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行政調査新聞
アベノミクスと国防軍 =ミニバブル経済と憲法改正
http://www.gyouseinews.com/index.php?option=com_content&view=article&id=231:2012-12-31-08-50-53&catid=39:2009-07-09-03-13-14&Itemid=61
■お札をじゃぶじゃぶ印刷する
自民党総裁選で安倍晋三が勝利したのは9月末。その安倍がデフレ克服、インフレ目標を3%と発言(後に自民党として2%に修正)。これを受けてのことだろう、10月中旬になるとシカゴで円売りが始まった。11月14日に野田首相(当時)が「解散」を口にするや、米国を中心とする外国人投資家による日本株購入が強まった。11月14日時点で8,664.73円だった日経平均株価は1カ月後の12月13日には9,742.73円と急上昇。総選挙で自民党が議席を激増させ、安倍首相が誕生したところで、外国人投資家による日本株購入はさらに加速し、12月28日の大納会の日には平成24年の最高値10,395.18円まで上昇している。単純計算でこの間に日本株は総計50兆円も膨らんだことになる。
安倍晋三は自民党総裁になった直後から、「デフレ克服のためにお札をじゃぶじゃぶ印刷する」と過激な発言を続けていた。当初はこの発言に否定的だった日銀も、安倍の「日銀法を変えてでもインフレ目標を定める」という勢いに押され、総選挙後の12月18日には物価上昇率2%程度の政策協定(アコード)に前向きの姿勢を見せている。
円安が進み、日経平均がどんどん上がり、デフレが克服されて日本経済は前途洋々――安倍政権が描いている餅に、国民大衆のほとんどが懐疑的だ。経団連自身、来年度の春闘で「定期昇給はもはや聖域ではない」と、業種によっては定昇すら見送る可能性があることをほのめかしている。安倍自民党が笛や太鼓で煽ろうが、「お札をじゃぶじゃぶ印刷」してその恩恵に与かれるのはごくわずかの超カネ持ちだけで、貧乏人は給料も上がらず、物価だけが上昇してますます貧乏になり、貧富の格差は増大する。
安倍晋三の「お札をじゃぶじゃぶ印刷する」というやり方を評価する方がいるかもしれない。経済学の基礎理論に「フィッシャーの交換方程式」というのがあり、カネを刷れば景気が良くなるという考え方がたしかにある。
ちなみにフィッシャーの交換方程式とは100年も前に発表された理論で、経済学部の学生が1年のときに習う単純なもの。「MV=PT」という数式で表わされる。(M=通貨量 V=通貨流通速度 P=物価 T=取引総量) この方程式が正しければ、カネを市場にバラ撒けば景気は良くなるはずだ。しかしこの方程式は理想のモデルケースのものであり、現実には通用しない。刷られたカネは市場には流通せず、意思を持つ何者かによって独占されるだけなのだ。それはやがて泡と弾け、資金は流れ、やがて巨大な資金力を持つ者に吸収される。
インフレターゲット2%、円安ドル高、日経平均の急上昇。これらは一時的に好景気になったような錯覚を庶民に抱かせる。給料は上がらず、物価が高くなっても、好景気という雰囲気に踊らされて、預貯金を引き出し、うかれる者もなかには出てくるだろう。しかしそれは「つかの間の夢」で終わる。
■無制限金融緩和
ではなぜ「お札をじゃぶじゃぶ印刷」して無制限の金融緩和を行おうというのか。それは総裁になったばかりの安倍晋三の発言のなかに隠されている。「外国債券を購入してもよい」という発言だ。
ご存じの通り、米国は現在「財政の崖」に直面している。5年前に起きたリーマン・ショック以降の経済対策のために行われてきた減税や政府歳出の大幅削減が、今まさに期限を迎えているのだ。このため米経済が崖から落ちるかもしれないという問題である。これを詳細に語ると長文になってしまうので、きわめて簡単に述べておく。
まず「財政の崖」は以前からわかりきっていた話で、今になって大騒ぎしているのはある種の世論操作であること。
もう一つ重要なことは、崖は崖であって坂道ではないということだ。つまり、もし崖から落ちてもそれでお終い。ズルズルと下降を続けるのではなく、ドンと落ちて、そこで終了する。
