Decca Decolaがお嫁入り EMT155(st)について(1) 2017-09-15 https://blog.goo.ne.jp/kobmina/e/51e066783e0c466d25b2e2502d12fa87 EMT155stはソリッドステート構成のEMT155をステレオ対応したもの。両者の回路は同一で電源基板は共通。異なるのは増幅率だが基板上の結線で切り替え可能。 (出典 http://www.audiosharing.com/archive/german_audio/emt/) 入力トランス「T890」は1:10の昇圧だが2次側出力は2つのゲインの選択ができる。回路図では「c」の結線先が「d(1mV)」か「e(10mV)」になっていて基板図ではジャンパー線で選択するようになっている。 手持ちの2台のEMT155で確認すると右下に各々「T890」入力トランスがあり(基板図はパーツ面からなので裏面)緑色と茶色のジャンパー線があって「緑がd」に「茶色がe」に繋がっていて10倍のゲイン差がある設定。d接続だとOFシリーズのカートリッジでは入力オーバーで歪んでしまう。ではEMT155stではどうだろうか? やはりEMT155と同じ基板(と思われる)2枚。ジャンパー線(茶色)は当然「d」に接続されている。ケースを外すと2枚の基板が上下面に現れてジャンパー線の変更も容易。EMT155と並べて内部を比べると 4連と2連のボリューム、ロータリースイッチの違いが目立つがそれよりもEMT155の下部の空間と電源基板の電解コンデンサーと出力トランスの位置関係が目につく。トランスを避けてコンデンサーを配置している所などから開発の段階で既に将来のステレオ対応を考慮したのは確実。狭い空間にうまく収めていてメインテナンスもやりやすい。フォノイコライザーをモジュールと考えて何か不具合があればモジュールの交換で緊急対応したのだろうと思うがとても美しくて合理的。大したもんだと改めて思います。 回路は信号路に6個の電解コンデンサーがあってトランスの1次側にも入っている。(ここだけ異なるのだが)EMT155stでは入力トランスにも電解コンデンサーが入っているのはなぜだろうか?メンテナンスする場合はイコライズカーブのチェックとともにコンデンサの良否の判定、交換がメインイベントになりそう。TMD,TNDなどのモノラルカートリッジを使用しRIAAカーブで再生する場合は表示「NAB RIAA DIN33,45」にすればステレオ時とカーブは変わらずモノラルで両ch出力される。 通常EMT155stの表示板にはステレオ表記はあるのだが拙宅の表示板には無い。 どうもこれはEMT155用の表示板と思われる。ステレオは5段、モノラルは4段の切り替えで当然ステレオポジションは無いわけでフォノイコライザーユニットの種類が変わっても表示板の交換で対応したわけだがステレオポジション以外は共通。 またEMT153stは持ってないがプレーヤーデッキ上の切り替えはなくなり表示板を取り去った後の「穴」を塞ぐためのメクラ板が供給されている。本体にモノ、ステレオ切り替えと出力ゲイン調整ツマミが付いていてスクラッチフィルターは省略されている。入力のゲイン切り替えは入力トランスの1次側をパスすることで行なっているが「パス時には2次側の負荷抵抗を18kΩから68KΩに変更せよ」と書いてあるのでこれはMMカートリッジなどの高出力ハイインピーダンスカートリッジ対応の指示かと思います。OFシリースを入力トランスに入れてももはや歪まなかったのでは無いだろうか?信号路のコンデンサーも少ないし(それでも電解コンは入っているが!)真空管からオペアンプまで同じ本体で対応していたわけで。EMT928の内蔵EQとの違いは初段がオペアンプになったこと、オプションだったtreble adj.が無いことだが入力トランスは同じ、LINEアンプ部はほぼ共通の回路だが供給電圧が異なる。EMT153sは安定化電源まで搭載している。 電子機器が推移していく一方で肝心のメカ部分は全く(と思うけど)変化していない。匠による機械の設計と製作技術は最初から完成されていたわけで。 https://blog.goo.ne.jp/kobmina/e/51e066783e0c466d25b2e2502d12fa87
Decca Decolaがお嫁入り EMT155(st)について(2) 2017-09-16 https://blog.goo.ne.jp/kobmina/e/a2637b8611b8528bb796c4af59059aed
