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退職貧乏父さんにならない方法
大卒ノンエリート社員時代がやってくる!?
6割は45歳以降も一生ヒラ社員
2012年9月18日(火) 羽生 祥子
サラリーマン生活も50歳前後になると、そろそろリタイア後の生活が脳裏をよぎります。 頑張って働いてきた自分、家族を支えてきた妻、社会に出る子供たちに、有形無形で感謝したいと思うお父さん。
…ちょっと待って! 誠実な思いとは裏腹に、「こんなはずじゃなかった!」という人生最後の番狂わせがたくさんあります。早期退職、再雇用、退職金減額に年収横ばい…。シビアな現実と向き合わねばならないニッポンのお父さんたちに向けて、「退職貧乏父さん」にならないためのポイントをご紹介していきましょう。
(この記事は、日経マネーの好評書籍『退職貧乏父さんにならない6つの方法』の一部を転載したものです)
「老後はゆっくり旅行でもして、
小さな庭で野菜を作って、自由気ままに暮らそう。
たまには気心の知れた仲間とゴルフをしよう。夜は近所で飲んでもいい。
贅沢な話じゃない。
そもそも俺も妻も、質素な人間なんだから。
月20数万円の年金をもらって、その範囲で暮らしていこう。
蓄えだって少しはある。こづかいだって月5万円もあれば十分だ。
身の丈に合った生活をしていければそれでいい。それが幸せってもんだ。
何も、心配することはない……。」
これは、誰もが抱く“老後”のイメージかもしれません。
いいえ、イメージではありません。すでに退職したお父さんたちの多くが、こういった平和な生活を送っています。これまでの日本人が“一般的な老後”と考えていた暮らしです。
しかし、現実は着実に変わりつつあります。
公的年金はどうやら3割減を覚悟しなければならないようです。 企業年金も運用がうまくいかず、減る可能性が大きい。デフレでモノの値段は下がって家計は楽だけれど、それゆえ、日本を取り巻く経済状況はかんばしくない……。
薄々感じていた不安が、だんだん形になって現れてきました。
50代に入っても上がらない年収、思うように増えない銀行口座の残高。お金の不安は止まりません。
「退職貧乏父さん」とは、単に預貯金がない人の話ではありません。やみくもに貯蓄に励んだり、しぶしぶ節約をしたり、はたまた無謀な投資をして利益を追っても、それは本当に豊かな老後とは思えないからです。
「退職リッチ父さん」とは、自分の足で定年後も歩めるマネープランを持ち、その上で、自分ならではの趣味や仕事に取り組んでいる人です。
「退職貧乏父さん」、少しきつい言葉です。できればなりたくありません。
そのためにはどんなことに注意しなければならないか。 今から備えられることはあるのか。
まずは45歳以降の年収推移の現実と、退職に向けた人生設計について考えていきましょう。
サラリーマンのお父さん、毎日のお勤め、本当にお疲れさまです。
役職が上がるにつれて責任も大きくなり、成果を出し続けなければならない。そんなハードな勤め人生活も残りあと10年を切ると、有終の美へのカウントダウンが始まります。
「もうひと踏ん張り働いて、さらに偉くなって、収入もしっかり上げよう。退職に備えて貯蓄しよう」
これまでのお父さん達は、こういった「キャリア人生のラストスパート」を50代で実現し、退職後の安泰な生活を手に入れてきました。
……しかし、ちょっと待って。
前の世代と同じような感覚で現在の会社員が50代以降を過ごすと、とんでもない番狂わせが待っているのです。
「40代半ばから年収が300万円も下がった。数年前のリストラで同僚が何人も職場を去っている。次は自分の番か……。」
都内で働く情報会社の担当課長(50歳)は、最近不安を抱きながら通勤しています。年収は300万円下がったけれども、アラフォーの若手社員より自分の年収はまだはるかに高いことも知っています。今でも現場仕事をしながら、心配はつのるばかりです。
このエピソードは、「日経マネー」が取材して聞いた実話です。
中高年の年収は下がり続ける
給与カット、昇進ポストの減少、同僚のリストラ……。どれも今の日本では当たり前になりつつある、サラリーマンを取り巻く不安事です。すでに老後生活を送っている「退職父さん」たちとは、50代以降に見える風景がまったく違うのが分かるでしょう。 実際、バブル崩壊後、40代半ば以降の、いわば「ミドル世代」の年収は下がり続けています。
出所:厚生労働省2010年「労働白書」。「賃金構造基本統計調査」を基に厚生労 働省労働政策担当参事官室にて推計。中学卒、高専・短大卒、大学卒をそれ ぞれのウエートで合算し学歴計としたもの。
厚生労働省の2010年「労働白書」を見ると、年収のピーク時が初任給の何倍かという統計が分かるのですが、1990年は20代前半から50代前半にかけて給料は3倍以上まで上昇していました。
