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世界一の火葬大国ニッポン、カブトムシも荼毘に 無葬社会――彷徨う遺体 変わる仏教 火葬場ルポ第2弾、新サービス競う葬
http://www.asyura2.com/12/social9/msg/728.html
投稿者 軽毛 日時 2016 年 11 月 01 日 00:06:03: pa/Xvdnb8K3Zc jHmW0Q
 

(回答先: 「あなたの体が燃やせない」 無葬社会――彷徨う遺体 変わる仏教 火葬場現地ルポ、迫り来る多死社会  投稿者 軽毛 日時 2016 年 10 月 31 日 23:20:32)

世界一の火葬大国ニッポン、カブトムシも荼毘に

無葬社会――彷徨う遺体 変わる仏教

火葬場ルポ第2弾、新サービス競う葬祭場とは
2016年11月1日(火)
鵜飼 秀徳

戸田葬祭場のペット火葬炉。空間は明るく、あまり悲壮感は感じられない。天使の乗った台座に遺体を乗せて最後のお別れをすると、台座が下に降りて火葬される。
江戸時代から続く、火葬場の歴史

 火葬場にはなぜ、公営と民間の2つの種類があるのだろう。

 全国にある火葬場の大半は、公営である。だが、東京23区に限っては9カ所の火葬場のうち、民間の東京博善が運営する施設が6つを占めている。その理由を知るには、火葬場の歴史をひもとかねばならない。

 火葬が庶民の間にまで普及し始めたのは江戸期だと言われている。江戸幕府の政策である檀家制度の下、ムラで死者が出れば、近くの寺の境内で火葬を実施することが多かった。そうした寺は「火葬寺」「火屋」などと呼ばれた。つまり、当時は寺院が、葬式、火葬、埋葬(墓)をワンストップで担っていたのである。

 ところが明治に入ると、神道と仏教を切り分ける、いわゆる神仏判然(分離)体制が敷かれる。1873(明治6)年、火葬は仏教的な葬送法だということで、神道式の土葬に切り替える火葬禁止の太政官布告が出された。

 この頃、仏教寺院は廃仏毀釈(仏教の排斥運動)の憂き目に遭っていた。堂宇が破壊され、寺領が取り上げられた。廃仏毀釈によって寺院から火葬の機能が失われ、逆に寺院は墓地経営にシフトしていく時代に入っていく。

 明治政府の土葬政策によって、都内では公共霊園が整備された。現在、都内の一等地にある大規模な都営霊園がそれだ。港区の都立青山霊園は「神葬墓地」として、火葬禁止の太政官布告を目前にして土葬墓を整備する目的で造成された経緯がある。同じく雑司ケ谷、谷中などの霊園が同様の目的で造成されていく。

 今でも青山霊園(港区)を歩けば、明治初期に造られた土葬墓を見ることができる。だが、土葬墓は広い敷地が必要で、なおかつ高い費用がかかる。伝染病予防の観点からも、土葬は敬遠され、火葬禁止はわずか2年で解けた。

東京の火葬場の多くは民間

 1887(明治20)年、実業家の木村荘平が日暮里で火葬を請け負う民間会社・東京博善を起業。戦前までに都内にあった火葬場を次々と買収していった。そして東京博善は現在、都内で6カ所の火葬場を運営する企業に成長した。

 1918(大正7)年には、全国の火葬場数が統計上最高の3万7522カ所になった。また、燃料に重油が用いられるなどの施設・運用改良によって、火葬率は飛躍的に向上していく。そして1935(昭和10)年には、全国の火葬率が50パーセントを超えた。現在では、イスラム教などの宗教教義によるものや、土葬の慣習を守り続ける一部の集落のみが土葬の風土を残しているものの、国全体の火葬率はほぼ100%だ。

 特定非営利活動法人「日本環境斎苑協会」のホームページを見ると、国際火葬連合がまとめた2010年の各国の火葬率の統計値が並んでいる。諸外国の火葬率はというと、中国は49%と火葬の割合は半分だ。英国は約73.15%、米国は約40.62%、フランスは30.09%、イタリアに至っては13.09%に留まる。

