日本人のガラパゴス的民族性の起源17-1. デニソワ人 :ネアンデルタール人のアジアの姉妹旧人 http://garapagos.hotcom-cafe.com/17-1.htm American Journal of Human Geneticsのデニソワ人の報告です。BioQuick Newsの日本語訳も転載します。 ================================= Denisova Admixture and the First Modern Human Dispersals into Southeast Asia and Oceania David Reich, Nick Patterson, Martin Kircher, Frederick Delfin, Madhusudan R. Nandineni, Irina Pugach, Albert Min-Shan Ko, Ying-Chin Ko, Timothy A. Jinam, Maude E. Phipps, Naruya Saitou, Andreas Wollstein, Manfred Kayser, Svante Paabo and Mark Stoneking Abstract It has recently been shown that ancestors of New Guineans and Bougainville Islanders have inherited a proportion of their ancestry from Denisovans, an archaic hominin group from Siberia. However, only a sparse sampling of populations from Southeast Asia and Oceania were analyzed. Here, we quantify Denisova admixture in 33 additional populations from Asia and Oceania. Aboriginal Australians, Near Oceanians, Polynesians, Fijians, east Indonesians, and Mamanwa (a Negrito group from the Philippines) have all inherited genetic material from Denisovans, but mainland East Asians, western Indonesians, Jehai (a Negrito group from Malaysia), and Onge (a Negrito group from the Andaman Islands) have not. These results indicate that Denisova gene flow occurred into the common ancestors of New Guineans, Australians, and Mamanwa but not into the ancestors of the Jehai and Onge and suggest that relatives of present-day East Asians were not in Southeast Asia when the Denisova gene flow occurred. Our finding that descendants o f the earliest inhabitants of Southeast Asia do not all harbor Denisova admixture is inconsistent with a history in which the Denisova interbreeding occurred in mainland Asia and then spread over Southeast Asia, leading to all its earliest modern human inhabitants. Instead, the data can be most parsimoniously explained if the Denisova gene flow occurred in Southeast Asia itself. Thus, archaic Denisovans must have lived over an extraordinarily broad geographic and ecological range, from Siberia to tropical Asia. ================================= 複数の人種の移動によって形成されたアジアの歴史をDNAが解明 古代から現代までのヒトのDNAパターンを研究している国際チームは、40,000年前のアジアへの集団大移動と人種間のDNAの混合について新事実を発見した。 ハーバード大学医学部とドイツ、ライプツィヒのマックス・プランク進化人類学研究所の研究チームが最先端のゲノム解析法を使って調べた結果、デニソバンと呼ばれる古代人類が、 現代のニューギニアだけではなく、フィリピンとオーストラリアのアボリジニのDNAに関与していることが分かった。