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(回答先: なぜ昔は、学歴も年収も低くても結婚できていたのか 年収200万円未満の約6倍!? 20代、年収600万円以上 投稿者 MR 日時 2012 年 11 月 20 日 11:51:59)
2012-10-18 国が貧しくなるということ37
「個人が貧しくなる」ということについては、イメージがしやすいですよね。
毎月カツカツの生活で、ご飯は古々米、おかずは夕方以降の安売りで調達。というか、大半はバイト先のコンビニから売れ残りの弁当を貰ってきて食べている。
300円未満のファストフード以外は外食もしないし、お酒もタバコもやらない。もちろん洋服や家電も何年も買っていないし、旅行もしない。てか電車に乗らない。
歯が痛くても熱が出ても寝て治し、携帯は6年前に買ったガラケーをまだまだ使う。冷暖房もできるだけ付けない。風呂はシャワーのみ。更に進めば、ガスや電気を止められる・・。
もちろんある程度は借金が可能だけれど、利子を含めて返済が始まれば、結局は借りる前より生活は厳しくなる。
では、「国が貧しくなる」というのは、どんな感じでしょうか? 日本の場合、国が借金できる限度額が極めて大きいので、今のところ「どんどん借金して、消費額は変えない」方針で来ています。だから、みんな「国が貧しくなると、どんな感じになるのか?」が具体的にイメージしにくい。
というわけで、ちょっくら考えてみましょう。(増税側ではなく、支出側ね)
1.現金給付が遅れ、かつ、削られがちになる
生活保護、障害者年金、国民年金などが、一律に2割減、3割減になる。しかも支給日に振り込まれず、数日から1週間は遅配になることも多くなった。生活保護に関しては、一部が現物支給となる。福祉が適用されないために、路上で生活する人が増える。
2.すぐに命に関わる病気以外は医療保険が適用除外になる
虫歯や風邪、花粉症、禁煙やコンタクト処方のための眼科など、すぐに命に関わるわけではない病気の治療は、医療保険が効かなくなる。歯医者に行けばすぐに1万円、2万円と言われるため、お金持ち以外は歯医者なんて行けない。
価格の高い効果的な薬は保険適用されなくなり、お金持ち以外使えない。最新の手術機器や新技術(iPS細胞関連も!)を使った治療法も、軒並み保険適用外となり、数百万円は当たり前にかかるようになる。結果として一般の人は高度医療の恩恵を受けられない。
3.公の建物はメンテされない
公営住宅のメンテは行われなくなり、壁が壊れても、風呂釜が壊れても一切、修理されなくなる。(自己負担で修理するのはOK)
公民館や図書館、公園、市役所、学校なども、クーラーが壊れても、ドアや窓が壊れても修理されない。割れた窓には段ボールなどが貼られはじめる。美術館など維持費の高い施設は閉鎖される。
道路もひび割れが多くなり、時には信号の電球が切れている。特に使用量の多い都心近くの幹線道路や高速道路は、痛みが激しく安全性に不安が持たれ始める。
4.公共サービスが削減される
赤字バス路線は廃止。第三セクターの鉄道も廃止。ゴミの収集が週に1日になる。道路の掃除は行われなくなり、街にゴミが増え始める。街路樹の剪定も行われないので、落ち葉が堆積して腐り、風が吹くと老木が倒壊する。
公園も荒れ放題。市民プールの衛生状態も悪化し、感染症の源となる。救急車も呼んでから30分くらいは来なくなる。大雪の降る地域でも除雪の回数が減り、事実上、冬は動けなくなる。
都市部ではひったくり、コンビニ強盗などが増え、治安も悪化する。刑務所の経費を減らすため、執行猶予や仮釈放が多くなる。
5.公務員や納入業者への支払いが滞る
公務員、準公務員の給与の遅配が始まる。ボーナスは削減され、いずれ出なくなる。新規採用はストップし、足りない人手はパートやアルバイトでまかなう。市役所、税務署など、どこの窓口も人手不足で待ち時間が尋常でないくらい長くなる。
納入業者への支払いも滞りがちになり、まともな企業は納入しなくなる。公認保育園や老人保健施設などもスタッフが不足し、子供&老人が溢れかえっているのに、ケアが行き届かなくなって大混乱。
6.不要不急の補助金は全部カット
文化団体、私立大学などへの補助金は全額カットされる。一部有名校を除き、私立学校の多くが倒産する。国公立大学も授業料が大幅値上げされ、親が金持ちでない学生は進学率が下がる。もしくはバイトに明け暮れたり、借金を抱えることになる。
存続のために巨額の補助金を必要としていた大赤字の地方空港などは、事実上、機能停止となり、飛行機も飛ばないまま放置される。義務教育の間の教科書は貸与制となり、みんなお古を使う。人口が少ないエリアの学校は統合され、授業はテレビ経由(ネット配信)で行われる。
