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1月7日、ゴールドマン・サックスが昨年、原油価格が1バレル=20ドルを下回ると予想した際、そのシナリオが実現する可能性はかなり低いとみられていた。写真はニューヨークで2011年6年撮影(2016年 ロイター/Shannon Stapleton)
アングル:原油先物オプション、20ドルにらむ動き
http://jp.reuters.com/article/oil-future-opution-idJPKBN0UM0E220160108
2016年 01月 8日 13:29 JST
[ロンドン 7日 ロイター] - ゴールドマン・サックスが昨年、原油価格が1バレル=20ドルを下回ると予想した際、そのシナリオが実現する可能性はかなり低いとみられていた。
先渡し5カ月物や市場の一部は、既にその予測が正しいことを証明している。カナダの原油現物価格は今週、既に採掘や輸送コストより安い20ドルを下回る水準まで売られている。一方でオプション市場のトレーダーたちは、25ドル割れに備えてプロテクションの購入に乗り出した。
市場に出回る原油の量が既に多すぎるとの懸念の高まりを反映した動きが、今や米国と中国の需要急減速というダブルパンチを受けている。
米国のシェール企業など高コストの生産者から市場シェアを奪おうと、サウジアラビアが石油輸出国機構(OPEC)による原油輸出の拡大を推し進めことを受けて、過去1年半に原油相場は3分の2落ち込んだ。その主な原因として供給過剰がやり玉に挙げられていた。
その後は原油価格の下落が数年ぶりの高水準まで世界の需要拡大を促し、相場崩壊に陥る事態は回避され、2016年後半には相場が回復するとの期待が生産者の間に広がっていた。
ところが、サウジアラビアが当初の戦術の勝利を祝おうという矢先に、価格下落のために米国の生産が落ち込み、米国だけでなく中国や欧州の需要も予想以上に弱いとの兆候が出ている。
世界第2位の石油消費国であり、2000年代初頭のコモディティブーム以降に世界経済の成長エンジンでもあった中国の推計需要は、9月と11月にともに前年同月比でマイナスを記録した。
入手可能な統計によると、最大消費国である米国の需要は、10月以降に落ち込み始めた。ガソリン価格は下落しているが、ディスティレート(留出油)は2015年末にかけて10年超ぶりの低水準まで落ち込んでいる。
欧州連合(EU)の需要は昨年の大半を通じて上向きのサプライズが続いたが、10月は横ばいとなっている。
ナティクシスのアナリスト、アビシェク・デシュパンデ氏は「2015年は目覚ましい需要の伸びとともにスタートした。しかし、第4四半期に事態は変化したようだ」と話す。
<サポートラインは崩壊>
ゴールドマンの大胆なシナリオは、市場が採算に見合わない生産設備の閉鎖を加速させるために、市場は1バレル=20ドルの価格ショックを経験するとのロジックに基づいている。
それはもはや絵空事ではない。
バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチは7日、「最近の原油は圧力の下にあり、20ドル割れの下向きリスクが高まっている」と指摘した。
人民元安と中国株式市場の取引停止でアジア市場が混乱に陥ったことを受けて、この日の北海ブレントとWTI価格は一時的に2004年以来の安値となる32ドル近辺まで下落した。
原油価格が序盤に最大5%下落すると、通常はアジアの取引時間に相場が穏やかな動きを示すことはあまりなく、チャートの専門家も数十年ぶりの大混乱にどんなトレンド線を描けばよいか苦慮している。
PVMのロビン・ビーバー氏は「サポートラインが麻痺している。買い持ちでは勝てない。最大の痛みを伴うのはもっと低い水準だ。ロング(買い持ち)は推奨できない」と話す。
ビーバー氏は、WTIが32.40ドルの支持線を下回ると20ドル台半ばまで下落を止める相場の節目は数多く存在しないと指摘した。数分後にWTIは32.10ドルをつけ、その後にかろうじて34ドルまで値を戻した。
<生産超過は継続>
この1年間に世界の原油生産量は消費量を日量150万バレル上回っている。OPECと国際エネルギー機関(IEA)は世界の原油需要の伸びが、非常に高水準だった2015年の日量180万バレルから2016年は120─125万バレルに鈍化すると予想している。
これは2016年の大半の間に世界の原油生産量が消費量を上回る状況が続き、既に30億バレルを超す過去最高の在庫がさらに増えることを意味する。
オプション市場は先物価格がさらに下落するとの懸念が高まっていることを示す。投資家の不安心理の度合いを示すとされるシカゴ・オプション取引所(CBOE)のボラティリティ・インデックス(VIX指数).VIXは年初から20%上昇した。
米インターコンチネンタル取引所(ICE)のブレント先物オプションが示す予想変動率(インプライド・ボラティリティ)は、2月16日が権利行使日の1バレル30ドルと25ドルのいずれもこの数週間に急上昇している。ブレント先物がさらに下落すると予想する投資家の一部は、25ドルで売れる権利が得られるプットオプションを購入する防御策を取っている。
「25ドルのプットオプション購入に関心が高まっており、建玉残高も増加した。ボラティリティは急上昇している。われわれが目の当たりにしている行動は、人々が弱気に傾斜していることを示すものだ」と大手銀行のオプショントレーダーは語った。
OPECによると、加盟国の主要輸出原油13油種から産出されるバスケット価格は6日に1バレル29.71ドルに下がった。
最もショックなのはカナダ産重質原油の価格が20ドルを下回っていることだ。
アルバータ州北部の巨大なオイルサンドは世界3位の埋蔵量を誇るが、エネルギー集約的な生産プロセスを経るために生産コストは50ドル超と世界でも最高水準だ。
原油価格が採掘、混合、輸送などの操業コストを賄えない水準になっても、大半のカナダおよび米国企業は支払いや融資返済のために生産を継続するとみられている。
ナティクシスのデシュパンデ氏は「これらの企業が廃業に追い込まれるリスクも高いが、現実的な話としては企業統合や再編の可能性の方が大きいとみている」という。
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