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2012-10-12 なぜ昔は、学歴も年収も低くても結婚できていたのか36
先日、NHK首都圏ネットーワークというテレビ番組で、「結婚できない若者」を特集していました。(番組サイトはこちら)
「男女とも結婚したがっているのに、結婚できない人が増えている」というもので、28才、中小企業勤務で年収300万円、活動的で誠実そう、外見も問題なく、でも「学歴はない」という男性が登場してました。彼は結婚紹介所に入会したけど、200人近い女性に、会うことさえ断られたらしいです。
女性側は、共働きをするにしても出産、育児で収入が途絶えることを考え、男性に年収600万円以上を望む。でも未婚の若い男性に、そんな年収の人は多くない。実際、年収の低い男性の未婚率は高く、交際率さえ低いというデータが紹介されていました。
さて、この番組をみて、みなさんどう思われるでしょう?
「なんで、こんないい男性がお見合いを断られるんだ!?」と不思議だったり、憤ったりしますか?
女性側の立場にたって考えれば、この男性がお見合いを断られるのは、不思議でもなんでもありません。彼は今28才です。ということはお見合いを申し込んでいる相手の女性も、その年齢付近以下の人が多いのでしょう。それはつまり「20代で結婚紹介所に登録をしている女性」です。
20代の女性は、紹介所の会員のなかで最も人気のあるグループです。男性にとって年収が大事であるように、女性にとっては年齢が最重要だからです。つまりこの男性は(おそらく無意識に)最も人気のある女性にアプローチしています。
最も人気のある彼女らは、彼以外の多くの相手から会うことを求められており、その中には30代半ば、年収が彼の倍近い、という人もいるんでしょう。
彼の言う「自分には学歴もない」が、大学(か高校)に行っていない、という意味なのか、大学名が一流ではない、という意味なのかわかりませんが、前者であるとすれば、「最も人気のある20代女性」から立て続けに断られたのも、そんなに不思議ではありません。
そもそも、20代で結婚紹介所に登録している女性が求めているものを想像してみましょう。彼女らは「つきあっていて楽しい男性」を探しているわけではないでしょう。まだ平均結婚年齢にさえ達していない女性が、わざわざ紹介所に登録するのは、恋愛相手ではなく結婚相手を探すためです。
こういうシステムのなかでは、会うまでは条件がすべてです。会う前に彼女らが“検索”に使いそうな要素を考えれば、この男性が“モテない”のは不思議でもなんでもありません。
ただし、今回出ていた男性、とっても誠実そうでいい感じだったので、このテレビ出演を機に結婚できるんじゃないかとは思いましたけど。
さて、この番組を見てちきりんが考えたのは、「こういう男性は、なぜ今まではナンの問題もなく結婚できていたのか?」ということです。
データを見る限り、1970年代までは男性はほぼ全員結婚できており、年収が低くても学歴が低くても結婚できていたはずです。
データ: 年齢別未婚率
なんで昔は、学歴も年収も低い男性でも、結婚できていたんでしょう?
ひとつは、「昔は女性が、結婚するために敢えて自分のスペックを押さえていたから」でしょう。ちきりんの母は、自分の父から「女が大学なんて行ったら結婚できないからダメ!」と大学進学を反対されています。
もう少し後の世代(今の50才くらい)でも、同じ理由で親から「短大でないと進学させない」、「女子大でないとだめ」と言われた女性はたくさんいました。東大に行けるのに、お茶の水大学に進んだ女性がいたのです。
同じ理由で「理系学部なんて行ったら結婚できない」とか、「一人暮らしなんてしたら結婚できなくなるから地元の大学に通え」と言われた女性もいたはず。庶民層なら家政科、ハイエンド層なら英文科に進ませるのも、女の教育なんて「いいところに嫁にやるためのものだった」ことをよく表しています。
当時の女性にとって、「結婚できる、できない」は死活問題でした。結婚できなければ食べていけなかったのです。だから結婚するために、自分の学歴をできるだけ押さえておく、というのは基本でした。
この風潮がなくなったことが、学歴のない男性が結婚しにくくなった最大の理由でしょう。図解するとこんな感じですね↓ 番組で紹介されていた男性は、グレーの4名のうちのひとりなのです。
では、年収の低い男性でも昔は結婚できた理由は何でしょう?
