ここ数年、市民運動をしている人を狙って、全国的に大量の怪文書が郵送されるという静かな闇の事件が進行してきた。これらの文書は、非常に手のこんだ内容と手口を待っていて、たとえば私が自衛隊の海外派兵に反対していた当時には、小生の名で、“カンボジア現地報告″なるものが、そちこちに郵送されたそうである。 そうである、と書くのは、わが家にはそれが配達されないので、こちらがまったく知らない状態に置かれていたからである。また三年前には、わが家の玄関につるしてあった“愛犬の標札”の写真をとり、それと共に、小生への悪口雑言を書きつらねた文章が、やはり大量に発送されたらしい。色々と気を遺っていただき、わざわざ拙宅まで来訪して下さって、ご苦労なことだと感謝していた。 ところがその被害者は、膨大な数に及んでいた。私はそうしたことに無頓着な性分で、変質者に付き合っていては何もできないので、人が教えてくれても、上の空で聞いていた。しかし、被害者の人たちが山のような“証拠品”の郵便物を待ち寄って分析したところ、想像していた以上に広がりが全国的で大きく、費用を計算すると大変な全額にのぼる犯行なので、大がかりな組織でなければできない、という結論に到違した。国の機関や企業がそこに積極的に係わり、市民運動の内部に密偵を送りこみ、住所録などの内部資料が公安関係者を通して流れているに違いないというのだ。 そんなことは当然だろうと思ったので、またしても私は、事件を一笑に付していた。
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