このデニソバンとは最古の人類の一種で、 去年シベリアで発掘された指骨のDNAを解析した結果解明された。今回の研究結果はこれまでの遺伝子学研究による説を否定し、現生人類は複数の大移動でアジアに定着したという事になる。 「デニソバのDNAは、人の血管をトレースする医用イメージング色素のようなものです。とても目立つため、個体に少しの量でも存在していればすぐに分かるのです。 このようにして、私たちは大移動した人種の中からデニソバのDNAをトレースすることが出来たのです。これは、人類の歴史を理解するためのツールとして、 古代DNAの配列決定がいかに重要であるかを示しています。」と、ハーバード大学医学部の教授、デイビッド・リーク博士は語る。 今回発見されたパターンは、 少なくとも二回の大移動があったことを示している。一つは東南アジアとオセアニアに住む原住民のアボリジニ、もう一つは東南アジアの人口のほとんどを占めている東アジア人の系統である。 また、この研究は古代デニソバンが居住していた場所についても新たな考察が成されている。マックス・プランク研究所の教授であり、 今回の論文の著者でもあるマーク・ストーンキング博士によると、デニソバンはシベリアから熱帯の東南アジアまでの非常に大規模な生態学的、地理的範囲に移住していたとされる。 「デニソバンのDNAが東南アジアのいくつかのアボリジニに存在しているということは、44,000年以上前にデニソバのDNAを持つ人種と持たない人口が 市松模様のように存在していたということになります。このように、デニソバンの遺伝子を有するグループとそうでないグループがあるということは、 デニソバンが東南アジアに住んでいたとすれば説明がつきます」と博士は説明する。 この所見は、2011年9月22日付けのAmerican Journal of Human Genetics誌に記載されている。 今回の研究は、マックス・プランク研究所のリーク博士率いるチームが2008年にシベリアのデニソバ洞窟でロシアの考古学者によって発見された古代の小指の骨を分析した研究に基づいている。 スヴァンテ・パーボ博士率いるマックス・プランク研究所チームは、この骨の核ゲノム配列を解析し、リーク博士が研究員と開発したアルゴリズムを使って人種の遺伝子解析を行った。 2010年12月のNature誌に掲載された彼らの研究結果によると、デニソバンが30,000年以上前に存在していた古代原人の一系統であり、現代のニューギニア人の遺伝子に関与しているようだ。 デニソバンはネアンデール人でも現生人類でもないが、共通祖先がいるという結論に達している。この論文により、初期の人類がアフリカを離れた時期から 曖昧になっていた人類の進化の過程について説明と、人間が歴史的に混在しているという見解が補完された。 新しい研究は、東南アジアとオセアニアの遺伝子変異の専門家であるストーンキング博士によって始められた。博士は、これらの地域から多様なサンプルを集め全体像の構築を行なっている。 この研究はデニソバンの遺伝子が移動した「足跡」に重点を置いており、研究チームは、ボルネオ島、フィジー、インドネシア、マレーシア、オーストラリア、フィリピン、 パプアニューギニア、そしてポリネシアを含む東南アジアとオセアニアにおける現在の人種の多種多様のDNAを解析した。 既存のデータと新たなデータの解析結果を統合した分析結果によると、 デニソバンはニューギニア人だけでなく、オーストラリアのアボリジニとママンワと呼ばれるフィリピンのネグリト族、また東南アジアとオセアニアのいくつかの人種に遺伝子材パーツを提供している。 しかし、アンダマン諸島のオンジ族(注:Onge族のこと、日本人の縄文人の祖先型のY-DNA「D*」100%の遺伝子集団なので当然デニソワ人とは交配していない)やマレーシアのジェハイ族、 また東アジア諸島を含む西部や北西部の人種はデニソバンと交配していない。 研究チームは、デニソバンは現生人類と44,000年以上前に東南アジアで交配したと結論付けた。 これは、オーストラリア人とパプアニューギニア人が分化する前である。東南アジアは、現在の中国人とインドネシア人とは関係のない近代人種によって植民地化された。 この「南方ルート」仮説は、考古学的な証拠によってはサポートされていたが、強力な遺伝子的証拠は今まで存在していなかった。MITとハーバード大学のブロード研究所、 ドイツ、インド、台湾、日本、マレーシア、そしてオランダからのチームによる共同研究によってこの研究は行なわれた。 http://garapagos.hotcom-cafe.com/17-1.htm 14-9. デニソワ人の新しい研究論文が発表されました。 http://garapagos.hotcom-cafe.com/14-9.htm ドイツのマックスプランク研究所のデニソワ人プロジェクトチームからゲノムの解析結果が発表されました。ScienceのSummaryとBioquickニュースの概要をご紹介します。 ================================= A High-Coverage Genome Sequence from an Archaic Denisovan Individual Science Published Online August 30 2012 Department of Evolutionary Genetics, Max Planck Institute for Evolutionary Anthropology, D-04103 Leipzig, Germany. Matthias Meyer 他33名 Researchers have sequenced the genome of an archaic Siberian girl 31 times over, using a new method that amplifies single strands of DNA. As the team reports online in Science this week, more than 99% of the nucleotides are sequenced at least 10 times, so researchers have as sharp a picture of this ancient genome as of a living person's. That precision allows the team to compare the nuclear genome of this girl, who lived in Siberia's Denisova Cave more than 50,000 years ago, directly to the genomes of living people, producing a "near-complete" catalog of the small number of genetic changes that make us different from the Denisovans, who were close relatives of Neandertals. ================================= Bioquickニュースの紹介記事です。 ドイツ・ライプチヒにあるマックスプランク進化人類学研究所のスバンテ・パーボ博士に率られる研究チームが、デニソバ人のゲノム変異の解析を行い、それが極めて低いことを明らかにした。 これは即ち、デニソバ人が今ではアジア全体に広く分布しているにしても、昔はそれほど人口が多くなかった事を示唆している。 更には、ゲノムの総目録から明らかなのは、遺伝子の変異は古代の祖先の時代ではなく現代人の世代に見受けられる事である。 これらの変異の状況から推察されることは、それが脳機能や神経システムの発達に関係しているのではないかという事である。 2010年にパーボ博士と研究チームは、南シベリアのデニソバ洞窟から発見された指骨の欠片からDNAを単離して解析した。 それは、それまで知られていなかった古代人の若い女性の骨である事が解り、「デニソバ人」と名付けられた。 DNAの2重螺旋を容易に解く技術が開発されたおかげで、それぞれの2本をシーケンス解析に使用し、デニソバ人のゲノムを全箇所に渡って30回以上繰返しシーケンシングする事が出来た。 これによって、解析されたゲノムシーケンスの正確さは、現代人のゲノムを解析する場合の精度と同等の品質のものが得られた。 サイエンス誌2012年8月30日付けオンライン版に発表された最新の研究では、パーボ博士と研究チームは、デニソバ人のゲノムを、ネアンデルタール人及び世界各地から得た現代人11人のゲノムと比較検討した。 その結果、前報にあるように、現在東南アジアの島々に住む人たちとデニソバ人のゲノムがどのように混合されたのかが再確認された。 また、ヨーロッパ人と比較して、東アジアや南アメリカに住む人たちの方が、ネアンデルタール人のゲノムを若干多く含んでいることも明らかにされた。 「東アジア地域で観察されるゲノムが、デニソバ人よりネアンデルタール人により近いという事は、古代のネアンデルタール人の人口は、ヨーロッパよりアジアの方が多かったと推測される。」 と論文では述べられている。 「これは絶滅種族のゲノム情報を極めて高い精度で解析した結果です。ほとんどのゲノムは染色体2対の違いさえも解析が出来、デニソバ人の若い女性についても、両親から受け継いだ夫々について解析出来ました。」 と本研究の筆頭著者であるマシアス・メイヤー博士は語る。つまり、この技術によって、当時のデニソバ人のゲノム変異の発生頻度は、現代人に受け継がれてからよりも低いことが解ったのだ。 これを基に推定できることは、デニソバ人は当初は人口が少なかったが、その後、短期間のうちにより広い地域に広がったという事である。 「今後、ネアンデルタール人の人口推移も同じような経緯を辿った事が明らかになれば、アフリカから発祥した単一集団が、デニソバ人とネアンデルタール人とに分かれていったと推察されます。」 と本研究を率いるパーボ博士は語る。 研究チームは更に、デニソバ人から分かれた現代人に起こった比較的最近のゲノム変異が、10万個程度ある事を明らかにしている。 そして、その変異のいくつかは、脳機能と神経システムの発達に関与するものである事も解っている。その他の変異で注目されるのは、皮膚や目や歯などの形態に関与するものである。 「本研究によって、古代の人類は結果として人口が減ったり絶滅したりした一方で、現代人がどのように複雑な文化的多様性を保ちながら急速に人口を増やしてきたのかを明らかにする道が開けたと思います。」 