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吉野川沿いの谷に沿って住宅が点在する大豊町の中心部=高知県長岡郡大豊町 (写真:筆者撮影)
消滅寸前の「限界集落」、孤独死・買い物難民・老老介護 それでも続く打開への挑戦
http://newsbiz.yahoo.co.jp/detail?a=20160108-00010000-biz_plus-nb
ビジネス+IT 2016/1/8 13:59 政治ジャーナリスト 高田 泰
地方の人口減少が止まらない。中山間地域ともなれば、65歳以上の高齢者が人口の50%以上を占める限界集落が増え、高齢者人口が自治体人口の過半数を超す限界自治体も珍しくなくなった。相次ぐ高齢者の孤独死、放棄された先祖伝来の墓、増え続ける買い物難民、住職のいない寺、延々と苦悩が続く老老介護。消滅に向けて坂道を転がる過疎地域の日常は、もはやどこにでもある光景になりつつある。だが、希望を失うのは早過ぎる。どれだけ現実が厳しくとも立ち向かい、成功を収めた地域もあるのだ。
■買い物難民対策で宅配サービス
車の入れない急な坂道の手前で宅配便の配送車が停まり、ドライバーが商品を手に坂道を駆け上がる。走った距離はざっと5〜600メートル。冬だというのに、ドライバーの首筋に汗がにじむ。坂道を上りきると、老母と2人で暮らす60代の男性が商品を受け取った。
中身は1か月分の酒とたばこ。急な山の斜面に建つこの家は町の中心から遠く、なかなか買い物にも行けない。山仕事の疲れを癒すささやかな楽しみは、注文した商品を自宅まで配送してくれる宅配サービスに頼っている。
このサービスは高知県長岡郡大豊町の「おおとよ宅配サービス」。大豊町商工会と町内にあるヤマト運輸高知嶺北センターが2012年に始めた。住民が加盟店に商品を注文すると、ヤマト運輸が宅配してくれる仕組みだ。
大豊町商工会によると、町内の約100世帯がサービスを受け、毎月120件ほどの利用がある。加盟店は10店。配達費に町が補助金を出すため、住民負担は150円で済む。利用者は高齢者がほとんどだ。
免許を持たない高齢者にとって、買い物が最大の悩みになっている。タクシーで町外へまとめ買いに行く人さえ少なくない。大豊町岩原の無職三谷美智子さん(60)は「家族でただ1人運転免許を持っている夫が病気で倒れ、買い物に行けなくなった。宅配サービスがあり、生活できる」と喜んでいる。
町内には小さな商店がいくつかあるが、店主が高齢化し、配達できなくなったところも少なくない。買い物難民の住民だけでなく、高齢化した商店主にもうれしいサービスだ。JR大杉駅前で商店を営む大豊町高須の久保繁雄さん(66)は「配達なしで営業が続けられる宅配サービスはありがたい」と笑顔を見せた。
■町のほとんどが限界集落
大豊町は日本の限界自治体第1号となったことで知られる。四国山地の真ん中にあり、東京23区のほぼ半分という広い面積に4,000人足らずが暮らす。町が発足した1955年には、2万2,000人以上の人口があったが、今や5分の1以下になってしまった。
町内には85の集落が点在する。うち69が限界集落、15は55歳以上が過半数を占める準限界集落だ。55歳未満が過半数の存続集落はわずか1つで、1集落は既に消滅した。11の集落では世帯数が10戸を割り、共同体の機能が失われようとしている。
独り暮らしの高齢者が死亡し、3週間後に発見されたことがあった。電動4輪車で路上に転倒した高齢者が救助されたのは5時間後。都会ではとても考えられないようなことが、日常茶飯事になりつつある。
宅配サービスが高齢化した地域の暮らしを支えていることは事実だが、働く場所の乏しい山村に若者は戻ってこない。大豊町商工会の宮中克典経営指導員は「これから先、町はどうなるのだろうか」と不安を口にする。
■故郷と人をつなぐ「絆」さえ消失
総務省によると、全国の過疎地域には6万余りの集落がある。うち13%に当たる約7,900集落が限界集落。特に四国地方は21%、中国地方は18%を占め、消滅への足音が次第に高くなってきた。
民間の有識者組織・日本創世会議(座長・増田寛也元総務相)の人口減少問題検討分科会は2014年、全国896の市区町村が2040年までに人口減少で消滅する可能性があると発表した。全国の市区町村は約1,800。ほぼ半数が消滅可能性都市に該当するという衝撃的な内容だ。厳しい現実が浮かぶのは大豊町だけではない。
熊本県南部、球磨川沿いの人吉盆地にある人吉市。市環境課が2013年、市内の墓地約1,000カ所を調査したところ、全1万5,000基のうち、4割に当たる6,500基が無縁墓になっていることが分かった。人口減少が著しい地区では、無縁墓が8割に達していた。
兵庫県淡路島にある南あわじ市の山中では2014年、推定1,500トンの墓石が不法投棄されているのが見つかっている。中には代々にわたり、大切にされてきたことが分かるものもあった。先祖伝来の墓を守る人がいなくなったのか、それとも墓さえ見捨てて逃げ出したのだろうか。墓という故郷と人をつなぐ絆さえ消えようとしているのが現実だ。
■苦境に打ち勝った成功例も
戦後の日本復興と高度経済成長を支えてきたのは、農山漁村が都会へ送り出した若者たちだった。金の卵ともてはやされた若者たちの頑張りが、日本を先進国へ押し上げ、現在の豊かさを実現したといえる。
その一方で、故郷の農山漁村は農林業の自由化で安い輸入品との競争を強いられ、次第に活気を失っていった。大企業は海外へ生産拠点を移しても、過疎地に目を向けようとはしない。豊かさの代償は余りにも大きかった。
だが、希望を失うのは早過ぎる。どれだけ現実が厳しくとも立ち向かい、成功を収めた地域もある。兵庫県篠山市の丸山地区がその例だ。丸山地区は御嶽の森山麓の谷に広がり、2008年まで5世帯19人が暮らす消滅寸前の限界集落だった。住民はNPO法人「集落丸山」を設立し、築150年以上の古民家を宿泊施設やレストランに改築、2009年から営業を始めた。
著名な経済人や外国人が押し寄せるなど経営は順調で、集落に明るさが戻るのに時間はかからなかった。集落丸山の佐古田直實代表は「夢をあきらめず、身の丈に合った無理のない活動を集落全体で危機感を持って実践してきたのが良かった」と訴える。
島根県中部の山間部にある邑南町では、地域1%戦略に取り組み、人口減に歯止めをかけようとしている。地域1%戦略とは毎年、人口の1%に当たる移住者を受け入れ、30年後に総人口と14歳以下の子供の数を現在の9割以上に保とうという構想だ。
邑南町は町の総合戦略に64人という定住目標数を明記し、12の公民館単位で受け入れに努力している。うち、出羽地区では住民が合同会社を設立し、Iターン者の募集を始めた。同様の手法は長野県喬木村、岩手県西和賀町などでも採り入れている。
自治体全体で見るとハードルが高いように見えるが、1集落で考えれば年に1家族を招き入れるだけで済む。こうした地道な努力がやがてくる消滅から限界集落を救うかもしれない。
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