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大前研一:橋下徹氏は「残念な政治家」で終わるのか
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140409-00000001-fukkou-bus_all
nikkei BPnet 4月9日(水)8時25分配信
「大阪都構想」をめぐる対立をきっかとした大阪市長の出直し選挙で、橋下徹氏が再選を果たしたが、彼が掲げる大阪都構想が前に進むかどうかは依然として不透明だ。大義のない出直し選挙の強行によって、残念ながら、地方自治への流れが大きく停滞してしまったことは間違いない。
■日本の民主主義史上に残る無意味な選挙
3月23日に投開票された大阪市長選は、前市長で日本維新の会共同代表の橋下徹氏が新人3氏を引き離して再選を果たした。橋下氏は大阪都構想の来年4月実現に向け、この夏にも設計図を完成させる考えだ。
しかし、橋下氏は意味のない選挙をやってしまった、と私は思う。野党の主要政党は「大義がない」として対立候補を擁立せず、新人は泡沫候補のみ。お金だけがムダにかかった、非常に恥ずかしい選挙だった。
投票率も過去最低の23.59%。大阪市民の抗議を表したと思われる白票/無効票も史上最高の6万7506票で対立候補3人の合計よりも多かった。日本の民主主義史上、記録に残る無意味な選挙であったことを物語っている。
ここで「大阪市長選の投票率の推移」をご覧いただきたい。
2011年の大阪市長選は大阪府知事選とのダブル選挙で、投票率も非常に高かった。大阪市長選は40年ぶりに60%超(60.92%)を記録している。
■「日本維新の会」で国政進出後、意味のわからない展開に
そもそも前回のダブル選挙でも、「大阪都構想の実現」が大義名分とされていた。府知事を途中で辞めて、自らが市長となり松井一郎氏を府知事候補にしたのは他ならぬ「府市一体で大阪都構想」を進めるためであった。そのダブル選挙で橋下氏が率いる大阪維新の会は圧勝したのだから、大阪都構想を実現してくれるものと支持した有権者は誰もが思っただろう。
ところが、大阪維新の会は2012年9月に「日本維新の会」という政党を結成して国政に進出し、意味のよく分からない展開を見せた。とくに右寄りで自民党を脱藩したベテラン議員の集団である「たちあがれ日本」転じて「太陽の党」と合併して石原慎太郎氏と共同代表になったあたりから大阪への関心が薄れて国政を視野に入れた動きや発言が多くなった。
その流れに沿ったのか、2013年5月には、従軍慰安婦問題をめぐって橋下氏自身が余計な発言をして、無用な政治的混乱を招いた。7月に大阪市の姉妹都市である米国サンフランシスコ市を訪問する直前であっただけに、米国でも女性団体、韓国・中国ロビーの総バッシングに遭って訪米を断念する羽目に追い込まれる、という国際問題を引き起こしている。
地方自治体の首長が深刻な国際問題を起こした例としては、(1)共同代表を務める石原慎太郎氏が都知事時代に買収すると言い出した尖閣諸島問題、(2)米国でも大騒ぎとなった橋下徹氏の従軍慰安婦発言――があるが、ともに日本維新の会の共同代表を務める、というオチまで付いている。
■神通力が完全に消えて「橋下離れ」
そんなこともあって、今では自民党をはじめ各政党や中央官庁の役人たちが橋下氏を全く怖がらなくなっている。橋下氏を大阪に閉じ込めておかないと「江戸に攻め上がってきたら大変だ」というのが橋下氏の影響力の源になっていただけに、「橋下はもう台風の目にはなりえない」と、完全に見下している状況だ。道州制、地方自治など予定されていた法案も先の議会で静かに葬り去られた。
しかも、今回の出直し選挙によって、地元・大阪でも、橋下氏の神通力は完全に消えてしまった。次の選挙でにらまれたら怖い、というのが議員たちが橋下氏に従ってきた理由だから、もはや市議会においても統率力は無くなっており、急速な「橋下離れ」が起きている。
つまり、彼が推進しようとしていた市バスや地下鉄の黒字化、民営化などの動きも急速に鈍くなっているし、議員たちは地元の赤字路線の撤廃には再び抵抗するようになっている。大阪発のベンチャーを増やしていこうというまじめな取り組みも、協力企業の熱意が急速に萎んでいる。
これから先は、橋下氏が考えているような大阪都構想はうまく進まないだろう。これまで以上に議会などがサボタージュする可能性が高まっている。大阪都構想に以前から反対している堺市だけでなく、他の自治体も従わないところが増えてくるだろう。今回の選挙の直接のきっかけとなった「区割り案」に関しては甲論乙駁というより、そもそも議論に向き合わない議員が続出し、橋下氏は1人で区割り案を提出する羽目になるのではないだろうか?