人口の大半が高齢者で、ほとんど税収のない自治体(収入は補助金のみという自治体)については、財政運営自体が不可能となり、近隣自治体へ吸収合併される。
7.災害復旧なども遅れがち
地震、台風などが起っても、復旧作業は遅々として進まなくなる。土砂崩れも放置、流された橋もそのまま。公的部門の不払いが常態化しているため、業者も前払いでないと仮設住宅の建設を請け負わない。
大災害があった際、助けてくれるのはNPOやボランティアであって、国や地方自治体は何もしてくれないのが普通となる。その他、薬害問題などで国を訴えて裁判に勝っても、賠償金がなかなか支払われない。
8.円が暴落した場合
日本が貧しくなっても、世界の先進国がそれ以上に貧しくなれば、円安にはならない可能性もあるのですが、ここでは「円が暴落した場合」のことも想定しておきましょう。
ドル建ての石油価格が暴騰し、ガソリン、電気代、輸送費などが高騰。大金持ち以外は長距離移動が難しくなる。生鮮食料も高騰し、貧困層は大量生産のインスタントやレトルト食品ばかり食べることになる。
一方、日本の価格競争力は増すので、アジアのお金持ちが東京の不動産を買ったり、人件費のかかる産業を日本でやろうという動きは出始めるかも。海外からの旅行者も増える。
ただし、日本の価値ある資産は、企業も名旅館も風光明媚な場所も、海外資本に買収されてしまうかも。
そしてなによりも、国が一定以上貧しくなれば、「困ったことは国になんとかしてもらおう」という風潮自体が消えていく。
たとえばテレビの討論番組などで、「こんなに困ってる人たちがいる。早急に国が手当てすることが必要だ!」みたいな脳天気な提案は、あまりに白々しく聞こえるため、みんな余り言わなくなる。
http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/20121018
■若者に広がる社会からの孤立
■不安定から抜け出せない 大学中退のリスク
■再チャレンジしづらい社会
□頂いたメール
■家族から孤立する若者たち
□頂いたメール/若者の声
■どうつなぐ若者と社会
□頂いたメール
■2030年 希望ある未来へ
「2030年、私は子育てをちゃんとできているか不安です。」
「親が60、70。介護する人の負担がこれから先も大きくなっていくのでちょっと不安です。」
「希望は別にないです。会社があるかどうか不安です。」
「できればいい社会になってほしいですけど。自分1人でやって何か変わるとも思わない。」
若者たちが社会の中核を担うようになる西暦2030年。日本は一層厳しい時代を迎えます。
高齢化がさらに進み、3人に1人は65歳以上に。
一緒に暮らす家族のいない世帯が4割近くになります。
若者たちは、そうした社会を支えることになるのです。
しかし、今、仕事に就けず、自分の生活すらおぼつかない若者が増えています。
「早く元の軌道に戻したい。ただその方法がいまのところ見つからない」
仕事だけでなく家族との“つながり”も失い、孤立する若者たち。
「寂しいっていう気持ちが強かったから話せる人がほしいし」
“つながり”を取り戻そうと模索する若者も。
「ありがとうございました!」
希望ある2030年を迎えるにはどうすればいいのか。若者たちの姿から未来を見つめます。
斉藤アナウンサー 首都圏スペシャルです。冒頭ご覧いただいたように、今から18年後の2030年は、今も厳しいなと感じている方も多いと思いますが、今以上に厳しい状況が予想されています。そこで、私たちNHKでは、プロジェクト2030と題しまして、どうすれば少しでも希望のある社会に出来るのか考えています。
片山アナウンサー 2030年、将来の社会を支えるのは、今の20代、30代、若者たちです。その若者たち、私も同世代20代なんですけれども、取材をすると、仕事、結婚など、様々な不安を抱えていることが分かりました。
斉藤 今日は73分の生放送ですが、是非皆さんも、一緒に2030年を迎えるわけですから、どうすれば明るくなるのかご意見を募集したいと思います。
片山 ご覧の番組のホームページ、またツイッター、ファックスでお寄せください。寄せられたご意見は随時議論にも盛り込んで行きます。そして番組の、この画面の下でもご紹介させていただきます。
斉藤 お待ちしております。今日は4人のゲストの皆さんとご一緒いたします。
片山 まずタレントの平山あやさんです。
斉藤 美しいレディーに対して年を伺うのはあれですが、今、
平山さん 28歳です。
斉藤 ということは、2030年は、
平山さん えー、40代半ばですね。46歳。