とパーボ博士は語る。 今年の初め、ライプチヒの研究チームは、デニソバ人の全ゲノムシーケンスを世界の研究者に、オンラインで公開した。 デニソバ人の指の骨がロシアアカデミーのアナトリー・デレビアンコ氏とミカイル・シュンコフ氏によって発見されたのは、彼らがデニソバ洞窟を掘削している2008年の事であり、 考古学的発掘調査によって、人類が生活していたのは遺跡の地層から、凡そ28万年前からである事が確認された。指の骨は、その発見された地層の年代から、5万年前から3万年前位であると推定される。 =================================== この結果は当ガラパゴス史観が推測したデニソワ人はネアンデルタール人の極東ローカル型だ、という推測を支持しました。 東アジアと南アメリカに住む部族の方がネアンデルタール人のゲノムを若干多く含んでいる、という結果は予想外でした。 中東でネアンデルタール人と遭遇したホモサピエンスは遺伝子を受け継ぐほどの交配を重ね、見た目の形質的な影響が大きかった(彫が深いいかつい風貌、赤毛。金髪・碧眼等)Y-DNA「CF」と 見た目の影響が少なかった(ジャガイモ顔を維持した)Y-DNA「DE」に分化した訳ですが、当然「CF」に属する彫の深いヨーロッパ人の方がネアンデルタール人から受け継いだ遺伝子比率は高いと思っていました。 (先に書きましたが、Y-DNA「D2」に無精子症や乏精子症の比率が高いのは、ネアンデルタール人との亜種間交配の負の遺産と考えられます。) 東アジアと南アメリカの遺伝子はY-DNA「M」,「N」,「O」,「S」と「Q」です。いずれもY-DNA「K」から分化した亜型になります。 「R」のみがアーリア人の遺伝子となり西進しヨーロッパ人の主力となり、南下してインドアーリア人になりました。 一方東南アジアの島々の先住民にデニソワ人の遺伝子が受け継がれていると言うことも再認識されました。 オセアニアにはY-DNA「C2」、「M」と「S」という独特な3つのハプロタイプ亜型が存在します。島々に別れて住んだ動物ならその後接触がなければ亜種に分化することは常識ですが、 人間は移動手段を持ち近親婚による遺伝病を防ぐために部族間(島間)の通婚は当然だったはずで、自然のままなら更に亜型が分化する理由はないのです。 あの広いアマゾンの先住民でさえも亜型は見事にY-DNA「Q」のみなのです。 ということは、旧サフール大陸以来の先住民であるY-DNA「C2」ニューギニア先住民とデニソワ人が交配してY-DNA「M」と「S」が分化した可能性も充分にあるのです。 http://garapagos.hotcom-cafe.com/14-9.htm 15-21. デニソワ人との交配で獲得されたらしいチベット人の高高地適応 http://garapagos.hotcom-cafe.com/15-21.htm 「Nature」の2014年8月14日、「チベット人の高高地適応はデニソワ人由来と考えられる遺伝子によってもたらされたらしい」ことが報告されました。 日本人には直接関係がなく、人類の進化そのものにも関係がなく、論文も読みにくく当ホームページの記事にするかどうか迷ったのですが、National Geographics、Answersingenesis、 カルフォルニア大学等のニュース解説を読んでみてやっとわかってきたので遅ればせながら記事にしてみました。興味のある方は是非原文をじっくり読んでみてください。難解でした。 要するに、ホモ・サピエンスとネアンデルタール人との亜種間交配は既に学会でも認められていますが、デニソワ人など他の亜種との交配もそれぞれの地域で少なからずあったと言うことです。 というような前提で本論文の諸解説記事を読んでみました。National Geographicsの解説は「Not Exactly Rocket Science」というカテゴリで紹介されていました。 つまり「えーっ、そうなの?」「ホンマかいな?」という内容を紹介するスタンスのようです。 ネアンデルタール人の東アジア亜種であろうデニソワ人が、ネアンデルタール人と交配し遺伝子を受け取っている我々出アフリカ組ホモサピエンスに、 更にデニソワ遺伝子を残したと言うのは荒唐無稽ではないのです。特にメラネシア人にデニソワ人の遺伝子が残されているとの解析は進んでいます。 高高地適応をもたらすEPAS1遺伝子のハプロタイプはチベット人とのみ一致しており、メラネシア人には高高地適応遺伝子は受け継がれていないということらしいのですが? メラネシア人のY-DNA「C1c(旧C2)」,「M」と「S」の中で、Y-DNA「C」は縄文系海洋性Y-DNA「C1a(旧C1)」の弟遺伝子で本来海洋性のハンターで高地には適応する必要はなさそうです。 Y-DNA「M」はオセアニアの諸島に一般的に見られやはり高地適応する必要性はなかったはずです。 ところがニューギニアの高地(最高峰は4880mもあるのです)ではY-DNA「S」の比率が高くデニソワ人の影響が強いことが期待されますが、 本論分はそこまで広範囲で詳細な調査は行っていないので、残念ながらこれ以上はわかりません。 