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上西充子教授:「働き方改革」一括法案を、日曜討論で野党が批判 !(上)
http://www.asyura2.com/10/nametoroku6/msg/9468.html
投稿者 青木吉太郎 日時 2018 年 1 月 24 日 17:22:57: jobfXtD4sqUBk kMKW2Itnkb6YWQ
 


上西充子教授:労働時間規制の強化を前面に出しつつ緩和を同時にもくろむ

 「働き方改革」一括法案を、日曜討論で野党が批判 !(上)

(b.hatena.ne.jp:2018年1/21(日) 22:21より抜粋・転載)

上西充子・法政大学キャリアデザイン学部教授:

<要約>

通常国会の最大の対決法案となると見込まれている「働き方改革」関連一括法案。労働時間規制の強化と緩和に関わる法改正を「抱き合わせ」で行おうとする与党の姿勢を、NHK日曜討論で野党各党が厳しく批判した。
 明日22日(月)から通常国会が始まる。政府は64本の法案を提出する予定で、最大の対決法案は働き方改革だと毎日新聞は報じている。

毎日新聞:8:50 - 2018年1月21日

○通常国会:焦点は「働き方改革」安倍首相、改憲論議に意欲 !

 第196通常国会が22日に召集される。安倍晋三首相は「働き方改革」関連法案の成立に加え、宿願である憲法改正の国会発議に向けた与野党の議論を進め、3選を目指す秋の自民党総裁選に向けた実績を作りたい考えだ。
一方、野党は同法案に強く反発するとともに、学校法人「森友学園」「加計学園」などを巡る問題でも引き続き首相を追及する。【水脇友輔】

◆なぜ「働き方改革」関連法案は、対決法案となるのか ?

 野党がこの法案に反対する最大の理由は、労働時間規制を強化する法改正(時間外労働の罰則つき上限規制)と、労働時間規制を緩和する法改正(高度プロフェッショナル制度の創設と、裁量労働制の拡大)を同時に含んでいることにある。
政府は、それらを一括法案によって「抱き合わせ」で成立させようとしているのだ。

◆1月21日のNHK日曜討論で、各党代表が論戦 !

 この問題について、1月21日のNHK日曜討論が取り上げ、各党の代表がそれぞれの見解を示した。日曜討論では、フリップで次のように論点が示された。

働き方改革関連法案(政府提出方針)

▽時間外労働の上限規制 !

 最大 年720時間以内・月100時間未満(※1)

▽高度プロフェショナル制度

 働いた時間ではなく成果で評価→労働時間の規制から外す(※2)など

 上が労働時間規制の強化、下が労働時間規制の緩和に関わる内容だ。規制緩和の側には「高度プロフェッショナル制度」だけが示されているが、以下で長妻氏が指摘しているように、営業などへの裁量労働制の拡大も大きな論点である。

 これらが法改正によって同時に成立した場合、高度プロフェッショナル制度や裁量労働制の適用対象者は、新たにできる時間外労働の上限規制の対象外となる。
つまり、新たに規制を設ける一方で、その規制の「抜け穴」となる対象者を同時に拡大させようとしているのが、「働き方改革」関連一括法案だ。

 このような「抱き合わせ」の一括法案について、各党の姿勢は次の通りだった。

<一括法案に反対>

●立憲民主党・長妻昭代表代行、●希望の党・岸本周平幹事長代理

●民進党・川合孝典幹事長代理、●日本共産党・小池晃書記局長

●自由党・森ゆうこ幹事長代理、●社会民主党・又市征治幹事長

<一括法案に賛成>

●自由民主党・柴山昌彦筆頭副幹事長、●公明党・斉藤鉄夫幹事長代行

<不明>

●日本維新の会・馬場伸幸幹事長

 以下では、実際の各党代表の発言を、解説を加えつつ紹介したい。

なお、発言については、若干のまとめを行った。

☆【日本共産党・小池晃書記局長】

 政府は「柔軟な働き方を可能とする」というが、「残業代ゼロ法案」のように労働時間規制をはずすことは、財界が求めてきたものであり、労働団体・労働者は求めていない。反対してきた。これは結局、労働者にとっての「柔軟な働き方」ではなく、経営者にとっての「柔軟な働かせ方」だ。

 また残業時間の上限が月100時間というが、過労死の過半数は100時間以下で起きている。これでは過労死の合法化だ。(従来から)大臣告示(の時間外労働の上限)は月45時間となっているのだから、これを法令化すべき。

 また長時間労働をなくすというのであれば、長時間労働を野放図に広げるような「残業代ゼロ法案」や裁量労働制の拡大は、まったく矛盾している。撤回すべき。

 さらに「非正規という言葉をなくす」と(首相は)おっしゃるが、現実には今、大変なことがおこりはじめている。4月からの無期転換ルールの実施(転換権の発生)で、400万人の有期労働者・期間従業員が正社員になれるはずが、雇い止めになることが起こっている。これには、ただちに厳格な指導をすべき。法改正もやるべき。

 2017年3月に政府がまとめた「働き方改革実行計画」には「多様で柔軟な働き方を選択可能とする」という表現が見られる。

 しかし、この言葉の裏にあるのは、経営者にとっての「柔軟な働かせ方」だ、というのが小池氏の指摘だろう。
労働時間規制をはずす「高度プロフェッショナル制度」の創設や労働時間規制を緩和する裁量労働制の拡大が実現すれば、経営者は労働時間の上限規制にとらわれることなく、また残業代を実態に応じて支払う必要もなく、労働者を柔軟に働かせることができる。

 「残業時間の上限が月100時間」というのは、新たに設けられる時間外労働の上限規制において、単月での上限(休日労働を含む)が「100時間未満」であることを指している。上限を設けるにしてもそのような過労死ラインの上限であれば、かえって悪影響があるというのが小池氏の見方だと言えるだろう。

