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2016年、韓国の産業界は身を切るリストラを迫られそうだ(写真:REUTERS/Lee Jae-Won/Files)
韓国企業は「身を切るリストラ」を迫られる 2016年は「緊縮経営」と「構造調整」の年
http://toyokeizai.net/articles/-/98951
2016年01月01日 チョ・ヨンタク :韓国『中央日報エコノミスト』記者 韓国『中央日報エコノミスト』2016年1月4日号 東洋経済
韓国の産業界にとって2016年は、「緊縮経営」と「構造調整」の年になりそうだ。韓国経営者総協会が235社を対象に行った「2016年最高経営者経済展望調査」によれば、回答者の52.3%が2016年に「緊縮経営を行う」と明らかにしている。
「現状維持」は30.2%、「拡大経営」は17.4%に留まった。構造調整の刃は、時が過ぎれば過ぎるほど鋭くなる。すでに事業再編と人員削減を行っている企業が増えており、経営が悪化した企業を整理する政府の動きも加速している。構造調整は、造船や海運、鉄鋼、建設、石油化学などの業界から、すべての産業に拡散する兆しもある。
韓国経済をリードしてきた主力産業は、どれ一つ振るわない。特に重厚長大型産業は崖っぷちに立たされていると言っても過言ではない。韓国・ナイス信用評価が産業別に信用等級の動きを分析しているが、これを見ると造船業がマイナス75%となった。これは、企業全体から見て等級の上下の差を算定し、該当業種の信用等級の相対的な方向性を示す指標だ。
■主力産業も奮わない韓国企業
さらに下落傾向にあるのは、精油が25%、石油化学21.4%、ゼネコン17.9%となっている。ナイス信用評価関係者は「2015年の信用等級を下げた企業31社のうち、建設と造船、石油化学、鉄鋼、精油など、いわゆる脆弱業種に属する企業が19社となり、全体の40%を占める」と述べた。
韓国信用評価の評価も同様だ。2015年上半期だけ見ても、POSCOやSKエナジー、GSカルテックス、現代重工業、サムスン精密化学、POSCO建設、大宇造船海洋、東国製鋼、東部メタルなど鉄鋼や精油、造船、建設分野といった脆弱業種の企業の信用等級が下落している。競争はますます熾烈になっているが、世界的な景気鈍化やライバルとなる中国企業の成長など、韓国側に不利な環境が続き、それに連れて企業業績も悪化している。
専門家からは、手遅れになる前に構造調整を果敢に行い、業界再編を行うべきだと助言する。ムーディーズのクリス・パク理事は「韓国の経済規模を見ると、建設や化学など一部産業の企業数が多い。営業環境が悪化し、自ずと企業数を減らしていくのが競争力を高めるためによいだろう」と述べた。
構造調整の風は中小企業にとって、より冷たく吹きそうだ。金融当局は中小企業の信用リスク評価基準を厳格に適用すると発表した。市場で競争力を失ったが政府による支援と融資で延命している、いわゆる「ゾンビ企業」に対する構造調整を促していくという覚悟は、すでに表明している。
これは、中小企業だけではなく、大企業も同様だ。莫大な公的資金を投入したにもかかわらず競争力を確保できなければ、規模に関係なく整理する方針だ。金融監督院関係者は「中小企業の構造調整対象を選定する際に適用していた信用リスク評価基準を、2016年にも適用する方針。市中銀行が引当金をさらに積み増すという負担はあるが、経済危機に備えるという基本方針に変わりはない」と言う。
■中小企業の評価基準が厳格化
金融監督院の信用評価基準もさらに厳しくなりそうだ。これまでの基準は3年連続赤字、インタレスト・カバレッジ・レシオ(営業利益と金融収益を足したものを支払利息で割った指標)が1未満、資産健全性が要注意の等級、が基準だった。
これを厳格化し、脆弱業種については3年連続赤字を2年連続にした。2015年末基準で金融監督院が構造調整対象に分類した中小企業は、2009年以来最多となる175社。これが世界的な金融危機が生じた2009年以来、最多となる。2014年には125社だった。
政府が主導する構造調整対象企業の中には、大企業も名を連ねる。金融監督院は中小企業とは違い、大企業に対する評価方法を変えなかった。とはいえ、政府と金融当局は基幹産業の競争力を高める方針であり、退出する大企業が相次いで出てくる可能性も排除できない。金融監督院は2015年6月に長期信用リスク評価を行い、大企業35社を構造調整対象とした。
また同年11月からは信用リスク評価を随時行い、今後も構造調整対象企業を追加する予定だ。これまで、2012年には36社、2013年40社、2014年34社を対象としてきた。金融監督院企業金融改善局関係者は「基準を変えなかったのは大企業に甘いから、と考えるのは間違いだ。毎年、債権銀行が大企業の構造調整手続きを実施しているのか評価し、改善計画の不履行があれば随時評価を行うなど、徹底した指導を行っている」と強調する。
韓国開発研究院(KDI)のキム・ジュンギョン院長は、果敢な構造調整が必要だと強調する。キム院長は「営業利益で利子負担をまかなえないゾンビ企業の比率が産業全体の15%に達する。特に造船、鉄鋼、海運を中心として3年連続赤字のゾンビ企業が増えており、状況は厳しい」と言う。
一方で、リスクに備えて事前に構造調整を行っている企業として、サムスングループを選んだ。「サムスンは化学部門を売却し、バイオ事業に進出するなど構造調整を活発に行っている。ただ、問題はそうできない企業があることで、そんな企業は資産売却など苦痛を伴う構造調整が必要だろう」と説明する。
政府の構造調整圧力に対し、反対の意見もある。基準が不透明であり、定量化されていない部分では主観的な評価が介入する余地が大きいというものだ。一度C等級を受けた企業は経営に大きな打撃となり、そのマイナスイメージを取り戻すことも簡単ではない。公平さに対する批判を回避するため、企業評価基準を明確に公開し、一部企業については再評価を受け、弁明できるような制度を用意する必要がある。
■ゾンビ企業の退出を進めるべき
これについて韓国政府は、現在でも評価過程において対象企業が弁明できる機会があると主張する。しかし実際には、いったん結果が出てしまうと異議を唱えることは難しい。現在は中間審査の段階でのみ弁明する機会があるが、それでは不十分だという指摘だ。等級を公開した後でも、弁明や異議を唱えることができてこそ、政府が構造調整を円滑に進めることができる。
ハナ金融経営研究所企業金融チーム長のパク・ギホン氏は、「C等級=経営正常化が可能、と判断された企業だが、いったんその等級が市場に広まると債権団が資金回収に動く。こうなるとドミノ式に資金回収が重なり、正常な企業さえ耐えられない」と指摘する。市場では、すでにC等級=経営悪化企業という烙印を押されてしまうのだ。
政府は2016年内に構造調整を強行する計画であることがはっきりしている。整理されるべき企業が残っていれば、経済に否定的な影響を与えると判断しているためだ。2000年代の初頭、全企業数に対する起業した企業が占める割合と、それに対する廃業した企業の割合はそれぞれ20%だったが、2015年のそれは5〜10%にまで下がった。政府関係者は「収益性が確保できず金融支援で延命しているゾンビ企業は、自ら経営再建案を提示できなければ市場の原則による構造調整を行うほかないというのが政府の立場」と述べた。
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