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コラム:米国経済の「優位」はこの先10年続く=竹中正治氏
2015年 01月 14日 20:12 JST
竹中正治 龍谷大学経済学部教授
[東京 14日] - 振り返ると「米国経済凋落論」や「長期停滞論」にずいぶんと世間は幻惑されてきたものだ。米国経済に関する過度な悲観論は、日本では一部のアンチ米国的な信条によってひどく増幅されてきた。
筆者はそうした過度な悲観論を批判し、米国経済と米国株式投資に関する長期的な楽観論を説いてきた。この先5年から10年、おそらく米国の相対的な経済的優位が継続するだろう。そう考える理由を説明しよう。
<人口動態面で米国は相対的に優位>
米国経済の長期的な停滞の可能性を議論する際、代表的な要因は3つある。第1は人口動態的な要因だ。米国でも65歳を超えた戦後のベビーブーマー世代の引退が2010年代前半から始まっている。「実質国内総生産(GDP)成長率=労働者数の増加率+労働者1人当たりが生産する付加価値増加率」であるから、労働に従事する現役世代の相対的な減少は当然、成長率の押し下げ要因となる。問題はそれがどの程度であるかだ。
こうした人口動態要因が経済成長のプラス要因(人口ボーナス)からマイナス要因(人口オーナス)になる転換点を日本は1990年前後、米国は2008年前後に通過した。しかし、米国は若い移民人口と彼らの相対的に高い出生率に支えられて人口増加率は現在でも1%近く、少子高齢化の進行度は先進国では最も穏やかだ。
米国連邦議会予算局(CBO)のレポート(The Budget and Economic Outlook:2014-24)は、2014年から2017年の潜在的な労働力伸び率(年率)を0.6%と推計している。これは1991年から2001年の同伸び率1.3%に比べると0.7%低い。同期間の実質GDPの潜在成長率は3.2%と見積もられていたので、今後の潜在成長率は他の条件が同じだとすると2.5%に低下する。
ただし、この減速は「ニューノーマル論」として語られてきた「金融危機の長期後遺症」などとは全く関係がない。人口動態上、不可避の減速として以前から予想されてきたことに過ぎない。しかも、ユーロ圏や日本の少子高齢化に比べると、人口増を維持している米国は相対的にずっと有利な立場にある。また、中国は人口ボーナスから人口オーナスへの転換点がまさに2015年前後であり、その後は過去の一人っ子政策の結果、日本よりも急速な高齢者人口の増加、現役人口の減少に直面する。
<所得格差の拡大は経済成長にマイナスか>
米国の経済成長にとって第2のマイナス要因として語られてきたのは、富と所得の格差拡大だ。1980年頃を境に米国家計の所得格差が急速に拡大してきたこと、また米国の所得格差はユーロ圏や日本よりも大きいことは様々なデータで裏付けられている。
所得格差の拡大が低成長につながる理由として最も一般的に語られるのは、消費性向の低下だ。つまり一般に富裕層は消費性向が低く(貯蓄率が高く)、低所得層ほど消費性向は高い(貯蓄率が低い)と考えられているので、所得格差が拡大すると、過少消費・過剰貯蓄となり、消費需要の伸び率低下が低成長をもたらすというわけだ。
しかし、国民所得統計を見る限り、米国の家計貯蓄率はリーマンショック危機後の2009年こそ6.1%まで上がったが、その後は低下し、2013年以降は4.9%と1990年以来の平均値5.5%より低い。したがって所得格差の拡大による消費性向の低下(貯蓄率上昇)は生じていない。
所得格差と経済成長の関係は、むしろ人的資本形成と貧困の関係として捉えるのが妥当かもしれない。経済協力開発機構(OECD)の調査レポート(Focus on Inequality and Growth - December 2014)は、1985年から2005年の間に生じた主要国の所得格差の拡大が、1990年から2010年の期間の各国経済成長に与えた影響度を推計し、ジニ係数で0.03の所得格差拡大が、経済成長率を年率平均0.35%引き下げたという推計を提示している。また、所得格差拡大が成長率を押し下げる理由は、主に低所得層の教育機会を損ない、人的資本形成を妨げるからだと指摘している。
では、米国は先進諸国の中では所得格差が大きく、その拡大の速度も高いので、所得格差拡大による成長率低下度が大きいのだろうか。ところが、同レポートの20年間を対象期間とする国別の推計データを見ると、米国の所得格差拡大要因による成長率低下は累計でマイナス6.0%(年率約マイナス0.3%)である。これは同様の成長率低下が推計された16カ国の平均値マイナス6.4%より若干小さく、日本のマイナス5.7%やドイツのマイナス5.6%とあまり変わらない。
最もマイナスが大きかったのは、ニュージーランドでマイナス15.5%。また教育や福祉では北欧の優等生国と言われるスウェーデンはマイナス7.2%、ノルウェーもマイナス8.5%とマイナス幅はより大きかった。さらに興味深いことに、フランス、アイルランド、スペインの3カ国については、格差の拡大が成長率の上昇に寄与したという逆の推計結果が出ていることも言い添えておこう。