財政の崖に直面している米国は、EU危機を煽って世界の資金が欧州から逃げ出し、それが日米に回るように仕組み、崖からの転落を未然に防ごうとしている。同時に、崖から転落した場合も想定し、転落後に一気に反転、上昇するように手を打っているのだ。
財政の崖が控えていても、解決策が決まっているなら、米経済には何の問題もないのか。そうではない。
平成20年(2008年)に起きたリーマン・ショックで、米国には莫大な不良債権が生まれた。その額は7000億ドル(約56兆円)とも、それ以上ともいわれている。この不良債権処理に米国の税金3500億ドルが投入されたが、少なく見てもまだ3500億ドルが未処理で、これが米国経済の足を引っ張っている。
安倍晋三がいう「外国債券を購入」とは、欧米の国債を買うことではないし、中国の債権を買うことでもない。米国の不良債権処理を手伝おうという意思表示だと考えられる。しかしその後、白川総裁を初めとして日銀はこの発言に不快感を示し、以降、安倍晋三もインフレターゲットは口にしても外債購入という言葉を発していない。
一つの考え方として、米経済が好調になれば、必然として日本経済も上向くという見方がある。米国の不良債権さえ処理できれば、米経済は勢いを取り戻す。それは日本経済が盤石になることにつながる。それならば日本も米経済活性化のお手伝いとして不良債権の一部を引き受けましょうという考え方だ。もちろん多くはこれに反対で、釈然としない、納得できない、米国の負債のために日本のカネを注ぎ込むなどイヤだなどの声があがるだろう。だが安倍晋三は外債購入を積極的に考えていると思われる。
今回は日銀側に拒否されたが、白川現総裁の任期は4月冒頭まで。4月8日には新総裁が就任する。このポストに竹中平蔵、岩田一政、中原伸之、武藤敏郎、岩田規久夫などといったアベノミクス賛成派が登用されたら、米国不良債権購入話は強まる可能性が高い。
■見せかけの好景気の後に来るもの
インフレターゲットを設定し、通貨を無制限に市場に流し、円安ドル高を誘い外国人投資家のカネで日経平均がどんどん上昇する。今年前半、短期的には間違いなく好景気のような雰囲気が作られる。見せかけの好景気だが、その間に復興特需を含めた成長路線を固めれば、日本経済は上向いていく可能性はある。絵に描いた餅のようにも思えるが絶対に無理なものでもない。
それなら、とりあえず安倍自民党に一任しようではないかと考える人々もいるだろう。給料は上がらず物価だけが値上がりしても、将来に展望があるなら我慢することはできる。しかし安倍政権の目論見は経済だけではない。ほんとうのところ、安倍にとって経済など二の次で、本丸は「国防軍」にある。その先の憲法改正にある。
衆院選圧勝の結果、自民・公明を合わせた与党の議席数は325議席となったが、参院は自公合わせて102議席。参院で88議席を誇る民主党の勢力はなお健在で、自公以外の野党勢力は140議席に達している。当面自民党としては公明党の協力を得ながら与野党がねじれている参院では、野党との折り合いをつける必要に迫られる。とくに日銀総裁人事などは法案とは違って衆院三分の二の再可決で押し通すことなどできない。
新総裁に決まった直後に安倍晋三は自衛隊を「国防軍」にすると語ったが、ここに本音が見えてくる。安倍にとっては不得手な経済は適任者に任せて、何より早く外交、安全保障問題に取り組みたい。見せかけだけだろうが、とりあえず景気を上昇気流に乗せ、国民を納得させたうえで、外交・安保を強烈に押し進めるはずだ。事実こうした流れの通り、安倍政権は日本の防衛整備の長期的指針である「防衛大綱」の見直しを決定している(12月27日)。
しかし連立を組んだ公明党はご存じの通り平和論者で、国防軍など否定。自民党の悲願である自主憲法など、絶対反対だ。
こうした状況を考える限り、自公連立政権が続くのは7月の参院選まで。参院選の結果如何でどうなるかは不明だが、維新との連立が最も考えられる選択肢だ。そうなれば憲法解釈や自衛隊の国防軍化どころか、一気に憲法改正にまで踏み込む可能性もある。米国自身、日本が憲法改正に進むことを容認している。
本紙は大前提として自主憲法制定には賛成の立場をとる。では安倍政権下での国防軍設立、憲法改正に賛成かというと、そうではない。なぜか。それは今日の自衛隊陸海空三軍が米軍直轄下に置かれているからである。このままでは日本の自衛隊は米軍の下請けでしかない。名前を国防軍と変えても実態が変わらなければ意味がない。
