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ワンパターンになりがちな企業決算報道 メディアの工夫は? 「貿易立国」から変わる日本の稼ぎ方
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140521-00010003-wedge-bus_all
WEDGE 5月21日(水)12時40分配信
3月期決算企業の発表が最終段階を迎えている。円安や消費増税前の駆け込み需要の増加などの動きを受けて、多くの企業が好業績を記録しており、過去最高益を上げた企業も多い。アベノミクスの広がりによる景気回復をあらためて確認した企業経営者も多かったことだろう。不動産大手では、過去最高の売上高を記録したほか、自動車業界では大手6社が営業利益で過去最高益を記録した。近年、業績不振が続いていた電機も日立が23年ぶりに営業利益が最高を記録し、シャープも3年ぶりに最終利益が黒字化するなどの好業績となった。
■「経常黒字1兆円割れ」との関係は…
決算の記事というのは、いわば企業の1年間の成績表であり、市場や投資家の関心も高い。その一方で、新聞やテレビのメディアはどうしても報じ方がワンパターンとなり、無味乾燥な記事になりやすい。だが今年の報道ぶりをみていると、中には工夫が感じられた記事もあった。
たとえば読売新聞は「日立、営業利益23年ぶり最高 シャープも3年ぶり黒字」と5月13日の紙面で紹介した。電機メーカーは近年、業績悪化が続いていただけに、見出しを読んだだけで「シャープもようやく回復してきたか」とわかる。一方、同じ日の毎日新聞は「電機 企業向け奏功 大手7社最終黒字」とした。電機大手の決算の特徴を示してはいるが、正直、ぱっと見てわかりにくい。日本経済新聞は「シャープ再建なお綱渡り 前期3年ぶり黒字化」との見出しで、シャープの経営再建について分析的に解説した。営業利益、最終利益ともに黒字化したが、財政基盤はまだ弱く、収益体質を根付かせるのはこれからだと指摘した。
各紙を見比べて印象的だったのはこの日の朝日新聞の経済面で「日本の稼ぎ方 変調」と2013年度の日本の経常黒字が初の1兆円割れしたことと、企業決算をからめて記事にしていた点だ。企業の業績は好調なのにもかかわらず、国全体として見ると稼ぎは減っている、という点に着目した。
経常黒字は輸出や投資による稼ぎで海外から入ってくるお金のことだが、自動車や電機メーカーが海外での生産を増やしているため、円安にもかかわらず輸出は伸びず、結果として経常黒字が減る構造になっている。「輸出を主力とする貿易立国」という日本のイメージが質的に変化してきていることを指摘しており、実際、朝日の記事では日立製作所の中西宏明会長の「昔の『輸出モデル』はもうない」とのコメントを引用しながら解説し、「消える輸出モデル」と見出しで指摘した。
こうしたまとめ方は別々の事象にみえる企業業績とマクロ統計である国際収支とをつなげ、経済の実相を立体的に読者に提示した点で効果的だ。
■環境の急激な変化と柔軟な発想
とかく経済報道は担当分野や企業、官庁なら記者クラブごとの縦割りにしばられ、現場の記者は自分のフィールドだけに注目してしまう「たこつぼ的」な原稿を書きがちだ。それを別の発想でまとめ直すのはデスクワークの力でもあるのだが、みずからも長年、同じような姿勢で原稿を書き続けてきたデスクの側が急に柔軟な発想を出すことは正直、なかなか難しい。
だが、経常黒字が減少の一途をたどるなど、日本を取り巻く経済状況はいま急激に変化している。報道する側も強く意識し、変化の中身とその意味を伝えてゆかなければならない。過去の経験が参考にならないシンドイ作業だが、まさに最近の経済報道にはそうした視点や発想が一段と求められていると、自戒の念もこめて思う。
段木昇一
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