不安定さを増している世界経済や金融市場に巨大なインパクトを与えかねない。 ユーロ問題の根幹にある南北格差 南欧諸国は常に緊縮財政、ドイツは独り勝ち ギリシャ危機については、連載第16回でも2011年末の状況を基に触れているが、あらためてユーロ問題の根幹にある問題をおさらいしておこう。 ユーロ制度は、1991年末に締結されたマーストリヒト条約に基づいている。金融政策は、各国政府から独立したECBが担い、財政政策は1997年に締結された「安定・成長協定」に従い、各国政府が担う。 「安定・成長協定」には、加盟国の財政赤字がGDP比で3%を恒常的に超えないことが定められており、それを超えた国に対する罰金規定もあるのだが、実際には適用されていない。すなわち、各国にかなりの裁量が与えられた緩やかな制度だと言うこともできる。その結果、リーマンショック後には 南欧諸国(スペイン・ポルトガル・イタリア・ギリシャ)を中心に財政収支が悪化した。 さらに、1999年にユーロが導入されてからの一貫した傾向として、物価が高く人件費も上がって競争力を失っていった南欧諸国に対し、東欧諸国への進出などを梃子に人件費を抑制し競争力を増したドイツやオランダなどとの間で、経常収支に不均衡が生じていた。 通常であれば、経常収支の不均衡は、為替レートの変動によって調整されるのだが、ユーロという単一通貨があるため、そのメカニズムは働かなかった。それどころか、経常収支赤字の国々がそれをファイナンスするための南欧の国債は、ユーロ圏の他国から見れば為替リスクを負わずに高スプレッドを得られる投資であったため、そうした資金の流入によって南欧諸国はむしろ資産バブルに沸いていたのである。 ユーロ危機は、ギリシャに新政権が誕生した2009年に、それまで4%台と公表していた財政収支赤字(GDP比)が実は12%台であったという、いわば粉飾の発覚が直接の契機ではあるが、そもそも上記のように膨張していた域内不均衡が持続不可能になったものと捉えるべきであろう。 EUは、ギリシャに対し、2010年・2012年にECB、IMFの協力を得ながら合計2400億ユーロ(約31兆円)もの金融支援を実施し、その支援の条件として公務員の給与削減や人員整理、国有財産の売却など厳しい財政緊縮策の実施を求めた。昨年1月、ギリシャに財政緊縮策に反対する急進左派連合政権が誕生し、首相の座についたチプラス氏との間で再度の支援をめぐってのつばぜり合いが続いていたが、結果的に7月に860億ユーロ(約12兆円)に上る第3次金融支援が合意されて今に至っている。 しかし、今回もギリシャは財政緊縮策を受け入れざるを得ず、しかも総額550億ユーロの国有財産が民営化基金に移されてEUの監視下に入ることになった。ギリシャ国民から見れば、まさに屈辱的な条件と言えるだろう。 問題の根幹は、ドイツなど北側の欧州諸国に比べて競争力が弱い南欧諸国が、競争力に比して割高なユーロを受け入れざるを得ず、そのために財政均衡のためには常に緊縮財政に陥ってしまうということであり、今のままだと、競争力に比して割安な通貨を持つことになるドイツの独り勝ちになってしまうということだろう。 ギリシャのユーロ離脱は 世界恐慌の引き金になる それでは、仮にギリシャがユーロから離脱し、元の自国通貨であった「ドラクマ」に戻るとしたらどうだろう。一見すると、これで一気に競争力に見合った安い為替レートを取り戻すことができるし、財政政策にも自由度が高まるのでいいこと尽くしのように見えるかもしれない。現に、昨年7月の第3次金融支援の前には、ドイツ国内にもギリシャを離脱させるべきとの議論があった。 しかし、実際にはそれほど簡単なことではない。既にEU内外で企業活動はクロスボーダーになっている。ギリシャがユーロを離脱し、ユーロに対して大幅に価値を切り下げられたドラクマが復活した場合、ギリシャ並びにギリシャ企業が負うユーロ建て債務は巨額に膨れ上がることになる。