斉藤 冒頭でも不安ですとおっしゃってましたが、
平山さん 2030年っていうのは18年後で、正直そこまで考えたことがなかったんですけれども、どうなっているのかっていうのがすごく不安ですね。
斉藤 そうですね。是非同世代の皆さんの映像も出て来ますので、一緒にご意見お聞かせください。
片山 そして映画監督の井筒和幸さんです。新作の映画では社会に反発する若者たちが主人公なんですよね。
斉藤 井筒さんは、2030年には77歳だそうですね。
井筒さん 生きてればね。
斉藤 どんな2030年をイメージしますか。
井筒さん 僕らの世代の者が、当然その時にいっぱいいらっしゃるわけですから、あなただって例えば40いくつになったって、現役で何かをちゃんとしてるでしょ。
平山さん そうですね。
井筒さん それと一緒のことで、そんなに僕はね、支える人がいなくなるっていうのは、ちょっと言い過ぎだなっていうふうには思います。
斉藤 じゃあそんなに悲観せず、前向きに考える、
井筒さん それなりに。年は1年ずつしか経って行かないから。そんなに急変するというね、氷河期だって明日来るっていうことじゃないんだと。ものすごい時間をかけて、っていうことでの読みだから、同じことですよね。だから、そんなに、それぞれが自覚して、どういう大人になって行くかっていうことさえ考えれば、っていうことだと思うんです。
片山 そして若い人に人気の料理教室を展開しています、ABCクッキングスタジオの創業者、横井啓之さんです。
斉藤 横井さん、本当にもう日々若い方と一緒に触れあっているわけですが、将来を心配しているなっていうような空気は感じますか。
横井さん まあそういう人たちもいますけども、全然前向きの人たちもたくさんおりますよ。
斉藤 そうですか。でもご自身も若い頃には、いろいろ人生に迷われた経験があっての、今の経営者ですからね。
横井さん そうですね。本当、明るい2030年が来るように、監督が言ったように、1年1年しか年取らないから、それまで時間がありますからね、がんばって一緒に未来作りたいですね。
井筒さん 急激にこう、シミュレーションされると、皆とまどうっていうかね、そこが大事なことだと思うんですよ、今を考えるっていうこと
片山 そして、若者の雇用問題に詳しい小杉礼子さんです。
斉藤 小杉さん、もう正直言って僕ら今も大変だぞと思っているんですが、かなり数字だけ見るとね、監督もおっしゃってましたが、数字だけ見るとかなり大変な時代が来るなと僕らは思うんですが、どういうふうにご覧になっています。
小杉さん 若い人たちが自立するまでが大変だっていうのは、これはもういつの時代でも同じだと思うんですよね。で、その目の前の課題をどうするかによって、かかっているわけで、国の研究会でも2030年の労働社会を展望したりしているんですが、やっぱり今何をするかで、全然状況が変わって来るっていう推計が出ています。今、これから何をするかだと思います。
斉藤 そうですね。テレビの前の皆さんは、2030年、何歳になっているでしょうか。ちょっと具体的にイメージしてもらおうと思います。こちらご覧ください。
片山 赤が18歳から34歳。緑が65歳以上です。2010年、4人に1人だった高齢者が、2030年には少子高齢化が進んで3人に1人となります。1人世帯は全体の4割近く、また男性の未婚率は3割、孤立が進んだ社会を今の若者が支えて行くわけなんですね。
斉藤 そうですね。ではその若者たち自身は、将来をどう見ているのかですが、NHKは関東甲信越にお住いの18歳から34歳の若者2000人に、アンケートにご協力いただきました。
片山 将来不安を感じていますか、という質問をしました。将来に不安を感じていますか。感じていると答えたのが、82.2%、もう8割以上の方が感じていると答えたんですね。で、どんな点に不安を感じているのかと聞くと、上位には、生活費、収入、お金のこと、そして次が仕事、勉強と、そういったことに不安を抱えていることが分かったんですね。
斉藤 平山さん、共感出来ます、やっぱり。同世代として。
平山さん そうですね。やっぱり仕事とか、もちろん生活して行くには、生活して行くには、やっぱり仕事をして行かなきゃいけないんですけれども、どういう仕事をしているか、その18年後の自分っていうのは、まったく想像つかないですから。
斉藤 そうですよね。まあ、不況とかね、いろいろ、こう、将来を展望しにくいというところもあるんでしょうね。で、将来に不安を感じる若者たちは、既に今の段階で、社会とのつながりを失って、厳しい状況に追い込まれているんです。
http://www.nhk.or.jp/shutoken/2030/