 東京博善は1992(平成4)年、出版社の廣済堂の傘下に入った。現在、火葬場を新設できるのは1968(昭和43)年の旧厚生省通達によって、自治体と宗教法人のみとされている。だが東京博善は戦前からの権益の流れにより、都内における火葬の牙城を守り続けているのだ。都内の公営火葬場は23区内で2カ所(臨海斎場、瑞江葬儀所)のみにとどまる。東京博善以外のもう一つの民間斎場は、板橋区・荒川沿いにある戸田葬祭場だ。

 「公営に比べて民間は火葬のスピードも速いですが、それはそれで、別のジレンマを抱えることになります」

 火葬場事情に詳しいある研究者は語る。

 現在、東京博善では来る多死社会を前に、火葬場のリニューアル工事を実施中だ。目下、葛飾区の四ツ木斎場を休館して全面建て替えを行っており、2016年12月に再オープンする。

 「今後、火葬需要はより高まることが予想されます。東京博善や戸田葬祭場にとっては大きなビジネスチャンスのように思えますが、必ずしもそうではないのです。昨今の家族葬や直葬など葬式の簡素化の流れの中にあって、火葬場を訪れる会葬者が減っています。すると火葬場の収入源であるレストランや売店の売り上げが伸びない。同時に火葬ラッシュ時代ですから、火葬時間を可能な限り短縮しなければならない。拾骨までの時間が短ければ、それもレストラン利用が減る原因になります。葬式の簡素化と多死社会の到来で、一会葬当たりの売り上げ単価が下がってきています」(前出の研究者)

 そこで民間斎場では、施設をより高級化して、会葬者の売り上げ単価を上げる試みが行われている。

付加価値サービスに乗り出す民間斎場

 日本で屈指の火葬件数を誇る東京都板橋区の戸田葬祭場のケースを見てみたい。横浜市南部斎場を訪れた1カ月後、戸田葬祭場を取材した。

 戸田葬祭場は年間火葬数がおよそ1万4000体に上る、日本でも屈指の巨大斎場である。火葬炉は全部で一五基ある。南部斎場とはまた趣が異なり、和風の落ち着いた雰囲気が特徴だ。玄関ドアを開けると大きな観音像が出迎えてくれる。

 そこから会葬者は、いったん中庭に出る。枯山水の見事な日本庭園を横目に回廊を歩いて行くと、火葬棟へと誘われる。一転、火葬棟の内部は厳かな空気が支配する。目線の向こうに火葬炉の扉が見えてきた。天井からはシャンデリアが下がり、音楽ホールのような荘厳な佇まいである。

 「ここは戸田葬祭場でも最もグレードの高い特別殯館と呼ばれる火葬炉です。特別殯館の会葬者は他人と鉢合わせになることはありません。1日3体のみ受け付けています。静かに時間をかけてお別れをしたい会葬者の方にここをお使いいただいております」

 戸田葬祭場の担当者はこう説明する。

 拾骨する部屋も広々している。つい先ほどに火葬された後の、真っ白な残骨灰が、まだ拾骨台に残されていた。

 このホスピタリティの高さは、公営斎場には見られないものだ。戸田葬祭場では、火葬炉に三種類のグレードを設けている。

 特別殯館の利用料は17万7000円。その下の特別室(全五基)は10万7500円だという。一般の火葬炉(全八基)は5万9000円となっている。

 南部斎場では、市の一律料金1万2000円で火葬してくれるから、官民ではずいぶん価格差がある。

 戸田葬祭場の担当者は明かす。

 「火葬の原価は、燃料やメンテナンス、光熱費、人件費などで一体当たり6万円から7万円ほど。公営のように一律料金ならば、とうてい赤字です。民間火葬場で採算を取っていくには、炉にグレードの差を設けるなど、付加価値を高めてやり繰りしていかなければならないのです」