さらに、国家ないし企業間で締結されている、無数のユーロ建ての契約をめぐって紛争が頻発することになり、企業活動は停止してしまう。 また、現実的には、同国のユーロ離脱の計画が世の中に少しでも漏れてしまった時点で、ギリシャ国民や企業は一気にユーロ現金の確保に走り、銀行が持たなくなるだろう。流通する新通貨ドラクマの印刷や鋳造を極秘に進めるわけにもいくまい。 このように、仮にギリシャ一国のユーロ離脱でも相当に大きな影響を持つのだが、同国が離脱した場合、同じような問題を抱えているポルトガルやスペイン、場合によってはイタリアの離脱も現実味を帯びてくるため、影響は加速度的に拡大し、ユーロの崩壊に繋がりかねない。 ギリシャをはじめとする数ヵ国がユーロを離脱した場合の影響は、大方の人が想像する以上に大きい可能性が高い。ドイツのベテルスマン財団は、2012年10月17日付レポートにて、仮にギリシャだけの離脱に留まったとしても、大幅な通貨下落、大量の失業、国内需要の劇的な減少等の問題が発生し、これらは貿易相手国にも多大な影響を与えるとしている。そして、ギリシャだけで1640億ユーロ(約21兆円)、世界には6740億ユーロ(約88兆円)もの損失をもたらすとしている。 これにポルトガルが加わると、世界経済への損失は2.4兆ユーロ(約312兆円)に拡大し、うち、域外国である米国に3650億ユーロ(約47兆円)、中国に対してさえも2750億ユーロ(約36兆円)もの損害を与えるという。さらに悪いケースとして、スペインまでも離脱するとなると、世界で7.9兆ユーロ(約1027兆円)もの損害が発生し、うち米国は1.2兆ユーロ(約156兆円)もの被害を被るとしている。 これらのシミュレーションは、ギリシャのユーロ離脱を契機として、次なる世界恐慌が発生する可能性を示唆している。ギリシャの離脱を軽々に論じることはできない。 ドイツは痛みを共有できるのか 残された時間は限られている ではどうすればいいのか。 もともと、ユーロ問題解決の抜本策は、(1)ドイツなどユーロの恩恵を受けてきた国々が南欧諸国のさらなる支援に踏み込めるか、(2)社会保障制度の統一や労働力の移動のさらなる自由化など市場統合効果を進め、競争力格差を埋められるか、(3)各国の財政政策に、より強力なタガをはめることができるか、といったことであると言われてきた。もしユーロが救われるとすれば、巷間言われているような「ユーロ共同債」構想をはじめ、ドイツが南欧諸国のために痛みを引き受けることが必須だという声は、第2次ギリシャ支援の当時から根強く聞かれる。 ドイツは、間違いなくEUの最大の受益者だ。そして、EUの中で図抜けた存在になった。一応民主的なプロセスは事後的に踏むとしても、EUないしユーロの存続可能性はドイツの意向次第で決まると言っても過言ではない。 第二次世界大戦までのドイツは、軍事によって欧州を征服しようと試み、失敗したが、今はEUという枠組みの中で経済的にそれを成し遂げようとしている。そうした歴史を振り返る時、メルケル首相が強い指導力を維持できている間に、ドイツがEUとユーロを守るという決意を表明することが世界経済のために死活的に重要であると筆者は思う。そしてそれができる時間はもう限られているように思われる。 http://diamond.jp/articles/-/84630
高橋洋一の俗論を撃つ! 【第136回】 2016年1月14日 高橋洋一 [嘉悦大学教授] 声高に言われ続ける「国債暴落」があり得ない理由 財政破綻・国債暴落を語る人は多いが 長期金利は一向に上がらないという現実 国債暴落のリスクは言われ続けているが、現実化していない ?昨年12月17日付の本コラム(「お札を刷って国の借金帳消し」ははたして可能か)で、国の借金1000兆円と言うが、国のバランスシートからネットで見て500兆円、国と日銀(「統合政府」ベース)とのバランスシートを見れば、200兆円程度であることを書いた。
