http://www.asyura2.com/14/hasan86/msg/642.html
Tweet |
昨年前半の“好景気”は、12年秋に始まった欧州発の円安傾向と赤字財政による公共投資増加によるものである。
日銀の金融政策は、円高に反転する可能性は低いという支えにはなっても、円安に向かわせたわけではない。インフレも、円安による輸入物価上昇が転嫁しやすい公共料金や燃料価格に現れた結果であり、需要増加によって引き上げられたものではない。端的に言えば、ろくでもないインフレ率の上昇である。
「インフレはかなりの部分金融の現象であることは確か」と語られているが、だからといって、インフレが中央銀行の金融政策の現象であることを意味するわけではない。
商業銀行は、口座の数字を書き換えるだけで「信用創造」(貸し出し)ができるから、設備投資などのための借り入れ需要+赤字財政による公共投資+需要は残り供給量は減少する輸出の増加がどれほどあるのかがインフレ率を決する。
金融は、為替レートへの関わりと同じく、借り入れや赤字財政を支えるものでしかない。
不動産や株式など資産価格の上昇も、バブル崩壊後慎重になっている日本では、バブリーなレベルに達することはない。キャピタルゲインやインカムゲインに厳しくこだわる外国勢が、それらの投資で主要な地位を占めていることからも、行け行けドンドンにはならない。
==================================================================================================
インタビュー:日本の金融政策偏重に副作用リスク=米コーネル大教授
2014年 03月 31日 14:30 JST
[東京 31日 ロイター] -米コーネル大学教授のエスワル・プラサド氏はロイターのインタビューで日銀の金融政策は日本経済に最大限の貢献をしていると評価する一方で、日本経済を停滞から救うには金融政策だけでは十分でないと指摘。金融政策だけですべての負荷を支えようとした場合は副作用が効果を上回るリスクがあるとし、構造改革などの施策が進まなければ、追加緩和をしても効果は減殺されると語った。
インタビューの詳細は以下の通り。
──これまでの日銀の量的・質的金融緩和(QQE)についての評価は。
「日本経済が置かれた困難な状況や他の政策からの支援がほとんど得られない状況を考えれば、日銀は与えられた任務に前向きに取り組み、経済に対して期待され得る最大限の貢献をしている」
「保守的な政策運営を続けてきた日銀の歴史からみれば、黒田総裁のとった措置は非常に大胆なものだ。市場に政策意図についてのシグナルを与えるという点においても、実際にとった手段においても、黒田総裁は非常に果断だ。中央銀行にとっては、政策意図を明確に市場に伝えるだけではなく、その政策についてある種の確約を与えることが非常に重要だ。黒田総裁はどちらも行った」
「日銀の意図を非常に明確化し、コミットメントの実施に向けて力強いスタートを切った。市場の当初の反応は過剰ともいえるくらい楽観的なものだった」
──今後は。
「しかし、徐々に現実が明らかになってきている。実際のところ、金融政策だけでは日本経済を10年におよぶ停滞から救うことは不可能というのが現実だ。他の政策からの支援も必要だ」
「黒田総裁は過去の金融政策が十分でなかった可能性について正しく認識している。そのため、金融政策を限界まで推し進めるつもりだ。ただ日銀の政策のみで問題を解決しようとするあまり、短期的だけでなく長期的にも日銀は様々なリスクを引き起こしているのではないだろうか。これは日銀だけでなく、他の先進国や新興国の中央銀行の多くが抱える問題でもある」
「やがては金融政策以外の政策も導入されていくだろう、というのが金融緩和を続けるあらゆる中央銀行が抱く期待だが、その通りにはなっていない。第二の矢、つまり財政政策は若干の助けにはなったが、期待されたほどの効果は出ていない。すでに巨額の財政赤字を抱えていることを考えれば制約は大きい。しかし、より大きな失望は構造改革の進ちょくにおいてだ。財政・金融といったマクロ政策は経済安定化のための政策ではあるが、構造改革を伴わなければ長期的な成長を実現することはできない。この点において安倍首相は口での約束に思ったほど行動が伴っておらず、市場、投資家、家計の失望を招いている」
「金融政策が効果を持つには、他の政策も建設的な役割を果たす必要がある。金融政策だけではすべての負荷を支えることはできない。金融政策がすべての負荷を支えようとすれば、政策の効果と副作用のバランスが崩れ、副作用が効果を上回ることになりかねない」
