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人手不足は株価を押し上げるマグマになる[日経新聞]
編集委員 前田昌孝
2014/5/21 6:00
「あと半年も株式相場の膠着が続けば、私は解雇を言い渡されそうだ」。外資系証券のエコノミストが真顔で話していた。何しろ日経平均株価 は1万4000円台前半で上下動を繰り返しているだけだ。ただ、実体経済に目を向けると、人手不足が企業を慌てさせている。この流れはアベノミクスの成長戦略などよりも日本経済に待ったなしの構造改革を迫るかもしれない。株式相場も上昇へのマグマをため込んでいる可能性がある。
「本当に人が集まらない」。東京都内でビルメンテナンスの仕事をしている女性経営者(60)が話していた。厚生労働省の統計によると、有効求人倍率(季節調整前)は1〜3月の平均で1.10と、過去の年平均値との比較では1991年の1.40以来の高さだ。新規求人倍率も1〜3月期の平均値は1.61と92年の1.63以来の水準まで上昇した。
アルバイトが集まらずに夜間営業休止に追い込まれる飲食店も出始めた。東京都内では深夜帯の時給を1500円に引き上げて人集めに動いているところもある。もし時給1500円で1日8時間働けるのならば、週5日間の労働で年収は312万円になる。共働きならば、600万円を超える。さきの女性経営者は好条件に引かれて人材が他に移らないようにと、リーダー格の人材を正社員として登用し始めた。
振動試験装置メーカーIMVの岡本二朗社長は「必要な設備投資が遅れ気味になっている」と話していた。電気自動車 を始め、さまざまな産業分野で新製品開発が相次ぎ、製品開発に不可欠な振動試験などの需要が旺盛で、従業員が足元の受注対応に追われているためだ。1年前には「アベノミクスの恩恵は実感できない」と言っていた。今は「とにかく人材を集めることが最大の経営課題だ」と語る。
エコノミストの間からも「人手不足が日本経済に構造改革を迫る可能性は十分にある」(シティグループ証券の飯塚尚己氏)という声が出てきた。自動レジの導入など人を設備に置き換えるための設備投資なども活発になりそう。パートやアルバイトに払う高い賃金を確保するため、値上げに踏み切る小売店や飲食店も出てきそうだ。
第3の矢の成長戦略に伴う「本当の規制緩和」が進めば、経済の需給ギャップ が小さくなっているだけに、効き目も大きそう。何しろこれまでの規制緩和論は需要がなく、何ごとにも慎重な企業を何とか動かすために、知恵を絞ろうという話だった。「企業がやる気を出したところで規制緩和をすれば、前向きな動きがどんどん出てくるはずだ」(飯塚氏)
雇用情勢の改善は出生率回復の糸口になる可能性がある。正社員に登用すると、結婚したり、出産したり、家を買ったりという動きが出てくるからだ。すでに1人の女性が一生に産む子どもの数を示す合計特殊出生率 は2005年の1.26を底に上向き、12年には1.41になった。人口維持に必要な2.07まではまだ距離があるが、「東京オリンピックを子どもと一緒にテレビ観戦したい」と考えている女性も多く、当分は回復傾向が続く期待が持てる。
実体経済が前向きに動き始めている割に、東京株式相場はやや取り残されている感じだ。日経平均株価 を1万4000円台前半、1万4000円台後半などと500円ずつの幅で刻み、1つの価格帯にとどまった日数を数えると、今回は20日までで16日間と、13年1月30日から2月22日にかけての17日間以来の膠着商状だ。相場が動かなければ稼げない証券会社にとってはつらいところ。
ただ、00年以降の株式相場を振り返り、16日以上同じ価格帯で推移したケースを数えると、今回は20回目に当たる。膠着の後に進んだ方向は前回までの19回のうち、上が11回、下が8回だった。やや上が優勢といえる状況だ。
今回も好悪両材料が控えているが、企業業績に着目するのならば、次は1万4000円台後半に入ってもいい。というのも、前期決算で1株当たり利益 が過去最高を塗り替えた企業は、東証1部上場の1805社中474社にも達していた。06年には698社がその時点での最高を記録したから、「最高益ラッシュ」という点では当時ほどの勢いはない。しかし、06年に最高益を記録した698社のうち581社は、その後の決算でもっと多くの利益を出している。今期の業績見通しは強含み横ばいといったところだが、1株利益の水準の高さはもっと評価されてもいい。
もう1つ、日本の代表的企業の自己資本利益率(ROE )は欧州の代表的企業の平均水準をわずかに上回った。日本はTOPIXコア30構成銘柄、米国はニューヨーク・ダウ工業株30種の採用銘柄、欧州企業はユーロ ・ストックス50の構成銘柄について、ROEを調べ、大きい順に並べるとグラフのようになる。ROEの単純平均値は日本の30社が9.81%、米国の30社が22.93%、欧州の50社が9.31%だった。
人材を変動費 だと考える米国のような社会を目指すのならば、ROEの日米格差の大きさを問題にすべきだろうが、日本経済はそこまで柔軟ではない。ROEは当面、欧州企業並みで十分かもしれない。15日に株主配分強化を打ち出したアマダ株が大きく買われたのをみると、株式市場からのメッセージは「株主から見て合理的な経営をしている企業は、中長期の投資対象になる」ということであろう。
http://www.nikkei.com/markets/column/hanshakyo.aspx?g=DGXNMSFK2002D_20052014000000
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