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100万本売れればヒットと言われているボールペンで、初年度に300万本の販売を達成した『ユニボール シグノ RT』
1年で300万本売れた三菱鉛筆のボールペン『ユニボール シグノ RT1』ヒットの理由
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140503-00010000-dime-bus_all
@DIME 5月3日(土)13時0分配信
大ヒット中のボールペン『ジェットストリーム』を生んだ三菱鉛筆から、新たなボールペンのヒット商品が誕生した。『ユニボール シグノ RT1』がそれである。
『ユニボール シグノ RT1』は、2013年1月に発売されたノック式ゲルインクボールペン。インクやチップ(ペン先)を見直し、従来の『ユニボール シグノ RT』に比べてなめらかな書き味を実現した。ボール径は0.28mm、0.38mm、0.5mmの3種、インクは全10色を用意。0.38mmのブラックインクでは、カラーボディもラインナップしている。100万本売れればヒットと言われているボールペンで、初年度に300万本の販売を達成した。
『ユニボール シグノ RT1』が企画・開発された背景には、ボールペンの市場変化があった。キャップ式からノック式にシフトが進む中、ノック式ゲルインクボールペンはモデルチェンジがほとんど行なわれていなかった。『ユニボール シグノ RT』も2000年に発売されたもの。徐々にノック式に対するニーズが増加したことから、同社は2010年に、理想の書き味を実現したノック式ゲルインクボールペンを開発することにした。
同社が定義した理想の書き味は、「細字でもなめらかに書ける」。ゲルインクボールペンは細字が主流で、細字だとカリカリとした書き味になるが、開発は細字特有のカリカリとした書き味をなくすチャレンジでもあった。横浜研究開発センター 課長の加藤友義氏は、「ボールペンの心臓部であるインクとチップを刷新しないと、なめらかな書き味が追求できなかった」と振り返る。
インクは配合が見直されることになった。ゲルインクは顔料、水、添加剤で構成されているが、なめらかになりそうな添加剤を見つけては評価。100以上もの配合パターンをテストした。最終的には、それまでゲルインクには使わなかった添加剤を使用することで落ち着いた。その添加剤は、品名・品番ともにノウハウで、詳しいことは明かしてもらえなかったが、社内的には「なめらか成分」と称されているそうである。
今まで使わなかった添加剤を使ったのは、なめらかさを実現すると同時にインクの安定度を補う狙いもあった。『ユニボール シグノ RT1』のインクは、通常のゲルインクより粘度が低い。書き出した瞬間からなめらかさが体感できるようになっている半面、静止状態ではインクが漏れ出てしまいかねない。そこで、使わないときにインクが漏れ出ないよう添加剤を工夫したわけである。
一方、チップでは、エッジレスチップを開発した。エッジレスチップとは、先端の角をなくしたチップ。紙面への引っ掛かりを抑える効果があり、ペンを寝かせて書くような場合でも引っ掛かりが気にならない。ペンを使い込んでいくうちにエッジが削れ、書き味がなめらかになることから発想された。
一見、簡単そうに見えるが、これまで実現しなかったのは、高い加工精度が要求されたからであった。「昔から、エッジをなくしたい、と考えていましたが、そのためには、ボールとボールを受けるホルダーのクリアランスをミクロン単位で仕上げなければなりませんでした」と加藤氏。
チップの製造では専用加工機と専用工具を用い、何十工程もかけて金属を削ってつくられる。加工精度を高めるため、同社は工作機械メーカーや機械工具メーカーに依頼し、高精度な加工できる機械と工具を仕立てもらい、開発を進めた。しかし、開発はエッジをなくして終わり、というわけではなかった。インクに合うよう、改良を重ねた。インクの改良に合わせて、インクの出る量や書き味が最適になるよう、クリアランスや寸法を細かく見直していった。こうした作業に時間を費やし、インクとエッジレスチップが完成するのに2年近くの時間を要することになった。一方で、『ユニボール シグノ RT1』はデザインも見直した。『ユニボール シグノ RT』とは大幅に変わっている。
なぜ、デザインを大幅に変える必要があったのか? その理由を、デザインを担当した商品開発部デザイングループ 課長代理の西田剛史氏は、「なめらかな書き味を実現したことを、ボディでも体現することにしたため」と説明する。
2013年度のグッドデザイン賞を受賞したデザインの最大の特徴は、軸の形状が一筆書きのようになめらかな「ワンモーションデザイン」であること。グリップと軸で異なる素材を使用していても、段差をなくし色目を合わせることでつなぎ目を目立たなくした。「こうした形状にすることで、なめらかさを表現している」と西田氏。
また、段差をなくしたのは見た目を美しくするだけではなく、どこを握っても指のフィット感が良好になることを目指したためでもあった。さらに、グリップは軸の先端ギリギリまで設けられているが、これは、先端を握って使う人に対応したもので、先端を握ってもしっかり持てるようにした結果だった。
もう一つの大きな特徴が、クリップと一体化したノック棒の採用である。これは、クリップとノック棒が分かれている従来のノック式ボールペンに対するユーザーの潜在的な不満を解消する目的から発案された。不満とは、ポケットやノートの表紙にペンを挿したとき、ノック棒が飛び出して収まりがよくないこと。この不満を解消するため、ノック棒から直接、クリップを生やすことにした。
現在のデザインに行き着くまでに考えたデザインは、ラフスケッチも含めて50ほど。「ボールペンの新規デザインとしては多い方」(西田氏)だという。ノック棒のディテールや全体のスタイリングで、設計部門などと様々な検討を重ねたほか、デザイン案を絞り込む段階では社外モニターにも評価を依頼。書き味とともに評価してもらった。
こうしたプロセスを経て、『ユニボール シグノ RT1』は発売となった。ユーザーの中心は社会人で、主な評価は、「書き味がカリカリしない」「デザインがいい」だという。300万本という数字が示すように売れ行きは好調だが、目立った販売促進策を実行したわけではない。強いて言えば、2013年9月に「ハローキティ」とのコラボレーションモデルを数量限定で発売したぐらいである。
その代わり、店頭で目立つよう販売容器を華やかに見せる工夫はしたという。販売容器は、バラの状態で売るものと、一本ずつビニールパックした状態で売るものの2種類を用意。いずれも、特長である「極細なのになめらか」を謳い、鮮やかな色使いを志向した。
また、デザインを際立たせるために、パックのデザインをシンプルにしたという。それまでのパックは、コピーなども入り商品があまり目立たなかったが、『ユニボール シグノ RT1』ではシンプルに徹し、大事なことのみを表示。商品そのものを見せることを重視した。
★取材からわかった『ユニボール シグノ RT1』のヒット要因3★
1.なめらかな書き味
インク、チップを全面的に見直し、書き始めからなめらかな書き味を実現。細いボールペンに特有のカリカリした書き味はなく、多くの人が書き味に魅了された。
2.書き味が書き方に左右されない
なめらかな書き味は、ペンの持ち方、字の書き方に左右されない。ペンの先端を持っても書いても、あるいはペンを寝かせて書いても、なめらかさは変わらず。一人ひとりの文字を書くときのクセに、うまく対応してくれる。
3.デザインでの差別化
店頭に様々なボールペンが乱立する中、従来なかったデザインにより、注目を引きつけることに成功。また、ノック棒とクリップを一体化することで、潜在的な不満の解消も果たした。
同社によると、『ユニボール シグノ RT1』は文房具好きな人たちの間で人気が高いとのこと。開発には2年半ほどかかったが、この間の努力は、様々なボールペンを試し違いがわかる、こだわり派の満足に結びついた。
文/大沢裕司
DIME編集部
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