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日本はギリシャより財政危機?/上野泰也(みずほ証券チーフマーケットエコノミスト http://www.asyura2.com/10/hasan67/msg/546.html
(回答先: 日航はまだ政治のおもちゃ/山形浩生(評論家兼業サラリーマン) 投稿者 gikou89 日時 2010 年 4 月 01 日 05:13:11) http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20100327-00000001-voice-pol ◇国債の格付け引き下げが相次いだ◇ 政府は2010年度の予算案を、昨年12月25日の閣議で決定した。一般会計は総額92兆2992億円で、当初予算としては過去最大規模である。うち公共事業関係費は5兆7731億円(09年度当初比▲18.3%)で、1978年度以来32年ぶりの低水準。一方、社会保障関係費は、子ども手当を新たに計上したこともあって27兆2686億円(同+9.8%)に膨らんだ。鳩山由紀夫首相が唱えている「コンクリートから人へ」を象徴する歳出内訳の変化にはなっている。 しかし、鳩山内閣は既存経費の削減を徹底することができず、(1)マニフェストに掲げた政策の修正や事実上の撤回(歳出と歳入の両面)、(2)「埋蔵金」など税外収入の積み上げ、という2つの手段に頼らざるをえなかった。11年度の予算編成は、10年度よりも苦しいものになる公算が大きい。 政府経済見通しで、10年度の名目GDPは475.2兆円(前年度比+0.4%)程度。10年度の国債(新規財源債)発行額は44兆3030億円なので、国債発行額すなわち財政赤字のGDP比は9.3%という計算になる。 この9.3%という数字は偶然にも、国債が暴落するなど財政危機に陥っているギリシャで、同国の議会が昨年12月24日に可決した10年度予算(対象期間は暦年と一致)の財政赤字対名目GDP比である9.1%と、ほぼ同じである。 ギリシャの予算は、歳入が前年度比+9%、歳出(除く債務返済費用)が同▲3.8%。09年度に名目GDP比で12.7%にまで膨張した財政赤字を、通貨統合参加国の縛りである3以内まで削減していくための第一歩として、赤字を80億ユーロ削減する内容である。だが、不人気な(というよりもストライキなどで社会情勢が大きく混乱する恐れのある)公的部門の賃金カットという施策にはほとんど踏み込まず、大型不動産課税や公務員の福利厚生費削減、脱税取り締まり強化といった、持続性に欠ける財源確保策が中心になった。このため、格付け会社は予算成立の前から、相次いでギリシャ国債の格付け引き下げに動いた。フィッチは昨年12月8日に、BBBプラスへと1ノッチ(段階)引き下げ(格付けの方向性を示すアウトルックはネガティブ、すなわち下向き)。12月16日にはスタンダード&プアーズ(S&P)も、BBBプラスへと引き下げた。さらに、ムーディーズは12月22日、A2へと1ノッチ引き下げた(アウトルックはネガティブ)。やむなく今年2月、ギリシャ政府は追加の財政緊縮策を打ち出した。 ギリシャ国債のさらなる格下げは、大きなリスク要因である。欧州中央銀行(ECB)は、金融危機に対応した10年末までの特例措置として、資金供給を行なう際に受け入れる担保の基準を緩めており、現在の下限はBBBマイナスである。特例措置が期限切れになると、下限は本来の水準であるAマイナスに戻される。仮に、ムーディーズがギリシャ国債の格付けをあと2ノッチ引き下げてBaa1(他の2社の格付けでBBBプラスに相当する)にすると、11年入り後、多額のギリシャ国債を保有している同国の銀行は、それを担保にしてECBから資金供給を受けることができないという、厳しい事態に陥る。 ギリシャ中央銀行のプロボポラス総裁は、1月22日に『フィナンシャル・タイムズ』紙に寄稿し、ギリシャはユーロ圏内にとどまるべきと力説した。ギリシャが抱えているさまざまな問題を解決するにはユーロ圏内にとどまっているほうが有利だ、という。中央銀行の総裁が、ユーロ圏からの離脱というにわかには信じ難いケースにさえ言及しながら主張を展開しなければならないほど、ギリシャの財政危機は深刻なのである。ギリシャがユーロ圏から離脱して別の通貨を導入しても、「魔法の杖」にはならない。その通貨の下落が輸入物価上昇を通じてインフレにつながり、公的債務の返済コストを増やすことになるからだ、と総裁は警告した。たしかに、ギリシャが、仮にユーロを捨てて新通貨を導入する(あるいは旧通貨ドラクマを再導入する)場合も、ギリシャがすでに抱えているユーロ建て国債などの債務は、ユーロ建てのままである。しかも、ユーロと新たに導入された通貨の為替相場はユーロ高の方向に動いていく可能性が高い。したがって、総裁が主張しているように、ギリシャの政府や企業にとって、債務返済負担は重くなる公算が大きい。 「ギリシャがユーロ圏を離脱するかもしれないと示唆する人々は、ホメロスの詩に出てくるセイレンのようだ」とプロボポラス総裁は記した。ホメロスは、古代ギリシャ最大の叙事詩人。