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(回答先: 近代の超克 投稿者 スットン教 日時 2009 年 8 月 12 日 19:54:44)
『近代の超克』(冨山房百科文庫 23)の松本健一氏の序説にあって、第一次大戦
終結後の西洋を襲った「不安の時代」の日本の知識人への影響が率直に書かれて
いる文章なので調べてみましたら、PDFでありました。
不可解な広告がありますが(笑)
日本への回帰 萩原朔太郎
我が独り歌えるうた
1
少し以前まで、西洋は僕等にとっての故郷であった。昔浦島の子がその魂の故郷を
求めようとして、海の向うに竜宮をイメージしたように、僕等もまた海の向うに、西
洋という蜃気楼をイメージした。だがその蜃気楼は、今日もはや僕等の幻想から消え
てしまった。
あの五層六層の大玻璃宮に不夜城の灯が燈る「西洋の図」は、かつての遠い僕等に
とって、鹿鳴館を出入する馬車の轢蹄と共に、青春の詩を歌わせた文明開花の幻燈だ
った。だが今では、その幻燈に見た夢の市街が現実の東京に出現され、僕等はそのネ
オンサインの中を彷徨している。
そしてしかも、かつてあった昔の日より、少しも楽しいとは思わないのだ。僕等の
蜃気楼は消えてしまった。そこで浦島の子と同じように、この半世紀に亘る旅行の後
で、一つの小さな玉手箱を土産として、僕等は今その「現実の故郷」に帰って来た。
そして蓋を開けた一瞬時に、忽然として祖国二千余年の昔にかえり、我れ人共に白髪
の人と化したことに驚いてるのだ。(以下、PDFに続く)
http://saitohope.sakura.ne.jp/0904nihonnheno.pdf