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「シャルリとは誰か? 人種差別と没落する西欧 」エマニュエル・トッド/文春新書 ’16年
にザッと目を通した。著者は自己と仏国を冷静に見つめ直していると見る。学者を超えて求道者的でもある。ここが日本(人)との相性が良いのかも知れない。仏では嫌われているらしいが…。
著者は自国を憎んで厳しい批判をしているのではないはずだ。自国を愛するから、怜悧な学者として重い口を開いたのだろう。「没落」というのも警告を発しているのであって、望んでいるわけでなないだろう。
仏国にこのような人物が棲息できていることこそ、まだ仏に栄光の残り香があると褒めてやりたい。
≪日本の読者へ≫
(シャリル事件後、フランスではわずかな疑いも表明することは不可能だった。そこで著者は閉じこもっていた。そこに日本の複数の記者から働きかけあり、インタビュー記事が日本の新聞に載った。それがパリに逆輸入された。その記事は著者の態度が、「他者の宗教を頭から批判することには消極的な日本人の態度に近い」とあった。これがキッカケで著者は1億3千万の日本人に暗黙の支持を得たかのように思い、本書が誕生した/ここまで要約)
…事態のその後の推移も、現在のフランス社会を支配している中産階級が自己批判能力を欠き、経済的特権の中に閉じ籠り、宗教的不安によって内面を穿たれ、イスラム恐怖症にのめり込んでいるという診断の正しさを示しました。
≪序章≫
本研究は最新の精確なデータに基づいている。問題のデモについても、フィリップ・ラフォルグによる統計学的処理のおかげで、本研究は方法論的にも厳格である。
【著者略歴】
1951年生まれ。仏の歴史人口学者・家族人類学者
(以下、アマゾン書評)
・内容紹介
『シャルリとは誰か?』で私はフランス社会の危機を分析しましたが、11月13日の出来事〔パリISテロ〕は、私の分析の正しさを悲劇的な形で証明し、結論部の悲観的な将来予測も悲しいことに正しさが立証されてしまいました――「日本の読者へ」でトッド氏はこう述べています。
本書が扱うのは昨年一月にパリで起きた『シャルリ・エブド』襲撃事件自体ではなく、事件後に行なわれた大規模デモの方です。「表現の自由」を掲げた「私はシャルリ」デモは、実は自己欺瞞的で無意識に排外主義的であることを統計や地図を駆使して証明しています。
ここで明らかにされるのはフランス社会の危機。西欧先進国にも共通する危機で、欧州が内側から崩壊しつつあることに警鐘を鳴らしています。ユーロ、自由貿易、緊縮財政による格差拡大と排外主義の結びつきは、ベストセラー『「ドイツ帝国」が世界を破滅させる』にも通じるテーマで、前著の議論がより精緻に展開されています。
内容(「BOOK」データベースより)
二〇一五年一月の『シャルリ・エブド』襲撃事件を受けてフランス各地で行われた「私はシャルリ」デモ。「表現の自由」を掲げたこのデモは、実は自己欺瞞的で無自覚に排外主義的であった。宗教の衰退と格差拡大によって高まる排外主義がヨーロッパを内側から破壊しつつあることに警鐘を鳴らす。
・著者の主張の要点は、
(1) 『言論の自由』を死守するためのデモに見えたものが、実は「ユーロ経済の不平等を許容する中産階級」と「20世紀後半にカトリック信仰が希薄化した地理的周縁部の人々」のそれぞれの不安の現れに過ぎない。イスラム系移民は両者の不安のはけ口(スケープゴート)にされた。デモには都市郊外に住むイスラム系移民はもちろん、国民戦線の支持層である労働者階級も含まれていなかった。
(2) 中産階級を不安にさせている原因は、共通通貨ユーロに代表される不平等な経済システムである。ドイツ企業には好都合でもフランスには経済停滞をもたらし、そのしわ寄せは若者と移民に向かう。
(3) 移民の第2・3世代はフランス社会に同化するので、むやみにイスラム教徒を恐れる必要はない。穏健な「ライシテ(世俗主義)」で折り合いをつければ良い。
(1)について、
欧米諸国を「自由尊重−権威主義」&「平等志向−不平等容認」という2軸で分類すると、英米は不平等を黙認するリベラル、独は不平等で権威主義的、露は平等で権威主義的だという。肝心のフランスは18世紀半ばに脱カソリックした中央部(パリ盆地〜ボルドー及び地中海沿岸)は「自由・平等」的であるが、カソリック信仰が残った地理的周縁部はその逆の傾向(両者の折り合いをつけるための仕組みが「ライシテ(世俗主義)」)。
しかし、20世紀後半に周縁部でも信仰が薄れ、そのゾンビ・カトリシズムの不安感が今回のデモ参加に反映しているという。
(2)について、
同著者の「「ドイツ帝国」が世界を破滅させる」(文春新書、2015.5)に詳しい。「自由・平等」的だったはずの都市部中産階級もユーロ経済のなかで不平等を許容せざるをえなくなった。平等主義の民衆は、移民に対して、自国文化への同化(ライシテ)を望むが、エリート層による多文化主義は移民の同化を遅らせるという問題もある。
なお、学歴を背景とした中産階級にのしかかられた労働者階級は、自分たちより更に下に位置する移民を攻撃し、国民戦線FNの支持層となっている。
(3)について、
イスラム移民の2世・3世は学校でフランス文化に絶えず触れており、彼らの約半数は他のグループと結婚しているので、仏国内に「閉鎖的なイスラム社会」ができる心配などする必要はないという。他方、北東ヨーロッパでは異民族間の結婚率は低いらしい。ここでもヨーロッパがまとまろうとすることに無理があると主張する。
- エマニュエル・トッド「戦闘的無神論の拡大がイスラム恐怖症の拡大につながり」というのが目新しい 仁王像 2016/7/28 20:07:37
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