しかし、2000年になるとその上昇カーブはゆるやかになり、2008年では、初任給の2.5倍ほどにとどまるようになりました。20年前と比べると25%のダウンです。
古き良き昭和時代のように、「右肩上がりの給与上昇でキャリア人生のラストスパート」を期待するのは、もはや現実的ではありません。
「若いときには給料が少なくても、中高年になると“後払い分”も含めて給料が上がる」。現在40〜50代前半のサラリーマンは、そうした暗黙の了解のもとで、ライフプランを考えてきたはずです。
しかし、これから自分を待ち受けている給与収入の実態を冷静に知っておかなければ、住宅ローンの支払い、子供の教育費準備、退職後の平穏な暮らしなど、親世代が普通に歩んできた人生すら容易に手に入らなくなる時代になったのです。
年功型賃金は崩れつつあります。
下のグラフを見てください。
出所:厚生労働省2010年「労働白書」。「賃金構造基本統計調査」を基に厚生労 働省労働政策担当参事官室にて推計。中学卒、高専・短大卒、大学卒をそれぞれのウエートで合算し学歴計としたもの。
これは、「日経マネー」が人材紹介会社リクルートエージェント・フェローの海老原嗣生さんに取材して得た、10年後の日本の大手製造業の年収推移予測です。
昇進し続けないと現場に戻り「一生ヒラ社員」
これまでは、「ヒラ社員→係長(30代)→課長(40代)→部長(50代)」というのが、いわゆるサラリーマンの典型的な出世コースでした。このコースをたどり、右肩上がりの収入を期待して働いてきた人も多いと思います。
しかし海老原さんは、「中高年の賃下げはさらに加速する」と予測します。
それは、今後65歳までの継続雇用義務化によって、中高年の人件費がふくらみ、1人当たりの賃金を抑える動きが強まると見ているからです。「2020年には、大卒社員でも管理職になれる人は4割ほどに絞られてくるでしょう。その選別年齢は、今までよりも若くなります」と海老原さん。
第1次選抜は35歳くらい。ここでまず、「一生ヒラ社員、給料頭打ちコース」に進む人が出てくる。つまり、「大卒ノンエリート社員」が増えるのです。大手製造業でいえば年収は600万円前後から上がらない。その代わりに転勤なしで長期雇用が保障される人生です。そして45歳以降も、さらに昇進しないと現役プレーヤーに戻され、ヒラ社員コースに逆戻りすることもありうるのです。
中高年の家計を襲う賃金引き下げの背景には、業績が低迷する中、右肩上がりの年功型賃金を支え切れなくなった企業が成果主義の導入や定期昇給の見直しを積極的にしていることがあります。特に40代に入ると給料が上がらない仕組みを賃金制度に組み込むケースが出てきました。
多くの企業がミドル層の処遇に頭を抱えています。「ポスト不足により部下なし管理職と、役職なしの中高年社員が急増。給料に対してパフォーマンスが見合わない人が増えています」とリクルートマネジメントソリューションズの藤島敬太郎部長はいいます。
年齢が上がれば自動的に年収が上がっていくという時代は過ぎつつあります。成果主義により、年収の差も開いてきました。「大手企業の部長職で1200万〜1600万円と幅が出てきた」と、人事コンサルティング会社ヘイコンサルティンググループの高野研一社長はいいます。
こういった現実を直視して、ひょっとすると自分の給料も頭打ちになり、定年まで年収600万円台という可能性もあることを覚悟しなければなりません。でなければ、老後の生活設計が崩れてしまうのです。
「そこまでして会社にしがみついても給料が下がるくらいなら、いっそのこと、50代で退職金をもらって早期退職した方がいいんじゃないか……」。
こう思った方に向けて、次回のこのコラムでは、「年収が上がらない次代の早期退職のベストタイミング」を考えていきたいと思います。
羽生 祥子(はぶ・さちこ)
日経マネー編集部記者。年金、保険、若者向け資産形成、ポートフォリオ運用、新興国投資、海外ETF、優待投資などの分野を担当。
退職貧乏父さんにならない方法
年収減少、早期退職、再雇用、退職金の賢い使い方・殖やし方など、今や40代から備えておかねばならないマネーの知恵はたくさんあります。退職後の第2の人生、リッチに過ごすためのノウハウをまとめます(この記事は、日経マネーの好評書籍『退職貧乏父さんにならない6つの方法』の一部を転載したものです)。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/skillup/20120912/236710/?ST=print
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