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2023年5月25日 13時10分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/252320
日本が議長国となった先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)は、電撃訪日したウクライナのゼレンスキー大統領が話題の中心となり、閉幕した。対ロシアでG7の結束を固めた半面、緊張を高めた懸念が残る。日本は親ウクライナ、北大西洋条約機構(NATO)追随の立ち位置をより鮮明にした。そのリスクまで思いを巡らせているか。ウクライナ以外の問題が陰に隠れてしまっていないか。(岸本拓也、西田直晃)
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◆「ミャンマーでもスーダンでも」
「G7の皆さま、ミャンマー国民の声を聞いてください」。サミット最終日の21日、100人以上のミャンマー人らが東京都心をデモ行進し、母国の市民への支援と軍への圧力強化を訴えた。
ミャンマーでは2021年2月に軍事クーデターが発生。抗議する市民を軍が弾圧し、地元人権団体の調べで死者は3500人を超えた。
デモ参加者は、議長国日本に対する横断幕も掲げた。「法の支配に基づく国際秩序を守り抜くという強い決意をミャンマーにも示してください」
会社員スェイさん(30)は「戦争はウクライナだけではなく、ミャンマーでもスーダンでも起きている。人の命の重さは変わらない」と強調。サミットでウクライナと異なり、ミャンマーに関しては個別の声明がない扱いの差を残念がった。
◆サミットの関心はウクライナに
医療系研究者キンさん(42)は「G7はロシアには一致して制裁を科した。だが、ミャンマーの軍への制裁には日本だけ加わっていない」と違いを疑問視。「人権と民主主義が脅かされている状況は一緒だ」と、G7一丸の対応を求めた。
ゼレンスキー氏の来日で、サミットでの関心はウクライナに集まった。同氏にとっては、原爆慰霊碑に献花し、平和を希求する指導者像を印象付ける場ともなった。戦時中の国を離れたのは、余裕を見せるパフォーマンスだろうか。
慶応大の広瀬陽子教授(国際政治)は「世界が注目する『春の大攻勢』だけでなく、その先を見据えた長期戦略を練るために、F16戦闘機の確保などの軍事支援を確約させる必要があった」と実利面を読み解く。「今後も戦争が続く可能性が高く、ウクライナが国際的な支援を必要としているのは間違いない。国を空けるリスクを上回る利点があると判断したのだろう」
◆自民党内の「うわついた空気」
サミットでゼレンスキー氏は、新たな軍事協力を取り付け、インドをはじめ、ロシア制裁に慎重な「グローバルサウス」と呼ばれる新興国・途上国首脳との直接対話も実現した。G7やウクライナにとって、対ロシアでの結束を確認したサミットは「全体としては大成功といえる」と、広瀬氏は評価する。一方で、グローバルサウスを完全に取り込んだわけではなく、戦争終結の難しさも口にする。
「制裁でロシアとの経済関係を断つのはグローバルサウス諸国にとっては致命的。『返り血』を甘受してウクライナと共に我慢する、というのは先進国の論理で、強制するのは難しい」
サミットは国内の政局にも影響を与えそうだ。政権の支持率が回復基調の中、自民党内では外交成果をアピールし、早期の衆院解散・総選挙を望む声が広がる。
だが、政治ジャーナリストの泉宏氏はうわついた空気にくぎを刺す。「終盤国会に向けて防衛増税や少子化対策の財源、入管難民法改正など難しい課題が残っている。解散するしないのせめぎ合いが続くだろう」
また、サミットの「成果」自体にも慎重な見方を示した。「ロシアや中国に対して、戦争収束に向けたメッセージがなかった。ロシアを追い詰め、核の危機を高めかねない印象もある」と分断の加速を懸念した。
