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(回答先: 額面13兆円! 邦人2人の“米国債”持ち込みの狙いは 投稿者 gikou89 日時 2009 年 7 月 06 日 17:19:20)
http://mainichi.jp/life/money/news/20090706org00m020023000c.html
◇史上最大の米国債大量発行
◇マーケットは「危うい」と見始めた
米国の長期金利が急上昇している。財政悪化への「懸念」は根強く、積極財政による景気刺激と低金利政策による住宅市場回復を目論むオバマ政権にとって、長期金利上昇は命取りとなりかねない。政府とFRBの綱渡りの政策運営が続く。【週刊エコノミスト編集部・濱條元保】
「米国債の洪水をFRB(米連邦準備制度理事会)は、オフセット(埋め合わせ)できない」
米ダラス連銀のフィッシャー総裁は6月15日、地元メディアのインタビューで国債大量発行が足元の長期金利上昇の要因になっている可能性に懸念を示した。
◇赤字の「垂れ流し」
米国の赤字垂れ流し−−。世界の金融市場がここに注目し始めた。
オバマ政権はブッシュ前政権が総額7000億ドル(約66兆円)で作った不良資産救済プログラム(TARP)と政権発足直後に決めた総額7800億ドル(約74兆円)の景気対策をフル活用している。アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)やシティグループなど大手金融機関への公的資金注入で金融システム安定化に努め、さらには経営破綻したゼネラル・モーターズ(GM)を事実上国有化し、政府丸抱えで再建に取り組む。減税や住宅ローンの借り換えなど個人向け支援策も打ち出した。
大盤振る舞いの原資は国債だ。米政府は不況に伴う税収減も加わり、2009会計年度(08年10〜09年9月)に1・8兆ドル、対国内総生産(GDP)比13%という戦後最大の財政赤字となる。財政赤字は10年度も1・3兆ドル、11年度も0・9兆ドルと高水準で続く見通しだ(表)。
巨額財政赤字に対する市場の疑念が国債価格下落(長期金利上昇)の背景にある。2%台前半に低下していた長期金利は5月以降3%台半ばをつけ、6月10日には一時4%を超えた。「09年度1・8兆ドルという史上最大の財政赤字ファイナンスをどうするか」(高島修・三菱東京UFJ銀行チーフアナリスト)が、問われているのだ。
リーマン・ショックに至るまでの米国は、まったく違う経済状況にあった。01年のITバブル崩壊後、短期金利のフェデラルファンド(FF)レートを1%まで引き下げたFRBは、04年6月から06年6月までに5・25%まで段階的に引き上げたにもかかわらず、長期金利がこれにまったく反応しない状況が続いた。グリーンスパンFRB議長(当時)は05年2月の議会証言で、これを「Conundrum(謎)」と語った。中国やロシアなどの新興国の経済発展、そして原油高で潤う中東産油国が、貿易黒字で積み上がる外貨準備で米国債を購入することが原因だと、謎の解説がなされた。
しかし、当時と現在では決定的に米国債の発行額が異なる。グリーンスパンの「謎」発言のあった05年度の米国債発行総額(ネット)は2387億ドル。それに対して、09年度は5月までに約5倍の1兆2182億ドルに達する(図1)。
そして、足元の国債発行額(ネット)は、08年第3四半期(7〜9月)に5395億ドル、第4四半期に5616億ドルと急増、09年に入っても第1四半期に4684億ドルに達した。通常、所得税など税収増に伴い、ネットベースではマイナスになる第2四半期も5月までで1881億ドルと高水準の発行が続いている(図2)。
◇米国債の「サブプライム化」
米国債は、日本国債とは対照的に高い流動性とドル資産という基軸通貨国の特権を武器に世界に売りさばかれてきた。民間から流入する資金とともに、それが過剰消費に伴う巨額の経常赤字を補い、米国は高い経済成長を謳歌してきた。経済成長のための原資だったのだ。
ところが、昨年以降は違う。サブプライムローン(米国の信用力の低い個人向け住宅融資)問題で大きな損失を被り、自力では立ち行かなくなった大手金融機関や大企業、そして過剰債務で破綻状態の個人を救済するための原資と化した。