──現在の日銀は物価押し上げが任務だとしているが、賃金の上昇はまだそれほどみられない。日銀の政策だけで、2%のインフレ目標を達成できるだろうか。
「インフレはかなりの部分金融の現象であることは確かだ。しかし、日本において問題を難しくしているのは、総需要が依然として非常に弱く、供給面での制約が大きいことだ。実体経済が脆弱なままだと、インフレやインフレ期待を持続的に引き上げることは難しいだろう。日銀が他の政策の支援もないまま単独でデフレと戦っている、と人々が思ってしまえば、企業や家計の心理を下支えすることは難しいだろう」
<さらなる緩和、他国との摩擦の可能性>
──市場の一部では4月にも日銀が追加緩和するとの期待があるが、実際にそうであったとしても、市場へのインパクトは昨年の4月より小さくなるか。
「追加緩和があれば、市場が歓迎するのは間違いない。ただ、今の環境で追加緩和してしまえば、市場は他の政策を打つ余地がないために、日銀にしわ寄せがきていると解釈してしまうだろう。そうであれば、追加緩和の市場への影響は減殺されてしまう」
「もうひとつ問題となるのは、さらなる緩和は他国との摩擦を生じさせる可能性があることだ。アジアでは中国人民銀行が人民元上昇を抑えようと必死になっている。FRBがこのまま量的緩和を縮小していくだろう、というのも市場ではかなり織り込まれてきている。こうした環境で、日銀が積極的な緩和に動けば、安定してきたアジア新興国に再び資金が流入しかねない。そうであれば、為替市場をめぐる緊張が生まれるだろう」
──日銀は自らの大量の資金供給は、FRBの量的緩和縮小により引き揚げられるドル資金を埋め合わせる役割を果たすため、新興国にとって良いことだと解説している。実際はそういうことではないと考えるか。
「そうだ。そう都合よくいかない。日銀やFRBは自分たちの政策が自国経済にどういう影響を及ぼすかのみを考慮して政策運営すべきだ、と述べていて、実際彼らに与えられたマンデートからすればその通りだ。彼らの理屈によると、自らの政策が海外にどういう影響を与えるか、注意深く監視する義務も能力も持ち合わせていない。ただそうした見方は非常に狭い視野に基づいているため、新興国にとって望ましくないのは明らかだ」
──中央銀行が物価目標や与えられた責務を果たすうえで、為替市場の動向はどの程度考慮すべきか。
「日本では、供給側の制約が輸出による円安効果を減殺してしまっている。さらに、世界中で需要は非常に低い水準にある。その両方が相まって、経済成長を促す手段としての円安の効果はさらに小さなものになっている」
<金融市場が好調なら総需要にプラスも、実体経済とのかい離に問題>
──中央銀行の資産買い入れが物価上昇に波及するメカニズムはどういうものか。実際に中長期のインフレ期待に影響を及ぼすことができるか。
「伝統的な経済学の考え方からすれば、総需要を刺激する経路で効くということだろう。インフレが金融的な現象との前提に立てば、日銀は伝統的な理論にしたがってこう期待している。つまり、市場に十分な流動性を供給すれば、やがて財・サービスの価格が上昇していくだろう、と。問題はそうした理論通りに経済が動いてはいないということだ」
「金融システムが正常に機能していないからだ。経済の先行きが不透明で、家計も企業も将来に対する期待が十分持てないため、消費や投資を増やさない。それが労働市場に作用し、雇用の停滞を招いている。金融政策のみで総需要を上向かせるのは困難だ」
「金融政策の波及経路として一つ確かに挙げられそうなのが、市場を通じての経路だ。中央銀行が金融市場を支援し、下方リスクを限定する意向があることを信頼に足る方法で示せば、金融市場にとっては素晴らしいことだ」
「金融市場が好調なら、資産効果が総需要にプラスに働く。(米国で)雇用が伸びないにもかかわらず消費が非常に力強いのは資産効果によるものだ。これが金融政策が経済にプラスの影響を及ぼし得るひとつの方法だ」
「しかし、こうした資産価格のチャネルに頼る方法は非常にリスクが高い。なぜなら供給側の問題を解決しないまま、金融市場のみが好調を維持した状態が長く続くと、金融市場と実体経済のかい離が広がってしまうからだ。これは良いことではない。資源の最適な配分につながらないし、特定の市場でバブルが破裂した際、様々な深刻な影響を及ぼしかねない」
(木原麗花 編集:石田仁志)
*インタビューは3月15日に行いました。
© Thomson Reuters 2014 All rights reserved.
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPTYEA2U04E20140331?sp=true
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。