こちらの理由は「時代が右肩上がりだった」ことでしょう。20代で年収が低くても、高度成長期であれば全員の年収が右肩上がりでした。
そういう時代には、20代で年収300万の男性と、30代で年収500万の男性なら、前者の方が、20代女性にとっては結婚したい相手だったはずです。普通にしていれば、彼も30代になれば、年収500万円になるからです。
でも今は違います。20代で年収300万円の人が、30代で年収500万になれるかどうかは、誰にもわかりません。ならない可能性も十分にあります。だったら年齢が上でも、年収アップが確定している人の方が選ばれるわけです。
このように、今回紹介されていた、
・若くて
・いい感じの外見&性格で
・学歴はなく
・年収が低い
人は、昔に比べて結婚しにくくなっているのです。
この問題はすぐに「女性が男性に高年収を望むが故のミスマッチ」などと言われがちですが、もう一歩踏み込んで考えれば、
・女性が「結婚するために、自分の教育レベルを上げない」ことをやめたこと
・年齢と収入が相関する、高度成長&年功序列時代が終わったこと
が、根本的な理由でしょう。
最近になって、女性が男性に高い年収を求め始めたわけではありません。昔から女性は男性に経済力を求めていたし、男性は女性に若さや容姿、従順さを求めていました。
特に、「女性が男性に経済力を求める傾向」に関してのみ言えば、全男性が結婚していた1970年代の方が、むしろその傾向は強かったでしょう。当時は「稼ぐのは全面的に男」の時代だったのですから。
私たちが理解しておくべきは、「時代が変わったのに、女性が相変わらず男性の経済力を当てにしている」とか、「女性が男性に高い経済力を求めるようになった」ことが、近年、年収の低い男性が結婚しにくくなってきた理由ではない、ということです。
女性が経済力を全面的に男性に依存していた当時(女性が稼ぐつもりなど全くなかった時代に)、収入が低い男性も含め、男性はみんな結婚できていたんです。当時と変わったのは、そこではありません。
★★★
さて実は、「娘にも(息子と同レベルの)教育を受けさせたい」と考えたのは、「女性だからという理由で、教育レベルを押さえて結婚した世代の母」であったり、そういう女性と結婚した父、であったりします。
今、30代から40代の女性の中には、母親から「これからは女も勉強すべき。手に職を付けるべき」と強く吹き込まれて育った女性も多いのです。
そこには、「女のくせに勉強なんかしたら“もらい手”が無くなる」と脅されて育ち、20代前半にそそくさと結婚させられた母親が、娘の教育に込めた“自らの人生への想い”が、表れているのでしょう。
そんじゃーね
http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/20121012
【第101回】 2012年11月20日 小川 たまか [編集・ライター/プレスラボ取締役]
年収200万円未満の約6倍!?
20代、年収600万円以上の男性既婚率は65%
「女性が結婚相手に求める年収の額は600万円以上」「年収が400万円以下では結婚できない」など、嘘か真かとかく取り沙汰されることが多い年収と結婚の関係。インテリジェンスが年収と既婚率の調査を行ったところ、年収が高い人ほど既婚率が高いという、言ってみれば「予想通り」な結果が出た。では、年収が高い人の既婚率は、低い人と比べてどれほどの差があるのだろうか。
調査対象は25〜39歳のホワイトカラー系職種の正社員もしくは契約社員の男女。調査方法はネットリサーチ会社を利用したインターネット調査。実施時期は2012年10月27日〜29日。有効回答数は5000件。
年収600万円までは比例、700万円以上は横ばい
年収と既婚率の単純そうで複雑な関係
まず、調査によれば、正社員・契約社員として働く25〜39歳の男女全体の既婚率は44%。20代では男性25%、女性15%など、20代、30代前半、30代後半全てで女性の既婚率の方が低かった。インテリジェンスはこれについて、「(女性の場合)結婚後は派遣やパートといった雇用形態に変える人や、専業主婦になる人がいるため」としている。「寿退社」という言葉は最近あまり聞かないが、出産を機に離職する女性は少なくない。
また、調査結果では、20代の場合、年収200万円未満の男女は既婚率が12%だが、年収600〜700万円では65%。年収と既婚率が比例するかたちになっており、20代で顕著な特徴として折れ線グラフの角度が400〜500万円未満(27%)、500〜600万円未満(43%)、600〜700万円未満(65%)の間で急になっている。今年内閣府が発表した日本人男性の平均初婚年齢は30.5歳であるため(2010年時)、20代で65%が結婚している年収600〜700万円層は、「結婚が早い」と言えるだろう。
30代前半、30代後半でも、年収と既婚率は比例しており、年収700万円以上になると、ほぼ横ばいとなる。
さらに、たとえば年収が300〜400万円未満での20代、30代前半、30代後半の既婚率は17%、40%、51%と差があるが、年収600〜700万円未満だと、それぞれ65%、69%、78%と差が少ない。20代で所得が少ないうちは結婚を避けるが、逆に20代のうちに高年収となった人はそれだけ早く結婚を選択する傾向があると言えそうだ。
安定を求めるかどうかがポイント?
最も既婚率が高い職種は「技術系」
調査では、残業時間別の既婚率も調査。こちらは、残業時間と既婚率はほとんど関連性が見られないという結果が出た。内訳としては、残業時間が「まったくない」人の既婚率が48%、「40時間未満」の人が45%、「80時間以上」の人が46%など。忙しさと既婚率に関連がないことがわかるほか、残業時間と年収に比例関係がないのでは……というやや怖い予測もできなくはない。
職種別の既婚率を見ると、最も既婚率が高かったのは「技術系(建築/土木)」で59%、「専門職」(57%)、「営業系」(54%)と続き、既婚率が低いのは「クリエイティブ系」(43%)、「販売・サービス系」(35%)、「事務・アシスタント系」(31%)だった。
前出のデータと合わせると、年収が高い職種だと既婚率が高いと言えるのかもしれないが、筆者がふと思い出したのは、建築関係の大手企業に専門職として勤める25歳男性に取材したときのこと。彼はすでに結婚しており、「学生時代はアパレル関係の仕事がかっこいいと思ったこともあったが、今は人の生活になくてはならない建築という仕事に関われていることに安定を感じている」と話し、職場内結婚が多いことを教えてくれた。職種や業種が異なる会社の社員に取材するとわかるのは、「結婚観」や「ライフプランに対する考え方」は、その会社の社風に左右されるところが大きいことだ。
高年収でもベンチャー企業では既婚率が低いというデータがあるのかはわからない。ただ、職場が安定志向なのか、それとも刺激を求める風土があるのかは、年収と同じく既婚率と大いに関係があるのではないだろうか。
(プレスラボ 小川たまか)
http://diamond.jp/articles/print/28155
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