三菱UFJ証券の水野和夫チーフエコノミストは、投資の失敗のよるキャピタルロス(損失)の穴埋めという視点から、「米国債のサブプライムローン化が始まった」と指摘する。米国債への投資は、成長のためではなくキャピタルロスの穴埋めに過ぎず、従来のような成長は期待できない。それは米国債の減価を余儀なくさせるというのだ。
米国債は、サブプライムローン担保証券と違って、税収で償還される。しかし、「米国民の約3割が生活資金を借金に頼っている状況で、増税はおろか現状の税金すら徴収することが難しくなっている。米国債の償還は一層、厳しくなる」(水野氏)。
米国債のロスは、ドルの減価で調整せざるを得なくなる。つまり、米国債下落分をドル安という為替調整で穴埋めするということだ。ここにドル安不安もある。
◇BRICsがIMF債購入
投資家は、すでに米国債下落リスク回避に向けて行動している。
大量発行されている国債の中身に注目すると、長期国債よりも短期国債を投資家が志向していることがわかる。米財務省の資料によると、08年4月までの1年間は、短期国債発行額1106億ドルに対して長期国債は3092億ドルと長期が短期の約3倍となっていた。それが09年4月までの1年間では、短期国債4535億ドルと長期国債2689億ドルの1・7倍と逆転した(図3)。
「外貨準備で運用している各国政府が下落リスクを避けようと、米国債投資を短期化させたのが原因」(嶌峰義清・第一生命経済研究所主席エコノミスト)という。その“首謀者”と推測されているのが中国だ。
中国は欧米向け製品輸出の急増で、積み上がった外貨準備は3月末で世界最大の1兆9537億ドル。米国債保有額も4月末で7635億ドルとトップである。ガイトナー米財務長官は5月末に訪中し、最大の「お得意先」に、今後の購入について協力を求めた。
しかし、ガイトナー長官が面談した中国人民銀行元政策委員の余永定氏からは「中国は米国債を当然のように購入し続けるわけではない」とクギを刺された。実は毎月、米国債保有額を増加させていた中国が、4月は前月比44億ドル減少していた(図4)。
さらに6月5日には、中国が外貨準備でIMF債を最大で500億ドル購入することが明らかとなった。債券は準備資産であるSDR(IMF特別引き出し権)建ての発行になるとみられている。ドルに偏重した外貨準備の運用を多様化させる狙いと市場は受け止めた。
こうした中国の対応にロシアとブラジルが間髪を入れずに呼応する。
ロシア中央銀行のウリュカエフ副総裁が6月10日、保有する米国債を売却してドル資産での運用を引き下げる方針を示すと同時に、IMF債100億ドルを引き受けると発表。同じ日、ブラジルのマテンガ財務相がIMF債100億ドルを引き受ける意向を明らかにした。インドも近くこれに追随する模様で、BRICs4カ国で総額700億ドル超のIMF債を購入することになる。
◇市場からのしっぺ返し
検討されているSDR建てについても、現状はドル、ユーロ、ポンド、円の4通貨構成だが、中国事情に詳しいエコノミストの田代秀敏氏は「中国は現状のGDPでの構成比の見直しを求め、世界第2位目前の中国人民元をSDRに加えるように迫るだろう」と予想する。
政府の積極財政で需要を作る一方で、低金利継続で住宅市場を回復させ、米国経済を復活させる−−。オバマ政権の景気対策の大前提は、低金利にある。3月以降、その大前提が狂い始めた。そこでFRBが力ずくでこれを抑え込もうと異例の行動に出た。3月18日、9月までに国債購入枠3000億ドルを設定したのだ。6月中旬までに約1600億ドル分を購入。東短リサーチの加藤出チーフエコノミストは、「資産担保証券(MBS)まではやむを得なかったが、米国債購入は危うい」とみる。
直後こそ長期金利は低下したが、その後はそれ以上に上昇している。「FRB自らが(国債を買って金利を押し下げるという)歪みを作ったのだから、市場はその是正に動くのは当然」(加藤氏)。
バブル崩壊後の長く、出口のないデフレ不況に苦しみ抜いた日本を反面教師にする米国。住宅バブル崩壊後、デフレ回避にリフレ政策をとる以上、一定のインフレリスクは織り込み済みのはずだが、「とにかく国債発行額が多過ぎて、本当にこなせるのか」(第一生命経済研究所の嶌峰氏)と市場は身構える。3月はFRBが国債買い取り枠設定で乗り切ったが、中央銀行が買い続けることはできない。財政規律が失われると市場が読み出したら、危険だ。