セイレンというのは、ギリシャ神話に出てくる、美しい歌声で近くを通る船を難破させた半人半鳥の海の精。誤った誘惑に負けてはいけない、と総裁は主張したわけである。 ◇慢性デフレが反映された名目GDP予測値◇ 1月25日には、ギリシャのパパコンスタンティヌ財務相が独紙『ウェルト』掲載のインタビューで、「ギリシャがユーロ圏を離脱することを断固として排除する」「われわれは独力で財政問題に対処する。財政的な支援を誰にも求めないし、外からの支援にも期待していない」という強気の姿勢を見せた。しかし市場では、誰かがギリシャに救いの手を差し伸べなければ今回の危機は収束しない、という見方が支配的である。 ところが、カギを握る1人であるトリシェECB総裁は、「すべての国は、自分の家は整理整頓しておかなければならない。ギリシャも例外ではない」「ユーロ圏に入っていることで(ギリシャは)経常赤字のファイナンスが容易になっており、すでに支援されているようなもの」といった厳しい発言を繰り返しており、ギリシャ政府の自助努力を促す姿勢を崩していない。ギリシャをECBあるいはEU全体が支援するということになると、ギリシャの信用リスクを統一通貨ユーロが抱え込むことになってしまいかねない。財政関連データのごまかしさえ過去に何度もしてきたことが明らかになっているギリシャという「問題児」を、ECBは安易に救いたくないのである。 また、ユーロ圏各国のなかでは、ドイツの強硬姿勢が、やや目立つ。ユーロはドイツマルクの伝統を受け継ぐ「強い通貨」であるべきだという認識がドイツでは強いため、そのユーロの信認を守りたいという思いが、他国よりも強いのだろう。 2月に入り、ユーロ圏内の財政危機は、ギリシャからポルトガルやスペインへと拡散した。2月中旬のEU臨時首脳会議は、必要に応じてギリシャを支援することで合意した。だが、続いて開かれた財務相レベルの会合が、具体的なギリシャ支援策を打ち出すことはなかった。情勢が一段と悪化した場合に行なわれる緊急支援は、ユーロの信認に影響しかねないEU全体やECBによるものではなく、ドイツやフランスといった主要国とギリシャなどとのあいだの、財政面で厳しい条件を付けた二国間ベースのものになるだろう、と筆者は見ている。 ところで、ムーディーズによる国債格付けA2というと、02年5月に日本国債の格付けがA2まで引き下げられた事件を思い出す市場関係者は少なくないだろう。債券相場への影響は限られたが、この低い格付けが妥当なのかどうか、日本政府も巻き込んで論争が行なわれた。日本国債はその後、ムーディーズによって、07年10月にA1、08年6月にAa3に格上げされた。さらに09年5月、ソブリン格付けの考え方自体をムーディーズが見直すなかで、日本国債の格付けはAa2になり、現在に至っている。 ギリシャ政府を現在率いるのは、パパンドレウ首相。中道左派の全ギリシャ社会主義運動(PASOK)党首で、09年10月4日の総選挙に勝利して、新政権を発足させた。そして、政権の座を降りたのは、中道右派の新民主主義党(ND)党首のカラマンリス氏。両氏ともに政治家として由緒ある血筋である。パパンドレウ首相は、祖父・父に続く、3代連続の首相。カラマンリス氏の伯父は、50年代から90年代までギリシャの大統領や首相を何度か務めた人物。両家の対立関係には、戦後日本の政治における鳩山家と吉田・麻生家のライバル関係を思い出させる面がある。 むろん、ギリシャと日本とでは異なる面もある。政府債務の残高を見てみよう。OECD見通し(09年12月)によると、一般政府債務(グロス)の名目GDP比は、ギリシャが09年114.9%、10年123.2%、11年130.2%。これに対し日本は、09年189.3%、10年197.2%、11年204.3%と、はるかに大きい。 しかも日本経済は、債務の実質価値が増していくデフレ状況にある。欧州委員会による09年秋季見通しで、ギリシャの名目GDPは、09年が前年比+0.6%、10年が同+1.1%、11年が同+3.0%。しかし日本の場合は、政府の09年度の実績見込みが前年度比▲4.3%程度で、10年度見通しはすでに述べたように同+0.4%程度という、慢性デフレが反映された、じつにさびしい数字である。 ただし、同じOECD見通しで一般政府債務(ネット)の名目GDP比を比べてみると、ギリシャが09年86.1%、10年94.6%、11年101.2%。日本は、09年96.5%、10年104.6%、11年112.7%で、両国にはさほど違いがないことにも気づかされる。 このように、ギリシャと日本の財政事情は、いくつかの点でオーバーラップしてくる。しかも、人口減・少子高齢化、慢性的なデフレといったディスアドバンテージがあるだけに、ギリシャよりも日本のほうが本来は、財政が危機的状態だというのにふさわしい。何年かあとで振り返ってみると、ギリシャの財政危機が発生した09年はむしろ、日本という国の経済・財政面での「地盤沈下」がこれまで以上に鮮明になった年として思い出されることになるのかもしれない
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