?世の中には、財政破綻を煽る人は多い。財政破綻すると国債暴落になるので、国債暴落と言い続ける人も財政破綻論者と同類である。ただ、この暴落論は十年一日のごとく語られてきたが、幸いなことにまだ実現していない。昨年の本コラムのようにバランスシートで日本の財政事情を正しく理解していれば、そうした暴落論が荒唐無稽であることがわかるだろう。 ?一般の人やマスコミが騙されるのは多少わかるが、学者でも暴落論を語る人がいるのは驚くばかりだ。 ?東大金融教育センター内に、凄い名称の研究会がある。「『財政破綻後の日本経済の姿』に関する研究会」だ。代表は、井堀利宏・東京大学大学院経済学研究科教授、貝塚啓明・東京大学名誉教授、三輪芳朗・大阪学院大学教授・東京大学名誉教授という日本の経済学会で名だたる学者だ。 ?活動内容はホームページに記載されており、2012年6月22日が第1回会合で、2014年10月3日まで2年余で22回も開催されている。 ?研究会発足にあたり、「われわれは日本の財政破綻は『想定外の事態』ではないと考える。参加メンバーには、破綻は遠い将来のことではないと考える者も少なくない」と書かれている。 ?第1回会合では、三輪氏が「もはや『このままでは日本の財政は破綻する』などと言っている悠長な状況ではない?」という論点整理メモを出し、勇ましい議論をしている。要するに、財政破綻は当然起こるので、破綻後のことを考えようというわけだ。 ?はじめのうちは、財務省、日銀らの実務家を呼んでいた。その後、安倍政権が誕生し、アベノミクスに関心が移る。2013年4月12日の第11回では、インフレ激化、財政破綻が顕在化などとアベノミクス(量的緩和)にかなり懐疑的な様子だ。ところが、長期金利は一向に上がらない。 ?2014年8月27日の第21回会合では、「8月末時点の長期債の最終利回りは0.5%を下回っている。ある意味、不可解な現象である。われわれは過去2年間『現状の日本でなぜ国債価格の大幅下落、急激なインフレを伴う[財政破綻]は現実化しない、その予兆も見えないのはなぜか……?』という問題意識を抱き、研究会を続けてきた」ともどかしさを隠しきれない。 ?同年10月3日を最後に、その後は研究会を開いていないようだ。国債は暴落するどころか、高値(低金利)のままである。 本質を見落としている財政破綻論 “量的緩和で国債暴落”も的外れ ?彼らの本音は、自分たちは正しいのに、世間の現実が間違っているということだろう。こうした研究がおかしいとは思わない。学者というのはどこか浮き世離れしているもので、そこに存在意義があるとも言える。 ?ただし、この研究会の根本的な問題は、日本の財政状況をしっかりと数量的に把握していないことだ。財政破綻は、債務残高対GDP比率が高過ぎて発散(無限に膨張)することだという経済学の常識くらいはつかんでいるが、この場合の債務残高について、グロスなのかネットなのかさえ明確ではなく、何となくグロスと思い込んでいるようだ。参加している経済学者は、会計的な知識が乏しく、本コラムで書いたような国のバランスシートさえ頭に浮かばないようだ。 ?本コラムで書いたように、債務残高は、国のバランスシートからネットで見て日本は500兆円、GDP比で100%。同じベースでアメリカとイギリスを見てみると、それぞれ80%、80%。日銀も含めた連結ベース(経済学でいえば統合政府ベース)では日本は200兆円、GDP比で40%程度である。同じベースでアメリカとイギリスを見れば、それぞれ65%程度、60%程度だ。 ?いずれにしても、日本の数字は、先進各国と比較しても、それほど悪い数字ではない。こうした基礎データが参加している経済学者の頭に入っていないので、いくら高度な議論をしているようでも、上滑りになっている。 ?なお、量的緩和すると財政規律が怪しくなり、国債暴落するという議論があったが、こうした観点から見れば、それがいかに的外れであることもわかるだろう。実は、インフレ目標の枠の中での量的緩和は、実質的な国債負担を減少させ、むしろ財政再建に貢献するのだ。だから、量的緩和によって国債暴落するということはまずあり得ない。