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(回答先: アルテックの世界 投稿者 中川隆 日時 2020 年 8 月 13 日 18:25:52)
ALTEC とWE 755シリーズ について(1)
2016-11-19
https://blog.goo.ne.jp/kobmina/e/c003aa45613620602ef65da5e4ed65f5
大阪のリティルオーディオ(リティルマネジメント)さんに修理に出していた「ALTEC755A」が帰ってきました。
相変わらず匠の腕前で修理前後の写真を見比べても区別がつきません。もちろんトラブルも解消されました。いつものことですが修理後の測定結果も同封されています。
隣町にオフィスがあった時にその作業風景を見学させてもらったことがあるのですが見識の高さと手際の良さに圧倒されました。いとも簡単そうに行うのを見たら「易しい作業かも」と勘違いする私のような素人がきっと大勢いると思う。事実その後はエッジの張り替えや、ボイスコイルの交換、コーン紙の移植などとても敷居が高くてできそうもないと思っていた作業を(無謀にも)行ってきた。うまくいったのも失敗したのもあったがとにかく「駄目元でチャレンジしてみよう」は自分の趣味の世界を広げてくれました。
しかし今回は何と言っても「高額商品」なので師匠(勝手に弟子入り)にお願いした。トラブルは「ビビリ音が出る」で小入力の時は気づかなかったのですが少し大きな音になると発生するというもの。ボイスコイルが当たっていると思われました。同封されていた修理メモでは「ボイスコイルがバラけて外れていた」というもので修理はその部分の巻き直しという内容。過大入力が原因ということですが心当たりはないので以前から発生していたのかもしれない。オークションはいろんなリスクを伴います。貴重な文化財を素人の手で破壊しなくてホントに良かったです。「ALTEC755A」にはもうしばらくは生き延びて貰います。
出典:Lansing HERITAGE
「ALTEC755A」は1954年から製造され自社以外でもAR社のスピーカーにも搭載された。その後極短期間に少数のALTEC755B、1963年にはALTEC755C、1968年にはALTEC755Eが長期間にわたって作られました。このパンフレットによれば「ALTEC755A」のインピーダンスは8Ωのようです。どうも某雑誌別冊のALTEC特集で間違った記載があった様子。(実測DCRからやはりインピーダンスは4Ωのようでこれは間違いもしくは途中で仕様変更があったと思われる)
「ALTEC755A」の源流は有名な「Western Electric 755A」で主に公共の施設などで使われたユニットです。1947年に列車の車内放送用として開発されました。少し前までは米国の病院の取り壊しなどで大量に発見されて輸入されたと噂されましたが最近ではあまり聞かれません。手軽に「Western Electric の音」が味わえるということでとても人気が高く高値で取引されています。建物の壁や天井に埋め込まれていて人の目に触れなかったユニットはとても程度が良いものが多かった。ただ製造されてから70年程度経過していて音質の個体差が結構あると言われています。
20年ほど前に関東のWE専門店を訪れたのもこのユニットの音を聴いてみたいという目的からでした。お店の人が用意してくれたのはCDウォークマンとアンプは忘れましたがソースは女性ボーカルでとても印象的な音だったと記憶しています。結局その時はKENYONのトランスを2個買って帰った。入手したのはそれからしばらく経ってからですが入手先は長野県のお店で送られてきた段ボール箱には「Western Electric」の文字がある!当時完実電気が再発売したWE300Bの元箱だったと思います。その気遣いに感動して思わずお礼の電話をした。やはりリアル店は「お客に夢を売って欲しい」と思う。口上代が高くても構わない。うまく騙して夢を見させて欲しい。。は暴言多謝。
発表は1947年で口径の異なる3種類があった。(伝説のWE750Aはその10年前に発表されている。死ぬまでに聴く機会があるのだろうか?)
