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アベノミクスに群がる外資  金融市場が異常な活況  欧米に続く国債バブル  長周新聞
http://www.asyura2.com/12/hasan78/msg/887.html
投稿者 愚民党 日時 2013 年 1 月 16 日 22:24:43: ogcGl0q1DMbpk
 

http://www.h5.dion.ne.jp/~chosyu/abenomikusunimuragarugaisi.html

アベノミクスに群がる外資

金融市場が異常な活況
                欧米に続く国債バブル      

2013年1月7日付

 安倍自民党政府が無制限の金融緩和政策や、10年間で200兆円の公共事業を実行する政策を打ち出したのにともなって、「アベノミクス」(安倍+エコノミクスの造語)バブルが発生し、金融市場が異様な活況を呈している。年初の大発会から東京市場では日経平均株価が292円高の1万688円をつけ、外国為替市場では円売り・ドル買いによって急激な円安があらわれている。東証の時価総額のうち、ヘッジファンドや海外投資家が占める割合は7割まで高まっているといわれている。サブプライムローン危機や欧州危機を経て行き場を失ったマネーが投機を目的にして日本市場に再び流入しはじめ、日銀が量的緩和でバラ撒くマネーを食い物にしていくことや、この間低迷していた株を買い上げて、今度は高値になった段階で売り抜けるという、破綻したマネーゲームの延長戦を懲りずに繰り広げている。
 
 投機目的に日本市場に流入

 日経平均は4日の東京市場で292円高の1万688円をつけた。「円安への期待」という格好で、輸出企業の株が主に買われた。解散総選挙で自民党政府が返り咲く過程で、紙屑同然だったシャープ株や、原発事故で同じく低迷していた東電株などが買いあさられていたのも特徴だった。輸出企業の多くは昨年から海外移転や国内労働者のリストラなどを敢行。こうしたお買い得と見なされた安い株を買い占めていたのがヘッジファンドで、散散空売りをしかけた後には、手のひらを返して買いに走っていた。そのため、衆院解散が決まってから日経平均株価は2000円近く上昇。ヘッジファンドに追随する形で、その後は海外の投資家や年金基金が買いに入っているとされている。

 外国勢がこれだけ日本株を買い占めるのは、ウォール街が郵政選挙と小泉改革を大歓迎した2005年以来の出来事となった。底値で仕込んでおいて、高値で売り浴びせる手法は過去にも経験してきたことだ。

 東京証券取引所が毎週まとめている投資部門別株式売買状況で明らかになっているだけでも、昨年11月以降に海外のヘッジファンドや投資家が買い越している金額だけで2兆円近くに達し、それが日経平均1万円突破の最大要因となっている。

 また、株式市場だけでなく4日の外国為替市場での円相場は1時1j=88円台半ばまで下落。90円に迫る勢いを見せた。安倍政府が円高是正を打ち出しているのに加えて、「財政の崖」騒ぎをやってきた米国で量的緩和に早期打ち切り観測が浮上したことによって、米国で長期金利が急上昇し、そのことで円売り・ドル買いに拍車がかかったとされている。米国10年国債の長期金利が2%に迫った要因としては、リーマン・ショック以後、FRBが米国債などを大量購入する量的緩和を繰り返してきたものの、3日に発表されたFRBの委員会議事要旨のなかで、複数の委員が「量的緩和第三弾(QE3)を早く打ち切るべきだ」と見解を示していたことが明るみになったのがきっかけだった。市場では米国債の価格が下落すると見込んで米国債売りがあらわれ、その分利回りが上昇。日米間の状況を反映した「円安」となった。

 国家破綻の危機も 国債も中央銀行が買い取り 近づく「限界」

  サブプライムローンが破綻した後、2008年には米国を震源地にしたリーマン・ショックが起き、それが欧州ソブリン危機に飛び火するなかで、アメリカでは中央銀行にあたるFRB(米連邦準備制度理事会)が量的緩和を実施し、ジャブジャブのマネーを市場に供給。後は野となれのインフレ政策に走って、危機を先送りしてきた。おかげで米国金融市場や商品市場は説明がつかないほど高値の相場を維持してきた。

 欧州でもECB(ヨーロッパ中央銀行)が南欧各国のジャンク国債を無制限に買いとると発表し倒産しかかっている欧州の大銀行が抱えているギリシャ、スペイン、ポルトガルといった破綻国家の国債を中央銀行が引き受け、紙屑を買い取る格好でマネーを供給し、ユーロ暴落をなんとか食い止めてきた。ドルやユーロを輪転機で大量に刷って金融市場にばらまき、その溢れかえったマネーで金融機関の焦げ付きを肩代わりして破綻を先送りしてきたにすぎない。

 日本もこの国債バブルを真似して通貨を膨張させ、デフレ脱却というより将来的にはハイパーインフレすら起きかねないコースをたどろうとしている。自民党が「日銀法改正」を掲げているのも、大きくは金融統制に向かっていることをあらわしており、日銀をFRBやECBのような機関にするという狙いも含まれている。

 さしあたり、安倍晋三が主張する「デフレ脱却」や「経済成長」を実現するためには、TPP参加や企業の海外移転・グローバル展開、さらに構造改革や規制緩和を徹底的に実行せよという論調がエコノミストや経済界、外資の共通した要求となっている。
 アベノミクスとかかわって表舞台に登場してきたのが安倍内閣の内閣官房参与に就任したイェール大学の浜田宏一や、日銀の次期総裁候補にまで名前を連ね、再びテレビ番組に出演し始めた竹中平蔵、財務省のアメリカ代弁者といわれる武藤敏郎のような小泉改革の首謀者たちで、経済破綻を引き起こした原因である新自由主義改革を更に徹底する方向に進み始めている。今年からは復興所得税等の増税がはじまり、社会保障の切り捨てや国民負担の増大が次から次へと迫っている。このなかで一方では国債バブルによるゼネコン事業や金融市場へのバラマキが始まろうとしている。

 ただ、「打ち出の小槌」のように取り沙汰されている国債発行も、度外れれば度外れるほど国家破綻につながっていくことは、欧州危機が示している。日本の国家債務は1100兆円にもなり、もはや大盤振舞する余裕などない。35兆円の国家債務でデフォルトしたギリシャの比ではない。ところが、世界有数の借金大国でありながら、お金がないなら刷ればいいというのがアベノミクスの特徴で、日銀の国債買い取りが取り沙汰されてきた。

 米国や欧州各国と違って、これまで日本国債は国内の金融機関が預金者のお金を原資にして買い取ってきた。ゆうちょ資金などはその代表格だ。国民の金融資産といわれる約1400兆円に対して国債発行残高は1000兆円を超え、その九割を国内金融機関が人人の預金を使って買いとっている。銀行が買いとれるうちはまだしも、国民の個人金融資産も目減りしているなかで、いずれ限界が来ることは以前から指摘されてきた。国債の中央銀行買いとりがこの時期に出てきたことは、国内で消化できないこと、国民の金融資産をみな食いつぶして「限界」が近づいていることを示している。最近では外資も100兆円近く日本国債を購入しており、国債暴落局面を作り出して売り浴びせていくことすら懸念されている。

 国債を大量に発行すれば、国の赤字、債務はさらに膨らんでいく。赤字が膨らみ続けて国債の信頼が失墜したときは、国債の買い手が見つからず、国債の長期金利が暴騰し、例えば1000兆円の国家債務に対する利払いが1%上昇しただけで年間10兆円の支払いが上乗せされ国家財政がパンクすることになりかねない。現実に、無制限の金融緩和を打ち出した安倍政府発足と歩調を合わせるかのように、日本国債の長期金利は上昇し始め、年末段階で30年物国債金利は1・98%にまで上昇し、2%台突破も視野に入れる動きを見せている。

 この間、欧州危機で紙屑同然となったギリシャ国債などは八%台などを推移し、国家破綻で買い手が付かないために法外な利率を記録してきた。いざ買い手がついて国債を発行できても今度は高い利率のおかげで利払いに苦しみ、国家運営がままならない事態へと向かった。米国も欧州でも「国債バブル」で急場をしのいできた先進各国の国債金利が昨年末から上昇しはじめ、世界的に国債売りが顕在化している。そして一方では、理解し難い株高現象が起きている。実需にお構いなく、マネーが世界をさ迷っているのである。

 実需伴わない金融博打 国民生活は窮乏化

 国家債務を雪だるま式に膨らませてきた張本人である自民党が、再び借金によるゼネコン政治、バラマキを復活させるだけでなく、日銀のマネーを世界中に大盤振舞して、米国債を買いとったり、ヘッジファンドの食い物にさせる方向があらわれている。小泉改革によって空前の好景気といわれながら、国民生活は窮乏化したのと同じように、安倍バブルではしゃいでいるのももっぱら金融業界や輸出企業であり、実需が伴わない金融博打の世界が活況を呈している。

 国の借金はさらに巨額なものになり、おかげで財政削減や福祉切り捨てが国民生活に背負わされ、遠慮のない消費増税がやられる。インフレ目標も物価だけが上がって賃金は上がらず、それどころか企業の海外移転によって雇用すら奪われる状況にますます拍車がかかろうとしている。

 気狂い沙汰の金融緩和がいずれ破綻することは明らかである。最後の大散財・ニューディールをやった後、戦争に突っ込んでいったのが70年前の第2次世界大戦だった。最終的には第2次大戦後に「リセット」したのと同じように、戦争という非常時のどさくさに紛れて過酷なインフレによって国民の金融資産、銀行に預けている預金等を無価値にさせたり、預金封鎖や通貨切り下げ(デノミ)といった国による国民資産の巻き上げ(国家債務の帳消し)すらやりかねない情勢を物語っている。

 世界資本主義の破綻のなかで経済のブロック化が台頭し、そのなかで日本社会を巡っては中国包囲網としてのTPP参加を米国から迫られ、対中戦争の鉄砲玉にされかねない緊張が高まっている。大恐慌が深刻になり、世界的な争奪戦が激化するなかで、アメリカを救うために日本を食い物にし、戦争の盾にするというものである。外資が食い物にするアベノミクス、日米軍事同盟の強化は切り離れたものではなく、資本主義の行き詰まりと戦争の危機に対して全国民的な斗争が迫られている。為政者に国民生活を心配する者など一人もおらず、人人はたたかわなければ生きていけないことを示している。

http://www.h5.dion.ne.jp/~chosyu/abenomikusunimuragarugaisi.html
 

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コメント
 
01. 2013年1月17日 02:35:58 : KjDe3Re6QA
JBpress>日本再生>日本経済の幻想と真実 [日本経済の幻想と真実]
アベノミクスで始まった「日本売り」
円安で喜んでいるのは今のうちだ
2013年01月17日(Thu) 池田 信夫
 円安・株高が急ピッチで進んでいる。特に平均株価はバブル経済絶頂期の1989年以来の9週連続の上昇で、株式市場は「アベノミクス景気」に沸いているが、この相場は普通の経済理論では説明できない。

 2012年11月のコラムでも指摘した通り、金利がゼロに張りついている現状では日銀が物価を上昇させる手段はない。財政支出の効果が乏しいことも、前の自民党政権末期に証明済みだ。ではなぜ為替と株が大きく動いているのだろうか?

安倍首相は奇蹟を起こしたのか

 これについてプリンストン大学教授のポール・クルーグマンが興味深い考察をしている。安倍晋太郎首相は無知なので他の国の首脳のようにインフレ政策のリスクを心配せず、結果的に大胆な政策が取れるというのだ。

 安倍晋三は、驚くべきケインズ的な政策で日本を浮揚させた。彼の政策[公共事業や日銀に対する圧力]は古い自民党の地元利益を追求する汚い目的で行われたものかもしれないが、それは問題ではない。[中略]インフレ予想を起こすことによって、安倍は劇的な変化をもたらしたのだ

 彼は15年前に「日銀はインフレ予想によってデフレを解決できる」という論文を書いたのだが、それは実現しなかった。日銀は量的緩和で世界最大級の通貨供給を行ったにもかかわらず、デフレが続いてきた。

 アメリカでも同じ現象が起こり、FRB(連邦準備制度理事会)がバランスシートを3倍にふくらませたのに、景気回復もインフレも起こらなかった。このためクルーグマンは、最近はもっぱら大規模な財政政策を主張している。

 円高が続いた最大の原因は、デフレによって円の価値が相対的に上がったことだが、日銀がいくら追加緩和してもインフレにならないので円高も是正できなかった。ところが安倍氏は、わずか1カ月で日銀の見果てぬ夢だった円安とインフレを実現した。彼は奇蹟を起こしたのだろうか?

1ドル=110円になってもおかしくない

 日本の専門家の多くは、そう見ていない。次の図のようにインフレ率の差などを勘案した実質実効為替レートで見ると、2008年まで毎年3%ぐらいずつ下げていた円が「リーマン・ショック」の影響でトレンドから外れたことが分かる。

ドル/円の名目為替レート(緑)と実質実効為替レート(赤)、日銀調べ
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 これまで円が割高だったのは、ユーロ危機で投機筋がリスクを避けるリスクオフのモードだったためと言われる。ギリシャなどの財政が破綻するとユーロが暴落するので、比較的安全な円に逃避したのだ。

 それが2012年後半にECB(欧州中央銀行)が各国の財政支援を約束したことで、一時的に財政破綻の危機が遠のいた結果、円やドルからユーロに資金が環流するリスクオンに変わった。それがたまたま安倍内閣の誕生と重なったのだ――というのが多くの市場関係者の見方である。

 上の図の破線のように1999年以降のトレンドを延長すると、実質実効レートは今より2割ぐらい下げてもおかしくない。つまり1ドル=110円ぐらいになる可能性があるのだ。

 その原因は、日本の経常収支の悪化である。2012年11月の経常収支は2224億円と、史上2番目の赤字になった。これは原発の停止に伴う燃料輸入の増加などの一時的な要因もあるが、貿易赤字はすでに定着しており、所得収支(金利・配当など)を加えた経常収支が赤字基調になることもそう遠い将来ではない。

 変動為替相場は経常収支の不均衡を為替の変動で調整するためにできた制度だが、外為市場で動く資金の大部分は投機資金で、貿易決済は1%しかないため、為替レートに影響するのは金利と物価である。日本の物価上昇率はアメリカより2%ぐらい低いので、短期的には円高になりやすく、これが上の図で名目レートと実質実効レートの差になる。

 このように為替レートを決める要因は短期と長期で異なり、心理的な要因と経済的な要因が混在しているので、合理的に決まるわけではないが、大ざっぱに言うと短期的には心理的な要因が大きく、長期的にはファンダメンタルズを反映した合理的な水準に収斂してゆくことが多い。

円安で日本人は貧しくなる

 こう考えると安倍首相の一連の発言は──彼の意図とは別に──短期的な鞘取りから長期的な経済力に応じた評価への「レジームチェンジ」を促したと考えることもできよう。それは日本の製造業の国際競争力の低下による日本売りである。

 経常収支が赤字になると通貨が弱くなり、輸出産業は息を吹き返す。日本の製造業にとっては円安は歓迎だろう。これによって輸入品が値上げされれば、インフレも起こる。しかしそれは本当にいいことなのだろうか?

