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苗場スキー場(「Wikipedia」より/Takkitakitaki~commonswiki)
10万円で買える豪華マンション続出!「ホテル化」で多額収益も可能?
http://biz-journal.jp/2015/10/post_12009.html
2015.10.20 文=榊淳司/榊マンション市場研究所主宰、住宅ジャーナリスト Business Journal
これは嘘ではない。
新潟県の湯沢・苗場エリアでは、物件価格10万円のマンションが現に何十戸も販売中なのだ。繰り返すが10万円は月額の賃料ではなく、完全な所有権が得られる物件価格だ。もちろん中古で、築20年以上の物件が中心。各物件の外観の写真を見るとなかなかおしゃれだ。500戸規模の物件もざら。共用施設にはたいてい立派なエントランスロビーが備わっている。建物内にはスナック食品などが購入できる小さなショップやトレーニングマシンを備えたスポーツジムがあったりする。さらに、フロントは24時間対応が普通。
ある物件は、住戸の面積は約34平方メートル。管理費等は1万5100円。固定資産税は年間で2〜3万円だろう。年間の維持費は20万円ちょっとだ。温泉大浴場などの「水もの」施設があるマンションの場合には、管理費等がもう少し高くなる。
しかし、物件価格が10万円などというのは不動産としてはタダ同然。なぜ、こんなことになっているのか。
答えはカンタン。それだけの価値しか市場が認めていないのだ。
これらのリゾートマンションが供給された頃、世の中はバブル真っ盛りだった。同時に、スキーブームにもなっていた。湯沢や苗場には次々に「リゾートマンション」なるものが開発・分譲されていった。それらの物件が今、軒並み10万円で売り出されているのだ。
そもそも、リゾートマンションという商品形態に無理があった。なぜ年に30日程度しか使わないであろうマンションが、当時は東京の物件とさして変わらない価格で販売されたのか。それを購入する人は、毎月の割高なランニングコストを負担することに疑問を感じなかったのか。
たとえば、立派な温泉大浴場付きのリゾートマンションなら、湯沢でも熱海でも毎月の管理費が3〜6万円程度はかかる。夫婦ふたりなら、その金額で一泊2食付きの温泉旅行ができるではないか。リゾートマンションを買えば、それを毎月何もしないでも負担しなければいけない。
結局、リゾートマンションというのは1年のうちの3分の1、つまり120日くらい利用するのでなければ意味がない。いってみれば「半住」の使い方。そうでないのなら、その分の費用を旅行に使えばいい。豪勢な海外旅行や温泉旅行が何十回とできるはずだ。
やはりリゾートマンションは不動産商品として成立しなかった。だからこそ、湯沢のリゾートマンションは今、市場価格が10万円になっているのだ。
■Airbnbで年間300%の不動産投資を提案
湯沢や苗場エリアの場合、スキー客が減ってかつてほどの活気がなくなった。リゾートマンションが10万円でも売れない状態なら、未来は暗い。
少し視点を変えてみる。国内では同じスキーリゾートでも好景気に沸く街がある。よく話題に出てくる北海道のニセコだ。パウダースノーが好まれて、スキーシーズンにはオーストラリア人が大量に押しかけてくる。だから、街の標識も英語。レストランに入っても、まず英語のメニューが出てくるそうだ。スーパーの店員まで英語を話す。
「まるでオーストラリアにいるよう」
訪れた日本人がビックリしている。街中がオーストラリア人だらけなのだ。当然、お金をたくさん落としてくれる。彼らを侮ってはいけない。1人当たりのGDPは日本の約1.6倍。日本人よりもお金持ちだ。
大量に押し掛けるオーストラリア人につられてか、最近は中国や韓国、東南アジアからの訪日外国人(インバウンド)も多いという。ニセコはますます潤ってくる。
だったら、同じスキーリゾートである湯沢にもインバウンドを呼べるのではないか。両者を比べてみると、パウダースノー以外では湯沢が完全に勝っている。
まず、交通の利便性。ニセコは新千歳空港から車で3時間。羽田から湯沢も同じ程度。羽田や成田のほうが、オーストラリアやアジア各方面からの到着便数は多いから、航空運賃は千歳に降りる便よりも競争で安くなるはずだ。
さらにいえば、湯沢の場合はほぼ東京を経由するからスキーやスノボを楽しむ前後に銀座でお買い物をしたり、浅草を観光できる。夜は六本木や新宿に繰り出すことだって可能だ。湯沢にスキーやスノボを楽しみに来たついでに、今や国際都市となった「世界のトーキョー」を満喫すればいい。
そして今、湯沢には大量のリゾートマンションが余っている。10万円で売り出されているリゾートマンションは、Airbnbを利用して1泊7000円で泊まれるホテルにしてはどうだろう。年間100日の利用があれば70万円の収入が得られる。管理費その他を差し引いても、30万円前後の収益が残るはずだ。10万円の投資で年間30万円の収益なら、投資効率300%。こんなおいしい話はない。
もちろん、1戸や2戸では集客効率も悪いから、まとめて100戸くらいで始めればいい。それでも1000万円。収益は年間3000万円。そうなれば立派な事業規模だ。
場合によっては、管理会社が直々に10万円住戸を取得してAirbnb運営に乗り出すことも想定できる。各住戸で収益が上がれば、管理費未収の悩みからは開放されるだろう。また集客が成功して回転率が高くなれば、資産価値自体にも好ましい影響があるはずだ。
このように、オーストラリアやアジア各地の人間にとって、湯沢はニセコよりも安く使えて、東京を観光できる格好のスポットになるに違いない。
■法規制の大きな壁
ところが、現状の法規制では大きな壁がある。旅行客を反復継続して有料で宿泊させるためには、旅館業法の規制を受ける。違反すれば6カ月以下の懲役または3万円以下の罰金。消防や衛生面での規制をクリアするのは、普通のマンションのままだと難しい。
つまり、今の湯沢の「10万円マンション」をAirbnbで運用するのは、厳密には違法ということになる。
ただ、現在日本は全国的にホテル不足。増加する一方のインバウンドを収容しきれなくなっている。これは2020年の東京五輪を控えてかなり深刻な問題。政府の一部にはAirbnbなどの民泊を一定の規制の下に追認しようという動きも見られる。
今の日本経済は、インバウンドによって恩恵を受けているのは間違いない。そして、湯沢のような寂れゆく観光地を救う有力な手段のひとつが、Airbnbをはじめとする「民泊」だ。これらを活用できるためのいち早い法整備が待たれる。
(文=榊淳司/榊マンション市場研究所主宰、住宅ジャーナリスト)
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