だいいち、憲法改正となれば9条だけの問題ではない。天皇の地位、衆参両院の意味といった問題もあれば、日本の定義、国土の定義といった大問題もある。これを矮小化して、勢いだけで片づけるわけにはいかない。国民大衆が議論を重ね、大いなる了解が必要とされる。今年夏以降に起きるであろう憲法改正論議を大いに盛り上げ、国民全体で考える雰囲気作りが重要だ。
■緊張の東亜、半島有事はあるか
中東は今、非常に不安定な状況にある。内戦状態のシリアはいよいよ危機的状況にあり、ロシアのプーチン政権もアサド政府を見限った可能性が高い。シリア政権転覆の先には、イランに対してイスラエルが単独先制攻撃を行う可能性もあり得る状況だ。しかし中東を対岸の火事とばかり眺めてはいられない。東アジアも現在、中東に匹敵するほど緊迫している。最大の緊迫は、朝鮮半島と尖閣諸島にある。
こうした状況下、米軍再編が各所で滞りを見せ、在外米軍の基地移転問題も、日本の普天間移転問題だけではなく各所で問題となっている。在韓米軍の基地移転問題にも未解決があり、今日なお揉めているが、在韓米軍の2016年(平成29年)完全撤退は確定している。
米国の基本的戦略は日・米・韓の3カ国が連帯を強め中・朝と対峙、これを締め付けるところにある。したがって米韓は密着する必要があるはずだが、3年後の米軍完全撤退を前に、米韓間にすきま風が吹いている。すでに米軍は最前線から徐々に下がりつつあるが、そうした状況下、北朝鮮による人工衛星(ミサイル)発射実験が成功裏に打ち上げられた。
昨年(平成24年)4月13日早朝に北朝鮮は人工衛星(ミサイル)発射実験に失敗したが、このとき北朝鮮は正確な発射予定日時に関し、米国、中国には事前連絡を行っていた。さらに米国は、韓国にこれを連絡した模様だ。
昨年12月12日、北朝鮮はまたも人工衛星(ミサイル)発射実験を行い、今度は見事に成功、打ち上げた衛星は軌道に乗り地球の周囲を回っているようだ。今回の発射実験に際し北朝鮮は日程を延長したり一段目ロケットの解体作業を行うなど、巧みな目くらましを行ったが、米国には発射予定時刻の事前通告を行っている。
北朝鮮がミサイル発射実験に際して、毎回必ず米国に事前通告を行うのは、朝鮮戦争休戦協定に基づくもので、これを行わないと国連軍(米軍)による攻撃が正当化される可能性があるからだ。ところが今回、米国は韓国には発射日時を通報しなかった。(未確認情報だが日本に通報したとの説もある。)そんなところから「米国は韓国を見捨てたのではないか」(自衛隊関係者の話)との説まで出ている状況だ。
今回の人工衛星(ミサイル)実験は、敢えて南向き発射という難度が高い方向を選び、それに成功したわけだが、これにより韓国に比して北朝鮮の軍事力はいよいよ強まり、半島情勢は北優位が明確になってきている。だからといって北朝鮮軍が一気に南進する可能性は少ないが、何かのはずみに暴発する可能性もある。
「オスプレイは、半島有事の際に米軍軍属、家族を韓国から日本に運搬するために配備されたのではないか」(自衛隊関係者)という話もある。
北朝鮮の南進は常識的にはあり得ないだろうが、北朝鮮主導の半島統一は非常に近い将来に起こるだろう。統一に向けての駆け引きは今年ますます活発化するはずで、安倍政権にとって半島問題は極めて重要なものとなる。民主党政権下で続けられた水面下での拉致問題が、今年、表に急浮上する可能性は高い。
■緊張の東亜、尖閣炎上はあるか
尖閣諸島が日本の施政下にあり日米安保の適用対象であることを確認する条項を「国防権限法案」に追加する案を全会一致で可決した(昨年11月29日)。尖閣諸島を巡っての中国の挑発が激しさを増していることを懸念してのことで、東シナ海のシーレーン(海上交通路)確保は米国の国益にかなうというわけだ。
尖閣諸島問題に関してはすでに本紙は何度も詳述している。ぜひご覧いただきたい。さまざまな事情が絡んでいる微妙で複雑な問題ではあるが、米国が「日米安保の対象」と宣言したら中国軍の強硬派が大人しくなるかというと、むしろ逆で、火に油を注いだようなものだ。
昨秋、人民解放軍の将官10人が尖閣諸島(釣魚島)に関して共同声明を発表したが、軍強硬派は武力衝突を意図的に起こそうと考えているようだ。どのような形で衝突が起きるのか。事情通は次のように語る。