 後半で語られている「非正規という言葉をなくす」というのは、安倍首相が2016年9月2日に、働き方改革実現推進室開所にあたって語った言葉だ(「世の中から『非正規』という言葉を一掃していく」)。

 「言葉を一掃」と言っているに過ぎないのだが、非正規労働者の処遇改善に対する意気込みを語ったものとして当時、注目された。

 しかし非正規労働者の処遇改善に取り組むというのなら、いま大きな問題となっている無期転換ルールの適用回避のための雇い止めにも積極的な手を打つべきだ、というのがここでの小池氏の主張だろう。無期転換ルールについては、下記を参照されたい。

●厚生労働省「有期契約労働者の無期転換ポータルサイト」

☆【自由民主党・柴山昌彦筆頭副幹事長】

 まず申し上げたい。長時間労働の是正はこれまで、やらなければいけないと言われながら、できてこなかった。
それが、労使が話し合いをする中で残業ルールの見直しが、例外的な部分(臨時的な特例にあたる部分)についても目安が、目安というか、罰則つきで担保する部分も含めて、できたことは、非常に画期的なことだと言える。

 小池先生が過労死ラインを固定化するのかと指摘したが、決してそういうわけではない。あわせて「ガイドライン」で労働時間の短縮に向けた規定を設けることにしている。そこ(過労死ライン)にはりつかせようということでは、決してない。

 裁量労働制や高度プロフェッショナル制度についても、これは確かに、既存の労働組合の中からは声はでてきていないが、専門性の高い仕事の中で、時間管理しきれない部分が広がっているのは、これは事実。そういったこともしっかりと目配りをすべき。

 裁量労働制や高度プロフェッショナル制度について、「既存の労働組合の中からは声はでてきていないが」というのは、それらを求める声は出てきていないことを指すのだろう。他方で、それらに反対する声は連合からも、全労連からも、出てきている。

●連合:労働基準法改正および労働安全衛生法改正等に関する法案要綱に対する談話
(2017年9月15日)

●全労連:【意見】「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案要綱」についての意見(2017年9月26日)

 裁量労働制や高度プロフェッショナル制度について、自由民主党・柴山氏がここであげている必要性が、「専門性の高い仕事の中で、時間管理しきれない部分が広がっているのは、これは事実」というものであることは、注目される。
「時間管理しきれない」というのはつまり、経営者側の都合を指すのだろう。

☆【日本維新の会・馬場伸幸幹事長】

 労働者側のブラック勤務状態を改善していくのは当たり前の話だが、経営者側も大企業と零細企業では全く立場が違う。
私が地元で話を聞くと、行政側の指導があって、時間がくればパソコンの電源が落ちるようにしている企業もある。
いったいこれが何の経営の糧になるのか、大きな疑問を感じている零細企業の経営者の皆さんはたくさんいらっしゃる。

 もっと時間をかけて、労働者側・雇用者側、十分意見を聞きながら、あまり規制でがんじがらめにすることは、やめた方がいい。

 馬場氏はあえて、話をそらしているように見える。時間外労働の上限規制についても、高度プロフェッショナル制度の創設についても、裁量労働制の拡大についても、明確な意見を表明していない。
ただし、「あまり規制でがんじがらめにすることは、やめた方がいい」という語りからすると、時間外労働の上限規制に反対であるのかもしれない。

☆【公明党・斉藤鉄夫幹事長代行】

 馬場氏の上記の発言を受けた形で島田キャスター(島田敏男・解説委員)は公明党の斉藤氏に、大企業をモデルにして、考えるような仕組みだけじゃ、世の中が回らないという問題が、絡んでいますよね、と話をふった。
それに対する斉藤氏の発言は下記の通り。

 まさに一番大事な点を指摘されたと思う。

 大企業での長時間労働の規制はかなり進んできているように思う。それを中小企業の皆さんにも拡大していく、これは大企業と中小企業の取引関係の改善とか、大きな経済構造の改善を、一緒にやっていかないと、中小企業の皆さんへの恩恵(?はっきり聞き取れず)は進まない。

 しかしそのうえ、もう長時間労働は許さないということで、今回、罰則つきの規制を設けること自体は、これまで70年間の労働法制の歴史の中でなかったこと。
これはしっかりと進めていきたいし、経営者の皆さんに理解していただきたい。

 そのうえで、いわゆる時間規制が適当でない、ふさわしくない業種の方については、これは「残業代ゼロ法案」ということではなくて、労働強化にならない範囲で、労働強化にならないような仕組みを設けたうえで、そういう制度をもうけていくことは、私は必要だと思います。日本のために。

 先ほどの自由民主党・柴山氏の「時間管理しきれない」は経営者側の都合を推測させるものだったが、公明党・斉藤氏は、労働時間規制の緩和を「日本のために」と語っている。少子高齢化が進行する中で経済成長を続けていくために、ということだろうか。

 いずれにしても、自由民主党の柴山氏も公明党の斉藤氏も、労働時間規制の緩和を労働者自身が求めている、とは語っていない。さすがにそのようには、語れないのだろう。

 なお、ここで公明党・斉藤氏は「労働強化にならないような仕組みを設けたうえで」と語っているが、高度プロフェッショナル制度に設けられた健康確保措置が極めて不十分であることについては、下記の記事にまとめた通りであり、「わたしの仕事8時間プロジェクト」のメンバーの追及に対して、厚生労働省担当者は反論ができない状況に追い込まれている。

●「働き方改革」一括法案、連日24時間勤務の命令も可能に。制度の欠陥では、との問いに厚労省担当者は沈黙(上西充子) - Y!ニュース(2017年12月18日)

―この続きは次回投稿します―

 

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