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公園から聴こえてくる音楽    西岡昌紀
http://www.asyura2.com/08/wara3/msg/632.html
投稿者 西岡昌紀 日時 2008 年 8 月 13 日 02:09:49: of0poCGGoydL.
 

(回答先: ソルジェニーツィン他界    西岡昌紀 投稿者 西岡昌紀 日時 2008 年 8 月 04 日 22:48:11)

−−公園から聞こえてくる音楽にオレークは耳を
  傾けていた。だがオレークが聴いていたのは
  その音楽ではなく、自分の内部で鳴り響いて
  いるチャイコフスキーの第四交響曲だった。
  不安な、重苦しい、その交響曲の冒頭の部分。
  その驚くべき旋律。こんな鑑賞の仕方はいけ
  ないのかもしれないが、オレークはその旋律
  を自己流に解釈していた。久しぶりにわが家
  に帰って来た主人公、あるいはとつぜん目が
  見えるようになった主人公、いろいろな品物
  や、愛する女の顔を、手で撫でまわしている。
  撫でまわしながら、いまだに自分の仕合せを
  信じられぬ気持でいる。それらの品物は本当
  に存在するのだろうか。自分の眼は本当に見
  えるようになったのだろうか。−−

(ソルジェニーツィン作・小笠原豊樹訳
 『ガン病棟・(上)』(新潮文庫・1974年
 第七刷・230ページより)


私が『ガン病棟』を読んだのは、1970年、
中学2年生の秋の事です。


上の一節は、この小説の主人公である一人の
患者が、公園から流れて来た音楽を聴きながら、
空想をする場面です。


この小説を読んだ時の感動と興奮は、あれか
ら38年が経った今でも忘れる事が出来ません。
本当に、打ちのめされる様な感動を受けて、読み
終えてしばらくの間、熱にうかされたようにこの
小説の事で頭が一杯に成った事が忘れられません。


十代の多感な時代に、こんな素晴らしい小説
に出会えた自分は、何と幸せだったのだろうと、
思ひます。

                西岡昌紀

http://nishiokamasanori.cocolog-nifty.com/blog/

 

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