この点、国債暴落すると言って量的緩和に懐疑的であった学者は本質を見誤っていたわけだ。 ?それでも、量的緩和の出口になったら国債暴落すると、苦し紛れの言い訳をする人もいる。しかし、量的緩和の出口はインフレ目標2%を達成して、経済が正常化されたときなので、長期金利は4〜5%になっているはずだ。今と比べれば、国債価格は下がる(金利は上昇)が、その場合、名目成長率は高くなって税収も増えている。財政は好転しているのだから、そもそも経済成長に伴って長期金利が上がっても、何も問題ない。そうしたときに国債暴落と騒ぐ人はいない。 市場に出せば瞬間蒸発 国債暴落にはなり得ない ?以上は、ストックで見た日本政府の財政状況であるが、フローで見ても財政破綻を騒ぎ立てるような状況にはなっていない。 ?2016年度の国債発行計画を見よう。これは、2016年度予算と一緒に作成されているが、同年度の新規国債市場がどうなるかを占うことができる。筆者はかつて財務省役人時代に国債発行計画の担当をしたことがあるが、一般会計での新規国債発行額と過去に発行した国債の借換えのために借換債をどのように消化するか、この国債発行計画を見れば一目瞭然だ。 ?2016年度の国債発行計画では、総発行額162.2兆円、その内訳は市中消化分152.2兆円、個人向け販売分2兆円、日銀乗換8兆円である。 ?上の最後の日銀乗換は、多くの識者が禁じ手としている「日銀引受」である。筆者が役人時代にもあったし、今でもある。つまり、訳知りで解説していた識者は、日銀引受がすでに行われている事実すら知らなかったわけだ。 ?日銀引受は、日銀の保有長期国債の償還分40兆円程度まで可能であるが、目一杯の数字にすると市中消化枠が減少するため、民間金融機関が国債を欲しいとして、日銀乗換分を8兆円と少なめにしているはずだ。 ?要するに、今の市場は、国債の品不足なのだ。カレンダーベース市中発行額は147兆円であるが、短国25兆円を除くと、122兆円しかない。ここで、日銀の買いオペは新規80兆円、償還分40兆円なので、合計で120兆円。となると、市中消化分は、最終的にはほぼ日銀が買い尽くすことになる。 ?ずばり言えば、2016年度、新規に市中に出回る国債は事実上ほぼない。こうした状態で、少しでも国債が市中に出たらどうなるのか。金融機関も一定量の国債投資が必要なので、出回った国債は瞬間蒸発する。つまり、とても国債暴落という状況にならないということだ。 ?何しろ市中に出回る国債がほとんどないのだから、「日本の財政が大変なので財政破綻、国債暴落」と言い続けてきた人はまたウソをつくことになるだろう。 ?これは日本経済にとっては望ましいことだ。市中には実質的に国債が出回らないので、財政再建ができたのと同じ効果になる。日銀が国債を保有した場合、その利払いは直ちに政府の納付金となって財政負担なしになる。償還も乗換をすればいいので、償還負担もない。それが、政府と日銀を連結してみれば、国債はないに等しいというわけだ。 ?と同時に、民間金融機関はこれまで国債に投資してきた資金を貸し付けや株式などに振り向けざるを得なくなる。これも日本経済には朗報である。 税と国債のバランスには再考の余地 国債発行でインフラ整備も検討に値する ?2016年度予算を見ると、政府は「余計な」国債を発行しているが、それでもなお国債の品不足になっていることもわかる。 ?2016年度予算の国債費23.6兆円は、債務償還費13.7兆円、利払費9.9兆円に分けられる。まず、債務償還費13.7兆円は不要である。実は、諸外国では減債基金は存在しない。借金するのに、その償還のために基金を設けてさらに借金するのは不合理だからだ。従って、先進国では債務償還費は計上しない。 ?次に、利払費9.9兆円になっているが、その積算金利は1.6%という。市中分がほぼなく国債は品不足なのに、そんなに高い金利になるはずはない。実は、この高い積算金利は、予算の空積(架空計上)である。