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志位委員長と五十嵐教授の新春対談(第2回)
志位委員長:領土棚上げにした日ロ首脳会談 !
格差と貧困ただす経済民主主義の改革を !
五十嵐教授:正義を軽視したら政治家失格 !
政治転換の機は熟した !
(www.jcp.or.jp:2017年1月1日より抜粋・転載)
○テーマ:日本と世界の今、野党連合政権の展望など !
◆安倍政権は、いたるところで矛盾 !
◆志位さん: 強権政治の歯止めがなくなった
◆五十嵐さん: 後ろ向きの暴走が始まっている
◆志位さん: 世界の動きが目に入らない「安倍外交」
◆五十嵐さん: 世界はあぜんとしたと思う
以上は前回投稿済みです。以下はその続きです。
◆志位さん: 領土棚上げにした日ロ首脳会談
◆五十嵐さん: クリミア併合問題でも逆方向
志位: 「安倍外交」のもう一つの特徴は、国際的な大義と道理に立って外交をすすめるという姿勢があらゆる面でないことです。昨年12月15、16両日のプーチン・ロシア大統領との日ロ首脳会談は、あれだけ鳴り物入りで「領土が進むぞ進むぞ」と言っておいて、領土問題ではまったく前進がなかった。
逆に、歯舞、色丹、国後、択捉の4島での「共同経済活動」にむけた協議に合意する。
この動きは、日本政府のこれまでの立場からも後退なのです。
プーチン大統領は、首脳会談に先立つインタビューで、旧ソ連への「千島列島の引き渡し」を取り決めた米英ソ3国による1945年2月のヤルタ協定を前面にたてて、「領土問題は存在しない」と言った。
それに対して安倍首相は、「領土問題は脇に置きましょう」「まずは経済だ」という態度でした。日ロで「共同経済活動」を行えば、いずれは領土問題の解決の道が開けるという立場に終始した。相手が「領土問題は存在しない」と言っているもとで、「領土問題は脇に置きましょう」と言ったらどうなりますか。領土問題の解決はいよいよ遠のくだけですよ。
日ロ領土問題の根本は、「領土不拡大」という第2次世界大戦の戦後処理の大原則に背いて、ヤルタ協定で「千島列島の引き渡し」が決められ、それに縛られて1951年のサンフランシスコ平和条約で日本政府が「千島列島の放棄」を宣言してしまったことにあります。
私たちは、この戦後処理の不公正の是正を正面から求めることが領土問題解決のカギだと言ってきましたが、日本政府はこの基本を踏まえた外交をやってこなかった。
安倍首相は、「互いに正義を言ってもすすまない」といいますが、日本政府は、一度も「戦後処理の不公正をただせ」という「正義」を主張したことがないのです。
今回の日ロ首脳会談について、年末のNHK「日曜討論」で、私は「だらしのない外交」と言いましたが、もっと言えば大失政と言わなければなりません。
五十嵐: 領土交渉の問題で言えば、“返す返す詐欺”にだまされ、大金をむしり取られた(笑い)。3000億円の経済協力で「新しいスタートを切る」と言っていますが、確かにスタートが切られました。しかし後ろに向かってで、これも“逆走”です。
領土問題は棚上げで、4島の帰属はもとより、歯舞、色丹の「2島先行返還」すら、今後交渉の議題になるのかさえはっきりしない。しかも今回の「共同経済活動」は、ロシアによるクリミア併合に対しEU(欧州連合)が対ロ経済“制裁”の延長を決めた同じ日に経済“協力”で合意したという大問題があります。
日本は世界の動きが目に入らず、逆方向に足を踏み出している。4島での「共同経済活動」が進めば進むほど、定住促進、現状固定、実効支配を強めることになり、返還を遅らせる結果になってしまいます。
志位: そう思いますよ。4島の「共同経済活動」と言いますけれども、ロシアは「ロシアの主権のもとで」と頑強に言ってますでしょ。
ですからそれが具体化される過程のなかで、4島への日本の主権が損なわれること
になる危険性が非常に高い。
だいたい、4島で経済が発展すれば人口も増えるでしょう。そうすればロシアの実効支配・統治が、政治的にも経済的にもますます強化される。「共同経済活動」はロシアの実効支配・統治を後押しするだけです。そうなれば領土問題の解決は、ますます遠のくことになる。