 日本の化石燃料輸入額は年間20兆円を超えるので、1ドル=110円になるとほぼ4兆円増える。これだけでGDP(国内総生産)が0.8%吹っ飛び、金融緩和の効果を打ち消してしまうだろう。

 さすがに甘利明経済再生相は「過度な円安は輸入物価にはねかえり、国民生活にとってはマイナスの影響も出てくる」と発言し、ドルは一時的に88円台に下がった。安倍氏は気づいていないだろうが、円が弱くなるのは日本人が貧しくなるということなのだ。

 資産家はすでに外貨に資金を移動し、金や不動産などの実物資産も大人気だ。こうした資産バブルとその崩壊で何が起こるかは、日本人も1980年代に体験した。あのときも「円高不況」を是正するために日銀が過剰な低金利を続けたのが原因だった。

 さらに今度の補正予算のようなバラマキ財政を続けていると、そのうち長期金利が上昇するだろう。そのとき日銀が国債を買うと、市場は「財政が危ない」と見て、かえって国債が暴落して金利が暴騰するおそれがある。これが国債バブルの崩壊である。

 クルーグマンが「安倍の暴走は結果的には正しい」と言うのは、今のところ長期金利が落ち着いているからだが、まぐれ当たりはいつまでも続かない。日銀の独立性を奪って政治家の財布に使うと、日銀はこうした危機をコントロールすることもできなくなるのだが、安倍氏はそれに気づいているのだろうか。

コラム:「1ドル90円」を阻む反動の正体=亀岡裕次氏
2013年 01月 16日 16:00
亀岡裕次 大和証券 チーフ為替ストラテジスト(2013年1月16日)

この3ヵ月余りの間に対ドルで10円以上の円安が進行した。この大部分は、政府・日銀が連携したデフレ・円高対策への期待によるものと言えるだろう。

2%のインフレ率や3%の名目成長率を目指し、政府が公共投資などで需要を喚起しつつ、日銀が量的金融緩和を強化するとの見通しが、円供給拡大期待やリスク選好効果による円安を招いた。最近10年間の平均で消費者物価指数(CPI)の前年比がわずかながらマイナスの日本が、2%のインフレ率を達成するのは容易ではない。だからこそ、日銀はこれまで以上に大規模な量的緩和が必要になり、それによって円安が引き起こされるとの期待を連想させたのだろう。

また、この数ヵ月間、世界的にリスク選好に傾いたことも円安を促進した。低金利通貨である円は、もともとリスク選好下で最も売られやすい通貨だが、政策効果による円安進行への期待が増したために、なおさらリスク選好下で売られやすくなった。ドルは円以外の通貨に対しては総じて下落しており、決して「ドル高」ではない。リスク選好下での「円安」と言う方がふさわしい。つまり、円は金融緩和強化への期待とリスク選好の複合効果によって下落したのである。

<政策期待はピークアウトか>

しかし、円安進行は短期的には一服する可能性がある。第一には、日銀の金融緩和への期待がさらに膨らむとは考えにくいからだ。

資産買い入れ基金を増額しても、日銀が民間金融機関から資産を買い入れるペースには限界がある。たとえインフレ目標の達成や雇用拡大が見込まれるまで「無制限に資金供給する」として資産買い入れを拡大していくとしても、期限を設けずに買い入れ期間を延ばす方式となるだろうし、買い入れペースを無尽蔵に拡大できるわけではない。また、「貸出増加を支援するための資金供給」は、あくまでもそれを希望する金融機関に対するものであるから、やはり資金供給増には限界がある。

1月21―22日の日銀金融政策決定会合で「2%のインフレ目標」が導入される可能性は高いが、現実的に考えると、「今後2年以内」などの具体的な目標達成期間を設けて、それが達成できない場合に日銀が責任を負うようにする可能性は低い。米連邦準備理事会(FRB)の「インフレ率の長期的なゴール」のように「中長期的なインフレ目標」とし、責任はあくまでも説明責任にとどめるのではないか。

中長期的にはインフレ期待がある程度高まることで通貨安要因となる可能性はあるものの、短期的に円供給が急増してインフレや通貨安を招くとの期待はピークアウトし、金融緩和強化期待による円安が一服すると考えられる。

<一時的にリスク選好の後退も>

円安一服につながる第二の理由は、リスク選好が一時的に抑えられる可能性があることだ。

米「財政の崖」は大部分が回避されたが、すべてが回避されたわけではない。給与税減税打ち切り(税率2%上昇)、富裕層増税(年収40万ドル超の個人または45万ドル超の世帯の所得税率、キャピタルゲイン・配当税率、遺産・贈与税率の引き上げ)などにより、米国経済に1000億ドル超のマイナス効果が生じるとみられる。

一方、大きな崖が回避されたことで、抑制されていた投資や雇用が顕在化するプラス効果もあろうが、効果が拡大するのは、2カ月延期された歳出強制削減や債務上限引き上げの問題が解消されてからだろう。13年当初はマイナス効果がプラス効果を上回り、米経済はやや減速する可能性がある。

世界的に12年10―12月期は経済指標の実績が予想を上回る傾向となり、ポジティブ・サプライズがリスク選好に作用したが、13年1―3月期は米経済指標の改善傾向が弱まることとなり、ネガティブ・サプライズがリスク回避に作用する可能性もある。日本のように公共事業への財政支出拡大が景気回復に働く国もあるだろうし、すべての国で経済指標が鈍化するわけではないにしても、米国などのリスク回避の動きが低金利通貨の円を買う(円高)要因になるだろう。

つまり、急速に進行した円安は、「日本の政策期待拡大の反動」と「ミニ財政の崖による米景気鈍化」により、一時的に調整されることになるのではないか。

ドル円との相関が高いドル1年OIS(オーバーナイト・インデックス・スワップ:一定期間の翌日物加重平均金利<複利>と固定金利を交換する金利スワップ取引)金利の現水準からみると、ドルは76―84円にあるケースが多いが、実際には89円台まで上昇した。米金利の変動が小さいなかで、政策期待などによって円安が進み、5円以上の円安プレミアムが生じた。

ドル円の200日移動平均値から標準偏差の2倍分だけプラスに乖離した水準は88円台半ばであり、それを大きく超える確率は低いと考えられる。今後、デフレ・円高政策への期待が消えてしまうことはないにしても、期待による円安が後退する可能性とリスク回避で円高が進む可能性を考慮すべきだろう。

<中長期では1ドル=100円台も>

特に1―3月期の米景気減速を織り込む2月、3月頃には、円安が進みにくいだろう。当面のドル円は、85―90円程度のレンジで推移するのではないか。しかし、その後は米景気回復とともに再び円安基調が明確になると考えられる。米財政の不透明感解消のプラス効果が増税のマイナス効果を上回るようになる可能性が高いことに加え、資産効果(住宅価格や株価の上昇)による個人消費の拡大も期待できるからだ。リスク選好(資産効果)と景気回復が相乗作用を及ぼしながら強まっていき、円安が進むだろう。

雇用改善が進むにつれて、失業率が14年末までに6.5%を下回るとの観測が高まり、13年後半にはFRBが資産買い入れを緩和あるいは停止し、14年末までに利上げが行われるとの期待が生まれる可能性が高い。1年後の利上げが予想されるとともに、ドル1年OIS金利が0.3%(円1年OISとの差が0.25%)に上昇し、ドルは95円程度に達することになろう。

日米購買力平価からみれば、中長期的には1ドル=100円に達する可能性も十分にある。米国において、エネルギーコストの低下による成長率の高まり(物価上昇の抑制)や、エネルギー輸入減少による貿易収支の改善があれば、
なおさらドル高・円安が進みやすいだろう。

*亀岡裕次氏は、大和証券の投資戦略部担当部長・チーフ為替ストラテジスト。東京工業大学大学院修士課程修了後、大和証券に入社し、大和総研や大和証券キャピタル・マーケッツを経て、2012年4月より現職。

コラム:「1―2%インフレ」なら株価はどこまで回復するか=竹中正治氏 2013年1月11日
為替こうみる:目先円安一服も、中長期的には円安基調変わらず=大和証 亀岡氏 2013年1月16日
今日の株式見通し=続伸、円安基調続き1万1000円の節目を試す展開に 2013年1月15日
シドニー外為・債券市場・中盤=豪ドルは対円で4年ぶり高値、債先まちまち 2013年1月15日


 ■ 中島精也 :伊藤忠商事チーフエコノミスト

アベノミクスの3本の矢は、短期的な施策として、1本目の矢の「大胆な金融政策」
と2本目の矢の「機動的な財政政策」を実施することで、経済低迷の原因である円高
とデフレからの早期脱却を実現すること、更に長期的視点から3本目の矢の「民間投
資を喚起する成長戦略」を実行することにより、一過性の景気回復でなく、潜在成長
率の押し上げを通した強い経済を実現することで、持続的な経済成長を目指していま
す。

このようにアベノミクスは金融、財政、成長戦略と、スタンダードな経済政策のメ
ニューを一応網羅しています。本質的には新しいものはないのですが、同じメニュー
でもシェフが替れば料理の味付けが異なるように、従来の政策とは異なる政策運営を
行う方針です。その典型が金融政策でしょう。安倍政権は金融政策を日銀の自主性に
任せず、政府との協定(アコード)の形をとり、インフレ目標2%を日銀に押し付け
るようです。日銀のやれることはマネーの量を増やすことしかないわけですから、従
来よりも日銀にもっとマネーを供給しろ、と命じるわけです。

しかし、前にもJMMで書きましたが、教科書的にはマネーを出せば、貸し出しが伸
びて、インフレ期待が高まり、景気が上向くと書いてありますが、我々が直面してい
る現実の経済はそんなに単純ではありません。すなわち、現状の日本経済のように成
長期待が著しく低い経済では、マネー供給を増加させたところで、企業が設備投資を
やりませんので、需要の喚起に至らず、結果的にこの教科書的なルートではインフレ
を加速させるのは至難の業です。

よって、インフレの道筋としては円安を通じた輸入インフレによる、コストアップ型
のインフレが最も手っ取り早いわけです。けど、グローバル競争で賃金が上がりにく
いのは周知の事実でしょう。仮に一歩譲って、景気が良くなるにしても賃金は遅行指
標ですので、インフレ加速が賃金上昇に先行するとすれば、実質賃金はダウンし、景
気に逆効果となります。こうなると、本末転倒です。

よって、金融政策の効果が限定的であるという現実を無視して、マネー教条主義に
陥って、マネーをもっと出せ、と叫ぶのは百害あって一理なしかと思います。日銀は
すでに経済が必要としている以上に潤沢にマネーを供給しているわけですから、経済
のバランスを歪めるような緩和政策を押しつけてはいけないと思います。

次に、機動的な財政政策の目玉は5兆円の公共事業ですが、識者の多くは土建国家へ
の先祖がえりを危惧しています。もちろん、笹子トンネルの痛ましい事故を教訓に、
老朽化したインフラ設備の更新投資など、防災・減災の公共事業が必要不可欠である
のは言うまでもありません。しかし、緊急経済対策で、防災・減災対策と銘打って、
これまでの公共事業削減方針からの転換が打ち出されたことで、これに便乗して高速
道路のレーン拡充など従来型の公共事業を計画の中にすべりこませる動きがあるのは
確かでしょう。これだとメニューの中身を変えたつもりが、実際の味付けは以前と同
じだったということになりかねないのです。

甘利大臣は民主党のバラマキ路線が自民党の新しいバラマキになってはいけないと強
調していますが、どこまでチェックが効くのか未知数としか言いようがありません。
従来型の公共事業に先祖がえりすることのなきよう、ジャーナリズムを筆頭に国民自
身が厳しくチェックしていく必要がありますし、また、国会が、特に野党に転落した
民主党が1つ1つの公共事業を細かくチェックして、健全野党として、バラマキを許
さないという姿勢を示すことは重要だと思います。

成長戦略に関しては緊急経済対策の本文を読みましたが、省エネ設備投資の促進、研
究開発・イノベーションの推進、基幹交通インフラ整備、中小企業対策、攻めの農林
水産業、金融資本市場の活性化、人材育成等々がちりばめられています。しかし、こ
の多くは過去数年間に提示された成長戦略のメニューとなんら変わっていません。こ
れは成長力強化のためにやるべきことは分かっているのに、歴代政権が掛け声だけで、
何年も放置して実行してこなかった、ことの証明でもあります。もう、お題目の説明
は耳にたこができるほど、繰り返し聞かされてきました。成長戦略のメニューに新鮮
味はなく、ただ、早く実行してください、との思いしかありません。

結論として、アベノミクスの三本の矢をベースとした緊急経済対策は円高・デフレか
らの脱却策としては、良くできた作文ですが、第1は副作用を起こさないようバラン
スを考えて実行すべきである、第2は表紙だけ新しくて中身は旧態依然とならないよ
う十分チェックしなければならない、第3はこれまでの有言不実行を脱皮して有言実
行である、ことが求められます。それが実現できればアベノミクスは、編集長の質問
にある「新しい」か、どうかは分かりませんが、従来とは「異なる」ものとなるで
しょう。

第44回 ここからユーロは買ってもいいの?!