債務償還費と利払費の空積で、国債発行額は15兆円程度過大になっている。 ?こうした国債の品不足を考慮すれば、予算の歳入における税と国債のバランスは再考の余地が大きい。たとえば、東日本大震災対策である。 ?財源については、償還期限25年の復興債を発行することによって、25年間の復興増税で賄うとされたのだ。これは、通常の償還期限60年の建設国債より短いので、その分毎年の税負担は大きくなる。民主党は経済政策に疎かったために、財政当局の言いなりで短い償還期限の復興債にしてしまった。 ?せめて、復興債の償還期限を60年、さらに大震災の頻度を考慮して償還期限100年とすれば、毎年の復興債発行額は大きくなり、その分毎年の税負担は減少する。 ?東日本大震災対策は特別会計で行っている。このように特別会計で国債を発行して着実なインフラ整備を行うのは検討に値する課題だ。特に今のような国債の品不足は、そうした国債発行を政府に促しているとも言える。 ?国債は金融市場の中核商品なのでゼロでもいいというモノではない。多すぎるのも困るが、少なすぎても困る金融商品だ。 http://www.carf.e.u-tokyo.ac.jp/research/zaisei/zaisei_index.html http://www.mof.go.jp/jgbs/issuance_plan/fy2016/yoteigaku151224.pdf http://www.mof.go.jp/budget/budger_workflow/budget/fy2016/seifuan28/01.pdf http://diamond.jp/articles/-/84548
【第135回】 2015年12月17日 高橋洋一 [嘉悦大学教授] 「お札を刷って国の借金帳消し」ははたして可能か 政府紙幣は突飛な話ではない 量的緩和も効果は同じ お金を刷って国の借金帳消し──。その手段、メリットとデメリットとは ?ある人から、お札を刷って国の借金を帳消しにできないかと聞かれた。これは、後で詳しく述べるが、ある程度はできる。
?また、これと大いに関係があるが、かつて筆者が政府紙幣の発行を主張したこともあり、しばしばそのメリットとデメリットを聞かれる。 ?実は、政府紙幣の発行と日銀の量的緩和は、経済効果という観点から見れば、両者はほぼ同じである。 ?日本の経済学者は、財政学と金融論(金融政策)が縦割りになっており、政府紙幣はそれらの狭間に入るのでキワモノ扱いである。このため、日銀の量的緩和でも理解不足の人が多いのは残念である。 ?まず政府紙幣はそれほど突飛なものではなく、ほぼ現行制度の中の話である。 ?かつて政府紙幣を生理的に嫌った与謝野馨氏は、経済財政相時代にとんでもない発言をした。 ?テレビ番組で与謝野氏は、政府紙幣について「『円』っていうのは使えないんですよ。だから、『両』とかにね、しないと。信用あります??流通しないですよ」と言った。 ?これは政府紙幣が現行制度で構成できることを知らずに言ったことで、ある意味法律違反の発言だ。通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律(以下「通貨法」)第二条第一項には「通貨の額面価格の単位は円とし、その額面価格は一円の整数倍とする」とある。政府紙幣は法定通貨であり、その通貨単位を「両」なんて勝手に言ってはいけない。それも現職経済担当閣僚がテレビで公言するのだから困ったものだった。 政府紙幣の発行で得られる シニョレッジ(通貨発行益)とは ?通貨法第四条では「貨幣の製造及び発行の権能は、政府に属する」とされ、政府に発行権限があることが明らかにされている。また、同法第五条第一項は「貨幣の種類は、五百円、百円、五十円、十円、五円及び一円の六種類とする」とし、同条第二項で「国家的な記念事業として閣議の決定を経て発行する貨幣の種類は、前項に規定する貨幣の種類のほか、一万円、五千円及び千円の三種類とする」、同条第三項で「前項に規定する国家的な記念事業として発行する貨幣(以下この項及び第十条第一項において「記念貨幣」という)の発行枚数は、記念貨幣ごとに政令で定める」とされている。