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シエラレネでの武装解除〜厄介な子供兵の扱い〜彼らは、ただ略奪すること、殺すこと、女の子をレイプすることしかやっていない/伊勢崎賢治の著作から
4章 戦争が終わっても
≪50万人を犠牲にした戦争犯罪を、平和のために赦す?≫
僕の経験において、戦争前、戦争中、戦争後のすべてにかかわったのが、シエラレネです。2001年、国連からの要請があって、戦争を終わらせるためにゲリラ組織と交渉し、銃をおろさせる「武装解除」の責任者をやってくれと言われた。1年かけて、約5万人の戦闘員を投降させ、この内戦は終結しました。
対立している同士の和解を説得するのって、簡単に言うと、時期がすべてなんだね。戦争って、初めはどちらも勝てると思っているから誰も止められない。でも、なかなか決着がつかず戦況が膠着し、このまま戦っても完全勝利はないな・・・という予感が双方の脳裏によぎったとき。こういう時じゃないと、第三者は仲介できません。
僕ら仲介者は、その予感を想像力のなかで現実的なものにする。
米国が仲介したシエラレネ政府と反政府ゲリラRUFとの停戦合意は、1999年。
この内容がすごかった。
まず50万人の一般市民を犠牲にしたという戦争犯罪を完全に赦しちゃう(ルワンダと違う)。それだけじゃなく、RUFのドンだった人物を副大統領にしちゃう…。これには国際社会がビックリした。こんなことをされては「人権」がもたないと。じゃあ、これ以外の方法があるかというと、みんな黙るしかない。…紆余曲折はあったけど、武装解除はなんとか進んだ。
僕は、人権の大切さは身に染みて理解しているつもりです。だけど同時に、人権の脆弱さも身に染みて分かっている。人権を守るための措置はダブル・スタンダードだらけだし、人権に、いわゆるユニバーサル・バリューがあるなんて、君たちに、とてもじゃないが恥ずかしくて言えない。
現在も続くシエラレネの戦争裁判は、特殊なものです。その一つが「子供兵」の問題です。
≪僕がつくった学校の生徒が、虐殺する側の兵士≫
シエラレネの内戦は、部族間の戦争ではなく「世代戦争」といえます。旧態依然の腐りきった社会をぶっ壊そうという革命が始まり、若い人たちがどんどん引きつけられていきました。革命が内戦化し、長期化の兆しが現れると、この「若さ」に歯止めが利かなくなってきた。小さい子供が使われ始めたのです。
彼らが使うのはカラシニコフという武器。発砲の反動は小さく、子どもでも使用できる。一番多かったのは君たちの年代かな。18歳は年長の方だった。彼らは親や家族もなく教育も受けず、ただ略奪すること、殺すこと、女の子をレイプすることしかやっていない。
こいつらと交渉なんて、ほんと、今、考えるとバカらしく恐ろしかった…。武装解除の説得は「上」からやります。やっかいなのは、子供兵士だけでなく、「子供司令官」もいたのです。
現在のシエラレネは、観光旅行ができるくらい「平和」です。小学校を覗いてみると、クラスの中に必ず、まわりの子らに比べて背の高いのが数人いるはずです。その子たちが、リハビリ中の元子供兵です。
シエラレネは本当に小さな国で、虐殺の被害者家族や手足を切られた犠牲者は、それをやったゲリラ兵の顔を覚えていて、その居場所もわかっちゃうのです。
次の世代の子供たち、彼らは、教室で何食わぬ顔で隣に座っているトゥのたったお兄ちゃんたちが何をしたか、知っています。そのお兄ちゃんたちは特別なケアを受けているから、血色も良くて身なりもいい。このような状況は、子供たちにどのようなメッセージを送っているのか。僕は静かな恐怖を感じます。
【出典】「本当の戦争の話をしよう〜世界の「対立」を仕切る」伊勢崎賢治/朝日新聞社‘15年
(本書は、2012年1月、福島県立福島高等学校で、5日間によって行われた講義録である)
- アフガンでの武装解除〜予想に反して、あれよあれよと進む〜「日本は美しく誤解されて」いた/伊勢崎賢治の著作から 仁王像 2017/4/15 16:06:01
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