と言う訳で、最高峰がペルーハ山(4506m)に過ぎず平均すればそれほど高地でもないアルタイ山脈出身と言うデニソワ人が、何故平均高度でも4500mもあるチベット高原の 高高地適応遺伝子をチベット人に渡せたのか甚だ疑問なのですが、遺伝子調査の結論では、チベット人のEPAS1遺伝子のハプロタイプは他のホモサピエンスとはかなり異なり デニソワ人のみと一致したと主張しているので、解析が間違いでない事を期待して受け入れるとすると、 アルタイ山脈で高高地適応したデニソワ人は、南下を始め太平洋に向かい中国大陸を通り抜ける時に、Y-DNA「O1」,「O2」(長江文明系)や「O3」(黄河文明系)の新興遺伝子群との 抗争に負け逃げ込み先が高原しかなかった中国大陸最古の民族であるY-DNA「D1」古代羌族集団と交配しEPAS1遺伝子を渡し、更に高高度のチベット高原での高高地自然選択に勝ち残り チベット高原に棲み付くことに成功した一団がチベット族になったということになりそうです。 課題はこの論文ではY-DNAを調査していないので調査対象はY-DNA「D1」だったのか混在しているY-DNA「O3」も混じっていたのかがわからないのです。 National Geographicsの解説記事では、30,000〜40,000万年前頃にチベット人はデニソワ人と交配したらしいと推測しています。 となると既にY-DNA「O」は分化し始めていた頃ですが、Y-DNA「O3」はまだ分化していなかったと考えられる頃なので、 交配したのはやはり推測通り縄文系Y-DNA「D2」の兄遺伝子のY-DNA「D1」という可能性が極めて高いようです。 という訳で、NatureのAbstructをご紹介します。 ================================= Altitude adaptation in Tibetans caused by introgression of Denisovan-like DNA Nature 512, 194?197, Published 14 August 2014, doi:10.1038/nature13408 Huerta-Sanchez E, Jin X, Asan, Bianba Z, Peter BM, Vinckenbosch N, Liang Y, Yi X, He M, Somel M, Ni P, Wang B, Ou X, Huasang, Luosang J, Cuo ZX, Li K, Gao G, Yin Y, Wang W, Zhang X, Xu X, Yang H, Li Y, Wang J, Wang J and Nielsen R Abstract As modern humans migrated out of Africa, they encountered many new environmental conditions, including greater temperature extremes, different pathogens and higher altitudes. These diverse environments are likely to have acted as agents of natural selection and to have led to local adaptations. One of the most celebrated examples in humans is the adaptation of Tibetans to the hypoxic environment of the high-altitude Tibetan plateau. A hypoxia pathway gene, EPAS1, was previously identified as having the most extreme signature of positive selection in Tibetans, and was shown to be associated with differences in haemoglobin concentration at high altitude. Re-sequencing the region around EPAS1 in 40 Tibetan and 40 Han individuals, we find that this gene has a highly unusual haplotype structure that can only be convincingly explained by introgression of DNA from Denisovan or Denisovan-related individuals into humans. Scanning a larger set of worldwide populations, we find that the selected haplotype is only found in Denisovans and in Tibetans, and at very low frequency among Han Chinese. Furthermore, the length of the haplotype, and the fact that it is not found in any other populations, makes it unlikely