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Paul Craig Roberts
2012年7月2日
アメリカ通商代表ロン・カークが秘密裏に交渉を進めている太平洋横断戦略的協定(TPP)に関する情報が漏洩した。
TPPは“1パーセントの連中の”ための強力な手段と呼ばれている。この協定は本質的に貿易相手国政府に対する外国企業の責任を廃絶させるものだ。
実際協定は、大企業に対し、衛生、安全、環境規制を含む規制によって課される費用の責任を政府に負わせている。
協定は、政府の規制に従うための費用を政府に支払わさせる権利を大企業に与えるのだ。
規制に従うための費用が、公害のような波及効果をもたらす経済活動にではなく、加盟国の納税者に押しつけられようになったら、一体どれだけの期間、環境、労働や金融規制が持ち堪えられるだろうと疑問に思わざるを得ない。
TPPを、新世界秩序の中で世界政府を樹立するためのもう一つの大きな一歩だと解する人々は多い。だがTPPが実際に行うのは、大企業や、彼らの活動の波及効果を、政府の力の及ぶ範囲から外すことだ。
TPPは、国家を支配する権力を企業に委譲するわけではないので、一体どのようにして、世界政府を実現するのかを考えるのは困難だ。実際の結果は、政府規制を免れる階級としての世界的特権を有する大企業階級が生まれるのだ。
条項の一つは、大企業が訴える為に使える民営法廷を創り出すことで、加盟国の裁判所と法律を、大企業が回避するのを可能にしている。
基本的に、大企業に対して適応される国家の法律が、企業弁護士達で構成される民営法廷の判断によって取って代わられるのだ。
TPPは全ての国に開かれている。現在、アメリカ、オーストラリア、ブルネイ、ニュージーランド、シンガポール、ベトナム、チリと、ペルーの間で交渉されている。オーストラリアは、報道によると、民間裁判所制度に従うのを拒否している。
TPPを一体どう理解するべきなのだろうか? 全ての解答を見いだすには、おそらくまだ早すぎよう。だが、それについての幾つかの考え方なら提示できる。
TPPは、新世界秩序掌握だとは思えない。どちらかといえば、TPPは、大企業を政府支配から逃れさせること・・この協定は、各国の大企業に、他の国々の法律に対する免除を与えるのでアメリカ企業もこれらの国々に対して同じ特権を得るのだ。
アメリカ大企業は、ブルネイ、ニュージーランド、ペルー等々、他国々への参入は、アメリカ国内での活動より遥かに大きいと考えている可能性もある。
しかしながら、日本、カナダ、中国や他の国々がTPPに参加してしまえば・・協定によって、アメリカ企業が外国企業以上により多く得られるという見込みは消滅する。
協定はTPP加盟国の全政府が各国の法律を、新しい企業特権が、あらゆる加盟国において、等しく反映されるよう調和することを要求しているので、この点は争点になる可能性がある。調和というのは、ある国の、外国貿易をしていない企業に対する差別的法律を避ける為には、そういう国内企業も外国投資家と同じ特権を認められることを意味しよう。
TPPは明らかにアメリカ大企業が推進している協定なのだから、アメリカ大企業は、それが自分達に相対的に有利だと見ているという含意があるのだろう。しかしながら、この有利さが一体何なのかは良く分からない。
あるいは、TPPは通商協定を装って、規制から確実に逃れることを目指す戦略なのだ。
別の説は、協定の当初の参加国の風変わりな顔ぶれから判断して、協定はアメリカがロシアに対してしたように、中国を軍事基地で包囲するワシントン戦略の一環だというものだ。そのような革新的な性格の協定であれば、まず日本、韓国やフィリピンから始まるはずだろうと考えたくもなる。ところが、これらの国々は既に中国包囲の一部だ。ブルネイ、シンガポール、ニュージーランドと、とりわけベトナムは貴重なおまけだろう。ワシントンがこうした国々に提供しようとしている特権は、アメリカ帝国の事実上の前哨基地となることに対する賄賂の一部なのだろうか?
更に別の説は、ロン・カークはグラス・スティーガル法廃止と金融規制緩和から始まった規制撤廃の考え方にとらわれているというものだ。もし金融市場がすべてを一番良く知っていて、自己規制するので、政府の介入が不要なのであれば、他の市場や事業もそうなのだ。
自由市場経済学者達は、規制を“公用収用”と見なしており、彼らの主張は、規制は、例えば、大企業に、衛生、安全、環境規制に従わせることで、道路建設や、拡張をする際に、政府が私有地を購入するのと同様に、大企業の資産、つまり利益を、奪ってしまうのだという。したがって、規制から生じる結果の公用収用に対し、大企業は補償されるべきなのだ。もし政府企業に環境を保護させたいのであれば、企業がそうする為の費用を、政府は支払うべきだという主張だ。この主張は“外部費用”あるいは“社会的費用”、つまり大企業が、例えば公害や天然資源の枯渇という形で他者や将来の世代に押しつけている費用を忘却している。この主張は、社会的費用を「公用収用」に対する補償にすり替えている。
TPPには様々な狙いがある可能性が高い。我々が更に情報を知れば、TPPの背後にある動機もより明らかになろう。経済学者、元政府高官としての小生の見方は、ロン・カークのTPPにまつわる問題は、協定が、公共の利益ではなく、私益の為に役立つように作られていることだ。
カークは公共の利益の為に働き、それを保護する責任を負っている官僚だ。それなのに、彼は秘密裏に私益と共謀して、公に対する説明責任から私企業を免れさせる文書を作っているのだ。
ここに矛盾がある。金融企業や、今やあらゆる大企業が、政府から独立するようになり、アメリカ国民は法律による保護を失い、今や適正手続き無しに、無期限に拘留されたり、殺害されてしまうのだ。大企業が想像を絶する自由を享受する一方で、国民は全ての自由と、自由を規定していた権利を失うのだ。同様に、アメリカ法は適用されなくなるTPP加盟国としての外国は、テロリスト容疑者を暗殺するために送り込まれるが、単にいつもの暮しや仕事をしているだけの、そうした国々の国民をも殺害してしまう、無人機や軍隊で、アメリカによる空域や国境の“先制的”侵害を被るのだ。
★恐らくアメリカ政府は、無法でいられるという自らの権利を、今や大企業にも拡大適用するというのが、TPPを理解する一つの方法だろう。
今日のアメリカ政府が自分達に対してしか責任を負わないのと全く同様に、TPPによって、大企業が自分達に対してのみ責任を負えば済むようにするのだ。
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