ユーロ/円が今週初め(14日月曜)に一時120円の大台に乗せました。120円台は2011年5月以来のことで、欧州債務危機によるユーロ売りが顕著となった2012年7月には100円を割り込み94.10円まで売り込まれていたのですから、この半年で25円もの上昇です。

ユーロ/ドル相場も堅調で、同じくギリシャ危機が叫ばれた7月に1.2041ドルまで値を崩していましたが現在は1.3360台。昨年はギリシャが破綻するのではないか、ギリシャがユーロから離脱するのではないかといった懸念から、ユーロは一貫して売られる通貨だったのですが、昨年の最安値から1,300ポイント以上も買い戻されました。この半年ユーロは上昇トレンドを描き続けているのです。

こうした中、米ゴールドマン・サックス・グループが11日「ユーロ買い・ドル売り」を勧める顧客向けレポートを出したとして話題となっています。ゴールドマンは、1ユーロ=1.37ドルがターゲットだとしており、1年2カ月ぶりの高値に上昇する予想をしています。その根拠は明らかではありませんが、目先はあと300ポイント以上の上昇がある、とした強気の見方です。ユーロの危機は去ったのでしょうか。そしてユーロは積極的に買われる通貨へと変わったのでしょうか。

ギリシャ破綻が問題となっていた昨年7月にはIMMの投機筋のポジション(ヘッジファンドなどの短期勢)が22万枚までショートに偏っていました。これがドラギ総裁によるOMT(ECBによる南欧国債の買い入れ救済策)などの積極的な金融緩和策と、ユーロを救済するためには何でもするとした断固とした姿勢によりセンチメントが急転、それまで極端に売りに偏っていたユーロのポジションが買い戻されて整理される過程でユーロは上昇してきたのです。買われなくても売りが手仕舞われれば相場は上がりますね。積極的に買われて上昇してきた相場ではないのです。

そして、そのIMMのユーロのポジションは昨年12月31日発表の時点でようやく5,126枚のプラスに転じ解消されたことが確認されました。そしてこの時点でだされたゴールドマン・サックスの予想。つまり、ゴールドマンはこれまでのショートポジションの買い戻しによる自立的なユーロの上昇ではなく、ここからは積極的にユーロが買われるという予想を立てているということになります。

しかし、気がかりなのはその後に出された1月8日のIMMポジションではユーロは再び8,035枚のショートとなっていました。膨大なショートが解消され、ロングになった瞬間に再度ユーロを売ってきた短期筋がいる、ということです。ここからは、ユーロ圏に積極的な買い材料がない中は上昇が続かないだろうとしてユーロ売りの予想も増えてくるかと思います。

その兆候として懸念されるのは 昨年12月13〜14日のEU首脳会議ではその半年前に宣言した経済・財政統合への行程表を詰めるはずだったのですが、結論は13年6月に先送りされています。

経済・財政統合の核となる制度改革に抵抗したのはドイツのメルケル首相でした。ドイツは今年9月に下院選挙を控えており、メルケル首相が再選を期していることから国民の反発を招くことを避けるためにEU救済路線から国内に回帰しているのではないかと指摘されています。

また、2月24、25日に控えるイタリアの議会選挙もクローズアップされることとなるでしょう。12月に辞任したモンティ首相の敷いた改革路線が継続できるのか?!前々回のコラムでモルガン・スタンレーのびっくり予想をいくつか取り上げてご紹介しましたが、その中に「イタリアで総選挙に向けて反緊縮運動が高まり、投資家はイタリアのユーロ圏離脱を心配し始める。イタリアは欧州安定メカニズム(ESM)に支援要請し、国債買い取りプログラム(OMT)の最初の支援対象国になる」というものがありました。

このところはアベノミクスが世界の注目となって円売りがテーマとなっています。円高の終焉という歴史的な転換に加えて、これまで売り込まれてきたユーロの買戻しというダブルの上昇要因からユーロ円の上昇が大きかったのですが、テクニカル的には123円どころに節目があり、上値があっても後3円程度がせいぜいではないかと思っています。あ、ゴールドマンのユーロドルの予想もあと300ポイントくらいですね。300ポイントも取れれば十分です、短期的にはまだ買っていても大丈夫ですが、この上昇が未来永劫続くとは思わないようにご注意を。

コラム執筆:大橋ひろこ

フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。


2013年01月15日
第10回 新制度になってからの市場全体の変化について 【福永博之の信用取引講座 〜制度変更について〜】

株式会社インベストラストの福永博之です。2013年に入ってから株価の上昇が続いていますが、今回は新制度になってからの市場全体の変化について考えてみたいと思います。
みなさんは、市場全体の変化について考える場合、何に注目する必要があると思われますか?
そうです、最初に注目する必要があるのは売買高や売買代金の変化です。前回も昨年の大発会と今年の大発会の売買高と売買代金を比較し、さらに、昨年の大発会の売買単価と今年の大発会の売買単価を比較しましたが、回転売買が増加したことによって、売買高、売買代金は大幅に増加したものの、売買単価は低下する結果になっていました。
では、1月7日以降もこの傾向は続いているのでしょうか?
以下に実際の売買高、売買代金と売買単価を表にしましたのでご覧ください。
○大発会からの東証一部市場の売買高、売買代金および売買単価の推移

※ 東証のデータより(株)インベストラスト作成
ここでまず注目してほしいのは、一日当たりの売買高、売買代金です。大発会の1日だけではなく、日々高水準の売買高、売買代金が続いたため、売買高の一日平均が約36億8459万株、また売買代金も約1兆9466億円と大幅に増加しているのがわかります。
また、10日には売買高が41億株にのぼりました。
ただ一方で売買単価をみると472円57銭と大幅に低下しており、いかに低位株の回転売買が行われたのかがわかる結果となっています。
こうした状況から、信用取引の制度変更は市場を活性化させ、売買高、売買代金ともに高水準に押し上げていると考えられそうです。
さらに、今後政策などでテーマが広がれば、個別株物色が活発になると同時に、商いがもっと膨らむことになるのではないかと予想されます。そうなると、私は50億株超えや60億株近くまで売買高が膨らむのではないかと考えています。
そうしたなか、みなさんは株価の動きについていっているでしょうか?
このような高水準の商いが続いているあいだは、市場の流動性が高いため、個別株物色の好機ととらえることができると同時に、株数を多く買っても、返済する時に売却できるかどうかといった心配をすることも減るのではないかと思われます。
特に、高値を更新している銘柄や売買高、売買代金のランキング上位銘柄は、そうしたトレードを行うための候補銘柄といえるのではないでしょうか。
そこで、次回はランキング上位銘柄について考えてみたいと思います。
コラム執筆:福永 博之
株式会社インベストラスト代表取締役。IFTA国際検定テクニカルアナリスト。ビジネス・ブレークスルー大学 オープンカレッジ 株式・資産形成講座 講師。勧角証券(現みずほインベスターズ証券)、DLJdirectSFG証券(現楽天証券)、同証券経済研究所チーフストラテジストを経て、現職。現在、投資教育サイト《アイトラスト》の総監修を務める。ラジオNIKKEI、テレビ東京、TOKYO MXテレビ、CS日テレなどの株式関連番組にレギュラー出演。マネー雑誌の連載のほか、執筆多数。最新刊『めちゃくちゃ売れてるマネー誌ZAiが作った「株」チャートらくらく航海術』(ダイヤモンド社刊)では、チャート分析の基本中の基本、ローソク足に徹底的にこだわって騰がる株を見つける方法をわかりやすく解説し、好評を博している。
ダイヤモンド社からテクニカル分析の本を出版しました。『FX一目均衡表 ベーシックマスターブック』(2月10日発売)一目均衡表の書き方から分析手法まで、これまでにないくらい詳しく書かれた本です。中には「一目均衡表は分足トレードでも有効か?」とか、一目均衡表を「座標軸で考える」などという、私なりの分析も書いてありますので初心者の方から実際に一目均衡表を活用されている方まで、読みごたえのある本になっています。
前の記事:第21回 ETFを使って小さな会社を応援する方法 【ETF解体新書】 −2013年01月09日

田嶋智太郎の外国為替攻略法
2013年01月16日
投機筋に代わって実需筋が相場を主導しはじめた!?
今週14日、ドル/円は一時89.67円にまで到達する場面を垣間見ました。振り返れば、昨年(2012年)9月13日の安値は77.13円でしたから、この4カ月で約12.5円もの上昇となったわけです。
「こうしたドル/円の値動きとシカゴ通貨先物市場における投機筋の取引状況(ポジション)には浅からぬ関係がある」ということについては、過去に本欄でも幾度か触れています(2012年11月28日更新分参照)。では、実際のところはどうなのか、下の図を見て確認してみることにしましょう。
シカゴ通貨先物市場において、投機筋の円買い越しが最も大きく膨らんだのは2012年9月11日時点のことです。その後、徐々に買い越しは減少し、同年10月下旬にはついに売り越しに転じ、それから同年12月11日時点までは見る見る売り越しが増え続けることとなりました。この間、77円台だったドル円は83円近辺まで上昇しており、確かに「ドル/円の値動きとシカゴ通貨先物市場における投機筋のポジションには深い関係が認められた」ということになります。
この投機筋による円売り越しは、2012年12月11日時点の9万4401枚をピークに減少しはじめ、2013年1月8日時点では7万4096枚まで減りました。ところが、この間、83円近辺にあったドル/円は前記のとおり89円台後半まで一気に上昇しており、先に認められたドル/円の値動きとシカゴ通貨先物市場における投機筋のポジションとの関係性は完全に否定されることとなりました。
これは一体、どうしたことでしょう?

数値に表れている通り、投機筋は実際に2012年12月11日以降、徐々に円売りポジションを解消し、当座の利益を確定する行動をとったことに間違いはありません。それでも、後に一段と円安・ドル高が進んだということは、投機筋に代わって実需筋が相場を主導し始めたということを意味します。
この実需筋とは、資本取引や輸出入などにより、投資目的ではなく実際の取引のために外国為替取引を行う主に機関投資家のことを指しており、彼らのスタンスは投機筋のように目先の相場観で頻繁に売買を繰り返すというものとはまったく異なります。よって、実需筋はたとえ目先的にドル高・円安傾向が一服しそうだからといって、そう易々とドル売り・円買いに走るというようなことはありません。
もちろん、現在のように相場が少々過熱気味になっている状況下では、投機筋がこれまでの円売りポジションを解消し、利益確定を急ぐことによって、ドル/円相場がある程度調整する可能性は十分にあります。ただ、実需筋が83円台あたりからドル買い・円売りのスタンスを強めはじめたことが明らかである以上、今後のドル/円が83円を割り込んで一段と円高傾向を強めるといったような展開になる可能性は極めて低いということができるでしょう。
ちなみに、執筆時(16日午前)のドル/円はいささか調整色が濃厚な展開となっており、ボリンジャーバンド(21)の+1σを下抜けるかどうかの瀬戸際となっています。仮に同水準を明確に下抜けた場合、一旦は21日線を試すような展開となる可能性があるものと見ておくことが必要でしょう。
コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役
前の記事:この1年のドル/円相場を振り返る... −2013年01月09日
http://lounge.monex.co.jp/pro/gaikokukawase/2013/01/16.html

http://www.ohmae.ac.jp/ex/asset/column/20130116_123012.html
安倍内閣 年頭所感を分析 金融円滑化法 再延長しない方針 〜麻生



安倍首相 経済再生、復興、危機管理に全力で取り組み
 安倍首相は年頭所感で、経済再生、復興、危機管理に全力で取り組むと発表し、課題はデフレと円高からの脱却による経済の再生だと強調しました。国民一丸となって、強い日本を取り戻していこうと呼びかけました。

 しかし実際には、デフレで低迷している時に、日本が130兆円もの公的資金を使って景気刺激策をしても何の効果もありませんでした。自民党は、強い日本を取り戻そうと言いますが、強い日本とはいつのことでしょう。少なくとも自民党の20年間で強い日本にはなっていません。1989年12月からずっと低迷しているので、日本が低迷し始めてから22年になります。そのうち民主党政権は3年半なので、低迷のほとんどは自民党政権なのです。

 今回はアドバイザーとして竹中平蔵氏らが起用されていますが、それも以前のデジャヴだと感じます。同じようにやって失敗したことは明らかです。小泉政権はある程度よかったという印象ですが、小泉改革を否定しまくったのが現政権のメンバーです。どういうつもりで強い日本を取り戻すといっているのかよくわかりません。誰から取り戻すのか、いつ頃が強かったのか、定義を示してもらいたいものです。

 他にも経済学者らが政策に関与しますが、実際の経済政策には役立たないでしょう。学者は過去の学説を用いて今の経済を解説し、対策を考えるので、感覚が鈍いのです。つまり彼らは、今の経済はそうではないという新しい学説が出てくるまで昔の経済理論を使おうとするのです。それで学者は世の中から10年、20年と遅れるのです。学説は経済を長年にわたって観察して理論化され、数式化して証明していくというやり方が大半です。そのやり方では日本の現状は当てはまらないのです。

 日本の場合は高齢化し、使うことを経験していない戦後世代がそのまま貯蓄をして年老いています。この人たちが約60%もの貯蓄をもっているというのが日本であり、経済原則そのものがこれまでとは違ってしまっています。従って経済政策は学者には無理で、もっと近代感覚を持って対処すべきことなのです。

 自分の周りの70歳代で、ある程度まとまったお金を持っていても使わないという人を10人よく観察し、どうしたらお金を使いたくなるのか考える方法が求められているのです。学者達はマネーサプライや金利をどうこうしようとし、どうしようもなくなると公共工事をさせる強靭化計画などをやるのです。都市のインフラの再生などがその例です。しかしこれをずっとやってきてダメだったということに気づくべきなのです。