同法第六条は「貨幣の素材、品位、量目及び形式は、政令で定める」としている。 ?これらの規定によれば、政令によって記念貨幣として1万円のプラスチックマネー(紙弊より耐用年数が長く経済的。しかも偽造しにくい)を出すことに問題はない。 ?たとえば、天皇ご即位○○周年記念として1万円の記念通貨を10億枚発行できる。この場合、政府の損益計算書(P/L)では政府収入は10兆円となる。政府バランスシート(B/S)では、資産側で現預金10兆円増、負債側でその他債務10兆円増となる。ここで、政府収入10兆円をシニョレッジ(通貨発行益)という。 ?もし法律改正していいなら、頭の体操であるものの、臨時法で10兆円政府紙幣を1枚発行し、日銀に持ち込み、政府預金を10兆円とすることもできる。これなら、新しいお札を印刷することなく、日銀券が自動的に増発できる。発行コストは、実際に大量の貨幣を作らない(一枚作る)のでほぼゼロとなる。 ?政府紙幣を発行して得られた政府収入をどのように使うかは、政府次第である。冒頭の人のように、国債償還に使ってもいい。すると、政府B/Sで、資産の現預金が減少し、それと同額の負債の国債が消える。また、政府収入を国民にばら撒くことも立派な有効需要創出政策である。実際にばら撒く手間・コストを考えると、すべての人が払う社会保険料を減額することが最も効率的だ。 巨額のシニョレッジを流せば いずれ物価が上がるのは当然 ?日銀の量的緩和でも、政府紙幣発行と基本的には同じメカニズムになる。上で書いた政府紙幣発行10兆円に対応するものとして、量的緩和10兆円になる。日銀B/Sでは、資産側で国債10兆円増、負債側で日銀券(当座預金を含む)10兆円増となる。 ?政府と日銀の連結B/Sを見ると、資産側は変化なし、負債側は国債10兆円減、日銀券(政府当座預金を含む)10兆円増となる。量的緩和は、政府と日銀を統合政府で見たとき、負債構成の変化であり、有利子の国債から無利子の日銀券への転換である。このため、毎年転換分の利子相当の差益が発生する。具体的には、政府からの日銀への利払いはただちに納付金となるので、政府にとって日銀保有分の国債は債務でないのも同然になる。 ?理解の不十分な人は、量的緩和で日銀は儲けていないと誤解する。負債側は無利子、資産側は有利子なので、10兆円×金利の収入増になる。金利が1%であれば、1000億円だ。中銀関係者は、これがシニョレッジと言う。 ?政府紙幣の場合の10兆円との違いを言えば、1年で全部もらうのが政府紙幣、長年かけて金利相当で細く長くもらうのが量的緩和である。実は、高校レベルの数学を使えば、毎年金利相当の1000億円の将来にわたる現在価値の総和は10兆円となる。というわけで、現在価値ベースの総和で見れば、どちらの方法でもシニョレッジは10兆円となる。 ?毎年シニョレッジをもらうか、1年で全額もらうかの違いはあるものの、政府紙幣と量的緩和は巨額のシニョレッジがあり、それが財政を通じて流れるのだから、いずれ物価が上がるのは当然である。バーナンキ前FRB総裁が、かつて筆者に言ったことには、「それで物価が上がらなければ、中銀が国債を買い尽くしたときに、財政再建が終わって好都合だ。でも、そんな都合のいい話はたぶんない。だから、いずれ物価が上がるよ」。 ?冒頭の問題意識は、財政再建について量的緩和がどのように貢献できるかというものだろう。そのために、日本の財政状態を整理しておこう(この部分は、2015年2月5日付の本コラム「国の債務超過490兆円を意外と簡単に減らす方法」のリニューアルでもある)。 デメリットはインフレになること その限界を決めるのがインフレ目標 ?2013年度末の国のB/Sで見ると、資産は総計653兆円。そのうち、現預金19兆円、有価証券129兆円、貸付金138兆円、出資66兆円、計352兆円が比較的換金可能な金融資産である。