■議員だけでなく大阪市民までもが見限った
橋下氏のミスは、2011年のダブル選挙の直後に大阪都構想を一気に進めてしまわなかったことだ。本連載でも何度か指摘してきたように、彼の中央政界における影響力は、大阪維新の会が全国政党になることではなく、大阪での改革を進めるにあたって中央が邪魔している部分を集中的に攻撃し、直させることにあった。
そのための大前提は、大阪で橋下改革を成功させ、全国の自治体を「自分たちも!」と立ち上がらせることであったはずだ。中途半端な(思想も政策も異にする政党と合併して)全国政党となり国政と国際問題に翻弄されてひっくり返ってしまった。
いままた日本維新の会は結いの党と合併/統合をするという。もうコメントする気にもならない。
チャンスを見逃した、というよりは自分で繰り返し間違いを犯してしまったのである。とくに前回の府・市一体改革を進めるというダブル選挙の公約を守らず、そのくせ同じ公約を掲げて意味のない単独市長選をやったことによって、議員たちだけでなく、大阪市民までもが「橋下徹」という「金の卵」(かも知れなかった政治家)を見限ったのである。
■「統治機構を変える」ことこそが「一大使命」だったはず
有権者はシラけ、野党は高笑いしている。橋下氏自身も選挙後に「大阪市民の多くの皆さんから信任を得たと堂々と言える状況ではない」と述べ、現実を認めている。
世間を騒がすようなことばかり考え、肝心の政策を地道に進めることをしなければ、金の卵どころか、「結局は一介のタレントに過ぎなかった」と評されてもしかたないだろう。
道州制を実現してくれるのではないか、という期待から有力なアドバイザーを紹介するなどして応援してきた私自身も、太陽の党と合併した後の橋下氏の(不必要な)言動には失望の念を禁じ得ない。
橋下氏が政界に登場したときは、「もしかしたら国のかたちを変えてくれるかもしれない」と期待を抱かせてくれた。彼自身も「統治機構を変える」とよく叫んでいた。それこそが、彼がユニークで、歴史に残る政治家になれた「一大使命」であったはずだ。
橋下氏のような政治家は、過去にも何度か現れた。細川護煕氏は政治改革とともに地方分権の実現を訴えた。小泉純一郎氏は「中央から地方へ」をスローガンに、財源の移譲を含む「三位一体の改革」を進めようとした。
■残念な政治家の列に加わろうとしている
しかし、細川氏も小泉氏も「本物」ではなかった。細川氏は地方分権を進めるまでもなく、さっさと政権を投げ出した。小泉氏は、地方分権も郵政民営化も中途半端なまま政界を去ってしまった。いずれも「スローガン」だけで現実は何も変わらなかった。最近ではこの2人が組んで「脱原発」で都知事選を戦い日本中から失笑を買っている。
国のかたちを変えてくれそうな政治家が現れ、一時的に国民の人気を得ることはあっても、結局、何も実現しないまま終わってしまうというのが日本の政治だった。現時点では橋下氏も、そうした残念な政治家の列に加わろうとしている。
橋下氏はまだ若いのだから、もしかしたらいずれ別の場面で再び花開くことがあるかもしれない。ただ、政治的なチャンスを一度逃してしまうと、再び火を点けることは困難だ。国民の政治不信のマグマがたまるまで、しばらく時間がかかりそうである。
いま国民の支持率が高い安倍政権はまさに官僚主導・中央集権の権化である。民主党の唱えた「コンクリートから人へ」の真反対である「人からコンクリートへ」とカネのかかる道を爆走中。当然その推進に必要な財源は長くは続かない。いずれ、閉塞した地方自治体を何とかしなくてはいけない、という認識が頭をもたげてくる時があるだろう。その時を信じて、統治機構の改革は次の「メサイヤ」が出てくるまで心の中で念じ続けることにしよう。
- Re: 大前研一:橋下徹氏は「残念な政治家」で終わるのか(nikkei BPnet) heizon 2014/4/11 17:26:33
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