それともう一つの側面は、いまおっしゃったクリミア併合でG7やEUなど国際社会が対ロ経済制裁をやっているときに経済協力を決めた。日本政府は制裁破りをやっているわけです。
五十嵐: そうです。まったく逆のことをやっているわけです。
志位: プーチン大統領からしたら、この点でも大成果ということになったと思うんですよ。二重に大きな問題を抱えた方向に進みました。
◆五十嵐さん: 正義を軽視したら政治家失格
◆志位さん: 戦後処理の不公正の是正を求めよ
志位: さきほど言ったように、私たちは、日ロ領土問題は、戦後処理の不公正の是正を求め、全千島列島の返還を堂々と主張するという立場に立たないと解決できない、この立場に立ってこそ国後、択捉を取り戻す道も開けると一貫して言ってきました。この立場は、今回の日ロ首脳会談の顛末(てんまつ)をみても、いよいよ重要だと思います。
歴代自民党政権の領土交渉にはこの立場がないのが大きな弱点でした。
ただそれでも日本政府の過去の交渉を見ると、経済協力をするときには必ず同時並行で領土問題をやっていたんです。
たとえば1998年の小渕・エリツィン会談のときにも、「共同経済活動」が合意になったんです。
このときは「共同経済活動委員会」と「国境画定委員会」と並行して立ち上げています。
経済をやる場合でも領土を並行でやる。リンクさせる。これが建前だった。
ところがこれすら捨てちゃったのが、今度の安倍首相の「新しいアプローチ」なんですね。「国境問題にこだわっているから進まないんだ」と、領土問題を脇に置いて経済優先でやる。こういう仕掛けをつくってしまった。
今回の日ロ首脳会談の結果は、これまでの自民党の日ロ領土交渉の方針がいよいよ行き詰まり、総破産したことを示しています。
同時に、そうしたもとで、安倍首相が、これまでの歴代政府がいちおうの建前としてきた交渉方針をも、覆してしまったということが言えます。総破産のもとでの大後退なのです。
五十嵐: そうですね。
志位: 首脳会談後の共同記者会見でたいへん印象的なシーンがありました。
安倍首相の方は、領土問題に口をつぐんでいる。
プーチン大統領の方は、延々とロシアが千島列島を得たのは戦争の成果で当然のことだったというような調子のことを言い、安倍首相は隣でそれを聞いているのに一言も反論しない。「安倍外交」がいかにだらしのない、道理をわきまえないものかが典型的にあらわれた一場面でした。
◆野党連合政権へのジャンプの年
五十嵐: 道理や正義、正統性を軽視するような発言は、政治家としてあってはなりません。それはもう、政治家失格ですよ。正しいもののために命を懸けるのが政治家であり、正統性をめぐって競い合うのが政治の本質なのですから。
志位: 旧ソ連が千島列島と歯舞、色丹を不法に占領したんですから、不正義は旧ソ連・ロシアにあるんです。そのことを正面から主張しなければならないのに、「互いに正義を言ってもすすまない」ではだめです。
◆志位さん: 格差と貧困ただす経済民主主義の改革を
◆五十嵐さん: 政治転換の機は熟した
志位: 破たんという点では、経済もいよいよ「アベノミクス」が立ちゆかなくなっています。「アベノミクス」は、「異次元金融緩和」で、円安・株高を演出するのが最大の売りだったのですが、これがうまくゆかなくなっていますね。
五十嵐: 「黒田バズーカ」(黒田東彦・日銀総裁による異次元金融緩和のこと)ですね。インフレターゲットの達成をあきらめてしまった。
志位: 人為的にインフレを起こすリフレーションの提唱者である内閣官房参与の浜田宏一氏(米エール大学名誉教授)も“もううまくゆかない”と白旗をあげてますでしょう。
五十嵐: そうですね。「リフレ派」の転向だと話題になりました。
志位: 国民の暮らしはいよいよ大変になっています。安倍政権の3年間で17・5万円も実質賃金が下がる。15カ月連続で家計消費がマイナスになる。「アベノミクス不況」が世間を覆っている。ここでも転換が必要ですね。
五十嵐: 牛丼の値段を見てればわかる(笑い)。高いものを売るようになるのは景気がいいからで、値段を下げるのは景気が悪くなっているからです。いま下げ始めましたからね。
