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田中三彦「原発はなぜ危険か〜元設計技師の証言」岩波新書‘94年より抜粋
第二部 “運転中の原発”の安全「性」
<もろくなる原子炉圧力容器>
冷却材喪失事故には…配管破断以外に、原子炉圧力容器そのものが瞬間的な破壊―脆性破壊―という事故の可能性があることは、原子炉圧力容器の専門家ならだれもが承知していることである。故藤村理人氏は…次のように書いておられる。
「もし圧力容器が破局的な破壊をしたならば、その鋼材の破片はミサイルとなって瞬時に飛び散ることになるので、格納容器の数十ミリの壁は難なく貫通してしまうだろう。格納容器はまったく役立たず、ECCSなど緊急冷却設備なども無力化する。炉心は露出し、それこそ数万人の死亡者を出す大災害へと発展してしまう」(「原子力工業」1986年)。
原子力圧力容器がもろくなるのは、容器が核分裂で生じる中性子を継続的に被ばくするからで、そのためこの現象は「中性子照射脆化(ぜいか)」とは、単に「照射脆化」と呼ばれている。
加圧水型炉は沸騰水型炉のように炉心と圧力容器のあいだにジェットポンプが入っていないため、中性子に対する水の減衰効果が少なく、そのぶん照射脆化の程度が著しいこともわかっている。
<恐ろしい「PTS」>
日本語では「加圧熱衝撃」といわれている。急激な温度変化が構造物にもたらす力学的な影響は「熱衝撃」と呼ばれる。
たとえば冷却材喪失のような緊急事態がおきたとき、ECCS系が自動的に作動し、冷たい水が一挙に炉内に流入することになっている。その場合炉は「急冷」され、容器は熱衝撃を受ける。が、話はそれではすまない。
炉が急冷すると、一次系の圧力が急激に低下するが、その急激な圧力低下のためにECCSの高圧水ポンプが自動的に作動し、ふたたび一次側の圧力が上昇する。したがって、原子炉圧力容器には、熱衝撃だけでなく、上昇した水圧力も作用することになる。これが加圧熱衝撃、つまりPTSである。
このPTSは…圧力容器の脆性破壊に対して、潜在的にきわめて危険な特性をもっている。
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