 さらにほとんどが輸入学者です。竹中氏もアメリカの学説を見ながら日本にいち早く取り入れるという手法です。日本の経済をよく見て、そこで暮らす70代の人と話をしてみることから経済政策を考える必要があるのです。庶民の暮らしを把握し、どうしたら持っているお金を使って満足した人生を生きていけるのか、ということから経済政策を作るべきなのに、理論や学説が先にきてしまうからおかしくなるのです。日本とアメリカの経済心理学の違いを理解しないで、しかもアメリカやイギリスの学説を適用していては良くなるはずもありません。学者に頼っていたら、日本の経済は永遠にダメだと思います。

 早速、電機メーカーなどの競争力を強化するために公的資金を活用するという政策が出されました。政府はリース会社と共同の出資会社を作り、企業から工場や設備を買い入れるというのです。新政権が制定を目指す産業競争力強化法の柱としていますが、これでは昔のやり方と何も変わりません。


金融円滑化法 再延長しない方針 〜麻生財務・金融相〜
 3月末で期限が切れる中小企業金融円滑化法について、麻生財務・金融相は再延長しない方針を表明しています。しかし太田国交相は再延長を要請しています。公明党にはこの円滑化法に引っかかる会員が多いのです。東京都の新銀行東京も、最初に借りた多くは公明党の都会議員の推薦があった人たちでした。今回も公明党所属の太田国交相は、この法律を一年延長したいと申し出ているのです。同法を延長するかの判断は財務・金融相が担当するものですが、公明党からの強い要請があることは間違いないでしょう。これでは太田大臣は国交相なのか、公明党代表であるのかが問われることになるので、引き続き注目しておく必要があるでしょう。

 中小企業金融円滑化法は、これを利用してすでに100兆円近いお金が貸し出されているわけですが、大手銀行よりも地域銀行、信用金庫、信用組合などにはより影響が大きいでしょう。これらの金融機関は、延長されなければ乗り越えられないところまで来ています。従って金融庁は、金融機関が企業に対して5%以上資本金を持ってはいけないとされているものを無制限にするなど、対策を検討しています。

 やはりこの法律はモラルハザードの最たるものであり、強引に導入させた亀井氏は責任を取る必要があると思います。ある意味、民主党新政権と国民新党が問題を回避する名案ではありました。しかし、そうせずに不良債権としてつぶしてしまえば全て自民党の責任にできたはずです。それをこんな形で救済し延長してしまい、結局民主党の責任になってしまったのです。これについてはもう引き延ばしてはいけないと思いますが、対象企業が40万社に上っていて、延長されなければ地獄を見ることになると思います。

 安倍政権誕生後、株価は上昇していますが、これも喜んでばかりはいられません。株価とは企業の将来価値を現在価値に引き戻したものです。企業の実態が変わらないのに、政権が変わったことで株価が上がるのは本来おかしいことなのです。ただし、安倍政権になって企業の価値が将来高まると見るならば、それを織り込んで株価が上昇するのは正しいことと言えます。

 ただその政策が何かということは俄にはわかりません。円安方向になれば一部の製造業にとってはプラスですが、株価的には中立の要素です。日本の会社は小売りやエネルギーを含めて円高の方が調子良い企業も多く、円高円安の効果は半々です。だからこそ日本は円高局面を凌げたのです。輸出産業は円高に苦しみましたが、現時点ではかなりの部分が外に出てしまっているので、今は円安になって苦労する部分の方が多いのです。それらを含めて企業業績が右肩上がりで上がっていかない限り、株価上昇は勘違いで、トレーダーがはやし立てているだけなのです。

 株価は不思議な方程式があるのではなく、企業の価値であることを押さえておきましょう。安倍政権がそれに対して何らかのプラスの政策を打ち出したら上がってよいのです。しかし、今のところはまだ見えていません。しかも、中小企業金融円滑化法がどうなるかによっては地獄を見るかもしれないのです。また、これまでにも景気刺激に巨費を投じても限定的な効果しか得られなかったにも関わらず、今のように公共事業などに10兆、20兆とばらまいても、ほとんど効果はないと思います。



講師紹介


ビジネス・ブレークスルー大学
資産形成力養成講座 学長
大前 研一
1月6日撮影のコンテンツを一部抜粋してご紹介しております。
詳しくはこちら
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2013年商品市況の見通しとは


デフレからの脱却は無理なのです

水野和夫・埼玉大学大学院客員教授に聞く

2013年1月17日(木)  渡辺 康仁

 デフレからの脱却はできない――。金融緩和、財政政策、成長戦略の「3本の矢」で脱デフレを目指す「アベノミクス」が始動しても、その思いが揺らぐことはない。政権交代で政府を離れた水野和夫・埼玉大学大学院客員教授が見る日本経済が抱える問題の本質とは何か。
(聞き手は渡辺康仁)

国内外の経済の状況をどう見ていますか。

水野:まず先進国の状況からお話しします。2008年のリーマンショックに続いてユーロ圏諸国のソブリン(政府債務)問題が起こり、米欧各国は後遺症からいまだに抜け出せていません。日本がバブル崩壊後の「失われた20年」で抱えた問題を解決できないのと同じような状況に置かれています。


水野 和夫(みずの・かずお)氏
埼玉大学大学院客員教授。1953年生まれ。1980年早稲田大学大学院経済学修士。八千代証券に入り、その後は一貫して調査部門に所属。合併などで会社は国際証券、三菱証券、三菱UFJ証券、三菱UFJモルガン・スタンレー証券に変わった。2010年9月に退職し、民主党政権で内閣府の官房審議官(経済財政分析担当)に転じた。国家戦略室担当の内閣審議官も務めたが、政権交代で退いた。(撮影:清水盟貴)
 日米欧でバブル経済が発生した原因ははっきりしています。それは成長ができなくなったからです。日本は戦後の高度成長期が1973〜74年頃に終わり、4〜5%の中期成長に入りました。その後、80年代に入って成長率はさらに落ち込み、それを覆い隠すようにバブル経済が起きました。

 成長が難しくなった米国も、1995年以降、強いドル政策でバブルを起こしました。金融技術や証券化商品がそれに乗っかる形で2007〜08年にピークを迎えたのです。欧州でも、特にドイツが成長できなくなったためにユーロという大きな枠組みを作って南欧諸国を取り込みました。国別で一番ポルシェが売れていたのはギリシャだそうです。強いユーロでポルシェを買ってバブル化していったのです。

 日米欧ともに成長ができなくなったからバブルに依存し、いずれも崩壊したのです。バブル崩壊の過程でデフレも起きました。私には成長戦略でバブルの後遺症から脱却しようというのは堂々巡りのように思えます。

歴代の政権は成長戦略を経済政策の柱としてきましたが、それは間違っていたということですか。

水野:成長戦略は失敗の運命にあると言えます。菅直人・元首相については様々な評価がありますが、首相時代の発言で一番良いと思うのは「成長戦略は十数本作ったが全部失敗している」というものです。成長戦略が解決策として正しいのであれば、十数本のうちどれかは当たっていないとおかしいのです。ことごとく外れているということは、成長では解決できない事態に先進国は直面していると考えたほうがいいのだろうと思います。

「製造業復活」は理解できない

 先進国が成長できなくなったのには理由があります。デフレ経済のもとで、数字で成長を計る場合には名目GDP(国内総生産)を使います。名目GDPを簡単に言うと、売り上げから中間投入を引いた付加価値です。

 今起きている事態は売り上げが落ちているということではありません。売り上げが減少したのは、失われた20年の最初の10年です。あの当時は信用収縮も起きて単価がどんどん下がりました。現在は企業の売り上げが伸びる一方で、中間投入がそれと同額か場合によっては上回るテンポで増えている。売り上げが増加しても名目GDPは増えないという構図です。中間投入が増えているということは、逆に言えば資源国の売り上げが増えているということです。

 売り上げが伸びていると言いましたが、先進国の企業が思い通りに値上げができる状況にはありません。日本からの輸出でウエイトが高い電機や自動車は競争が激しく、新興国市場などで値上げすることは厳しいでしょう。先進国は工業製品を作るだけでは付加価値を増やすことは難しくなってしまいました。

日本経済を再生させるためには、製造業の役割が重要になるのではないですか。

水野:製造業の復活と言う人がいますが、私にはなかなか理解できないですね。日本で作って海外に持っていくのは、今の仕組みからするとほとんど成り立たないと思います。家電メーカーの現状がそれを物語っています。自動車も10年後には同じ状況になる可能性があります。新興国が近代化に成功するには、雇用を自国で増やして中間層を生み出すことが必要ですから、新興国は現地生産化を求めると思います。

 国内を見ても、身の回りにはモノがあふれています。乗用車の普及率は80%を超え、カラーテレビはほぼ100%です。財よりもサービスが伸びると言われますが、サービスは在庫を持てないし、消費量は時間に比例します。1日が24時間と決まっている以上、サービスを受け入れる能力には限りがあります。先進国は財もサービスも基本的には十分満たされているのです。

 個人だけでなく、国全体の資本ストックも過剰です。既に過剰なのに、まだ新幹線や第2東名高速を作ると言っている。資本ストックの減価償却にどんどんお金を使うというのが今起きていることです。

経済的にゼロ成長で十分

企業が稼げなくなると、賃金や雇用にしわ寄せが行きそうです。

水野:戦後最長の景気回復期だった2002年から2008年初めに何が起きたのでしょうか。製造業の付加価値はプラスでしたが、企業利益と雇用者報酬、減価償却に分けると、減価償却は付加価値よりも増えました。1200兆円の民間ストックを維持するために過大償却になっていたのです。景気は回復しているのに企業利益と雇用者報酬を合算するとマイナスになる。利益を減らすと株主総会を乗り切れませんから、雇用者報酬が引かれます。1人当たり人件費はどんどん下がります。

 世界経済が回復すると工場の稼働率も上がるから株主配当を増やさなければなりません。雇用者を非正規化しながらトータルの人件費を下げるのが景気回復の実態です。次の景気回復が来ても、この状況は変わらないでしょう。


 繰り返しますが、あらゆるものが過剰になっているのです。本来ならば、望ましい段階に到達したはずです。国連の統計では、1人当たりのストックでは日本は米国を上回ります。さらに成長しようというのは、身の回りのストックをもっと増やそうということです。まだ資本ストックが足りない国から見ると、1000兆円もの借金を作って色々なモノをあふれさせた日本が成長しないと豊かになれないというのはどういうことかと思いますよね。

何か答えはあるのでしょうか。

水野:2つ考えられます。もし日本が今でも貧しいとするならば、1つの解は近代システムが間違っているということです。ありとあらゆるものを増やしても皆が豊かになれないというのはおかしいですから。

 2つ目の答えは、成長の次の概念をどう提示するかです。日本は明治維新で近代システムを取り入れて、わずか140年たらずで欧米が400年くらいかけて到達した水準に既に達してしまったということです。これまで「近代システム=成長」ということでやってきましたが、必ずしも近代システムは普遍的なものではありません。変えていかないといけないのです。

 私は経済的にはゼロ成長で十分だと思います。よく経営者は「成長戦略は実行あるのみ」という言い方をしますが、近代システムを強化して売り上げが伸びるような仕組みであれば、それでもいいのでしょう。しかし、売り上げが伸びるのはあくまで海外です。現地で100の売り上げがあったら、50が中間投入で、50が付加価値。付加価値の50のうち、35が現地の雇用になって15が日本に返ってくる。先進国になった日本が1人当たりGDPで1000ドルや2000ドルの国にぶら下がって豊かになるのは無理なのです。

資本主義は全員を豊かにしない

アジアなど新興国の成長を取り込むことはこれからも重要だと思いますが。

水野:日本の高度成長期には原油が1バレル2ドルや3ドルで買えました。米欧のオイルメジャーが原油価格を抑えていましたから、売り上げが増えても中間投入は増えません。日本の1960年代から70年代半ばまではすごく条件が恵まれていましたが、オイルショックで壊れました。

 今の新興国は1バレル100ドルで原油を仕入れなければなりません。近代化の原則は「より速く、より遠く」ですから、エネルギーが必要です。地球上の70億人のうち、12億人が先進国の仲間入りをして、残り58億人が近代化に向けてこれからエネルギーを多消費します。しかし、原油高は続いていますから、残りの58億人全員が近代の仕組みの上で豊かになれるわけではないのです。

 アジアやアフリカの各国がドッグイヤーと言われるほど速いテンポで近代化をすると、今の想定通りに本当に中間層が生まれるのでしょうか。私はそれは難しいと考えています。資本主義は全員を豊かにする仕組みではないとだんだん分かってくるのが、これからの10年、20年なのでしょう。

 中国もこれから過剰設備の問題が顕在してきます。世界の粗鋼生産量15億トンのうち、中国が既に7億〜8億トンを占めています。中国経済が90年代後半から立ち上がった過程は米欧のバブル期と重なります。米欧が失われた10年、20年に入ると、日本が過剰設備に陥った90年代と同じことが起こりかねません。たとえアフリカ経済が成長しても、5兆ドル規模の中国経済を牽引することはできません。中国の成長が難しくなれば、日本も外需に期待することはできなくなります。

デフレからの脱却も難しくなりますね。

水野:デフレからは脱却できないでしょう。そもそも成長できなくなったという前提でどうするかを考えなければいけないのです。

 日銀の金融緩和への期待で円安が進んでいますが、2000年代初頭に量的緩和で1ドル=120円程度まで円安が進行したことがありました。経営者は120円が続くという前提で国内に工場を作りましたが、今度は70円台の円高になってしまった。経営者の失敗なのに、最近になると六重苦といって円高のせいにしていますよね。今の状況も「円安バブル」を生じさせる恐れがあると見ています。


渡辺 康仁(わたなべ・やすひと)


02. 2013年1月17日 02:52:03 : Bt9XlNcieE
JBpress>海外>The Economist [The Economist]
日本経済:ケインズと鉄道と自動車
2013年01月17日(Thu) The Economist
(英エコノミスト誌 2013年1月12日号)

財政および金融面の散財は、後退局面にある日本経済を再起動させられるだろうか?