that the haplotype sharing between Tibetans and Denisovans was caused by incomplete ancestral lineage sorting rather than introgression. Our findings illustrate that admixture with other hominin species has provided genetic variation that helped humans to adapt to new environments. デニソワ人のようなDNAの遺伝子浸透に起因するチベット人の高地適応 現代人(ホモサピエンス)がアフリカから移住するとともに、それらはより極端な高低温、様々な病原体やより高い高地を含む、多くの新しい環境条件に遭遇した。 これらの種々の環境は自然淘汰の代理人として働き、地域的な適応に結びついた。 人間で最も有名な例のうちの1つは、高高地チベット高原の低酸素症の環境へのチベット人の適応である。 低酸素症経路遺伝子のEPAS1は以前、チベット人の中で正の選択をされた最も最大のサインと確認され、高高地でヘモグロビン濃度の違いに関係していることが示されました。 40人のチベット人と40人の漢族のEPAS1付近の遺伝子の再配列で、我々はこの遺伝子は非常に変わったハプロタイプ構造を持っており、それはデニソワ人かデニソワ人関連の個体からの 遺伝子浸透によってのみ納得できる説明が可能なのです。 広範囲な世界中のより大きな集団セットを走査した結果、我々は、選択されたハプロタイプがデニソワ人とチベット人のみで見つかることを知りました、そして漢民族の中にも 非常に低い頻度であることも知りました。 更に、ハプロタイプの長さと他の人口集団には見られないことから、チベット人とデニソワ人の間のハプロタイプの共有が遺伝子浸透ではなくむしろ不完全な先祖の血統の分類に 起因しているのではないかという他の見方を退けています。 我々の発見物(調査結果)は、他の人類種との混合(交配)が、人類が新しい環境に適応することを助ける遺伝的な変化もたらしたことを示しています。 ================================= National Geographicsの7月2日の解説記事をご紹介します。訳の精度は期待しないでください。 絶滅した人類は高高地適応遺伝子をチベット人へ渡しました チベットの人々は、デニソワ人と呼ばれる絶滅した人類達から継承したある遺伝子のおかげで、誰もが最も居住に適さないと呼ぶ場所の一つである世界の屋根と呼ばれる 高高度の高原上で生き残ることができます。そのデニソワ人は、あなたの手のひらに入る程度のほんの2〜3の骨片から再現された41,000年前のDNAのおかげでほんの4年前に発見されたばかりなのです。 人間の進化の研究がどうしてこれまでもっと刺激的でなかったかの理由を、要約することができるならば、これが理由なのです。 2010年に、カリフォルニア大学バークレー校のラスマス・ニールセンが、チベット人のEPAS1(低い酸素濃度を扱うのを支援する)と呼ばれる遺伝子に変異あることを知ったのです。 この変異のおかげで、チベット人たちは、我々が必要とする酸素濃度より40%も低い酸素濃度の空気に対処することができるのです。そして、我々が暮らすには困難な標高4,000mの チベット高原で住むことができるのです。 EPAS1変異はチベット人の87%および漢民族のちょうど9%で見つかります。2つの民族が3000年前に居住地を別れたとしても、現在まで、人類集団の自然淘汰の最も強力な実例なのです。 しかし、研究チームが更に40人のチベット人および40人の漢民族のEPAS1を配列した時、彼らはチベット人の形が他の民族のものとは信じられないほど異なることに気づきました。 それは、チベット人の血統の中で徐々に変異していったとは思えないほど非常に異なっていたのです。 そうではなく、それは異なるグループ集団から既に変異した形で継承されたように思われました。 他の完全なゲノムの調査によって、研究チームが最後に見つけた出所がデニソワ人だったのです。 チベットのEPAS1は、デニソワ人の物とほとんど同一でした。 そしてそれは今、チベット人に特異的なのですが、それは元はデニソワ人の革新だったのです。 我々は、デニソワ人がどのような人類に見えたかまだ見当もつかないので、この発見はなおさら驚くべきものです。 我々が持っている化石は指節骨、つま先および2本の歯だけなのですから。 これらの破片からのDNA配列のみによって、科学者達は未知の人類の存在を予知し、彼らの全ゲノムを解読することで、彼らの遺伝子がどのように現代人の中に生き続けているか示しました。 デニソワ人のDNAは、メラネシアの太平洋の島々の人々のゲノムの5?7パーセントを占めています。 はるかに少ない比率で東アジア人の中にも生き続けています。 そして今、我々はある非常に有用なデニソワ人DNAがチベット人の中にに生き続けていることを知っています。 デニソワ人のゲノムを配列したSvante Paaboは次のように喜んでいます。 「我々がわずか4年前に発見した絶滅したデニソワ人からの遺伝子拡散が、今日生きている人々のために重要な結果を持っていたことがわかったことは非常に満足である」と彼は言います。 