EMT155(st)の整備をする場合にはプレーヤー本体から取り外して測定、整備する必要があり別電源を用意するかプレーヤー本体から電源を引き出すかする必要があります。EMT155(st)の電源の供給はプレーヤーの種類に応じて2種類あって前期は直流(12V〜15V)と交流(6.3V)の2系統、後期は交流(12.5V 145mA)1系統でどちらの形式のプレーヤーでも動作するようにEMT155(st)は設計されています。これはEMT927(st)と前期のEMT930(st)は管球式フォノイコライザーのEMT139(st)を標準搭載していたためで後継のEMT155(st)との互換性を持たせるための工夫だったわけで真空管のヒーター電源を利用しています。ところでEMT139Bのヒーター電源は初段のみ直流点火だが電圧は6.0V、しかしEMT155(st)へ供給する直流電源部(7aと7b)の電圧表示は回路図では12V〜15Vになっている。これはヒーター回路に接続すると消費電力が大きいため電圧降下を起こすことを見越した設計らしい。このヒーター回路にはブリーダー抵抗も入っていて将来のソリッドステート化を見越しての設計だった、、とは思えないがちょっと興味深い。電源は自作することにするが当然トランス1個で足りる交流1種類(後期型)にすることにします。適当なケースに16ピンコネクターと入出力ジャックなどを組み込んでみる。
AC12.5Vは適当なACアダプターを分解して整流回路を取り外して改造した。しかし接続時にAC12.5Vにするにはどうしたらいいのかよくわからない。高い電圧をスライダックを使って実測しながら調整することにします。最終的に抵抗をACに入れるかコネクター7aと7bの間の直流に入れるかはまた検討します。 実際に接続してみるとAC145mAの負荷ではほとんど電圧降下を起こさないことがわかりました。 早速配線して音出ししてみる。
、、、盛大にハムが聞こえる。EMT139Bの経験が役に立ってないぞー。入力ジャックはシャーシアースに接続されているが出力トランスの2次側はアースしてはいけなかった。ピンジャックをフロートするとハムは消えるがうまく処理できるだろうか。。 手直ししてEMT155(st)アダプターは完成しました。 出力トランスの出力は接地していません。今まで使っていたスイッチクラフトのRCAジャック用の絶縁スペーサーもあるらしいのですが残念ながら手元にはないので色々考えた末に2連の端子板付きのジャックとなりました。芸がないなぁ。。また買いに行ったパーツ屋さんにDC7.5Vのアダプターがあったのでトランス2次側のセンタータップ出力だとすると両端で丁度12.5V程度のACが取り出せそう、、と目論んで購入したのだが分解してみるとセンタータップなしのブリッジ整流であえなく却下となった。300円だったからまあいいか。。今まで使っていたアダプター内に電圧ドロップ用のホーロー抵抗を仕込んで両端接続でなんとか14Vにして対応。 これで聴いてみると、、快調です。トランスケースの発熱も問題ない。これでようやくEMT155(st)の整備ができる環境が整った。また単独使用時にもアダプターとして重宝しそう。 EMT155stの回路図を見ていて気づいたことですが途中で変更があったようで後期の回路図の入力トランスの1次側には33μFのコンデンサーが入っている。EMT155には無いモノなので気になっていたのだが初期のEMT155stにもこのコンデンサーは無い。なぜ追加されたのだろうか?? TSD15用の昇圧トランス STX 20
中には昇圧トランス T890/1 が(このトランスも大きさの異なる2種類あるようだがこちらは小さい方)また1次側にはシリーズに33μFのタンタルコンデンサーが、2次側には26.5kΩの抵抗器がパラに入っている。これらは後期型EMT155stの入力部分と同様の回路。またプリント基板上に出ている突起(写真)は1次側と2次側のアースを接続している部分で現在は導通しているがここを切断して切り離すこともできる(という仕様かと思う)実際にEMT930stからのカートリッジ引き出し線を接続するとハムが発生していてEMT155stの場合と同様にここを切り離す必要があった。 ここまで来てこれはやはりEMt930st本体の接続がおかしいのでは無いか、、という気がして来た。信号ラインのアースとモーター関係のアースが混じってしまってハムが載るのでは無いか、、と。