2011年12月2日午前にトンネル崩落事故が起きた山梨県甲府市の中央道、笹子トンネルの入り口付近に集まる、救急隊員と警官たち〔AFPBB News〕

 東京の西の交通量の多い高速道路(中央自動車道)にある笹子トンネルでは、天井を支える鉄製のボルトが35年間にわたり1度も検査されなかった。

 12月2日、ボルトの600本以上が緩んでいたために130メートルに渡って天井が崩落し、トンネル内で車に乗っていた9人が押しつぶされた。

 この惨劇は、安倍晋三氏を利する方向に働いた。安倍氏はその2日後に上首尾の選挙運動を開始し、日本のさびかけたインフラを修復するという公約もあって首相になった。

 1月10日、安倍氏は公約通り、13兆円を超えると見られる巨額の公共投資――2011年の震災後の緊急対策で支出された額を上回り、国内総生産(GDP)の約2.6%に相当する――を承認した。

「アベノミクス」と言うけれど、中身はケインズの受け売り

 資金の大部分は、トンネルや鉄道路線その他のインフラの安全性を高めることに使われる。これらの対策は、安倍氏が率いる自民党が戦後日本の歴史の大半を通じて実施したことでよく知られている類の公共事業である。

 安倍氏の支持者たちは、公共事業が経済を刺激し、景気後退から抜け出す助けになると考えている。批判的な向きは、世界最大の公的債務を日本に負わせる要因になった、コンクリートを大量に使う政策の焼き直しだと主張する。

 こうした公共事業に伴うもう1つの措置が、円安を誘導し、自動車メーカーや電機メーカーなどの輸出業者を助けるために紙幣の増発を日銀に求める圧力だ。この政策の立役者はエール大学教授で、日銀の白川方明総裁の元恩師(最近は白川氏を悩ます人物)である内閣官房参与、浜田宏一氏だ。

 自民党政権の支持者たちはこの財政・金融戦略を「アベノミクス」と命名している。だが、その戦略の大半はジョン・メイナード・ケインズの受け売りのように見える。

 原則としては、政府支出が借り入れコストよりも多くのリターンを生むのであれば、この計画には何も問題はない。モルガン・スタンレーのロバート・フェルドマン氏は、資金が省エネ技術のようなプロジェクトにうまく使われれば、恩恵は非常に大きくなり、効率を改善したり、税収を増したりする可能性があると言う。

 だが、経済的なメリットがないプロジェクトに資金が無駄使いされれば、生産高を大きく増やすことなく公的債務残高を増やし、既に200%を超えている対GDP債務比率を高めることになる。

 赤字で賄う景気刺激策は短期的には正当化できるが、安倍氏は今後10年間で200兆円の公共事業の必要性について語りながら、財源をどう確保するかについてはあまり語らずにいる。

 200兆円という金額は、日本が最終的に消費税を今の2倍に引き上げることによって徴収したいと思っている年間12兆5000億円の追加税収を簡単に超えてしまう。フェルドマン氏は、安倍氏の選挙戦の文書には債務に関する言及がなかったと指摘する。

金融市場はひとまず好感

 今のところ、金融市場は満足している。わずか1カ月余りで株式市場は10%上昇した。この間に円の対ドル相場は1ドル=82円前後から88円に下落しており、円安によって株式市場が押し上げられている。


 円安の一部は、中央銀行に対する圧力のおかげかもしれない。中央銀行は、その独立性を保証する日銀法を改正するという安倍氏の脅しを未然に防ぐために、近いうちにインフレ目標を2%まで2倍に引き上げると見られている。

 だが、それと同様に重要な要因は、どんどん赤字に近づいている日本の経常収支だ(図参照)。

 アナリストらは、エネルギー輸入の必要性が急激に高まっているため、経常収支はさらに悪化する可能性が高いと述べている。

 リスクは、インフレ予想が高まることなく国債利回りが上昇することだ。報道によれば、最新の景気刺激策は5兆2000億円の建設国債によって一部財源が賄われるという。新財務相の麻生太郎氏は、今年度の新規国債発行額を44兆円にとどめるという前政権の努力に何ら忠誠を示していない。

 これらの国債に対する市場の買い意欲が弱まった場合、安倍政権は日銀に買い取るよう求めるのではないかと心配する向きもある。買い取りは、日銀が強要されるのを嫌がっていることだ。

重要な改革を先送りする口実に?

 だが、それ以上に大きな懸念要因は、財政面と金融面の散財が、経済を自由化したり、自由貿易協定を通じて海外との競争に向けて国を開放したりするような、より微妙な対策を先送りする口実を政府に与える可能性があることだ。

 経済界のリーダーたちは、構造改革の差し迫った必要性を繰り返し強調している。安倍氏は、一定の法人税減税は提案するかもしれないが、苛立たしいことに、さらなる進展を図る前に、7月の参院選まで待ちたがっているように見える。


JBpress>海外>Financial Times [Financial Times]
社説:「機関車」ドイツ経済に急ブレーキ
2013年01月17日(Thu) Financial Times
(2013年1月16日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

 ドイツはユーロ圏の危機を通して、機関車のように勢いよく前進してきた。しかし、2012年10〜12月期の大幅な経済縮小は、ドイツが低成長期に入った可能性があることを示している。昨年は国内総生産(GDP)が0.7%拡大した。この数字は多くの欧州諸国を上回るものの、2011年にドイツが達成した3%成長を大きく下回っている。

 確かに、世界経済の減速にもかかわらず、ドイツの純輸出は好調さを維持した。また、民間投資は昨年10〜12月期に大幅に減少したが、景況感の調査は投資家が楽観的な見方を崩していないことを示している。だが、2013年の見通しは全面的に引き下げられた。ドイツ政府は今年、経済が0.5%拡大すると予想している。わずか数カ月前の予想の半分の水準だ。

 ドイツの財政状態は、財政刺激策に踏み切れるくらい強固だ。公的部門は全体として資金余剰(黒字)の状態で、公的債務は管理可能な水準だ。連邦政府は若干の赤字だが、政府は期限まで4年の時間を残して自ら課した「債務ブレーキ」を達成した。

 拡張的な財政政策――例えば消費税の減税など――は、機関車を再び軌道に乗せるだろう。また、そうした財政政策は、他のユーロ圏諸国を助けることにもなる。新たに生じる資金の一部が輸入に費やされるからだ。

 大半の国では、選挙が実施される見込みがあると、政府は節約を放棄するものだ。だが、ドイツの場合はそうではない。有権者は概して、アンゲラ・メルケル首相の倹約姿勢と危機時の対応を評価しており、首相の支持率は過去最高に達している。現状では、政治的な計算は、メルケル首相が方針を変えないことを示唆している。

民間部門は賃金抑制を打ち切れ

 だが、需要を喚起できるのはドイツ政府だけではない。民間部門も手を貸すべきだ。この10年間というもの、ドイツの賃金の伸びは生産性の拡大に後れを取ってきた。賃金をこれまでのペースより早く上昇させれば、国内および外国製品に費やせる消費者の手元資金が増える。ドイツと周縁国との競争力の格差も縮まり、ユーロ圏の危機の緩和に貢献するだろう。

 最後の後押しは、構造改革によってもたらせるはずだ。ドイツ政府は外国では構造改革を説いてきたが、国内では近年、改革を避けてきた。小売業は過剰に規制されており、サービス部門はもっと競争を必要としている。そうした改革が成長に影響を与えるまでには時間がかかるかもしれないが、それは改革を先送りする理由にはならない。

 ドイツはいみじくも2000年代初めに実施した改革を誇りに思っている。その精神を再び発揮すれば、当時と同じように自国経済を助けることができる。


03. 2013年1月17日 21:20:01 : IOzibbQO0w
独財務相、金融政策めぐる安倍政権の方針を懸念
2013年 01月 17日 20:32

アルジェリア人の人質30人、拘束場所から脱出=国営通信
情報BOX:ボーイング787問題、リチウムイオン電池をめぐる状況
アングル:対円でのウォン騰勢続く、積極介入は困難との見方多い
コラム:アベノミクスに残る奇策は100兆円硬貨か=村田雅志氏


[ベルリン 17日 ロイター] ドイツのショイブレ財務相は17日、日本の金融政策が世界の流動性に与える悪影響について懸念を示し、安部政権側に中央銀行の政策について誤解があるとの認識を示した。

同相は、下院議会での演説で「安倍政権の新たな政策を非常に懸念している。世界の金融市場で流動性が過剰であることを考えると、中央銀行の政策についての誤った理解がそれをあおっている」と述べた。 

コラム:アベノミクスに残る奇策は100兆円硬貨か=村田雅志氏
2013年 01月 17日 19:17


村田雅志 ブラウン・ブラザーズ・ハリマン シニア通貨ストラテジスト(2013年1月17日)

米国では年明け早々、「1兆ドル硬貨」の発行が話題となった。連邦債務上限引き上げ問題をめぐる政府と議会の協議はこう着状態のまま。民間団体の超党派政策センターなどは、債務上限が引き上げられなければ2月半ばから3月初めの間に米政府がデフォルト(債務不履行)に陥るとの試算を発表している。

米国の記念硬貨に関する法律によると、政府は財務長官が適切と判断する量と種類のプラチナ硬貨を鋳造・発行できる。本法律をもとに米財務省が1兆ドル額面のプラチナ硬貨を鋳造・発行し、これを米連邦準備理事会(FRB)に持ち込み、財務省口座に入金すれば、米国債を発行せずに1兆ドルを調達することが可能となる。1兆ドルのプラチナ硬貨を鋳造する際に議会の承認は必要とされないので、債務上限引き上げ問題は一気に解決することになる。民主党のナドラー下院議員やノーベル経済学賞受賞者のクルーグマン教授が1兆ドル硬貨の発行に前向きな姿勢を示したことも、このアイディアが注目を集めるきっかけとなったようだ。

ただ、たとえ法律で認められているとはいえ、政府が議会の承認もなく1兆ドルもの硬貨を発行することは、インフレ懸念を強めるだけでなく、中央銀行(FRB)の独立性を無視することになる。現に米財務省は1月12日、連邦債務が法律上の上限に近づいている問題を回避するために1兆ドル相当のプラチナ硬貨を発行することは可能ではなく、すべきことではないとの認識を示した。

ご存知の方も多いと思うが、日本でも政府は中央銀行(日銀)とは別に貨幣を発行している。「通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律」(以下、通貨法)によると、日本の通貨は日銀券と政府貨幣の2種類で構成される。政府貨幣は日銀券の補助通貨であり、政府に製造及び発行権限がある。通常使用する政府貨幣は、通貨法で500円、100円、50円、10円、5円、1円の計6種類とされているが、1万円、5千円、千円の3種類の記念貨幣も立法措置を要さず、閣議決定で発行することが可能である。一般会計の決算書によると、政府貨幣は2011年度に1834億円が発行されている。

仮に安倍首相が国債残高の積み上がりを懸念し、財政拡張に二の足を踏んでいるのであれば、政府貨幣を大量に(たとえば100兆円ほど)発行することも選択肢として考えられる。政府貨幣は国債ではなく、あくまで通貨であるため、政府貨幣を大量に発行しても国債残高が増えることはない。また政府貨幣の発行においては、国債発行の場合と異なり、政府は償還や利払いの義務を負うことはなく、発行後の財政負担を回避するメリットもある。

500円硬貨を数千億枚(100兆円分であれば2千億枚)放出することで社会に混乱を引き起こすことが懸念されるのであれば、政府は大量発行した政府貨幣を日銀に直接預ければよい。数千億枚の500円硬貨は日銀の金庫に仕舞いこまれ、代わりに日銀券が市中に放出される。この図式は、政府が新規国債を発行し、日銀に直接引き受けさせることで日銀券を引き出す「日銀による国債の直接引き受け」と本質的には同じである。違いは、日銀が引き受ける対象が国債ではなく政府貨幣であるという点だけだ。

政府が政府貨幣を大量に発行すれば、米国で指摘されたように日本でもインフレ懸念が強まり、中央銀行の独立性が脅かされることになるだろう。しかし安倍首相はデフレ期待を変えることが重要と公言。また同首相は日銀の独立性について政策手段において担保されるものであり、中長期の物価上昇率目標を2%とすることは政府だけでなく日銀も共有すべきとの考えを示している。米国ではデメリットが多いとされる政府貨幣の大量発行は、安倍首相の考えを推進する上では、むしろ有益なツールと言えなくもない。

<前代未聞の政策なしで円安加速は期待薄>

政府貨幣の大量発行に伴い円債市場では2つの反応が予想される。

まず国債発行が抑制されるとの見方が強まれば、円債は上昇(利回りは低下)し、円売り圧力は強まるだろう。逆に日本のインフレ懸念が強まり、円債が売られる場合でも、ファンダメンタルズが悪化した新興国通貨と同じように円は信認低下を背景に下落することになる。どちらにせよ円安が進展するため、安倍首相が望んだ「行きすぎた円高の修正」も促されることになる。

政府貨幣の大量発行は先進各国で過去に実施されたことがなく、米国でも議論だけで実施が見送られた異例の政策だけに、安倍政権が実施に踏み切れば為替市場の円安期待が膨らみ、円安ペースが加速する展開も考えられる。

しかし最近では、政府・与党から円安のさらなる進展に対し慎重な姿勢が示されるようになってきた。甘利明経済再生担当相は1月15日の閣議後の記者会見で、政権交代前の円高は日本の国情を反映していなかったと指摘。これまで続いた円安は輸出にとっては追い風になるものの、過度な円安は輸入物価の上昇につながり国民生活にマイナスの影響が出るとの考えを示した。

また自民党の石破茂幹事長は翌16日、経団連の米倉弘昌会長や同幹部らとの会談で、昨年末に適度なドル円相場は85―90円くらいとの認識を示した主旨について説明。同幹事長は、輸出産業では100円がいいというところもある一方で、農業では燃料・肥料・餌代などが高騰するため産業によっては円安が好ましくないところもあると発言したと報じられた。甘利氏、石破氏の発言はともに、政府・与党が円安のさらなる進展を望んでいないとの見方を示したかのように思われる。

