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第81回 政界を巻き込む水谷建設事件 安倍長期政権の野望を読む (2006/07/31)
http://www.asyura2.com/08/senkyo56/msg/754.html
投稿者 ROMが好き 日時 2008 年 12 月 09 日 18:15:14: Dh66aZsq5vxts
 

(回答先: 立花隆さんの「メディア ソシオ-ポリティクス」の海外アーカイブを阿修羅のスレッドでまとめて保存してくれないかと、。 投稿者 ROMが好き 日時 2008 年 12 月 05 日 18:06:37)

第81回 政界を巻き込む水谷建設事件 安倍長期政権の野望を読む (2006/07/31)
http://web.archive.org/web/20060811035735/http://www.nikkeibp.co.jp/style/biz/feature/tachibana/media/060731_yabou/

2006年7月31日

 以前、政権末期というか、政権交代期には、ビックリするような政界・経済界を巻き込んだ大スキャンダルが生まれてくるものだと書いたが、そのあらわれなのかどうか、最近妙にキナくさい空気があちこちにたちこめはじめている。

 一つは、水谷建設の脱税事件である。はじめ中堅ゼネコンの単なる脱税事件と思われていたのが、実はそうではなくて、さまざまな会計偽装手法を駆使して、多額のウラ金を捻出し、それをあちこちにバラまいたり、私的目的に流用したりした、悪質な横領事件と目されるようになった。

 
政界の“汚れ役”水谷元会長の背後に潜む黒い人脈
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 はじめは資金の流れていった先が暴力団関係者ということで、もっぱらウラ社会がらみの事件と思われていたのが、ここにきて、実は“サンズイ事件”(汚職事件)の疑いがきわめて濃いとのウワサが政界でさかんに流れている。

 それというのも、この事件、“サンズイ事件”を得意とする東京地検特捜部の直告一班が担当し、最初の手入れに、いきなり400人という大量の捜査部隊を投入したという普通の脱税事件ではありえない体制が組まれたからだ。水谷建設のある三重県だけでなく、東京、埼玉、愛知、福島などで、水谷建設の取引先相手が片っ端から家宅捜査を受けるという、中堅ゼネコンのただの脱税事件ではありえない捜査体制だった。

 また、すでに逮捕済みの水谷建設元会長の水谷功容疑者が、かねて政界では“汚れ役”としてよく知られた人物で、政界で少なからぬ人がそのお世話になった(資金援助をしてもらった)ことがあるから、政界ではこの事件、尾ヒレをつけて広まっていった。

 それぞれ何らかの理由をつけての資金援助であったとはいえ、資金の趣旨の解釈いかん(あるいは関係者の供述いかん)では、一見何でもないカネの流れが、“サンズイ事件”になってしまうというのが、政界におけるカネの流れというものである。

 政界では、水谷建設が危ない橋を平気で渡るようなことをする会社であるという認識が前からあった。

 そこに特捜の大々的な捜査の手が入ったということで、スワコソとウワサが流れ出したのである。

 
暴かれた建設利権「腐敗の構図」
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 この事件を熱心に追っているのは、週刊ポストと週刊朝日だが、最新の週刊朝日には、長年、業界で水谷建設の『営業部長』と呼ばれていた某国会議員秘書(一時は大臣秘書もやっていた大物秘書)が登場して、かなりの内幕を告白している(今西憲之「『営業部長』と呼ばれた元大臣秘書が激白、水谷建設と政治家とカネ」)。

 
next: それによると、もともと水谷容疑者は…
http://web.archive.org/web/20060811035735/http://www.nikkeibp.co.jp/style/biz/feature/tachibana/media/060731_yabou/index1.html

 それによると、もともと水谷容疑者は田中角栄に気に入られたのが会社を大きくするきっかけだったという。大きな土木工事を大手ゼネコンに落とすときに、政治力を使って下請けに水谷建設をもぐりこませてもらった。

「大手ゼネコンの下請け、サブコンは水谷やで」と、さりげなくかつ有無を言わせないプレッシャーを入れる。あとは飲ませ食わせですな。

大手ゼネコンは入札だからいろいろと制約があるが、サブコンを選ぶのはいわば大手ゼネコンの「腹一つ」。だから、役人のトップクラスから大手ゼネコンに「水谷で」と言わせるんです。

「天の声」と、田中先生やうちの先生との関係もあって、どこの大手ゼネコンが落札しても、水谷がサブコンで入ることができたんですわ。ある意味、非常においしいんです。

 と、田中派全盛期に、大手ゼネコンと水谷建設、それに政治家が三位一体になって、いかに建設利権をむさぼっていたかが、赤裸々に語られている。この時代、当然水谷容疑者のほうからも、政治家にお礼として、大サービスをしていた。

あのころ、水谷に「おーい今日、500万いるんだ」と言うとすぐに届いた。水谷とはそんな関係でしたよ。

選挙が始まる時に、建設・土木あたりの業者なら、1社あたり1千万円くらい集める。そして人も票も割り当てる。

けど選挙運動をやっていると、最後になって、どうしてもカネが足らなくなる時があるんです。そんな時は、水谷建設の出番です。電話をして「1本、頼みます」とお願いすると、すぐに届きました。

「1本?」そりゃ1億ですわ。

 田中派全盛時代の、建設利権をみんなで喰い物にしていた時代の典型的な腐敗の構図である。

 
北朝鮮のダム利権に触手を伸ばす水谷建設
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 これと同じことを今もやっているとしたら、即座に手錠がかかるところだが、この人が語っている話は、すべて15年前という設定になっている。

 では、今はそのようなことはやっていないのかというと、相も変わらず似たようなことをやっているようで、この元秘書氏は、もう水谷氏と直接の関係はないが、周辺から黒いウワサは沢山聞いており、それが今回の事件の容疑事実になっているようだという。