これらもとても魅力的ですがWE755A以外は今の所縁がありません。壁の中の狭いスペースに収めるために配慮した設計になっているらしい。口径20cmのパンケーキと呼ばれた厚みの薄いスピーカーはWestern ElectricからALTECが生産を引き継いだわけですが最終型のALTEC755Eまで続きます。(「パンケーキ」の愛称はフェライトマグネットになってからとも言われている)
Western Electric 755AとALTEC755Aの間にALTECが生産してWEに納入した「KS14703」というユニットがありこの3種の音色の比較が話題になることが多い。「KS14703」は見たことはあるのですが聴いたことはありません。
左が「ALTEC755B」で右が「ALTEC755A」
並べてみて違いを探すとフレームの塗装、エッジ、ターミナル、引き出し線、コーンの形態(Bが少し深い)、写真ではわからないがコーン紙の表面手触りなどが異なる。
「WE755A」は現在KSランドセル(KS12046)のレプリカに入っています。実際にはこの組み合わせは無かったと聞いています。
「ALTEC755E」はヒースキットのバスレフ箱に入っています。この箱はSS-1という2wayスピーカーの箱で、その下にウーハーを増設できるという製品。譲っていただいた時ははっきりいってボロボロだったのですが頑張って塗装剥離してオイル仕上げにした。サランネットは手洗い洗濯して再使用です。
ヒースキットは飛行機までキットで売っていて(ヒースさんはその飛行機の墜落で亡くなったらしい)いかにも合理的なアメリカらしい製品コンセプトだと思います。いずれもっと詳しく調べたいと思ってます。
左は「ALTEC755E」、右は「ALTEC755B」
引き出し線はとても細い。ワンタッチターミナル!
コーン紙は基本的に同じではないかと思うほど良く似ている。
左は「WE755A」、右は「ALTEC755A」
ターミナル、引き出し線は同じに見える。「ALTEC755A」をKS12046 ランドセルレプリカ箱に入れて聴いてみます。
KS12046レプリカは改造してあります。本来はボックス内ボックスがあり、ホントに小さい容量の箱なのですがオートトランスなどを載せるボードを切り取って裏蓋を新設しました。密閉箱の容量は2倍程度になったと思います。オリジナル箱では恐れ多くてとてもできない改造です。密閉度を高めるために工作精度には少々気を使いました。吸音材は現在は比較的多めに入れています。
アンプは整備したWE86BでCDプレーヤーからアッテネータ経由で。WE755Aと比較してみると、、基本的には同系統の音味だと思います。「ALTEC755A」の方が線が太い感じ。悪く言えば少しピントが甘い写真。
もう一つの箱(ラックマウント用の金具が付いている)に収まった「ALTEC755A」とも比べてみる。
2個重なってますが上だけ鳴っています。ランドセル(改)と比べても大きな違いはありません。どちらも過不足なく気持ちよく鳴ります。(この箱のバッフル板は割れています。どうやってリペアするか検討中)
数日間聴いてから「ALTEC755B」に換えてみますと、、。
私の耳では「ALTEC755A」よりも「ALTEC755B」の方が「WE755A」に近いのではないかと聞こえました。まず音が軽々と出てきます。ひだが深くてしなやかな感じ。ピントも合っている。
「ALTEC755B」の生産台数はとても少なく入手は困難なようですがこれは要注目かと。私が入手した時は常識的な価格でした。なぜ生産が継続されなかったかですが雑誌の情報では使われているコーン紙は初期の「ALTEC755C」のモノと似ているらしい。そうすると枯渇してきたアルニコ(アルニコV)から次世代のフェライト(インドックスV)への変更だけ、、か。また「ALTEC755A」から「ALTEC755B」の違いで一番大きいのはそれまでのフィックスドエッジからフリーエッジへの変更で以降継承される。目的ははっきりしないがエッジの変更により引き出し線が細くなったりのチューニングが施されていると思われる。
初めて買ったJBLは「LE8T-H」でフェライトだった。当時すでにアルニコ製LE8Tは製造していなかった。学生の身であったので苦労して通販で並行輸入業者から購入。ずっと憧れのスピーカーだったがたどり着くまでにコーラルの「6F60」をカッコが似ているという理由で使っていた。また今でも続いている雑誌の売買欄にあった中古の「LE8T」(たしか17500円だったと思う)が欲しくて相手に送金するも送ってくる気配が無い。そのかわり下宿に警察が来て詐欺事件だという。「被害届を出されますか?」と。昔から悪い奴は居たわけだがやがて彼の父親と名乗る方からわび状とともにお金を送ってきた。嬉しかったのと同時に親に同情した。「LE8T-H」は手放してしまったがその後「LE8T」は出入りはあるが「LE8」と共に使い続けている。
自分の先入観からかどうもフェライトのイメージが悪い。特にJBLユニットは前面から取り付けることが多いが磁気回路が大きければそれはムリ。あの大きさで良かったのだろうか?などと思う。