為替市場では両氏の発言を機に円安の動きが止まった。ドル円は甘利氏の発言が伝わった1月15日に89円台後半から88円台前半まで下落。ニューヨーク市場に入ると一時持ち直したが、翌16日にも円を買い戻す動きが続き、ドル円は一時88円を割り込む場面も見られた。菅義偉官房長官は16日午後の記者会見で、甘利氏や石破氏のさらなる円安を否定するかのような発言は意図的なものではなく、安倍政権の見解として現在の為替市場では過度な円高が是正されている段階にあるとの考えを示したが、翌17日の東京市場でもドル円は88円台後半で上値の重い動きとなっている。

たとえ両氏の発言が安倍政権全体の本意ではないとしても、政府・与党幹部から円安のさらなる進展に対し否定的な見方が示されたのは事実であり、市場が円売りの動きを弱めるのは自然の反応だろう。

一部では日銀次期総裁人事をめぐり、市場の金融緩和観測が強まり、円売りの動きが再び始まるとの見方もあるようだが、次期総裁候補として挙げられている方々の経歴や考えを見る限り、同人事をきっかけに市場の円売り期待が再び強まるような展開は考えにくい。むしろ市場は日銀による強力な金融緩和をほぼ織り込んだ可能性もあり、次期総裁人事が明らかになることで緩和期待が後退する可能性も考えられる。

甘利氏などの発言をきっかけに安倍政権による円安誘導期待が後退してしまった以上、これまでに打ち出された材料で再び円売り圧力が強まることは当面、難しいだろう。仮に市場の円安期待を強めたいのであれば、これまでにない(ある種、前代未聞とも言える)政府貨幣の大量発行といった劇的な動きを安倍政権が見せる必要がある。しかし、こうした動きが打ち出されることはおそらくないだろう。

このためドル円が上昇基調を続け90円台に突入するためには、日本側からの円売り材料ではなく、米国側からのドル買い材料を待つしかない。しかし、米国では連邦債務上限問題を背景に米債利回りは伸び悩んだまま。底堅く推移してきた米景気が給与税減税打ち切りや富裕層増税によって減速する恐れもあり、米債利回りが低下基調に変化する可能性も出てきた。日米金利差が拡大しないのであれば、ドル円がさらに上昇することは期待しにくい。日米双方の点からみてもドル円は当面、上値の重い動きが続くだろう。

*村田雅志氏は、ブラウン・ブラザーズ・ハリマンのシニア通貨ストラテジスト。三和総合研究所、GCIキャピタルを経て2010年より現職。

 

 
経済回復に「積極的な金融緩和」不可欠=石破自民幹事長
2013年 01月 17日 19:15 JST
[東京 17日 ロイター] 自民党の石破茂幹事長は17日、都内で講演し、経済を回復基調に乗せるためには積極的な金融緩和を行っていかなければならないとの認識を示した。

過度な円高は是正されなければならないとしながらも、最近の円相場については「過度な円高を脱出しつつある」との見解を示した。

<政権発足1カ月 順調なスタート、過度な円高を脱出しつつある>

安倍政権が発足して1カ月。石破幹事長は「円は過度な円高を脱出しつつある。株も上昇。内閣支持率も順調な滑り出しとなった」と市場の好転などを挙げ、政権の順調なスタートを強調した。

その上で「(12年度補正予算と13年度予算による)15カ月予算を早期に成立させることによって、経済回復を本格的なものにしていかなければならない」と指摘。7月の参院選では自民・公明合わせて「何としても過半数を取る」との決意を語り、自民党への期待感をどうやって形にするかが1月末召集の通常国会の大きな課題だと語った。

<積極的な金融緩和に期待感、過度な円高は是正されなければならない>

最優先課題に経済回復を挙げ、金融緩和や適切な財政出動、規制改革を柱とする経済成長の3つを「きちんと実行することによって、経済を回復基調に乗せなければならない」とした。

安倍晋三首相は政権発足前から繰り返し「大胆な金融緩和」を主張。昨年12月には日銀は一段の金融緩和に踏み切った。石破幹事長は「金融緩和で株価は高くなった。円も安くなった。良い成果が出ている」と評価しながらも、「金融緩和は積極的に行っていかなければならない」とさらなる金融緩和にも期待した。

一方で、金融緩和によって「カネ」が市場に出回るだけでは不十分だと述べ、個人消費への好循環を促すためには、将来不安を解消し、若い世代への資産移転や所得増などの手立てを考えていく必要があると語った。

為替政策では「過度な円高は是正されなければならない」とする一方で、「産業空洞化も防いでいかなければならない。安売り競争をやっている限り、中国に勝つことは難しい。アジアに勝つことは難しい」とも語り、「同時に国際競争力をつけるためのインセンティブをきちんと示していかなければならない」と語った。

<日中関係・日韓関係改善>

民主党政権で緊張関係が高まった日中関係、日韓関係の改善に向けては「日本も中国も、韓国も新しい政権がスタートした。中国の安定的発展、日韓の緊密化はこの地域の平和と発展のためにどうしても必要なことだ。このことをよく認識した上で、新しい指導者同士が、お互いの問題点を認識しながら、何ができるか腹蔵なく話し合うことだ」と対話の重要性を強調。同時に、「ベースとなる日米同盟をいかに確固たるものにするか」が課題になるとした。

(ロイターニュース 吉川 裕子;編集 山川薫)


1月17日(ブルームバーグ):甘利明経済再生担当相は17日午後、為替相場について、行き過ぎた円高修正の過程にあるとした上で、自身による先の円安懸念発言に関して「正しい報道になっていない。報道が断片的に伝えるから、それにマーケットが反応する。全体をみてください」と述べた。内閣府で記者団に対し語った。
記事についての記者への問い合わせ先:東京 氏兼敬子 kujikane@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先:Paul Panckhurst ppanckhurst@bloomberg.net;大久保義人 yokubo1@bloomberg.net
更新日時: 2013/01/17 17:06 JST

 

 

アングル:対円でのウォン騰勢続く、積極介入は困難との見方多い
2013年 01月 17日 17:01 JST
[東京 17日 ロイター] 対円での韓国ウォン上昇が著しい。上昇率は昨年10月から2割を超した。「アベノミクス」期待による円安だけでなく、リスクオン・モードの持続、韓国の金利の相対的な高さ、高格付けといった韓国側の材料が豊富であり、ウォン/円の上昇基調は続くとみられている。

中銀などから「口先介入」も聞かれ始めたが、国際的な批判にも配慮して韓国当局は積極的なウォン安誘導には動きにくいとの見方が多い。

外為市場で、韓国ウォンが上昇基調を鮮明にしている。15日、対円では100ウォン=8.50円まで上昇し、2年8か月ぶりの高値を付けたほか、対米ドルでも15日に1054.30ウォンと2011年8月以来の高値となった。特に対円でのウォン高進行が著しく、12年10月1日の始値からの上昇率では、対米ドルでの上昇が5.3%にとどまる一方で、対円では21.4%の上昇を記録した。

日本の総選挙での自民・公明両党の大勝、安倍晋三政権の誕生に伴う「アベノミクス」期待の高まりが円安要因となり、ウォン/円の押し上げに一役買ったとみられている。

ただ、ウォン/円は日本の衆院解散(昨年11月16日)におよそ1カ月先行して上昇を開始している。韓国サイドのウォン高要因が相次いだためで、「アベノミクス」期待が多少後退しても、ウォン/円の上昇基調は続くとの見方は多い。

ブラウン・ブラザーズ・ハリマンの村田雅志シニア通貨ストラテジストは、昨年10月以降のウォン高の要因を3つに分類して解説する。10月以降、エマージング通貨が総じて上昇を始め、その中でも韓国は先進国に比べて金利水準が高く、夏に大手格付け会社による格付け引き上げが相次いだことで、同国が「先進国マネーの受け皿になった」と指摘する。

韓国ウォンが対円で急ピッチの上昇を続けていることで、韓国銀行(中央銀行)の金仲秀(キム・ジュンス)総裁は「口先介入」を開始。三菱東京UFJ銀行の内田稔チーフアナリストは、韓国ウォンの名目実効相場がリーマン・ショック後の高値を上回ってきている点に注目している。「周囲の通貨が上がる中でのウォン高は容認するだろうが、周囲を差し置いてウォンが一番上がっているというのは嫌がるとみられる」とし、今後、若干介入姿勢が強まるなか、100ウォン=8円台での定着を伺う展開になるとみている。

しかし市場では、韓国当局は積極的なウォン安誘導には動きにくいとの見方が多い。

韓国情勢に詳しい早稲田大学政治経済学術院の深川由起子教授は、9日のロイターとのインタビューで、2月に発足する朴槿恵(パク・クネ)政権について、中小の輸出企業育成の観点から極端なウォン高には警戒姿勢を示すものの、発足当初からウォン安誘導を図る展開は見込みにくいと話した。

深川氏は、新大統領の朴氏を「ある意味で非常に原理原則主義者」と評し、「中央銀行というのは政治から独立しているべきという本来の教科書的原則にコミットすれば、そこから急に逸脱したりする人物ではない。誰がブレーンになるかということや韓国銀行総裁の考えにもよるが、朴政権の発足時からいきなりウォン安誘導をしていくということはないとみている」と話した。

ニッセイ基礎研究所の高山武士研究員も、韓国当局は大規模な介入をしづらくなっているとみている。ウォンの現水準は輸出企業には打撃だが、以前経験したレベルであるほか、米国が昨年11月の為替操作報告書で韓国の為替介入に言及し、「われわれは引き続き、韓国当局に対し、介入は市場が不安定になった場合だけにとどめるよう求めていく」としたことに注目。国際的にも大規模な介入はやりにくくなっていると高山氏は指摘する。

ブラウン・ブラザーズ・ハリマンの村田氏は、ウォン高傾向について、当局が介入姿勢を強めることで足踏みすることはあっても、トレンドが大きく変わるような材料は韓国側にはないと指摘する。相場が反転するとすれば、米国での債務上限引き上げや「財政の崖」をめぐる交渉の難航、欧州債務問題への懸念の再燃、米国や中国の景気への警戒感の高まりといった、韓国にとっての「外部環境」で不透明感が増し、投資家のリスクオフモードが強まる状況しか考えにくいという。

(ロイターニュース 和田崇彦 編集:伊賀大記)


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04. 2013年1月18日 07:41:11 : Pj82T22SRI
アベノミクスを語る前に知っておきたいこと

飯田泰之・駒澤大学経済学部准教授に聞く

2013年1月18日(金)  山中 浩之

 政権交代以来、「アベノミクス」=国の経済政策が大きな注目を集めている。しかし「経済政策」や「経済学」に、納得できない思いや不安を持つ人も多いのではないだろうか。人為的に金利を動かせるのか、といった不審の声や、経済学が「合理的な個人」という架空の存在を置いて考えることから「実際の人間社会には適用できないものだ」といった声もよく上がる。
 頼るにせよ、見放すにせよ、我々は一度「経済学」を基礎から学んでみる必要がありそうだ。最近、ミクロ経済学の入門書を著し、いまマクロ編に取りかかっている若手経済学者、駒澤大学准教授の飯田泰之氏に、経済にはド素人のデスクが聞いた。
「教養としての経済学」を学びたい人のための新書ということで出された『飯田のミクロ 新しい経済学の教科書1』(光文社新書)。拝読しましたが、正直に申し上げますと……語り口は柔らかいのに、難しいですね、この本。

飯田:はい、難しいです。これは「読んですぐ何かが分かる」というより「経済学の思考方法の基礎を知る」、つまり「経済学って、こういった物事を考えるんだ」ということをお手軽な入門書ではなく、本格的な教科書の抄録のような形で示したかった。その意味で読んですぐわかる、少なくともわかった気分になるという戦略は完全に捨てています。

「うざったい言葉」が消えていく

一度とにかく読んで、頭が冷えてからもう一度読むと今度はかなり分かる。そういう本ですよね。今時珍しく手強い新書、真面目な本です(笑)。『経済は損得で理解しろ!』とか、直近の『思考の「型」を身につけよう 人生の最適解を導くヒント』(朝日新書)とか、分かりやすい本をたくさん書いてきた飯田さんが、こういう本を出された意図はどこにあるんでしょう。


飯田泰之(いいだ・やすゆき)氏
1975年生まれ、エコノミスト。専門は経済政策・マクロ経済学。東京大学大学院経済学研究科満期退学。駒澤大学経済学部准教授・財務省財務総合研究所客員研究員。本文で取り上げた以外の主な著作には『経済学思考の技術−論理・経済理論・データで考える』(ダイヤモンド社)、『ダメな議論−論理思考で見抜く』(ちくま新書)、『脱貧困の経済学』(共著、自由国民社)など多数。
(撮影:大槻純一)
飯田:「いつもの飯田節はどこに行ったんだ」と言われるのを覚悟で書いたのは、もちろん理由があります。僕らが大学生のときにもう「時代遅れ」だった、ミクロ経済学のテキストがあるんですが、今こそそういうのをやりたかった。

どういうことですか、それ。

飯田:「なぜ主観価値と客観価値の区別が重要なのか」とか、あとは「エッジワースボックスのどこに自由主義が入っているのか」とか、そういう、“うざいテキスト”って、昔は大学の学部レベルの教科書には普通に書かれていたんですよ。

「経済学の考え方そのものの基本」なんですよね。


『飯田のミクロ 新しい経済学の教科書1』
(光文社新書)
飯田:そう。でもこういう概念の部分って、大学のテストや資格試験でぱっぱっと点を取るにはまったく無意味。だからだんだん削られていって、いまは受験参考書のような、ポイントだけ抑えて公式がたくさん出てくるタイプの本が教科書になっているんです。それで、ど直球をやりたかったんですよ。超古典的なテキストを書こうと。

ほうほう、なぜでしょう。

飯田:経済学が道具として便利に使われるあまり、根本的な勘違いが起こっているからです。

 ミクロ経済学は、制約下における希少な資源をどう分配すると、全体の効率性が最大になるかを解く学問です。「制約付き最適化(最大化・最小化)問題」の解法なんですね。そして「自由競争と市場による分配が最適な経済環境を導く」ことを証明する。

はい。

飯田:最適化問題を解く前提として、登場人物である「個人」は、自分の幸福を最大化することを目的に合理的に動く、という仮定を置きます。

おっ出ました。「不条理な人間の行動を、合理性という仮定をもって考えるだけでも経済学はおかしい」という突っ込みどころですね。

飯田:ここでよく勉強不足の方が引っかかるんですが、これは「(経済学上の)個人は、お金が一番儲かるように、得するように動く」ということじゃありません。さらに言えば「合理的」というのは、客観的なものではない。その人個人が主観的な意味で「合理的」と考えればいいんです

じゃ、万馬券狙いで全財産突っ込んでも。

飯田:突っ込んだ人が納得していれば、経済学のいう意味では「合理的」です。

「合理的な個人」の本当の意味

自分自身が納得できない行動をわざわざとること以外は「合理的」、ってことでいいんですか?