そのほかに、有形固定資産178兆円、運用寄託金105兆円、その他18兆円。負債は1143兆円。その内訳は、公債856兆円、政府短期証券102兆円、借入金28兆円、これらがいわゆる国の借金で計976兆円。運用寄託金の見合い負債である公的年金預り金112兆円、その他45兆円。 ?先進国と比較して、日本政府のB/Sの特徴を言えば、政府資産が巨額なことだ。政府資産額としては世界一である。政府資産の中身についても、比較的換金可能な金融資産の割合がきわめて大きいのが特徴的だ。 ?アバウトに言えば、しばしば政府の借金1000兆円とされるが、これはグロスの数字であり、ネットの純債務は500兆円である。 ?しかも、これは政府の単体B/Sの話であり、日銀との連結B/Sで考えれば、純債務はさらに減少する。直近の日銀の営業毎旬報告を見ると、資産として国債326兆円、負債として日銀券94兆円、当座預金239兆円となっている。 ?ここもアバウトに国債300兆円、日銀券300兆円と見れば、政府と日銀の連結B/Sでの純債務は200兆円になる。 ?ここまでわかると、政府の財政状況は、あまり心配するようなものでないことが理解できるだろう。 ?量的緩和が、政府と日銀の連結B/Sにおける負債構成の変化で、シニョレッジを稼げるとして、デメリットもないのだろうか。 ?それはシニョレッジを大きくすればするほど、インフレになるということだ。だから、デフレの時にはシニョレッジを増やせるが、インフレの時には限界がある。その限界を決めるのがインフレ目標である。インフレ目標の範囲になるように、お札を刷ってシニョレッジを稼げというわけだ。 http://diamond.jp/articles/-/83391
国内GDP・GDP算出法・国債発行・国内経済〜1人当たりGDPで5万ドル台を目指す政策を 国内GDP:2014年の1人当たりGDP GDP算出法:来年改定 国債発行:「前倒し債」上限額 2016年度に48兆円へ 国内経済:「日本の借金1000兆円」はやっぱりウソでした 1人当たりGDPで5万ドル台を目指す政策を 内閣府が2015年12月25日に発表した統計によると、2014年の日本の1人当たり名目GDPは3万6230ドルとなり、前年から6.0%減少したことがわかりました。
前年を下回るのは2年連続で、経済協力開発機構(OECD)の34カ国中20位になり、統計で遡れる1970年以来の最低に転落しました。 かつて主要国で3位に位置したこともある日本にとって、20位というのは何ともみっともない状況です。 名目GDPは、円高になると上がり、円安になると下がります。今の状況は仕方がないと思う人もいるでしょうが、そうではありません。 確かにドルベースの推移を見ると、為替の影響もあり上下に変動していますが、「今が最悪」というタイミングではありませんので、為替だけを理由にしてGDPが伸び悩んでいる現状を説明するのは無理があるでしょう。 為替に関係なく「日本のGDPは伸びていない」というのが事実です。 そのような中、日経新聞は先月27日、「GDP算出法、来年改定」と題する記事を掲載しています。日本のGDPに算入されていない企業の研究開発費などが2016年7-9月期の2次速報から新たに算入される見通しを紹介。 これにより、名目GDPは現在の500兆円から3%以上、金額にして15兆円以上増える見込みとのことです。 これは当然のことかも知れませんが、当初の「アベノミクスによる経済成長」という話とは別ものです。計算方法を変えたら3%伸びました、では筋が違います。 政府の政策によって改善したわけではありませんから、これをもって結果として受け入れることはできません。 研究開発費などを算入するのは、他の国でも事例があるので良いと思いますが、それでも結局のところ、わずか3%しか改善しません。 日本の1人当たりGDPはかつて4万ドル台でしたが、今は3万ドル半ばでイタリアと同レベル。世界のトップは6万ドル台です。