回路図と比べると接地を切り離す箇所もあるし。早速実行してみるも目立った変化はなく今後の課題となりました。 EMT155(st)は一連のアナログレコード再生システムの一つのパーツであるわけですがその完成度には改めて感心することが多かった。EMT155とまったく同じ基板2枚を同一のケースに収めてステレオにしていること、仕様変更のあった新旧のプレーヤーに対応していること、内部にトランス以外の電源回路を装備していること、イコライザー回路の他にラインアンプが内蔵されていて出力調整もあることから単独で使用できるくらいの実力もあることなど。EMT155stの後継機のEMT153stはオペアンプを使用しておりスクラッチフィルターとイコライザーカーブ切り替えが廃止され(プレーヤー本体からの操作ができなくなった)性能も飛躍的に向上している(だと思う)。同じ筐体の中に真空管からオペアンプまでのオーディオの歴史の流れを見ているようで妙に納得する。しかし重厚から軽薄に移行したわけでは決してないとは思うが有難味が薄れたように感じるのも事実でこれは自分が技術者ではなくタダのアマチュアオーディオ愛好家だからだと思います。一点EMT各々の機器に共通しているのは増幅素子やプレーヤーのメカニズムは変化しても入出力にはトランスを用いていることでここは譲れなかったEMTのこだわりを感じる。 しばらく聴いていても特に問題は感じないので測定はまた今度にします(測定機器は棚に仕舞ってしまったので)。 EMT155(モノラル)に交換してみる。 電源や引き出しは共通に使えます。モノラルなので当然片chしか出力しない。っと出力はされるが「バリバリ」というすごいノイズが入る。EMT155stに比べるとゲインが低い、、。出力調節の半固定ボリュームをドライバーで回すとさらに特大「バリバリ」でどうやら原因は此処のよう。ゲインが低いのは内部の結線がそうなっているからだった(EMT155(st)について(1)をご参照ください)。 もう一機のEMT155と交換すると 先ほどでは無いがやはりボリュームを回すとガリオーム状態。こちらのゲインはEMT155stと同じで先ほどのと結線が異なっている。 ゲインの確認ができたところでカートリッジをOFD15と交換してみる。 このアームのメインウェイトでは適正針圧はかけることができない(カートリッジが重すぎてカバーできない)。。やはり高ゲインEMT155では歪みます。通常のEMT155stではOFシリーズの再生は無理なようです。 1/10ゲインのEMT155では良好に再生します。しばらく聴いてみる。 シューベルト 死と乙女(Death and the Maiden) Vienna Konzerthaus Quartet (Westminster 国内復刻版)
しばらくTSDを聴いていたが久しぶりのOFDはやはり「強い音」、もしくは「きつい音」かもしれない。これに慣れてからTSDに戻すときっと「腑抜けの音」になってしまうのだと思う。モノラル復刻版なのでOFD15あたりがぴったりかと思います。EMT155stを装着している場合にOFDカートリッジでうまく再生するにはイコライザーをパスして信号を引っ張り出してなんとかするか、EMT155stの内部結線を変更するか、モノラル用にEMT155を用意しておき、取り替えるかする必要がある。なかなか面倒だしTSDに戻す時はまた変更しなくてはならない。。アームの調整(メインウェイトの交換やラテラルバランスウェイトの追加など)もいるしいっそのことモノラル専用のアームを別に設けるのも方法かと思う。EMT930st用に外付けブロックでこれを達成した写真を見たことがあります。EMT927stの場合はボードに穴を開ける必要があってなかなか勇気がいる。(EMT927Fのようにもともとダブルアーム用だった機器には穴が空いています)また新たなアームを取り付ける付近には電源があってノイズ対策が必要になる。現場ではOFシリーズはステレオレコードが主流になってからはあまり使われなかったのではないかと思います。しかしOFD25をはじめ実際に再生してみると圧倒的な魅力に溢れているのも事実でアマチュアとしてはなんとか両立させたいところではある。 https://blog.goo.ne.jp/kobmina/e/a2637b8611b8528bb796c4af59059aed
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