飯田:そう。そしてそんな人ってあまりいないでしょう?

他人がどう考えてもその人が納得していればいいわけですか。なるほど。でも普通「合理的」って言われたら、誰でも納得できる価値観、って考えますよ…これってつまり「客観的な価値」は存在しないと、経済学は考えている、ということになりますね。

飯田:正解です。またはやや控えめに「客観的な価値を知らなくても困らないから脇に置いとこう」というわけ。その結果、経済学は「その人その人の判断を最大限に尊重する」という考え方をその中心に据えようとする。個人主義、自由主義が経済学の大本にあるわけです。

 さて、ここからが問題です。「自由主義」の社会は、必ず「負荷なき個人」との組み合わせじゃないといけない。

ええっと、「負荷なき個人」というのは、ものすごくざっかけに言うと不利な競争条件に置かれない個人、つまり「再分配がきちんと機能する社会」を前提にした個人、ってことでいいんでしょうか。

飯田:そうですね。もう少し正確には――職業や収入はもちろん、生まれ育ちも、才能もなにも全く決まっていない抽象的な存在としての個人が負荷なき自己です。

財産を持っている人がいて、持ってない人がいて、その社会で「自由主義」と言ったら、もう金持ちがひたすら勝ち続けるという世界になってしまいます。だから僕は「経済政策を考えるときの“個人”は”負荷なき個人”でなければいけない」のは当たり前だと思っているのですが、それをまったく意識しないで経済学のモデル、方法論を勉強してしまうと、一般の人にとって経済学がまったく間違えた形で伝わるだけだと危惧しているんです。

飯田:「経済学者になろう」というだけの人なら、哲学的なことはわからなくても技術的な論文を書けば、就職は出来ます。だからそれはそれでいいかもしれない。でも、政治家や国民が、よりよい日本経済にしていくために経済学を理解したいという場合にはこの出発点こそ重要なんです。ここを誤解するのは、経済学の未来にとって致命的です。…分かりにくいですか?

いや、あとでまとめてお聞きしますので一通り最後までどうぞ

飯田:一方で、「負荷なき個人」は概念的、形式的で、「自分」や価値観、意志決定というのは、置かれている状況から生まれてくるんだ、という考え方がありますよね。

ああ、一昨年大流行したマイケル・サンデル先生の本で読みました。コミュニタリアニズムの論法ですね。

飯田:そうです。コミュニタリアンは、個人の自由な価値観、自由主義を捨てて「状況付けられた個人」を取った。その代わりに、共同体が個人を守るわけです。一方リベラルは、自由主義を守る代わりに負荷なき自己を基礎にしようとした。

ああ、さっきの馬券の話で言えば、コミュニタリアニズムの社会であれば共同体の誰か、例えば年長者が「そんなバクチに有り金突っ込んではいかん」とか言って財布を取り上げてしまうんですかね。リベラルの場合だったら、馬券を買うのを止める人はいない。でもすっからかんになって食うに困ったら、社会保障制度が最低限なんとかしてくれる、みたいな?

飯田:そんなところですね。僕の好みで言えばリベラルなんですが、コミュニタリアニズムの論法も論理的には分かるんです。

 ただし実際の世の中の需要としては、「負荷ある(再分配なき)自己」と「自由主義」という、致命的な、混ぜるな危険みたいなものを組み合わせてしまっている。経済学という道具を使うなら「自由主義」と「負荷なき自己」というのは、どっちも欠けられないんだということを分かってもらわないと。負荷なき自己をあきらめるんだったら、自由主義じゃなくてコミュニタリアリズムにいかなければいけない。

徹底的な自己責任と自由主義は両立し得ない

だんだん分かってきました。

飯田:負荷なき自己を前提としない自由主義って、いわゆる「俗流リバタリアン」になるんです。現在の状況を、あるがままに肯定する。「売春も、臓器売買も、お互い納得の上だからええやんけ」という。貧乏人は努力しなかったからどうでもいい、失業者は能力がないんだから仕方がないやねという。こういった解釈は「状況付けられた個人」プラス「自由主義」という致命的な組み合わせが生み出している。

個人の力ではどうしようもない状況を、「その状況というのはお前という個人が勝手に選択した結果なんだからどうしようもないよね、君のせいだよね」というような言い方ですね。

飯田:そうです、そうです。そうなっちゃうと、要は「もう何もするな」ということになってしまう。もともと金を持っている、権力を持っているヤツが必ず勝つ世の中だから、何をやってもムダ、状況は変わらない、と。

バクチは倍々プッシュで「元手が多い=金持ちが最後は勝つ」。西原理恵子さんが見つけた法則ですね。

飯田:なので、コミュニタリアニズムとリベラリズム、やっぱりどっちかが必要なんですよ。どちらにするかはもう好みだと思うんですけれども。僕はどうしても宗教のような超越論的な価値観、地域的なルール、因習なんかに縛られるのが嫌なんですね。あと、派手なこととかぜいたくなことが好きなので、ある程度、自由主義寄りじゃないと。

 経済学は自由主義が根底にある以上、その指向を踏まえて考えなきゃいけない。そういう中で、自由主義を極地まで推し進めたのが「ミクロ経済学」なんです。

ただ、そのミクロ経済学ってすぐ「余剰の最大化」って言うでしょう。余剰って、思ったよりも安く買えた・高く売れた、という、つまるところ「儲け」じゃないですか。だから「お金がすべて」と誤解されるんじゃないでしょうか。さっきの「合理性」といい、経済学って一般常識と外れた、意味を取り違えやすい言葉が多すぎる気がします。飯田さんに文句を言っても仕方ないんですが。

飯田:そこをミクロ経済学が“本当は”どう考えているかは『飯田のミクロ』の60ページからの章(「第2章 個別主体の行動原理」)を読んでいただくとして(笑)、経済学に対する拒否感というのは、もちろん数学が難しい、論理が面倒、ということはあるんですけれども、「経済学の価値の部分が嫌いなんだ」という人がいる。それは「最大多数の最大幸福」、いわゆる「功利主義」を、経済学の価値体系だと誤解しているからなんですけれど。

 そういう人に必要なのは、「経済学の結論」がどこから来ているタイプのものなのかを峻別したテキストが必要だと思うんです。

 Yさんが挙げられたのは、需要供給曲線による「部分均衡分析」ですよね。一般的なミクロ経済学の入門書は、部分均衡での余剰の解説から入ります。実際、「価値」についてあまり考えない方や経済学の単位を取りたい学生さんには、このほうがずっと分かりやすい。僕も自分の授業ではそうしています。そこから、金銭換算をせずに効率を考える「一般均衡分析」に進みます。

 でも、この本が無差別曲線、エッジワースボックスで話を始めるのは、余剰を経由しないで自由主義経済の優越を示したかったからです。余剰に落としどころを持っていっちゃうと、「人々の幸せというのは、客観的に計れる、足し引き割り掛けできるもの」という結論になっちゃって、経済学が功利主義の一応用分野みたいに思われちゃう。これは自由主義的な発想とは真逆、台無しだと思って、避けたんですね。

ああ、なるほど。それをやるとサンデル先生にしてやられるわけですね。

飯田:そうそう、そうなんです。サンデルは、自由主義の中に残存している功利主義のしっぽみたいな、残滓みたいなのを必ず上手にすぱっと突いてくるんですよ。「それって、人間としてどうなんだろうね?」と。でもそれは、経済学の考え方と必ずしも一致しない。自由主義経済の優越のポイントは、功利主義を使わずに個人主義・自由主義だけで議論を進められるところなんです。

 ついでに言いますと、「人間は他人への嫉妬、ねたみで行動が変わる。隣のやつが金持ちになるのが嬉しい人はめったにいない。でも現代経済学はそういう視点がない」とか言う人がいます。確かに伝統的な経済学では個人の幸福は他人との比較に依らないとします。

市場が「独立した個人」の前提にある

飯田:なぜそう仮定できるかといったら、市場があるからです。市場を介して取引が行われるから、あなたが支払ったお金で金持ちになる特定の個人が目に見えない。事実上の匿名性が保たれるから、経済学の仮定が成立するんですね。

 その意味で経済学、特に独立した個人という発想は、市場と絶対切り離せないんですよ。匿名性と切り離せないと言った方がいいのかもしれない。もし顔が見える取引が中心だったら、必ずエンビーは入っちゃうんですよ。「あいつの方が得をしているんじゃないか、儲けさせたくないぞ」とか。それを切り離さないと、個人主義って成り立たない。さらに言うと、切り離すためには市場が必要。ということは、市場がなければ個人主義は絵に描いたもちになっちゃうんですよね。

なるほど。個人主義の前提になる「負荷なき個人」の定義を、もうちょっと明確にしていただいてもいいでしょうか。

飯田:そうですね。まずは、じゃあ、自分が生まれる前の生命の卵のようなものだとしましょう。あなたは男になるのか女なのか、身体に障害を持つか否か、体力、知能、見た目がどうなるか、どこの国の人に生まれるのか、家が金持ちか貧乏か、親が愛情豊かか教育熱心かそれとも児童虐待をやらかすのかも、まるで分からないという状態です。

社会に出たときに、どれくらいプラス、マイナスの要素があるか全然分からない、と。

飯田:そこで神様か悪魔かが出てきて「さあ、ここで保険をかけないか?」とあなたに言う。それでどのぐらいの保険をかけるか。

 例えば障害を持って生まれたかもしれない、超貧乏な家に生まれたかもしれない、もちろん逆にめちゃくちゃいい家に生まれるかもしれない。その人なりの想像力の範囲で「まあ、これくらい保障、保護があれば、マイナス条件に当たってもなんとかなるかな」と、思うはずですよね。

あ、なるほど。

飯田:その保険を後払いで支払っているというのが社会保障制度なんです。だから社会保障制度というのは、実は生まれる前にかけた保険のローンを払っているようなもの。

その保険制度で実現しているのが、負荷なき個人。言い換えると、みんなが負荷を分担して、個人が自由に生きるための保障制度を作るわけか。

飯田:負荷なき個人を前提にして考えるなんてできない、おかしい、と言い始めると、自由主義を殺さなきゃいけなくなる。僕は自由主義は、人類と言うと大げさだけれども、少なくとも近代から現代にかけて一番守るべき価値だと思っているので、じゃあ、負荷なき自己と組み合わせるしかないじゃんと。

これってあれですか、社会学者で、何だっけ、ロールズだっけ?

飯田:そうです。ジョン・ロールズ(※)の議論を素直に経済学に組み込もうとするとこうなるんですよ(※米国の哲学者。2002年没。著作はこちら)。

「無知のヴェール」という考え方ですよね。

飯田:そうそう、無知のヴェールです。本当は、だから経済学って、もうちょっとロールズの価値論をベースにしているというか、せざるを得ないんだというのを自覚的になるべきだったと思うんですよね。

「保険」が有利すぎれば誰も生きようとしない

これって1つ誤解しそうだなと思うのは、「金持ちも貧乏人もいない世界をつくろう」という話では、たぶんないんですよね。

飯田:ないんです。それは違います。要は例えば保険をかけるというときに、皆さんはどんな保険をかけますかと。事故になった方が得をするという保険は普通かけないですよね。

まあ、ないでしょうね。

飯田:例えば生命保険とか、例えば失業保険もそうですけれども、仮に失業しても今と同じ収入になる失業保険というのがあったら、誰も入らないと思うんですよ。誰も働かないと。

確かに!