 ただ、小泉改革で公共事業がググーッと絞り込まれたため、甘い汁があまり吸えなくなった。それで、「筋のよくない仕事に手を出すようになった」。

 それが今回の事件のきっかけになったのだろうという。

 
next: 「筋のよくない仕事」の一つが
http://web.archive.org/web/20070527102325/http://www.nikkeibp.co.jp/style/biz/feature/tachibana/media/060731_yabou/index2.html

 「筋のよくない仕事」の一つが北朝鮮のダムの利権だといわれており、今回、家宅捜査を受けた場所の一つが、それと関係があるのか、北朝鮮支援の NGOだった。そのNGOを通じて、水谷建設は、相当数のトラックや建設機械などを北朝鮮に無償提供していたのである。そういうものを大量に無償提供しておけば、いずれ北朝鮮の利権に食い込んでいけると考えていたようだ。

 この記事を読んで私が何より感じたのは、これは、小泉首相の「自民党をぶっつぶす」作戦の最終段階だということだ。

 
津島派つぶしの嵐の中で額賀は出馬できるのか
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 小泉首相がぶっつぶすつもりだった自民党というのは、自民党の中の旧体制部分、すなわち、田中派=経世会につながる部分だということは、これまでも何度も述べた通りである。

 小泉首相が何よりつぶそうとしていたのは、まずは田中派=経世会の利権政治の構図であり、とりわけ土木建設利権・道路利権だった。その意味で、水谷建設のような存在は、つぶすべき利権業者ナンバーワンだったといってよい。

 時期総裁選に、津島派(旧田中派、旧経世会)が額賀防衛庁長官を候補として擁立するかどうか、目下派内で意見取りまとめ中というが、小泉首相としては、せっかくここまで旧田中派勢力をつぶしたのだから、ここはどうしても総裁候補を立てることすらできなくなった状態にまで追い込みたいところだろう。

 そういう意味では、勝敗は別として、津島派が一致団結して額賀を立たせることができるかどうかが、今度の総裁選の見所の一つだろう。

 
佐藤栄作が検察を使って政敵をつぶした政治手法
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 もう一つ感じるたのは、安倍晋三の長期政権構想がいよいよはじまったなということだ。日本でいちばんの長期政権といえば、1965年から72年まで7年間続いた佐藤栄作内閣である。

 佐藤はなぜあれほどの長期政権を築くことができたのか。

 政権初期の間に、徹底的に政敵をつぶしたからである。政権がスタートする前に、ライバルでナンバーワンだった池田勇人が病いに倒れ、相前後して、河野一郎も倒れるという運にもめぐまれたが、それに満足することなく、政敵のバックボーンをなしていた金脈を、検察の力を借りて、徹底的につぶしていった。

 佐藤は、造船疑獄で、与党幹事長でありながら、あわや逮捕かという窮地に追い込まれた。このとき、いざとなったときの検察パワーの持つ恐ろしさを知った佐藤は、その後検察幹部の馬場義読と非常に親しい仲になった。

 そして、馬場検事総長のもとで起きた、吹原産業事件、大橋事件、九頭竜川ダム落札事件など、一連の政界スキャンダル事件が摘発されていく状況を利用して(佐藤から指示したこととは思わないが)政敵派閥をつぶしていった。

 
next: 安倍長期政権構想への露払いとなるか
http://web.archive.org/web/20070526192037/http://www.nikkeibp.co.jp/style/biz/feature/tachibana/media/060731_yabou/index3.html

安倍長期政権構想への露払いとなるか
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 安倍はこのままいけば、史上最年少の53歳で総理大臣になる。佐藤と同じ7年間総理大臣を務めたとしても、7年後にはまだ60歳である。

 安倍の側近たちは、いま安倍政権を佐藤なみ(あるいはそれ以上の)長期政権にするために、どうすればよいのか、いろいろグランド・デザインを練っているところだといわれる。

 その中に知恵者がいて、佐藤長期政権を参考に、まずは徹底的な政敵つぶしが肝要と考え、そのためには検察と手を組むことも辞さないという策士がいたとしたら、こんなことも策したろうかと考えたくなるほど、水谷建設事件は、安倍政権の発足にあたってピッタリの事件である。−−あるいは現在の検察幹部が政治性のある人だったら、これは安倍政権発足にあたってのご祝儀だったのではないかと考えたくなるほど、ピッタリの事件である。

 特に、水谷が北朝鮮利権につながっていた点が重要である。これで北朝鮮利権に少しでもつながっていた連中は動きがとれなくなり、安倍の対北朝鮮強硬政策に異議を唱える連中はしばらく息をひそめざるをえないということになるのではないか。

 他のキナくささについては、またの機会に述べよう。

 
立花 隆

 評論家・ジャーナリスト。1940年5月28日長崎生まれ。1964年東大仏文科卒業。同年、文藝春秋社入社。1966年文藝春秋社退社、東大哲学科入学。フリーライターとして活動開始。1995-1998年東大先端研客員教授。1996-1998年東大教養学部非常勤講師。2005年10月 -2006年9月東大大学院総合文化研究科科学技術インタープリター養成プログラム特任教授。2006年10月より東京大学大学院情報学環の特任教授。 2007年4月より立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科特任教授。

 著書は、「文明の逆説」「脳を鍛える」「宇宙からの帰還」「東大生はバカになったか」「脳死」「シベリア鎮魂歌―香月泰男の世界」「サル学の現在」「臨死体験」「田中角栄研究」「日本共産党研究」「思索紀行」ほか多数。近著に「滅びゆく国家」がある。講談社ノンフィクション賞、菊池寛賞、司馬遼太郎賞など受賞。
 

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