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(回答先: 第76回 小泉演説を封印した一通の書簡「靖国問題はアメリカの問題」 (2006/06/27) 投稿者 ROMが好き 日時 2008 年 12 月 09 日 16:36:28)
第77回 福井総裁「利殖の構図」村上ファンド事件とは何か (2006/06/28)
http://web.archive.org/web/20060705063752/http://www.nikkeibp.co.jp/style/biz/feature/tachibana/media/060628_risyoku/
2006年6月28日
ここにきて、にわかに政界に大嵐が吹きはじめた気配である。福井日銀総裁の村上ファンドへの投資問題をめぐって、小泉首相はこれまで福井総裁の責任問題が問われるたびに、
「改善すべきは改善して、職責を果たしていただきたい」
と、常に福井擁護にまわっていた。6月26日もそうだったのだが、その小泉首相が、6月27日昼の記者のぶら下がり会見で、突然それまでの態度をひるがえし、「福井斬り」に転じたととられかねない発言をしたからだ。
前日の6月26日、公明党の神崎代表が、大阪市内で行った講演で、
「違法性はないが、金融政策の番人としての立場を考えれば、庶民感情からすれば到底納得できない」
と批判し、
「日銀の独立性があるので、政治家が辞めろと言うのは慎むべきだが、福井さんが自らの責任で出処進退を判断すべきだ」
と、自ら身を引くことを求めた。それに対して感想を求められた小泉首相が
「当然の発言じゃないですか。誰でも」
と応じたのである。
主語述語関係がハッキリしないので、神崎発言のどの部分をさして「当然の発言」としたのか、いまひとつ不明確だが、明らかに小泉首相の姿勢は変わったのである。
週刊現代のスクープで揺れる小泉発言
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たった1日の間になぜそれほど変わったのか。要因は2つあると思う。1つは、27日の朝日新聞朝刊で、この問題に関する世論調査の結果が発表されたことだろう。
福井総裁の村上ファンドへの投資について問われて、「問題がある」とする人、85%に対して「問題はない」とする人、わずか15%。
この問題によって「日銀の信頼性が傷ついた」とする人、70%に対して、「そうは思わない」とする人、25%である。
さらに、福井が日銀総裁を「辞めるべきだ」とする人、67%で、「辞める必要はない」とする人は25%と、圧倒的多数が、福井総裁の辞職を求めている。
このような数字を見て、誰よりも世論の動向を気にし、世論の操縦に心をくだく稀代のポピュリスト政治家小泉としては、ここは、福井擁護をつづけることは自分にとっても得策ではないと判断したということなのだろう。
next: それよりも大きな、もう1つの要因になったのは…
http://web.archive.org/web/20060705063752/http://www.nikkeibp.co.jp/style/biz/feature/tachibana/media/060628_risyoku/index1.html
それよりも大きな、もう1つの要因になったのは、6月26日発売の「週刊現代」にのったスクープ記事、
「これが疑惑の総裁福井俊彦と『村上ファンド』の<秘>契約書だ!」
だろう。
サイドレターに記された福井総裁のとんでもない利殖
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驚くべきことには、同誌は福井総裁と村上ファンドの間の契約書を、一般には外部に出てこない「サイドレター」形式の秘密契約部分まで含めて入手し、それを詳細に分析した上で、これまでのこの問題に関する福井総裁の釈明発言がウソばかりであったことを暴いている。
たとえば、そもそも福井総裁がなぜ村上ファンドに投資したのかというその意図の説明だ。福井総裁は、それは金儲けが目的だったわけではなくて、日本の資本主義をもっと健全なものにするために、株主の権利をもっと拡充すべきだとする村上の主張に共鳴したためだとしていた。しかし、その投資がもっぱらキャピタルゲインを目的とするものであることが契約書に明記されている上、目標とする利回りが年25%というとてつもない額であったことが、サイドレターにちゃんと記されていたのである。
福井総裁の実際に得た収益は、年25%までいかず、年17%〜18%にとどまっていたことが明らかにされているが、一般庶民は銀行にどんなに預金しても、年1%(あるいはそれ以下)にしかならないゼロ金利時代である。17〜18%でも庶民にとっては夢のような金利である。
そのような特別契約を、ゼロ金利時代の演出者にして管理者であった日銀総裁が、特別の金融業者と秘密裏に結んでいたとあっては、神崎発言にあった通り、「庶民感情としては納得できないものがある」といわなければならない。
しかも、同誌が明らかにしたところでは、このウラ契約や、それによってどのような収益を福井総裁が得ていたかを秘密にしておくために、二重三重に入り組んだ秘密契約の上に秘密契約を重ねるような奇怪なスキームを作り上げていた。それは読めば読むほど、「なんじゃこれは」といいたくなるようなスキームで、ほとんど経済界の裏街道を行く人だけが考えつくようなスキームといってもいい。
すぐに手錠をかけるべしとまではいわないが、少なくとも、日銀総裁という、一国の経済システムの信用性信頼性の根幹を身をつくして維持すべき立場にある人がやることではないといえるだろう。