飯田:維持可能な水準の保険制度にするには、ちゃんと貧富の差はなきゃいけないんですね。だけれども本当に事故が起きてしまったときは、その事故に対する最小限のサポートはありますよと。

なるほど。それって具体的には「ジニ係数はこのぐらいにとどめた方がいいんですよ」とかいう話につながっていくんですか。

飯田:理想的に本当にジニ係数が測れるんだったら全然それでいいですね。

ああ、そうか。ストックとフローか。資産と収入は別だけど、両方正確に捉えるのは難しい。

飯田:そうなんです。資産家――つまりはお金持ちだけど、年収は少ない、という人がいますからね。仮に経済力というものが総合的に測れたら、それにおけるジニ係数というのを何パーセント以下にとどめる、またはジニ係数は十分高くてもいいんですけれども、生存水準までは全員保障の、そこから上競争という形にするというのが僕は美しいと思っているんですよ。

努力した人が報われて、努力しない人もそれなりにみたいなところですよね。

飯田:そうそう、貧しさだけでは死なせない、という。

死なない程度に生きられると。

飯田:これと組み合わせないと自由主義は危うい。ですが、部分均衡分析の場合は、余剰や効用を図るために、追加の仮定、つまり、ある程度「客観的な価値観」というものを持ち込んでいる。

「とりあえず、お金を儲けることが共通の価値として通用するとしようよ」と。

飯田:そうそう。余剰分析は「1円の価値は誰にとっても同じ」という価値観を挿入して出来ているんです。こういう追加の仮定が妥当かどうかについてはたぶん賛否両論があるので、結論は弱くなっていく。

 といっても、その前提が正当化される場合もある。例えば分析しているのが、「来年ミカンの値段ってどのぐらいになるだろうね」という問題だったら、部分均衡分析は大変、力を発揮する。だってこの話を考えるのに価値観がどうとかどうでもいい問題ですから。とにかくお前の仕事は来年のミカンの価格を予測することだよと言われているんだから、それは部分均衡というツールをフルに使えばいい。

 その一方で、じゃあ、社会保障制度をどうするか、この問題だと余剰、効用が何に当たるのかは、個人の価値観によってばらばらになってきます。

 ですので「特定の価値論を前提とした議論というのは、しょせん特定の価値観に基づいた発言でしかないんだ」という理解と、じゃあ、何にプライオリティを置くべきなのか、を、部分均衡分析とは別途行うべきですよね。すべての価値観に目配りしないまま、社会保障の話をするのは不可能なんですけれども、ちょっと無頓着な人が多いんですよね。

「価値」についてもっと真面目に論争しよう

こういう価値観に基づいて部分均衡分析を行うとこういう結論ですよ、というのが正しい言い方なのに、「経済学的にはこういう結論ですよ」になっちゃうのか。でもどうして、経済学を学んでいる人がこんなにいるのに、そんなある意味当たり前の前提が吹っ飛ぶんでしょう。

飯田:アカデミックの世界に限れば理由は簡単で、昔は経済学には、今話している近代経済学(近経)とマルクス経済学(マル経)があり、近経はマル経と緊張感を保ちながらさまざまな問題を論じていた。このころは近経の学者にとって「価値」についてどう論じるかは極めて重要だったんです。

なるほど。

飯田:ところがあるところを境にマル経というものがなくなっちゃったので。

勝手に自滅しちゃいましたからね。

飯田:マルクス経済学に対して、近代経済学が勝ち切ってしまった故に、そもそもの論理の基準においていた価値を顧みなくなった。そして、経済学にとって、どこまでが論理の問題で、どこからが価値の問題だったのかという意識を忘れて、全部が論理で成り立っているかのような気分になっているんですね。価値について論争する相手がいなくなったので。

なるほど。ひいては「経済学って結局、人の心を無視してお金のことしか考えないんだろう」という社会的なイメージを生んでしまった、ということですか。

飯田:経済学は「価値観」の限界をわきまえて使えば非常に有効なツールだし、客観的な合理性で人の気持ちや不条理さをぶった切る論理的な学問じゃない。でも「経済学的には全体の利益が最大化されるんだからこういうことでいいんだ」といった、間違った使われ方をする危険性が高くなっている。特にこれからの日本は経済政策が大きな意味を持ちますから、こうした騙し文句に「経済学的におかしい」と気づける力が必要になってくると思います。


山中 浩之(やまなか・ひろゆき)

日経ビジネス、日経クリック、日経パソコン編集を経て、2006年2月から日経ビジネスオンライン副編集長、編集委員を務めた後、2010年4月から日経ビジネスアソシエ副編集長。2012年3月から日経ビジネス副編集長。隙間と隅っこで生きるライト級オタク。記事のモットーは「面白くって、役に立つ」。ツィッターはこちらでひっそりと。


キーパーソンに聞く

日経ビジネスのデスクが、話題の人、旬の人にインタビューします。このコラムを開けば毎日1人、新しいキーパーソンに出会えます。


05. 2013年1月18日 08:12:00 : Pj82T22SRI
【第5回】 2013年1月18日 
過度に財政・金融政策に依存しない成長戦略を
リフレ期待を地に足のついた政策に転換できるか
――熊野英生・第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト
2012年はまれに見る政治の年だった。日米中露仏韓と世界の主要国で、政権が替わるか、新政権が発足した。それを投影して経済も不安定だった。さて、安倍新政権は、対外的には日中、日韓の関係改善という難題を抱える一方、大幅な金融緩和と財政出動を掲げてスタートを切る。政府部門はGDPの200%にも達する借金を抱え、再生は容易な道ではない。「巳年」の巳は草木の成長が極限に達して、次の生命が創られることを意味するという。果たして、日本は再生の糸口を見つけられるのか。そうした状況下、2013年を予想する上で、何がポイントになるのか。経営者、識者の方々にアンケートをお願いし、5つののポイントを挙げてもらった。今回は、第一生命経済研究所経済調査部の熊野英生・首席エコノミストの回答を紹介しよう。


くまの・ひでお
第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト。 山口県出身。1990年横浜国立大学経済学部卒。90年日本銀行入行。2000年より第一生命経済研究所に勤務。主な著書に『バブルは別の顔をしてやってくる』(日本経済新聞出版社)など。
@安倍内閣の経済政策

理由:日本経済は、財政再建と経済成長の同時達成という隘路を進む。巨大公共事業だけでは持続的成長は得られず、政府債務は増えていく。もしも、リフレ政策の副作用として、長期金利上昇が発現すれば、財政再建が困難に陥る。安倍政権には、経済財政諮問会議などを通じて、過度に財政・金融政策に依存しない経済成長戦略へ転換することを切に願う。

A円安・株高の持続性

理由:リフレ相場が期待先行のまま進んでいる。2013年の途中で下方屈折するのか、2005年の郵政解散後のように長持ちするのか。これは、日銀がどんな金融緩和策を推進するかだけではなく、安倍政権がデフレ解消策として構造改革的な中長期的取り組みを追加できるにも依存している。実体のないリフレ期待を、地に足のついた政調政策に転換できるか。

B社会保障の未来図

理由:野田政権からの宿題として、社会保障改革が残っている。民主党政権は、子育て支援などに使途を広げて、社会保障負担を肥大化させる志向が強かった。社会保障費のコンパクト化に舵を切れるかどうかが、国民会議の課題であり、先行きの消費税問題の展望にもつながる。

C日銀総裁人事

理由:2013年の早い時期に、日銀総裁人事が決まる。将来5年間の金融政策運営の舵取りを担う人選である。その人物が安倍政権とどのように歩調を合わせるのか。また、将来の政権がリフレの旗を降ろしたとき、柔軟な金融政策を続けられるかも気になる。 

D財政再建の行方

理由:消費税率の引き上げを再度判断するのは、秋である。4-6月の成長率から展望できる2013年度の成長率が2%近くを維持できれば、消費税を2014年4月に引き上げるだろう。さらに、消費税率を上げたとしても、さらに追加的な増税を視野に入れるかどうかも安倍政権が議論する課題となるだろう。国土強靭化のような歳出拡大圧力を自制できるかどうかも問われる。


 
【第213回】 2013年1月18日 岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]
“安倍成長戦略”と“小泉構造改革”の違い
 日銀が物価上昇率の目標を2%にすることがほぼ確実な中、補正予算も閣議決定され、アベノミクスの3本の矢のうちの2つ(金融緩和と財政出動)は早速実行されました。そして、それらは株価上昇と円安進行と具体的成果を出し、海外のメディアも評価しています。それでは、今後もアベノミクスはうまく行き、海外からの高い評価も定着するでしょうか。

ニューヨーク・タイムズの指摘

 結論から言えば、それは間違いなくアベノミクスの3本目の矢となる“成長戦略”の中身次第となるのではないでしょうか。それは、今週掲載されたアベノミクスに関する米国ニューヨーク・タイムズの社説の中身からも明らかではないかと思います。

 ニューヨーク・タイムズが社説でアベノミクスを評価したというのは日本でも報道されましたが、実はその中で「景気刺激策だけでは日本経済の長期的な復活には不十分であり、構造改革(structural reform)が必要となろう。ただ、保守的な自民党にとって既得権益に切り込むことは容易ではないだろう」と明確に指摘されています。

 そして、米国の金融市場関係者の多くの見方もこれと同じであることに留意する必要があります。要は、デフレ克服という課題はともかく、財政政策と金融政策によって経済成長率を引き上げて景気を良くできるのは一時的に過ぎないので、それを民間主導の持続的な成長につなげるためには、規制改革、TPPなどの自由貿易構造改革が不可欠なのです。

 しかし、安倍政権では3本目の矢についてこの“構造改革”という言葉を使っておらず、“成長戦略”という言葉を使っています。それでは、“成長戦略”と“構造改革”という言葉の違いは何でしょうか。

 この点について考えるに当たって非常に参考になる考察が日経の電子版の検証記事ありましたので、まずそれを引用しておきましょう。

           ☆           ☆

「内閣の総力を挙げて、大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略、この三本の矢で経済政策を力強く進めて結果を出していく」

 安倍は26日の記者会見で経済政策の「3本の矢」を強調して見せた。竹中が安倍に助言してきたのも3本柱だが、微妙に換骨奪胎されている。

 金融政策はインフレ目標2%の緩和路線で一致するが、財政政策で竹中は「短期的に出動するが、中長期的な財政の信認回復と一体で」と指摘。民間投資につながるのは「成長戦略」ではなく「構造改革」だと説いて一線を画す。

(中略)

 今の自民党で「構造改革」は死語に近い。政府が補助金や税の減免で特定分野の産業を戦略的に育てるターゲティングポリシー型の「成長戦略」が好まれがちだ。

           ☆           ☆

“成長戦略”は国家資本主義志向?

 確かに、緊急経済対策に盛り込まれている政策や、メディアで報道された成長戦略らしき政策(12/31付け日経一面の“公的資金で製造業の工場・設備の買い上げ”など)を見る限り、公的資金を活用した官民ファンドの乱立や“新ターゲティングポリシー”など、構造改革とは正反対の政策が目につきます。

 それらの政策は、カネの面や成長市場の見極めなどで政府の関与を増大させることを前提としており、むしろ中国や韓国がやっているような国家資本主義的な色合いを感じさせます。

 実際、政府の一部の官僚(役所名も個人名も特定していますが敢えて伏せます)は、「家電産業などが苦境に陥っているのは経営陣がダメだから。それならば自分たちが成長分野を特定した方が絶対にうまく行く」といった、思い上がりも甚だしい上から目線の発言を役所内でしていたと聞いています。

 即ち、官僚用語で言う“成長戦略”とは、霞ヶ関の多くの官僚が嫌がる規制改革などの“構造改革”路線よりも、“国家資本主義”的なアプローチを意味するのです。

 ちなみに、前記の日経記事にも書かれていますが、小泉政権の間は“成長戦略”といったものは一度も策定されておらず、常に“構造改革”という言葉が用いられていました。“成長戦略”なるものを政府が策定するようになったのは小泉政権が終わってからです。こうした事実を踏まえても、“成長戦略”という言葉が“構造改革”を嫌う官僚によって作り出されたことは明らかでしょう。

 しかし、安倍首相はアベノミクスの3本目の矢である“成長戦略”について、“国家資本主義”ではなく“構造改革”を目指したいはずです。前記の日経記事によると、安倍首相は“構造改革”の象徴とも言える竹中平蔵氏を最初は経済財政諮問会議の委員に起用しようとしたようですが、それこそが安倍首相の真意を表しているのではないでしょうか。

 そう考えると、安倍政権の真価とアベノミクスの正しさが問われるのはこれからではないかと思えます。

 安倍首相はアベノミクスの最初の2本の矢については自身の思いどおりの方向を実現し、海外メディアもそれを高く評価しました。しかし、3本目の矢である成長戦略の中身については、安倍首相は官僚と対峙せざるを得ません。そして、もし官僚の狡猾なやり口で構造改革路線よりも国家資本主義路線が中心となったら、海外メディアや金融市場の評価も豹変し、日本経済の再生自体も困難になりかねません。

産業競争力会議に注目!

 その意味では、構造改革の重要性を主張し続ける竹中平蔵氏が、経済財政諮問会議ではなく、その成長戦略を議論する産業競争力会議の委員となったのは、安倍首相にとっては逆に良い方向に作用するかもしれません。

 もちろん、私は、官僚が好む国家資本主義的な政府の関与が増大する政策を全面的に否定するつもりはありません。そうした政策が必要なのも事実です。ただ、国家資本主義的政策が成長戦略のメインになっていけないのです。むしろ、構造改革がメインとなり、国家資本主義的政策はそれを補完するサブの役割となるべきと思います。

 いずれにしても、産業競争力会議は来週に第1回会合が開催され、そこで6月には成長戦略がまとめられるので、産業競争力会議の議論の行方に注目すべきではないでしょうか。

 
生命保険料が“乱高下”?
ささやかれる新政権の影
「新政権の“大人の事情”ではないのか」(大手生命保険幹部)

 金融庁が新年早々、生命保険各社の予定利率を左右する「標準利率」の算出方法の見直しに着手したことが明らかとなり、業界にさまざまな憶測を呼んでいる。


標準利率の算出方法の見直しを始めた金融庁。保険料にどう跳ね返るのか
Photo by Mieko Arai
 なぜなら、10年国債の過去の平均利回りを基に算出される標準利率は昨年10月に、現行の1.5%から1%へと12年ぶりの引き下げが決まったばかり。生保各社が来年度、保険料の値上げに踏み切ることは確実視されていたからだ。

 複数の業界関係者によれば、昨年11月、生保業界側が標準利率の算出方法の変更を求める申し入れを金融庁に行ったことが、事の発端だった。

「業界では以前から、10年国債のみの利回りを基に算出する現行の計算式を、もっと複合的な要因を反映したものに変えるべきとの声が強かった」と大手生保幹部。

 計算式が改められることで、来年度に値上がりする保険料が、再来年度は一転して、値下がりする可能性さえ取り沙汰されている。だが、「値上げした翌年に値下がりするならば、来年度は保険が全く売れなくなる。そんな見直しはあり得ないし、具体的な改定案は全くの白紙」と金融庁。

 一方、業界からは「現行利率よりも大幅に上がれば、今度は逆ザヤに陥りかねない」(別の大手生保幹部)という懸念も指摘されるものの、「見直しそのものは歓迎」(前出の大手生保幹部)との声が大きい。

 だが、突如として浮上した見直し議論に、業界ではあるうがった観測も広がっている。それは、昨年末に誕生した安倍新政権の影響だ。

 目下、標準利率の新しい算出方法の一つに、20年や30年物の超長期国債を基にする案が出ているという。新政権の積極財政に伴う超長期国債の増発が確実視される中、「その引き受け手として、生保業界に白羽の矢が立てられたのではないか」(前出の大手生保幹部)というわけだ。

 (「週刊ダイヤモンド」編集部 宮原啓彰)


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