 確かに横浜市の場合でも、市外の人が利用する際の料金は5万円と、一気に跳ね上がる。公営の火葬場は、住民サービスの一環として税金が投入されている分、安価にできるのだ。

 だが、戸田葬祭場の場合は民間ビジネスとして成立させなければならない。戸田葬祭場では貸し葬儀式場、有料霊安室、有料待合室、散骨用の粉骨サービス、手元供養、飲食店などの様々な付加サービスを加えて、収益を確保しているのが実情だ。そして戸田葬祭場で、新たなる収益源になりつつあるのがペット火葬である。

急成長するペット火葬

 ペット葬は、全国の火葬場で近年、需要を伸ばしている付加価値サービスである。一昔前までは、ペットが死ねば自治体に引き取ってもらうことがせいぜいで、田舎では庭先や裏山に埋めたものだ。

 だが、今やペットは家族同然だ。ここ10年ほどでペット葬の専門業者が次々と出現してきている。ペット葬業者の場合、多くは火葬炉を積んだ軽トラックで回収し、走らせながら火葬する。だが、中には回収したペットの遺体を火葬せずに、山の中に投棄するような悪徳業者も出てきている。その点、人間の火葬場であれば、丁重に荼毘に付してくれるのではという安心感が依頼主にはある。

 戸田葬祭場に併設されているペット火葬場には予備炉を含めて3つの炉があり、人間の火葬炉に勝るとも劣らぬ立派さである。明るく広々とした室内に台座が置かれている。ここで「最後のお別れ」を済ませると、台座ごとエレベーターで地下へと下がっていく。遺体はぐるっとバックヤードに回り込み、そこで火葬される。火葬炉の仕組みは人間とほぼ同じだ。火葬後は再び、台座に戻ってくる。

 「火葬されるペットは犬や猫だけではありません。小鳥やハムスターなどの火葬はよくあります。こうした小動物でも火力を調整すれば、きちんと骨にでき、お骨を拾えます。しかし、先日はある若い女性が、飼育されていたカブトムシをお持ちになられたことがありました。さすがに、カブトムシは骨にすることができませんが……」(ペット火葬担当者)

 冗談のような話だが、昆虫の火葬に関しては、筆者は関西のあるペット専用霊園を取材した際にも聞いたことがあった。そこで聞かされたのは、帰省してきた孫に頼まれて、祖父母が孫を連れてカブトムシを火葬しに来たケースだった。

 普段は都会に住んでいて、夏休みにしか孫は帰省してこない。祖父母の家で飼っていたカブトムシが死んだ際、「おじいちゃん、カブトムシが死んだから人間と同じようにお葬式してあげて」と孫が言う。

 祖父母にしてみれば、年に1度しか帰ってこない孫の頼みはなるべく聞いてやりたい。孫かわいがりで、祖父母が火葬場に連絡をしてくるのだ。

 ペット葬からも、日本の都市化、核家族化が透けて見えるようだ。いずれにせよ、人間の葬送の形態が縮小していくのと反比例して、ペット葬産業のほうは肥大化している実態がありそうだ。

「火葬船」の構想も

 少々脱線したが、話を人間の火葬場に戻したい。火葬場では民間と公営とでは運営の仕方が異なる。それぞれにジレンマを抱えているようだ。

 公営斎場は、利用料は安いが、設備面は民間に比べて分が悪い。運営の原資が税金であるため、施設の改良が難しいのだ。炉は1基当たり1億円以上する超高額商品だ。壊れてもいないのに、最新の炉に買い替えるための予算を確保することは現実的には難しい。

 そのため、横浜市では炉内のレンガをこまめに修繕することで炉の長寿命化を図っている。しかし、使用頻度が高まれば、炉への負荷が高まり、耐用年数が短くなる。炉の火力を強めれば、より早く骨灰にすることは可能だと思われるが、骨が傷んでしまう。箸で骨を拾えるように、「美しく焼く」には職人技が必要だ。