私としては、せめて5万ドル経済を目指す「抜本的な政策」を打ってほしいところです。 安倍首相が進めている「携帯電話の料金値下げ」「法人税減税による投資拡大の要請」などを見ていると、残念ながらそのような政策になるとは思えません。ポイントがズレていると私は感じています。 いくら隠れた資産があっても、引っ張りだせなければ机上の空論 財務省は次年度に発行する予定の国債を1年早く発行する「前倒し債」の上限額を、2016年度は48兆円に引き上げる方針を固めました。 2015年度の当初計画に比べ16兆円増え、過去最高額となる見込み。日銀の異次元緩和で市場に出回る国債が少なくなっており、需給の逼迫で金利が乱高下するのを防ぐ狙いです。 現在、日本は国債で流動性を確保しているため、それが足らないという判断でしょう。確かに国債の需要はありますが、これは国の債務を増やすことに直結するので、「禁じ手中の禁じ手」だと私は思います。 一方で、日本の借金はそれほど大きいものではない、という錯覚を抱いている人もいます。例えば、現代ビジネスは先月28日、『「日本の借金1000兆円」はやっぱりウソでした』と題する記事を掲載しました。 元大蔵省・財務官僚で経済学者の高橋洋一氏が国のバランスシートを分析した結果を紹介。財政破綻を煽る通説は、バランスシートの負債側しか見ていないことや資産として政府内の子会社を連結していない問題点があるとし、それらを仔細に見ていけば日本の財政はマスコミや学者が言うほどに悪くはない、と指摘しています。 私は以前から高橋洋一氏のことを知っています。「財務省が握っている特別会計がある」「いざというときのリザーブになっている」と、高橋氏は20数年間ずっと同じことを主張し続けています。しかしながら、その間一度も、指摘している資産が借金返済に使われたことはありません。 国が強い意識を持って、財務省が握っているものを丸裸にして国の借金返済に自由に使えるのならいいのですが、結局のところ、「使えなければ意味がない」のです。死ぬときに貯金はいっぱいあるけどもっと使っておけばよかった、というのと同じです。 そして重要なのは、マーケットがどう見るか、ということです。「資産があります」と言われても、それを引っ張りだすことができず使えないのであれば、役に立たないものとマーケットは判断します。だからこそ、日本の国の格付けも落ちていくわけです。 もし「いざというとき」のための資産だというなら、それを使うルールを法律で定めるべきだと私は思います。 「格付けがここまで落ちそうになったら、これだけの資産を取り崩して借金返済に充てる」ということを決めて、格付けが落ちないようにすべきです。 高橋氏の話は「ウケ」がいいのは間違いないと思いますが、結局のところ20数年間、リザーブの資産を引っ張りだすことができていないのも事実です。 それが実現できなければ、どれだけ「実は、資産があって換金できる」と言われても机上の空論に過ぎません。マーケットがどう判断するか、ここに焦点をあてるべきだと思います。 この記事は1月10日にBBTchで放映された大前研一ライブの 内容を一部抜粋し本メールマガジン向けに編集しています 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか? 今週はGDPに関する話題を取り上げました。 計算方法が変更されることにより、3%以上数値が増える見込みのGDP。大前は、アベノミクスによる経済成長ではないため、結果としては受け入れられないと指摘しています。 データを見る際は、なぜその数字になったのか確認する必要があります様々な要因が存在する中、何が最も影響を与えていたのか理解しないままでは、結果を正当に評価することはできません。問題解決においては、このような数字の読み解き方が求められます。
[32初期非表示理由]:担当:要点がまとまっていない長文
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