「まず漁船団を仕立て、日本の海保の目を盗んで数名から十数名が尖閣に上陸する。その後中国漁船は引き上げ、島に残った漁民(実体は軍人)を助けるという名目で中国海軍の軍艦が接近。何名かを引き上げて海域を離れるが、それでも何人かがまだ島に残る。これを繰り返すことで中国軍の艦船が長期間にわたり尖閣海域に居続け、退去を命じる海保、海自を武力挑発。最終的に戦闘状態に持ち込む」。
武力衝突が起きれば、「尖閣諸島は領土問題は存在しない」としてきたわが国政府の基本姿勢が崩れる。中国が武力衝突まで考えていることは間違いないと思ったほうがいい。
さらに中国は領土問題を沖縄(琉球)まで拡大しようと考えており、尖閣はそこに至る第一歩。
領土問題は歴史認識に深く影響されるが、そもそも歴史認識とは「本当にあったこと」ではなく「認識される過去」のことであり、事実か否かではない。「歴史的に考えて」とか「公式記録上は間違いなく日本のもの」と正論を主張しても現在の中国政府に通じるものではない。
安倍政権が米国べったりになり、中国を挑発し続けるのであれば、尖閣に火の手が上がる可能性は高い。
■日中文化交流
今日、「反米親中」か「反中親米」かと問われることがある。ときに常識ある大人たちまでこうした問いをすることがある。
「小沢一郎は親中・反米だったから、米国によって叩かれた」
「経済政策を見れば安倍の方向はわかる。米国従属、反中だ」
などといった言葉が、あたかも真実のように語られるときがある。
現在の国際情勢にあって、日本が米国と手を切ったり、中国と絶縁することなど絶対にない。韓国に関しても同じだ。反米も反中も反韓も、現実には考えられない。
もちろん距離のとり方はある。密着の度合いはある。しかし片方の国のいうことだけを聞き、こちらの国の主張には耳を傾けないということは、現実にはあり得ない。――これが大前提である。
その上で今日の日本の立ち位置と安倍政権の設計図を見る限り、米国に寄りすぎ、アジアから離反しすぎという感は否めない。米国から離れろというのではない。アジア外交にもっと力を入れるべきだと本紙は考える。
当面安倍政権は現在の方向を突っ走ることだろう。ミニバブルにも思える見せかけの好景気を背景に、国防軍あるいは憲法改正を視野に入れ、大震災復興と原発稼働を同時に押し進めることだろう。そうなるとアジア外交が行き詰る可能性が高い。とくに対中国問題はまったく楽観材料がない。
こうした状況下、われわれ庶民大衆はただ指をくわえて成り行きを見守るしかないのか。
政治とは離れて中国との関係を構築していくことが大切なのではないのだろうか。
では具体的にどうすればいいのか。昨年12月まで中国全権大使を務めた丹羽宇一郎は、尖閣問題などで日中間に氷河期が来ても、日本の企業財界は中国への投資を続け、支店を拡大すべきだというような発言をしていた。伊藤忠などに在籍した商売人らしい発想だが、尖閣反日デモで破壊された日本の工場や営業所を目の当たりにしたとき、その危険性は憂慮すべきものだと考える。
これほど日中両国民の間に反中、反日感情が高まっているときに、政治的あるいは経済的な活動を継続することは、無意味ではないが、国家規模の戦略、戦術がなければ成果はあがらない。
冷え切った現在のようなときこそ、民間の文化交流こそが重要だと本紙は考える。政治思想やカネとは無縁の交流だ。
中国には長大な歴史に支えられた文化がある。われわれ日本人もかつて歴史の中で学んできた人類の宝ともいうべき高邁な文化が、中国の奥深くに眠っている。
日本にももちろん、日本人が育んできた世界に誇る文化がある。世界中の人々を熱狂させる生きざまがあり哲学がある。
この両者が互いを尊敬できる形で結びつき、ときに議論をし尽くすことこそ、今日の両国間の庶民大衆がやるべきことではないだろうか。
口先だけの話ではない。本紙には台湾を窓口として大陸にもつながる人脈がわずかではあるが存在する。日中間が現在のように冷え切ったときこそ、その人脈をフル稼働させて文化交流、議論、交換を行うべきと考える。本紙は今年、真剣に日中間の橋渡し役を開始しようと考える。本紙の今後の動きに関し、読者諸氏の忌憚のないご意見ご忠告を賜りたい。■
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ハゲ頭の歯が無い、つぶやき
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