高いものは金持ちが買うけれど、中間層がどんどん減って貧しい生活を強いられる、可処分所得がなかなか増えないという状況が、庶民のレベルでは続いています。
一時期、景気がいいように見えたのは円安・株高でもうけた高所得層が高いものを買い、
中国などから来た観光客が「爆買い」したからです。
表面的には景気がよくなったかのように見えたけれど、実際はずーっと不況状態が続いている。こういう中で、ものすごく貧困と格差が拡大してきていますね。
志位: そこが日本の社会の大問題ですね。私たちの党大会決議案では、格差と貧困をただし、中間層を豊かにする、経済民主主義の改革を提唱したんです。
決議案には、格差問題という場合、三つの角度が大事だということを書いています。
一つは、富裕層にますます富が集中していること。
二つは、中間層が疲弊・衰退していること。
そして、三つは、貧困層が増大していることです。この三つの角度でみると全体がとらえられるのですが、三つとも非常に深刻になっています。
1990年代後半から20年ぐらいにわたって、新自由主義、構造改革の政策がすすめられました。人間らしい雇用の破壊がすすみ、非正規雇用がどんどん増える。社会保障の切り捨てと消費税の重税、富裕層への減税、大企業減税で、税と社会保障の所得再配分機能が壊されていく。
このなかで、格差と貧困がこの20年間に広がり、「アベノミクス」がそれに拍車をかけるという状況です。ここをただす改革をやろうじゃないかと提案しているんです。
五十嵐: そうですね。ここにも「アベノミクス」のジレンマが生まれています。
つまり、景気が回復しなければ、「アベノミクス」は成長軌道に乗れませんが、その景気回復を「アベノミクス」が阻害し、足を引っ張っている。
少子化の問題にしても、消費が拡大しないという問題にしても、「アベノミクス」がそういう問題を生む根源になっているからです。
安倍首相は最近「働き方改革」ということをさかんにいっていますが、みずから作り出した矛盾を無視できなくなり、それなりに対応しなければならなくなっている。
労働組合に手を突っ込んで野党の支持基盤を掘り崩そうというよこしまなもくろみもあるでしょうが、所得が増えずに庶民の生活が破壊されているという問題、あるいは働き方が厳しく労働時間が長い、非正規が増え、労働現場も荒廃している状況を無視できなくなったということだと思いますね。
志位: そう。無視できなくなっている。ただ、もう一方で、この間やってきたことといえば
労働者派遣法の大改悪でしょ。正社員を派遣に置き換えることを防ぐ歯止めだった期間制限を取り払ってしまう大改悪をやりました。
それから、「残業代ゼロ法案」=「過労死促進法案」をあくまで押し通そうとしていますでしょ。過労死をいよいよひどくする法改悪に執念をもやす。小手先の策はだしているんだけれど、基本は雇用破壊の延長なんですよ。
五十嵐: ええ。それがジレンマだと思いますね。問題は無視できない、解決しなきゃならない、でも解決できない。解決能力を持っていない。本気でやろうとすると経営側は反対しますから。しかし、経営者の利害を損なう形ででも抜本的な解決策を講じなければ、状況は打開できない。さてどうしたものかと悩んでいるんでしょう。
だから私は政治転換の機が熟したと思うのです。
志位: そうですね。たとえば、電通で若い女性社員が過労自殺するという痛ましい事件が起きた。こればかりは、だれも電通を擁護できない。
長時間労働にメスを入れなきゃいけないということを、だれも否定できません。
これは自民党政治がつくりだした、「雇用破壊」の一番痛ましい結果です。
しかし、彼らは「過労死促進法案」は降ろさない。本当にジレンマに陥っている。経済でも政策は総破たんですね。
五十嵐: 統治能力、解決能力を失っているわけですから。もう「ごくろうさまでした」(笑い)と、「さよなら」していただくしかないんじゃないですか。
−この続きは次回投稿します−
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