「ALTEC755B」があまりにも良いので「WE755A」の入ったランドセルと並べて比較してみる。。やはり異なる。。「WE755A」は前にせり出すような凹凸ある音。「ALTEC755B」は奥行きのある凹凸。念のために端子の接続を変えてみて再確認。
KS12046レプリカ箱ですが板厚は曲面加工している部分はかなり薄い箱です。サイドはデザインのためか10mm程度の板が取り付けられている。またオリジナルは(このレプリカももともとそうだったのだが)裏板が本体と独立していて壁にまず裏板を取り付けてから本体を裏板に引っ掛けるような構造になっています。そのとき上下どちらの向きでも取り付け可能で高い位置の場合は下向きに角度がつく取り付け方もできた。ボックス内には棚がありKSナンバーのトライアッド製のオートトランスが組み込まれていた。館内放送のアンプは電送タイプで各スピーカーでインピーダンスマッチングを行なっている。
薄い板厚でボックスの鳴きを利用した音創りについてはよく語られる。かつて極厚板、過剰な補強でとにかく共振を排除する設計がスピーカーに限らず流行したがいつのまにかあまり言われなくなった。床に穴を開けて地面からコンクリートブロックを立ち上げたプレーヤー置き場など今見たらちょっと滑稽な光景。でも当時は良い音に対する熱意は今の比ではなかったと思う。薄い板厚のボックスはなんとなく楽器風で手軽なのだが良い音にするには条件があるようで板の硬さが大切だという。これはバイオリンでも一緒で表裏板加工するときの重要な要素とのこと。(加工時に板を硬くするという技)最近ではビンテージバイオリンの解析が進んできて品格はともかく良い音の製品ができているらしい。ちょっと弾かせてもらったことがあるが国産高性能軽自動車みたいだと思った。ちなみにストラディバリウスも弾かせてもらったことがある。なにか蝋人形のような恐ろしい顔をしたバイオリンだった。どういった経歴かわからないがなにかぞっとするものを感じた。(大抵は血統書のようなものがついていて美しい図鑑でストラドをはじめ有名なビンテージ品は把握されている。業者はそれを見ながらオークションに参加する)バイオリンは各国で作られているが面白いことに地域ごとの序列がある。最高位はもちろんイタリアで現在はクレモナの復興が目覚ましい。かつて日本製のバイオリンが世界を席巻して昔からの産地は廃れてしまったのだが。その他ドイツでも有名なそして悲劇的な生涯のマエストロが存在した。次に東欧、アジアと続く。先ほどのバイオリンは実はアジアで作られたバイオリンのパーツを日本で加工、組み立て、塗装して完成させている。社長によれば木材からの削り出しから行なっていてはとても試行錯誤にならず分業することで数をこなすことができてはじめて発見できた事が多かったと。
バイオリンはいつまでも「選ばれた人だけが操れることができるユダヤの魔法の箱」であってほしいと勝手に願っている。「ALTEC755B」と「WE755A」を聴きながら妄想が広がってしまった。今日は「勤労感謝の日」一日中音楽に浸る事ができて良かった。
最期に登場する「ALTEC755E」
同じようにランドセル箱に入れて聴いてみる。作りは簡素だし、フェライトだし、量産型だし、きっと勝負にならんだろう、、と思ってましたがなかなか聴かせます。低音は豊か、中高音も大きな不満はない。「WE755A」との価格差を考えれば健闘していると思う。
違いは音の手触りというか輝きというか、粒子の大きさ、粉っぽさ、切れ味、実体感、くらいか。もっと言えば同じ系統とは思えないほど異なる音味。「ALTEC755B」と「ALTEC755C」と「ALTEC755E」の違いを聴いてみたいが残念ながら「ALTEC755C」は持っていないので想像の域は出ないがやはり磁石の変化の音に対する影響は大きかったのではないかと思います。バスレフ箱には合わないと言われてますがヒースキット「SS-1」で聴いた時、ようやくその評価が高い事が理解できたような気がしました。ほんの少しツイータで高域を補ったら随分違って聞こえると思います。
お読みいただきありがとうございました。
後日談1
先日数十年ぶりに東京にあるWE専門店を訪れて念願の「KS14703」の音を聴かせてもらった。直前に「管球王..」の取材で使われたもので1本だったがD氏の匠のチューニングも合わさってとても好ましいものだった。WE,ALTEC755Aとの違いは同一条件で比べてみないとわからないし個体差も加わってビンテージユニットの評価は難しい。入手して音出ししてたとえ気に入らなくとも「◯◯」製品なのだからいい音がするはずだ! という強い信念のもとで粘り強く頑張るしかない。
6 コメント
ALTEC 755 について (小平 忠利)
2017-05-25 19:51:52
はじめまして。
長野県駒ケ根市の小平と申します。
貴殿様のプログ拝見いたしまして
ALTEC755Bの存在をしりました。
音の出方の説明で当方の好みに合って
いるようにおもいますが今現在755Bは入手可能なのでしょうか?