2012-10-28 「なぜ今は?」 by NHK 「なぜ昔は?」 by ちきりん57
NHKの「プロジェクト2030」という番組が話のタネとしておもしろいです。ネットでも見られます→“プロジェクト2030サイト”
先日は、「なぜ昔は、学歴や収入が低い男性でも結婚できていたのか?」というエントリを書きましたが、今日は「20代のホームレスが増えている」(10月1日放送分)について考えてみます。
こちらも前回同様、番組制作者とちきりんの視座は180度異なります。
NHKの問題意識 「なぜ今は、結婚したい若者が、結婚できないのか?」
ちきりんの関心 「なぜ昔は、誰でも結婚できていたのか?」
NHKの問題意識 「なぜ今は、地方から一人で都会にでてきた若者がホームレスになるのか?」
ちきりんの関心 「なぜ昔は、地方から一人で都会にでてきた若者がホームレスにならずに済んだのか?」
20代の健康な若者がホームレスになるなんて、「信じられない!」方もあるかもしれませんが、
・地方で親と縁が切れ(死別、片親の再婚、借金やアル中での縁切れなど)、
・高卒や大学中退の立場で、
・バイトで貯めた10万円を持ってひとりで東京にでてきても、
・右も左も分からずウロウロ仕事を探してるうち、1ヶ月もたたずに所持金が切れ、
・ある日、道で寝てしまい、それが続いてます、
みたいになるのは、そんな不思議なことではありません。
前回同様、NHK的の視点は「なぜこんなことが起るのか!?」ですが、ちきりん的には「そんなことしたら、ホームレスになるのはあたりまえじゃん。てか、なんで昔はそういう若者でも、ホームレスにならずに済んでたわけ?」です。
というわけで、「なぜ昔は、地方から身一つで仕事を求めて都会にでてきた若者が、ホームレスにならずに仕事を得られ、その日暮らしから抜け出すことまで可能だったのか?」について、考えてみます。
理由(1) 高度成長期は、日雇いの仕事がめちゃくちゃたくさんあった
高速道路に高層ビルに東京湾の埋め立てと、都市周辺には大工事が山ほどあり、地方から身ひとつででてきた若者は、毎日飯場で働くことができました。
人手不足だから日当も高く、その日の宿代、食事代を払っても、真面目な人なら貯金もできたのです。もちろん中には、酒と博打と女でその日暮らしをする人もいたけれど、貯金をしてアパートを借り、定職に就いていく人もいました。
今は、たとえ若者でもいきなり東京にでてきて、毎日朝から晩まで働けるバイトを見つけるのは至難の業です。日当の高い工事現場が減り、時給の安いサービス業が増えていて、一番うまくいっても「その日暮らしができる」というレベルから上に、なかなか抜け出せません。
「若者が身ひとつで都会に出てきて成功できる」のは、経済成長期だけなのだ、というお話です。
理由(2) 昔は、人を雇うインフラコストが無用だった
昔は、工事中に日雇い労働者がケガをしても、なんの保障もありませんでした。出稼ぎ先でケガをし、そのまま放り出されて人生が狂ってしまった人もいたでしょう。
人を集めていた“手配師”も、自身も税金を払ってるんだか払ってないんだかわからないような輩で、資格もへったくれもありませんでした。
また、日雇い労働者は山谷など決まったエリアに住み、手配師がそこによこしたトラックやバスで仕事場に向かうので、交通費も不要です。
しかし、今はこうはいきません。手配師は労働派遣事業者に変わり、様々なコストが上乗せされます。雇う側は労災のリスクや安全義務を守らせるために必要なコストを、人件費から差し引いて払おうとします。
個々の労働者は、少なくなった仕事場までの交通費を自分で負担させられています。日当が7000円で、交通費が片道600円、往復1200円だと、日当の17%が消えていくのです。
もちろんそのかわり、ケガをすれば労災や障碍者認定も受けられます。万が一の時の保障は、昔よりはマシになっていると言えるでしょう。しかし生活の糧となる“手取り”は、確実に減少しているのです。
理由(3) 昔の地方は「地元振興」より「出稼ぎ支援」に熱心で、地元から都会に出ていく若者を支援していた
今でも、アジアや中東の国から、数万円しか持たずに日本にやってくる外国人がいます。そして彼らは、必ずしもホームレスになっているわけではありません。なぜなら、家賃3万円の安アパートに、10人近くが一緒に寝泊まりしたりするからです。
家族でも友達でもないけれど、「同じ福建省の出身」とか、「同じイラク人」とかいうつながりで、遠い異国で助け合い、共同生活をする、という感覚(慣習?)が残っているからです。なかには、その中から成功し、アパートをでていく人も出て来ます。