next: 小泉政権の中心人物にまで広がる疑惑の輪…
http://web.archive.org/web/20060705062738/http://www.nikkeibp.co.jp/style/biz/feature/tachibana/media/060628_risyoku/index2.html
小泉政権の中心人物にまで広がる疑惑の輪
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私はこれまで、破綻に瀕していた日本経済をここまで立て直すことにいちばん力をつくしたのは、小泉首相でも竹中総務大臣(前財政金融担当大臣)でもなく、福井総裁であるという評価を下していた(第62回 2006年の日本経済を展望する 量的緩和を巡る政府・日銀の攻防)から、この事件が明るみに出はじめたころは、これくらいのことは彼のこれまでの功績に免じて、見逃してやってもいいと思っていた。
しかし、次々に裏側の事実が明るみに出てくるにつれて、だんだん腹が立ってきた。今では、これを見逃してしまったら、国家の根幹のところを支えているモラルが崩れてしまうにちがいないと思うにいたっている。
日銀総裁といえば、総理大臣や最高裁長官と並ぶような国家最高の公人である。
それが国家が財政的に破綻に瀕しているときに、私利私欲を満たすことを主目的として行動していたことがあると知れただけでも大問題なのに、それが一部明るみに出るや、
「あまり大した額ではない」
とか、
「巨額に儲かっている感じがしない」などといった言い抜けを繰り返し、これまでの国会証言にもウソが山のようにあることがわかってきた。いま、福井総裁の出処進退問題は、ゆるがせにできない問題になったというべきだろう。
おそらく、この問題は、裏の事情が明るみに出れば出るほど、小泉政権にジワジワと毒がまわるようにきいてくる。これまで小泉首相は任期をまっとうして、有終の美を遂げるにちがいないと思われていたのに、最後の最後になって人気がガタ落ちになって小泉政権がみっともない最後を遂げる可能性も大いに出てきたと思いはじめた。
先の「週刊現代」の記事は、福井と村上ファンドの怪しげなつながりの結節点に宮内義彦オリックス会長がいて、先の奇妙なスキームの中心になっていたことを暴いている。宮内氏といえば、小泉政治の中枢である経済財政諮問会議の中心メンバーであるとともに、規制改革・民間開放推進会議の議長として、一連の小泉改革を中心になって仕切ってきた人物である。
事件は小泉政権の中心人物にまで疑惑の輪を広げている。
next: 小泉改革による格差社会化を象徴する事件…
http://web.archive.org/web/20060705063532/http://www.nikkeibp.co.jp/style/biz/feature/tachibana/media/060628_risyoku/index3.html
小泉改革による格差社会化を象徴する事件
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要するに、こういうことではないか。
小泉改革も、ふれこみは立派、見かけも立派だったが、その中心部は黒く腐っており、あらゆる権力中心部と同じように「キレイはキタナイ」だった。
周辺部ではリストラされたホームレスたちが力なくうごめき、国民の大半はゼロ金利とデフレ経済でエネルギーをすり減らす日々を送っているというのに、中心部には大儲けしてウハウハしている一握りの人々がいて、その連中はみんなつるんでいた。
最近のニュースを見ていると、年金、医療などで、国民負担がさらにふやされ、消費税率アップなど増税は目の前、その一方で社会福祉制度の一方的給付水準切り下げなどが予想され、小泉改革による格差社会化はこれからもどんどんひどくなりそうである。
その格差社会の中心部で、一部のウハウハ階級がさらにウハウハできるスキームが進行していたというのが、村上ファンド事件の本質ではないか。
週刊現代によれば、この事件がさらに進展すれば、権力中枢あるいはその周辺部の人間だけ特別利益が与えられていたVIP口座があばかれる可能性があり、そうなると、「第2のリクルート事件」に発展しかねない、と現職閣僚が特に名を秘して語っているという。
具体性を欠く発言なので、どこまで信じてよいかわからないが、この事件、これからしばらくの間、目が離せない。
福井総裁への世論の反発がさらに強くなり、小泉首相が本当に福井斬りに動いた場合、当然予想される内外からのマーケットの反発(日本の経済と政治の不安定を予測しての日本株売り、為替売り、債券売り)が予想以上にあった場合、日本経済はそれに耐えられるのだろうか。そちらも大いに心配である。
立花 隆
評論家・ジャーナリスト。1940年5月28日長崎生まれ。1964年東大仏文科卒業。同年、文藝春秋社入社。1966年文藝春秋社退社、東大哲学科入学。フリーライターとして活動開始。1995-1998年東大先端研客員教授。1996-1998年東大教養学部非常勤講師。2005年10月から東大大学院総合文化研究科科学技術インタープリター養成プログラム特任教授。
著書は、「文明の逆説」「脳を鍛える」「宇宙からの帰還」「東大生はバカになったか」「脳死」「シベリア鎮魂歌―香月泰男の世界」「サル学の現在」「臨死体験」「田中角栄研究」「日本共産党研究」「思索紀行」ほか多数。講談社ノンフィクション賞、菊池寛賞、司馬遼太郎賞など受賞。
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