不躾で申し訳ありませんが商品の有無付きましてご存じでしたらお教えください。
是非、死ぬまでに一度自分の部屋で聞いてみたいと思いました。
駄文で恐縮ですが御返事いただければ幸いです。
755シリーズについて (koban)
2017-05-25 23:21:41
こんにちは、投稿ありがとうございます。「ALTEC 755B」は一連の755スピーカーでも特に生産年数が短かったためか市場で見ることは稀です。雑誌「管球王国」の試聴記事でも高い評価でした。なぜ短命だったかは不明ですが生産上の問題があったのかもしれません。入手についてはやはり専門店への問い合わせになるかと思います。
755について。 (Rafael)
2019-08-30 18:06:32
小生あまり雑誌を見ないのでこの世界どうなっているのか良く知りません。でもAltec755Aを入手しておよそ50年、しばらくして755Bが加わり、途中遍歴はあったものの、結局何は無くとも755になりました。
755BはC,E同様布エッジでも気のせいか755Bのほうが好ましい。C,Eは少々能率が低いようでバランスは755Aが最も良いと
思います。
再度755について (Rafael)
2019-08-31 13:34:57
20年ほど前755Eのエッジに初めから付いていた藁ゴミのようなものが気になりビスコロイド剤の溶剤で除去を試みても固着してとれない、eBayでC、E用のコーンを入手して交換しました。そこで755Bのコーンと比較するべく計測をしたら、BよりもC,Eのほうが深い、つまりBはAをふくめて以降のものより浅く平たいことになります。マグネットの相違と共にA,BとC,Eとの音の違いになるでしょう。
ところでKobanさん、A,B,C,EとあるのになぜかDを見たことが無い、USの知人に問うても不明です。なにか情報を持ってらしたら教えて下さい。
また755です (Rafael)
2019-08-31 13:59:04
書き忘れてまた投稿します。小生の755Aは当時シカゴのAllied Radioで扱った物を元箱付で、ワシントン州のお客に送りインボイスも付いていて日付けは1951年4月となっている。Kobanさんの記事では755Aの発売は1954年ですが資料の出典を含めて教えて下さい。
ALTEC 755 (koban)
2019-09-04 12:17:22
コメントありがとうございます。
個体差があるかもしれませんが文中にもありますようにコーン紙の形状については拙宅の755Aは他と比較して浅くその他の(A以外)は似ていました。A製造年の原典は探してみます。
ALTEC 755Dについての記述は私も見たことがありません。周波数レンジと耐入力はWEとAは共通で(そうするとインピーダンスが異なるという記述は怪しくなる)Eではかなり拡大されています。使用の目的は大きな変化は無かったと思われますのでモデルチェンジはコストダウン、アルニコからフェライトへの変更、前述のレンジの拡大が主な理由かと思いますが気になるのは聴いたことのない755Cです。オークションでは評価が高いようで結構な価格設定になってるみたいですね。
音楽ジャンルの変遷に合わせてフルレンジを諦めてマルチへ移行したのは必然で、もちろん現在でもフルレンジは存在しますが一部の好事家が対象でその市場は小さくなるばかりです。電気信号を音波に変換するスピーカーは個性の塊で様々な矛盾をどう料理するかはまさに匠の技、それを必要とした時代の製品に魅力があるのは当然でその当時の遺産で私たちは楽しんでいます。心配なのはコーン紙の寿命でオリジナルはいつか絶滅するのではないかと思っていますしスピーカーに限らず工業製品の旬な時期はすべてのプロダクツにあるわけでそれを過ぎたものは骨董品と呼ばれます。大切にしかし仕舞い込まずに使っていきたいと思います。
古い時代のフルレンジは直熱3極管シングルアンプと相性が良い、、というイメージがありますがそう単純ではなさそうで私はWEについては耐入力に気をつけながら5極管PPなどでちょっとパワーを入れた方が気持ちよく聴けます。素性の良いアンプではとても自然に聞こえますし音味は蓄音機が最も近い感じがします。どこからか聞こえてくるのではなく引き込まれるような音で蓄音機や陣笠と似た世界です。
https://blog.goo.ne.jp/kobmina/e/c003aa45613620602ef65da5e4ed65f5
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