 公営火葬場の場合、炉も増やせず、火葬の回転数を上げられないジレンマに陥っているのである。

 こうした火葬場設置のジレンマを解消する斬新なアイデアとして、長年、議論されてきているのが「船上火葬」である。船上火葬は、炉を備えた船の上で火葬する方法で、大正時代には火葬船葬禮株式会社という企業が警視庁から認可を受けた。

 だが、最大のネックは沿岸の漁師や港湾関係者の反対で、これまで実現には至っていない。現在も船上火葬の可能性を探るべく、シンポジウムなどが開かれてはいるが、具体化に動き出した例はない。

小松市や加賀市は「里帰り火葬」を呼びかけ

 首都圏の火葬場の混雑を避けるため、故郷に遺体を移して火葬しないか、と呼びかけている自治体もある。石川県小松市と加賀市では小松加賀環境衛生事務組合が音頭を取り、2015年夏から「ふるさと火葬」を始めた。地元の火葬場「小松加賀斎場さざなみ」では、小松空港から車で数分という地の利を生かして、主に羽田空港経由での棺の空輸を受け入れる。

 空路で首都圏から遺体を運ぶには15万円程度のコストがかかるが、故人をずっと霊安室で待たせている、という遺族の心理的な負担が解消されるメリットもある。しかし、長距離移動の煩わしさなどの問題があり、利用者はほとんど現れていないのが実情だ。

 2016年3月、小松市出身で首都圏で亡くなった男性が、ふるさと火葬を利用した第一号になったが、この場合は、故人が故郷での葬儀を望んだからだという。

 大都市に出てきた人たちの中で、死後にあまり執着しない人は多い。あっさりと肉体や魂が消えてほしいと願う。だが、肉体を消すのですら、そうは簡単にいかない時代が到来しつつある。

=敬称略=

本記事をもっと読みたければ…
『無葬社会――彷徨う遺体 変わる仏教』

鵜飼秀徳著/日経BP/1700円(税別)
遺体や遺骨が彷徨う時代――。既に日本は死者数が出生数を上回る「多死時代」に突入した。
今後20年以上に渡って150万人規模の死者数が続く。
遺体や遺骨の「処理」を巡って、死の現場では様々な問題が起きている。
首都圏の火葬場は混み合い「火葬10日待ち」状態。
遺体ホテルと呼ばれる霊安室ビジネスが出現し、住民運動が持ち上がっている。
都会の集合住宅では孤独死体が続々と見つかり、スーパーのトイレに遺骨が捨てられる――。
「無葬社会」が、日本を覆い尽くそうとしている。
そこで僧侶や寺はどう向かい合えばいいのか。
「イエ」や「ムラ」が解体され、墓はどうなる?
現代日本における死のかたちを通して、供養の意義、宗教の本質に迫る。
『寺院消滅〜失われる「地方」と「宗教」〜』の著者、渾身の第2弾。

このコラムについて

無葬社会――彷徨う遺体 変わる仏教
「多死時代」に突入した日本。今後20年以上に渡って150万人規模の死者数が続く。
遺体や遺骨の「処理」を巡って、いま、“死の現場”では悩ましい問題が起きている。
首都圏の火葬場は混み合い「火葬10日待ち」状態。
遺体ホテルと呼ばれる霊安室ビジネスが出現し、住民運動が持ち上がっている。
都会の集合住宅では孤独死体が続々と見つかり、スーパーのトイレに遺骨が捨てられる――。
原因は、地方都市の「イエ」や「ムラ」の解体にある。その結果、地方で次々と消える寺院や墓。
地方寺院を食う形で、都市部の寺院が肥大化していく。
都心では数千の遺骨を納める巨大納骨堂の建設ラッシュを迎えている。だが、そこに隠される落とし穴――。
日本を覆い尽くさんばかりの「無葬社会」の現実。
現代日本における死のかたちを通して、供養の意義、宗教の本質に迫る。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/book/16/102400002/102800004/01.jpg
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/book/16/102400002/102800004/   

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