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[医 出づる国]揺らぐ信頼
(1)放置された技量不足 医局の閉鎖性 ミス生む温床
80代の男性患者の容体が急変したのは、前橋市の群馬大病院第2外科で肝臓がんの手術を受けた2週間後だった。切除した部位に近い動脈から出血し、肝臓の働きも低下。手術から59日目に亡くなった。「縫合不全があった」。病院の調査委員会がまとめた報告書には、医師の技量不足をうかがわせる記述がある。
執刀医は40代の男性。この医師が2014年夏までの約5年間に手掛けた肝臓の手術で、4カ月以内に死亡した患者は18人に上る。「昔から手術が得意ではなかった」。群馬大病院で勤務した経験のある別の医師が明かす。
18人のうち80代男性を含む8人はおなかに開けた穴から腹腔(ふくくう)鏡という細長い器具を入れ、病変を切り取る術式だった。開腹より患者の負担が軽いのが利点だが、モニター画面を見ながら操作するので難易度は高い。特に、多くの血管や臓器と接する肝臓は難しいとされる。
張り合うチーム
高度な医療を提供すると期待される大学病院で実力不足の医師がメスを握っていたとすれば問題だ。だが「病巣」はそれにとどまらない。医師はなぜ手術を続けられたのか。その答えを探ると、多くの大学病院に今も残る「医局講座制」の存在が浮かび上がる。
医局講座制は臨床、研究、教育を一体的に担う仕組みで、同じ診療科で第1、第2と分かれる「ナンバー制」とともに日本で独自に発展した。医師育成や地域の病院への人材派遣などに貢献する半面、閉鎖的体質が問題になってきた。
群馬大病院の外科は第1と第2に分かれ、それぞれに消化器や呼吸器などの専門チームが存在。関係者によると、リーダーの教授は第1が旧帝大、第2は群馬大の出身で「常に張り合っていた」という。
別の病院の外科医が推測する。「胃や大腸の腹腔鏡手術は普及しているが、肝臓は過渡期。件数を増やし、優位に立とうと考えたのでは」。2つの外科の間で治療法は共有されず、相互チェックは働かなかった。
医局の弊害が問題になったのは今回が初めてではない。医事評論家の水野肇氏によると、深刻な医療事故が相次いだ00年前後に閉鎖的な縦割り組織の問題点が指摘され、改革に乗り出した大学もある。
脱・縦割りへ改革
東大病院は04年に医局をなくし、診療科を横断的に調整する部門と、医療安全や人事などを担う運営支援部門をつくった。企画経営部長だった今村知明・奈良県立医大教授は「各医局が独立国のように動いていた反省を踏まえ、病院長がリーダーシップを発揮できるようにした」と話す。
群馬大病院は今回の問題を受け、ようやく診療科を再編すると発表した。だが医局のあり方を見直す動きが他に広がっているようには見えない。コンプライアンスが重視される中、どれだけの病院が改革に踏み出せるのだろうか。
◇
著名な病院で医療事故や不祥事が相次いで明らかになった。医療への信頼が大きく揺らいでいる。
[日経新聞7月8日朝刊P.1]
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[医 出づる国 Q&A]
(1)「医局講座制」の功罪 若手支援の一方、不祥事も
大学病院などで最近、相次いで発覚した医療事故では、閉鎖的な体質が問題となることも多い。その背景の一つと指摘されるのが、医局講座制だ。日本の医学部独特の制度で、功罪の両面がある。
Q 医局講座制とは。
A 医局は通常、病院の中にある医師の控室のことだが、大学病院では診療科ごとの人事組織を意味し、第1外科、第2内科というように「ナンバー制」をとることもある。講座は大学医学部で教育や研究を担う組織を指す。どちらも教授がトップとなり、一体的に運営することから医局講座制という。
歴史は古く、明治時代にさかのぼる。大学東校(現東京大医学部)が1893年(明治26年)、ドイツの大学医学部に倣って導入したのが最初で、全国の大学へと広がった。
Q 教授にはどんな権限があるのか。
A 医局講座制はピラミッド型の組織で、教授の下には准教授、講師、助教、大学院生、研修医などがいる。権限は教授に集中し、教育、研究、診療に関わることはもちろん、関連病院に派遣する医師の人事権なども握っている。
Q 功罪は。
A 若手医師が学位(博士号)や専門医の資格を取得する手助けをする。また医局員をローテーションで関連病院に派遣し、地域医療を支えてきた。
一方で、2000年前後に社会問題となった医療事故、医師の派遣を巡る名義貸しや不明朗な金銭授受では、閉鎖的な側面が浮き彫りになった。こうした反省から、医局講座制を廃止した大学もある。
Q 医局はいまも強い力を持っているのか。
A 04年に医師の臨床研修制度が改革され、医師免許を取った人は研修先を自由に選べるようになった。出身大学の医局に入らず、民間病院を選ぶケースが続出して、医局は弱体化した。ただ、近年は専門医の質向上を目指した認定制度の見直しが進んでおり「支援体制が充実した医局に有利に働く」との見方もある。
[日経新聞7月8日朝刊P.34]
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