そういう人は自分の店で、新たに同じ国からやってきた若者を働かせます。こうやって新たにやってきた人達も、身寄りのない異国で職が得られます。もちろん彼らは医療保険にも入ってないし(病気になったら終わり)、時には合法とは言えない分野に足を踏み入れているかもしれません。
それでも、ぎゅうぎゅう詰めのアパートで暮らす彼らは「ホームレス」にはなっていません。
おそらく日本人でも、昔は“県人会”が同じような機能を果たしていたんじゃないでしょうか。特に出稼ぎをする人が多かった東北各県の県人会や、もしくは、その地域から出て来て成功した人が、同じ地域からやってきた若者の世話をする、みたいな風習がある時期までは残っていたのでしょう。
もうみんな忘れそうになっているけど、耐震偽装工事の姉歯さんと小嶋社長の関係はそういう感じでした → 過去エントリ 「機会平等」
ところがある時代から、日本の地方は「東京に働きに出る県内の若い人を応援する」のではなく、「自分の県内でダムや高速道路を造る工事を行い、若者を自県内にとどめておく」という方針に変わりました。
そりゃそうですよね。いつまでも「東京にでていく若者を応援」なんてしていたら、止めどなく人口(特に若者人口)が減ってしまいます。それは県の存亡に関わる問題です。だから霞ヶ関詣でをし、お金をひっぱってきて、原発やダムを県内に造る。そして「県内で雇用を確保する」方針に変えたのです。
この方針転換に伴い、「地方から東京にひとりで出てくる若者」を地元は積極的に支援しない、ということになりました。だから彼らは道で寝るのです。
★★★
こう見てくると、「なぜ昔は、地方から身一つで出て来た若者がホームレスにならなくて済んだのか?」、ある程度、おわかり頂けると思います。
でも今日のエントリで一番言いたいことは、このことではありません。注目すべきは、NHKの視点とちきりんの視点が、なぜいちいち真逆なのか?ということなんです。
なぜNHKは「今はなぜこうなのか?」と考え、なぜ私は「昔はなぜそうだったのか?」と考えるのでしょう?
私の考えはこうです → NHKの考えの前提には、「昔はいい社会だった。なのに今はなぜこんなヒドイ社会になってしまったのか?」という視点があります。彼らが探っているのは、「すべてが巧く廻っていた、高度成長時代の幸せだった日本社会への戻り方」です。
ちきりんの前提は違います。それは「世の中は、基本的にはよりよい方向に向かっている。しかし、変化は今までになかった、新たな問題を生む。それをどう解決すべきかこそが、私たちの考えるべきことであり、“幸せだった昔”に戻る方法を考えてもしゃーないやん」という発想です。
前回の、「なぜ昔は、学歴も収入も低い男性でも結婚できていたのか?」問題についても、「結婚するために、教育を受けることさえ諦めていた女性が多かった昔」より、今の方がいい社会だと(私は)思っています。
しかしそのために「結婚できない男性」が増えているのです。高卒の相手と結婚することを厭わない大卒女性や、東大出身の女性と結婚することを気にしない男性が、まだ十分に増えていません。だから(社会はいい方向に動きつつあるけれど、まだ)問題が残っているのです。
この問題の解決策は、女性が結婚のために高い教育を受けることを諦めていた昔に戻ることではなく、男女の学歴格差への社会通念(男性が上の方が夫婦関係が巧くいくだろうという感覚)を変えていくことです。
同様に、地方から身一つで都会にでてきた若者がホームレスにならないようにするには、昔のような「地方から出て来た無縁の若者がすぐに寝食を得られる、無法地帯的な労働市場」を復活することではなく、「若者を地方にとどめておくための不要な公共工事向けの資金の一部を、その地方から都会に出て行く若者の、都会での当初の生活支援費用として使う」ことでしょう。
大事なことは、「前に進む」という意識を持つことです。
「昔は良かった」という思いを基に、「なぜ今はこんなことになってしまったのか?」と考えるのは、過去を目指す発想です。昭和に戻る方法ばかり考えていては、いつまでも「次の社会」はやってきません。
社会は確実に、昔より良くなっているということを、忘れるべきではありません。過去エントリ 「時代と共に幸せに」をご覧ください。私たちは本当に、こういう“幸せ”を取り戻したいと考えているのでしょうか?
「昔はよかった」と縁側でお茶をすすってるような発想から如何に脱皮するか。問われているのは「前に進む」という覚悟なのです。
そんじゃーね
http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/20121028
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