要するに米国家計の所得格差は大きいものの、それが他の先進国と比べて米国経済の成長率をより低下させているという事実は確認できていない。
もちろん、筆者は米国における貧困層や所得格差が問題ではないと言っているのではない。米国の下から10%程度の低所得層は、現代的な業務に従事するのに必要最低限の基礎的な読解・作文能力、計算能力を欠いており、貧困と教育劣化のループに落ち込んでいる。この層を労働力として再生することが望ましいことは間違いないのだが、それは単に所得再配分を強めれば解決するような生易しい問題ではない。
<イノベーションにおける米国の優位>
第3にイノベーションの面で米国の成長性を考えてみよう。イノベーションの鈍化が米国の経済成長鈍化を起こしているという説も少数ながらあったが、近年の展開はむしろイノベーション面での米国の優位を感じさせる。
まずエネルギー面では採掘技術の進歩による米国のシェールガス・オイルの増産が、ついに世界的な原油需給を緩和させ、原油価格の急落を引き起こす供給面の要因になったことは間違いない。エネルギー価格の下落は米国のみならず、日本を含むエネルギー輸入国全体の交易条件を改善させ、経済成長を押し上げる。ただし、円やユーロは最近の為替相場の下落で、ドル建てのエネルギー価格下落のメリットが一部相殺されてしまっている。一方、ドル相場全般は緩やかな上昇基調にあり、米国はドル建てエネルギー価格下落のメリットをより多く享受できる。
もちろん、エネルギー資源価格の下落とは、その輸入国から輸出国に移転する所得の減少だから、石油輸出国機構(OPEC)諸国やロシアなどエネルギー資源輸出国は経済的な苦境に直面しているが、世界経済全体でマイナスになる変化ではない。
情報通信分野では、家電からインフラまで様々な機器やシステムをインターネットにつなげるIoT(インターネット・オブ・シングス)や、それによって得られるビッグデータの人工知能による解析、その成果の経営判断への利用やビジネスモデルの変革が注目されている。その最先端を走るのはやはり米国である。
これまで産業ロボットで世界最大の保有台数を誇る日本は「ロボット産業大国」であることを自負してきたが、ひとつの衝撃的な事件が起こった。報道によれば、2013年末に開催された米国防総省国防高等研究計画局(DARPA)主催の災害救助ロボットコンテスト予選で、米航空宇宙局(NASA)など強豪15チームを抑えてトップで通過した日本のロボットベンチャー企業「SCHAFT(シャフト)」が、日本では資金を集めることができずに、グーグルの出資を受けて買収されたという。
グーグルだけではない。新しい技術とビジネスモデルで大成功し、莫大なキャッシュフローを獲得するようになった企業が、さらに様々なイノベーションの種の開発に成功したベンチャー企業に出資、買収して次の変革を起こす。そうしたイノベーションのダイナミックな連鎖反応が米国で起こっている。
1990年代のITの勃興を最も効果的に経済成長に結びつけたのは米国で、どうひいき目に見ても日本や欧州は米国の後塵を拝していた。それと同じことがもう一度、次の5年から10年、起こりそうな雲行きとなっているのだ。
米国のベンチャーキャピタルやエクイティファンドの背後には、リスク性資金の出資者となる超富裕層の資金がある。富の一極集中でできあがった超富裕層のマネーはリスク耐久度も高いので、そうした高リスク高リターンを志向するファンドの原資となっている。既述した米国の富の集中構造は、リスク性資金の供給という形で経済成長にプラスの寄与をする面も持ち合わせていると考えられる。家計金融資産が高齢者家計を中心に比較的広く薄く分布しているため、富の格差は小さいが、同時にリスク許容度の低い資金となっている日本との大きな違いである。
<資産バブルの気配はまだない>
最後に米国の株価と住宅価格の水準を確認しておこう。実体経済が良好でも信用の膨張に支えられた資産バブルが拡大していれば、その破裂により、大不況になることを私たちは繰り返し経験してきたからだ。
まず住宅価格はS&P500ケース・シラー指数で見ると、2006年の高値から35%下落した後、2012年に反転し、2014年10月時点では底値から28%上昇している。しかし、これはバブルの再来ではない。
米国ではデフレにならなかった結果、名目家賃は2008年以降も穏やかに上昇を続けた(消費者物価指数の内訳で見ると、現在では前年同月比プラス2.7%)。住宅価格が割高か割安かは、家賃との比率でわかる。住宅価格指数を賃料指数で割って計算したPRR(Price to Rent Ratio)は、データがとれる1987年以降の平均値に対して住宅バブルのピーク時は58%も高くなったが、現在は平均値を11%程度上回るだけで(2014年10月時点)、全般的なバブルの兆候はまだない。
