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日本銀行(「Wikipedia」より/Wiiii)
国民を欺き続ける日銀 都合良い指標を意図的に選び、「物価は改善」との詭弁
http://biz-journal.jp/2015/10/post_12014.html
2015.10.20 文=黒羽米雄/金融ジャーナリスト Business Journal
日本銀行が次回の金融政策決定会合を今月30日に控え、難しい舵取りを迫られている。
黒田東彦総裁は「物価の基調」の改善を強調するものの、米国の利上げの後ずれ観測や中国経済の減速で、世界経済の不透明感は高まる。黒田総裁がいくら虚勢を張ったところで、現在の「2016年度前半に2%の物価上昇目標」という枠組みを維持するならば、追加緩和に動かざるを得ない。
ただ、緩和余地を疑問視する見方も少なくないほか、追加緩和による円安の副作用を懸念する声も聞こえてくる。次の一手を出すに出せないジレンマに、黒田日銀は陥っている。
今月7日の金融政策決定会合後の記者会見で、黒田総裁はこれまで通り強気を貫いた。一部ではサプライズでの政策変更があるのではとの観測も広まったが、ふたを開けてみれば現状維持。景気判断も修正せず、「物価の基調は着実に改善している」と従来以上に突っ張った印象が強い会見になった。
確かに、日銀が新たにインフレ指標に使い始めた消費者物価指数である新コアCPI(除く生鮮食品、エネルギー)は、8月は前年同月比1.1%増。プラス幅は前月に比べて拡大している。
また、スーパーで販売されている品目から試算した物価指数を日々公表している東大日次物価指数も9月初旬以降、前年比プラス1.5%前後で推移している。黒田総裁は「企業の価格設定行動が昨年と様変わりして、価格引き上げが続いている」と強調する。
日銀にすれば、エネルギー価格が消費者物価に与える影響を除けば消費者物価も悲観する状況でなく、企業の価格引き上げの動きも順調に推移しており、政策変更は必要ないとの理屈なのだろう。
■追加緩和観測
それでも専門家の多くは緩和予測を崩さない。米通信社ブルームバーグが9月29日から10月2日にかけて日本のエコノミスト36人を対象にした調査で、10月中の緩和予想は計17人(47.2%)と前回調査(10月までの緩和予想37.1%)から大幅に増加している。
1年前も黒田総裁は「予想物価上昇率は高まっている」「循環メカニズムはしっかり維持されている」と強調しながら突如、政策変更に動いたことを踏まえれば、市場は黒田総裁の発言を額面通りには受け取らなくても不思議でない。すでに市場は追加緩和を織り込んでおり、緩和を見送れば円高株安になり、個人消費を下押ししかねないとの見方が支配的だ。
実際、「物価の基調」も改善しているかは疑問符がつく。判断材料のデータの取捨があまりにも恣意的だからだ。日銀が物価の基調改善の指標に使い始めた新コアCPIは、前触れもなく今夏に登場。2%目標を打ち出したときに指標にしていたコアCPI(除く生鮮食品)は2年4カ月ぶりにマイナスになり、10月末の「展望レポート」での物価見通しの修正は避けられない状態だ。
エネルギーの影響が大きすぎるため、新指標を重視し始めたとの主張は一理あるが、東大日次物価指数も下落時には触れず、上昇局面になり言及を始めており、都合良いデータを拾っている印象はぬぐえない。新コアCPIにしても円安によるコストプッシュの面が大きく、一巡すれば基調は崩れるのは時間の問題。16年度前半に2%の物価目標を柔軟に再設定しない限りは、金融政策の変更は不可避なのが実態だろう。
■緩和余地に不透明感
とはいえ、市場が期待する追加緩和に日銀が動いたところで、どこまで緩和余地があるか不透明感が強い。長期国債の買い入れは限界に近く、追加買い入れはほぼ不可能。たとえ10兆円程度買い増したとしても、物価目標の達成にはほとんど効果を見込めない。一部でささやかれる、日銀当座預金の超過準備に付されている利息(付利)の引き下げについても効果は未知数だ。
加えて、米国が利上げを先延ばした以上、日銀が先に動けば、手足が縛られ、政策変更余地は小さくなる。中国経済の行方も見極めが難しく、外部環境の複雑さは増す。環太平洋経済連携協定(TPP)交渉が大筋合意したことで、米議会の承認を前に円安進行で米国の刺激を避けたい意向も官邸周辺では見え隠れする。
追加緩和を見送れば2%の物価目標達成へのコミットメントの達成意欲を疑われ、動けば円安進行による輸入業者や個人消費への悪影響は大きく、政治的な支援は受けられない。個人的な見解としては、米国の利上げの判断を見極めた上で、来年1月に追加緩和に動くとみている。日銀にとっては試練の時が続きそうだ。
(文=黒羽米雄/金融ジャーナリスト)
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