◆NATOへの接近
対ロシア、親ウクライナの姿勢を見せたサミットと同じ文脈で、日本は旧ソ連など東側陣営に対する軍事同盟として発足したNATOへの接近を強めている。
岸田文雄首相は昨年、日本の首相としては初めてNATOの首脳会議に出席した。NATOが東京に連絡事務所の設置を検討していることも今月、報道などで明らかになった。こうした動きはロシアや中国との緊張を高めかねない。
欧州情勢に詳しいジャーナリスト木村元彦氏は「今まで日本がそれなりに築き上げてきた独自外交活動が崩壊してしまう」と批判する。
木村氏は「非加盟国の日本は本来、ロシアに対しても独自の戦争抑止を提案していくことが重要なはずだ」と説く。同氏は1999年のコソボ紛争時のNATOによる空爆で、日本が見せた欧米加盟諸国と大きく異なる対応を引き合いに出す。「(セルビアの)首都ベオグラードの日本大使館は、撤退せずに『この米国主導の空爆には大義がない』と霞が関に打電した。政府は最終的に踏み込んだ肯定を避け、『(空爆に)理解を示す』という表現に抑えた」
◆「戦争加害国」に入りかねない危険
そしてこう警鐘を鳴らす。「日本は軍事行動から距離を置いたその公正性が高く評価された。プーチン憎しから、国連決議無しで他国への軍事介入と基地化を行ったNATOへの接近をあたかも平和への道筋に捉える現在の空気は、戦争加害国に入りかねず、非常に危険だ」
サミットでは、グローバルサウスとの連携強化が一つのテーマになった。日本などが今後、ロシアや中国への対抗心から、ねじ曲がった連携を模索する恐れもある。
アフリカの課題に取り組むNGO「アフリカ日本協議会」の稲場雅紀共同代表は「グローバルサウス諸国は、G7が『民主主義』、中ロが『権威主義』と、分けて見ていない。自陣営に取り込むといった発想での日本外交は失敗する」と危惧。「G7、中ロの双方が取り込み攻勢を掛ける状況では、どちらの陣営にも属さないのが得で、等距離を保つことで最大限の利益を得ようとする」と語り、日本の外交の行方を懸念する。
「相手国の意向を無視した独り相撲の外交になりかねない。ゼレンスキー氏の来日で、一時的に国民世論は沸き上がるだろうが、2国間外交やG7のようなグループ外交、同志国との連携ばかりが重視されるだけでは、より規模の大きい多国間の協力や国際機関を介した連携が手薄になってしまう」
◆日本の取るべき行動とは
東南アジアに詳しい神奈川大の大庭三枝教授(国際関係論)も「グローバルサウス諸国はロシアの軍事侵攻を支持せず、停戦を求めているが、かといってロシアへの経済制裁に加担することもない。台頭著しい国にすれば、G7はすでに仰ぎ見る存在ではなく、ODA(政府開発援助)を中心とした日本の支援外交も効果はもはや薄い。打つ手を間違えている」と、日本をはじめとするG7のグローバルサウス観に疑問を示す。
では、日本の取るべき行動は何か。「停戦交渉の一翼を担うこと」と提言するのは、山口大の纐纈こうけつ厚名誉教授(政治学)だ。「侵略戦争には断固反対しつつ、戦争の原因を分析し、停戦や和平の条件を紡ぎ出すことが必要だ」と強調する。
纐纈氏は言う。「ゼレンスキー氏のサミット出席、ロシアを意識した結束の表明は、新たな軍事ブロックの存在を鮮明にし、国際的な緊張を高めてしまう。日本は平和重視の立ち位置を捨て、行動の幅を狭めたことになる。平和の地である広島が、戦争を加速させる場所になった。遠くない将来、日本の戦争への道筋が広島から始まったとなりかねない」
◆デスクメモ
G7とウクライナとの結束を強めた点では印象的なサミットだった。だが、グローバルサウスとの連携を深めたとは評価しがたい。サミット閉幕後、ロシアや中国は議論の内容に反発した。日本政府は「成功」をアピールしたいだろうが、今後の影響を見定める必要がある。 (北)
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