株価はどうだろうか。S&P500の株価収益率(PER)は過去12カ月の決算報告ベースで18.2倍(2014年12月末時点)だ。これは1990年以降の平均値24.1、あるいは1980年以降の平均値20.5よりもやや低い程度であり、バブルのリスクを懸念しなければならない水準ではない。
昨年9月25日付の本コラム「米国株、利上げ転換局面は絶好の買い場か」(here)で書いたとおり、「過去を参考にすれば、来年からいよいよ始まる米国の利上げへの転換局面で直近高値から5―10%程度の反落局面が起こっても、むしろそれは自然なこと」であり、反落局面での買いは比較的短期間に報われるだろう。
「そうは言っても、米国株もここまで上がってしまうと手が出ない」と感じている方のために、日本から円資金をドルにして米国の株価指数S&P500に連動する上場投資信託(ETF)か投資信託を毎月定額積立で買うという極めて基礎的な投資をするとどういう結果になるか、最後にお見せしよう。
下の図は毎月末に1万円を投じてS&P500連動のETFを購入した場合の累積投資額と資産時価総額の推移である(除く手数料ベース)。2000年1月末はITバブルで株価が高値圏にあった時なので、あえてそこを投資のスタート時点に置いた(当時の最高値は2000年3月)。S&P500連動のETFは今では東京証券取引所で上場されているので一般企業の株式を購入するのと同じように買える。利用できるならば、確定拠出年金でS&P500連動のETFあるいは投資信託を定額積立方式で買うコースを選ぶと効率的だろう。
2014年12月末時点での投資結果は、累積投資額180万円、資産時価評価額351万円で、キャピタルゲインは171万円、率で約95%である。この投資の内部収益率(IRR)を計算すると年率約8.9%である。しかも、これに当該期間の平均配当利回り1.9%が加わるので、年率10.8%のリターンとなる。十分過ぎる成功だろう。
定額積立投資の場合でも、株価が安い時に始めないとリターンが下がると勘違いしている方がいる。定額積立は、投資のタイミングリスクを平準化するものであり、投資のスタート時点は投資のパフォーマンスにあまり関係がない。むしろ株価が下がって評価損が出ている時に投資を継続することこそ、定額積立投資の強みを活かす条件だ。
米国経済凋落論に幻惑されて米国株をポートフォリオに保有していないとすれば、失っているものは実に大きいと言えよう。
*竹中正治氏は龍谷大学経済学部教授。1979年東京銀行(現三菱東京UFJ銀行)入行、為 替資金部次長、調査部次長、ワシントンDC駐在員事務所長、国際通貨研究所チーフエコノミストを経て、2009年4月より現職。経済学博士(京都大学)。 最新著作「稼ぐ経済学 黄金の波に乗る知の技法」(光文社、2013年5月)。
*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。(here)
http://jp.reuters.com/article/jp_forum/idJPKBN0KN0RT20150114
ドル/円一時4週間ぶり安値、米小売売上高落ち込みで=NY市場
2015年 01月 15日 07:28 JST
[ニューヨーク 14日 ロイター] - 14日のニューヨーク外為市場では、ドルが対円で一時約4週間ぶりの安値に下落した。朝方発表の米12月小売売上高が予想外の落ち込みをみせ、米国債利回りが低下する中、米利上げのタイミングについての不透明感が増した。
ドル/円JPY=はその後持ち直し、終盤は0.6%安の117.25円での取引となっている。
弱い米小売売上高の結果を受けて、クレディ・アグリコル(ニューヨーク)の通貨ストラテジストのマーク・マコーミック氏は「(きょう発表の)小売売上高と先週発表の雇用統計の賃金が低調で、米連邦準備理事会(FRB)の利上げ時期について疑問が生じた」と述べ、利上げが市場予想の6─7月以降に後ずれする可能性も指摘した。
一方、ユーロ/ドルEUR=は一時、1999年のユーロ導入時のレートを9年ぶりに下回り1.1729ドルを付けた。欧州司法裁判所が欧州中央銀行(ECB)の国債購入プログラムについて一定の条件下であれば違法ではないとの見解を示したことで、追加緩和の思惑が高まった。
その後は低調な米小売売上高によるドル売りで買い戻され、終盤は1.1779ドルとなっている。
FOREXコムの上級市場アナリストのニール・ギルバート氏は「市場はユーロ売りに入るタイミングについて、何がしかの理由を探しているかもしれない」と述べたうえで、「米小売売上高の結果である程度の材料消化が行われたことで、おそらく今がユーロ売りを再開するタイミングだろう」との見方を示した。
ドル/円
終値 117.33/35
始値 116.80/81
前営業日終値 117.91/94
ユーロ/ドル
終値 1.1787/89
始値 1.1775/76
前営業日終値 1.1771/73
http://jp.reuters.com/article/jp_forum/idJPKBN0KN2K020150114
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