「それは完全な驚きだった」とニールセンは言います。 「デニソワ人ゲノムが我々に公開された後、我々はとても不自然に思えたので、これを試みるには数年かかりました。」 その発見もまた、人類進化の成長する絵(道筋)に対し、多くの亜種間交配を含んでいるという1つの絵を付け加えます。 人類はアフリカで進化しました。そしてアフリカ大陸の外に住む人類は誰もが、先史時代の同時期に出アフリカした比較的小集団(Stanford大学の研究では 合計2000人程度の)のパイオニア的人間の血統を引いています。 これらの先駆者は熱帯サバンナでの生活に適応していました。 彼らは、移動するとともに、極端な気温や新しい疾病のように、世界がつきつけてきた様々な挑戦をすべて経験してきました。 その時既に、ネアンデルタール人とデニソワ人のように、人類の他のグループが世界に居住していました。 出アフリカしたホモサピエンスがこれらのグループに出くわした時に交配があったのです。 またこれらの連携を通してホモサピエンスのゲノムには、長期間に渡って新しい大陸(ユーラシア)に適応した、他の人類からDNAが吹き込まれたのです。 「それは‥‥多くの血統間の遺伝子の交換のネットワークという、人類進化の新しい考え方です。」とニールセンは言います。 ニールセンは、ホモサピエンスは30,000〜40,000年前頃にアジアのどこかでデニソワ人と交配をしたと考えています。 それらは、非常に低い頻度ですが、デニソワ人版のEPAS1を継承し残りました。 EPAS1を持つ人々は、より高い高地でよりよく暮らすことが出来ました。そして子孫達はチベットの高原を植民地化したのです。 これは、なぜチベット人の大部分およびチベットの外部に生きている数人の漢民族にデニソワ人のEPAS1を見つけたかを説明します。 他の科学者達は、ネアンデルタール人との亜種間交配が我々のゲノムに対し、皮膚、髪および免疫系に有用な遺伝子を輸入したことを示しています。 「我々が古代のゲノムから学んでいることは、彼らの各々が我々の祖先に貢献したのはほんの少しだけかもしれないが、それらの遺伝子の流れは役に立つ遺伝子の 小さい金色の情報のかたまり(ナゲット)でいっぱいだったということです」と、人類学者ジョン・ホークスは言います。彼は、私がデニソワ人の化石が見つかったDenisova洞窟を訪ねる直前に、 私に電子メールを送ってくれました。 http://garapagos.hotcom-cafe.com/15-21.htm 「少し驚くことは、デニソワ人が高地にいたわけではなかったということです」とホークスが言います。 それ(デニソワ洞窟)はシベリアのアルタイ山脈中にあります。しかし、そこはあまり高くありません。 もしデニソワ人がEPAS1の高高度バージョンを持っていたなら、彼らも中国と南アジアの山岳地帯に広がることが出来たことを意味します。 「これは、デニソワ人が東南アジアルートに入ったかもしれないことを示しています。そこは我々が知っているホモサピエンスが(出アフリカ後インド洋沿岸に沿って) オーストラリア(サフール大陸)へ向かい東進する行程の途中で、デニソワ人の遺伝子を拾い上げたかもしれない」とホークスが言います。 ニールセンは、デニソワ人は必ずしも高高地に適応してはいなかったと、付け加えています。 デニソワ人版のEPAS1は他の方法で彼らを支援することができ、偶然の一致でチベット人が世界の屋根を植民地化することを可能にしたのです。 もし私がチベット高原へ旅行すれば、(低い酸素濃度のため)私の体はより多くの赤血球を作ることにより対処しようとするでしょう。それは、私の体のあちこちに酸素を輸送します。 しかし私の体は過補償をし、赤血球の過剰産生を引き起こすでしょう。 私の血液は濃く粘着性になるでしょう。そして私に高血圧と脳卒中を生じやすくさせるでしょう。 チベット人はこの問題を抱えていません。 彼らのEPAS1は、赤血球の過剰産生を止めて、自分自身に危害を与えることなく高地に順応するのを援助するのです。 しかし、寒冷気候は、血管を収縮させることにより血圧を上げることもできます。 非常に恐らく、デニソワ人版のEPAS1は、それらが「酸素の不足」ではなく「極端な寒さ」に適応することを支援しました。 「あなたに決定的な解答を出すためには、私はデニソワ人を見つけだして、いくつかの生理学的実験を行う必要があろう」と彼が言います。 「だけど私にはできませんが」とも。 15-21-2. チベット人の高地適応に寄与する遺伝子多様体
「Nature Genetics」の2014年8月14日オンライン版に、「チベット人の高地適応に寄与する遺伝子多様体」という解説記事が出ましたので合わせて報告します。 ================================= Gene variant contributes to Tibetan high-altitude adaptation Nature Genetics Published 14 August 2014, doi:doi:10.1038/ng.3067 Felipe R Lorenzo, Chad Huff, Mikko Myllymaki, Benjamin Olenchock, Sabina Swierczek, Tsewang Tashi, Victor Gordeuk, Tana Wuren, Ge Ri-Li, Donald A McClain, Tahsin M Khan, Parvaiz A Koul, Prasenjit Guchhait, Mohamed E Salama, Jinchuan Xing, Gregg L Semenza, Ella Liberzon, Andrew Wilson, Tatum S Simonson, Lynn B Jorde, William G Kaelin Jr, Peppi Koivunen & Josef T Prchal Abstract Tibetans do not exhibit increased hemoglobin concentration at high altitude. We describe a high-frequency missense mutation in the EGLN1 gene, which encodes prolyl hydroxylase 2 (PHD2), that contributes to this adaptive response. We show that a variant in EGLN1, c.[12C>G; 380G>C], contributes functionally to the Tibetan high-altitude phenotype. PHD2 triggers the degradation of hypoxia-inducible factors (HIFs), which mediate many physiological responses to hypoxia, including erythropoiesis. The PHD2 p.[Asp4Glu; Cys127Ser] variant exhibits a lower Km value for oxygen, suggesting that it promotes increased HIF degradation under hypoxic conditions. Whereas hypoxia stimulates the proliferation of wild-type erythroid progenitors, the proliferation of progenitors with the c.[12C>G; 380G>C] mutation in EGLN1 is significantly impaired under hypoxic culture conditions. We show that the c.[12C>G; 380G>C] mutation originated ~8,000 years ago on the same haplotype previously associated with adaptation to high altitude. The c.[12C>G; 380G>C] mutation abrogates hypoxia-induced and HIF-mediated augmentation of erythropoiesis, which provides a molecular mechanism for the observed protection of Tibetans from polycythemia at high altitude. ================================= Nature Geneticsオンライン版の紹介文を転載しますので、より詳しく知りたい方は原文をどうぞ! チベットの高地民族が極度の高地で生活できるようになった主な要因としてEGLN1遺伝子の多様体を挙げる論文が、今週、オンライン版に掲載される。チベットの高地民族は、 この遺伝子多様体を持っているため、低酸素環境に応答した赤血球の過剰産生が起こらないようになっているというのだ。高地に適応していない場合には、低酸素環境下で、 命にかかわる合併症が起こる。 平均標高が4500メートルを超えるチベット高原は、世界で最も高い場所にあり、そこでの酸素濃度は、海面における酸素濃度の3分の2しかない。そうした環境に適応していない者が 低酸素状態に置かれると、ほとんどの場合、赤血球の過剰産生が起こり、そのために血液の粘度が高くなる。これにより、血流と酸素供給が損なわれ、命取りになることもある。 今回、Josef Prchalたちは、チベット生まれで米国内に居住するチベット高地民族を被験者として、その高地適応の遺伝的基盤を調べた。 この研究では、基盤となる遺伝子の候補についての高分解能解析が行われ、EGLN1遺伝子の多様体が新たに同定された。この多様体は、チベット人全体の約85%に見られ、 チベット人以外の場合の保有率は、わずか0.8%だった。 Prchalたちは、チベット人とそれ以外の人々から採取した血液から細胞を単離し、 EGLN1遺伝子にコードされたチベット型のPHD2タンパク質が赤血球の産生を効率的に抑制するが、その作用は酸素濃度の低い時だけ生じることを明らかにした。 http://garapagos.hotcom-cafe.com/15-21.htm
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