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(回答先: 第67回 朝日・読売の論説トップが批判 小泉靖国外交の危険な中身 (2006/02/16) 投稿者 ROMが好き 日時 2008 年 12 月 08 日 13:02:32)
第68回 ネット時代に直面する問題にテレビ、新聞はどう向き合うか (2006/02/27)
http://web.archive.org/web/20060422002956/http://www.nikkeibp.co.jp/style/biz/feature/tachibana/media/060227_net/index.html
2006年2月27日
知る人ぞ知る情報・マガジンに、「選択」(選択出版)という予約購読制の月刊誌がある。これはもともと、飯塚昭男という、「財界」の敏腕編集者だった男が30年以上も前に独立してはじめた雑誌で、内容的に「財界」よりずっとすぐれた雑誌として、エグゼクティブクラスのビジネスマン、政、官界のエリートの間で定評がある雑誌になっていた。
それが飯塚氏が亡くなったあと、内輪もめが起き、ニ派に分裂してしまった。その背景には「選択」の一部幹部が起こした厚生労働省を舞台とする汚職事件とか、某巨大宗教団体との間で起きた特殊記事(特定個人または団体を誹謗中傷する、あるいはほめそやす記事を載せ、その対価、あるいはそれを中止する対価として金銭を要求する記事)収録号の買い取り問題とか、メディアとしてあってはならないスキャンダラスな事件があったといわれる。そのあたりについて詳しく知りたければ、検索エンジンに「選択出版」のキーワードを入れてみれば、前専務の手記など、変な話が沢山出てくる。
結局、この内紛で外に出ることになった阿部重夫前編集長(元日経新聞論説委員、「日経ベンチャー」元編集長)が、近く雑誌を立ち上げようとしている。それは「FACTA(ファクタ)」という月刊誌で、ネット上にその準備ページができていて、そのテスト版が送られてきた。見ると、あまり資金がないらしく、ペラペラの小冊子で、新雑誌のテスト版としては、かなり見劣りがする。
しかし、めくってみると内容は結構面白い記事がならんでいる。
一般紙はあっさり報じたスパイウエア事件
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その中で、何よりビックリしたのは、「ソニーを蝕む『ウィルス』」という記事。
それによると、ソニーBMGというアメリカの子会社が発売したコピー防止機能付きの音楽CDをパソコンに入れると、自動的に「スパイウエア」と呼ばれるウィルスが組み込まれてしまい、そのウイルスはその人が他にどんなCDを聞いたかを記録して、それを自動的にソニーに送るようにプログラムされているのだという。
そして、このプログラムが、パソコンのガードシステムに穴を開けてしまって、他のウィルスに感染しやすくしてしまうのだという。
next: このプログラムが…
http://web.archive.org/web/20060422000818/http://www.nikkeibp.co.jp/style/biz/feature/tachibana/media/060227_net/index1.html
このプログラムが、テキサス州の反ウイルス法に違反するところから、アメリカでは同法違反のウイルスによってパソコンを汚染されたと怒る人々から集団訴訟が起こされたりしている。さらには、ソニー製品全体をボイコットせよと叫ぶ人々も出現しているという。
ソニーは、はじめの頃は言を左右にして責任逃れをしようとしていたが、どうにも隠しようがなくなり、問題のCD全部を回収して交換するところまで追いこまれたので、アメリカのメディアではこの事件、大々的に報じられたが、「日本では大手メディアが広告主としてのソニーに気がねして、ほとんど報じられていない」とある(現実には、日本でも一般紙はともかく、日経新聞などの専門紙はこのニュースを報じてきている)。
早速グーグルに、「ソニー」と「スパイウエア」をいれてみたら、なるほど、関連情報ゾロゾロ出てきた。世界の汚染状況を示す地図まで出てくる。汚染国のトップは日本となっている。その日本で、一般のメディアの報道量が少ないのは、FACTAの言うように、大広告主たるソニーに遠慮してだとすれば重大問題だ。
放送と通信に風穴開けるIPインフラの行方
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もうひとつ面白かったのは、「放送と通信の敷居に『IP放送』の風穴」という記事。
いまIT業界では、技術的には、放送と通信の境い目がどんどんなくなりつつあり、いずれ、パソコンでテレビを見、テレビを見ながら同時にインターネットをやるのが常識の時代になろうといている。
回線容量が細かった時代には、テレビとインターネットの間には越えられない壁があったが、光回線がどんどん家庭に入りだしたので、その壁は急速になくなりつつある。
いま電話の世界が、インターネット回線を利用したIP(インターネット・プロトコル)電話に急速におきかわりつつあるが、昨年夏、総務省の情報通信審議会が、IPインフラを、放送にも用いることを許可すべしという答申を出した。
IPインフラで放送を流せるということになると、放送の世界(メディアの世界全体)が、おそらく劇的に変わるだろう。
中央の巨大キー局だけが圧倒的な支配力をもって、放送の世界を独占的に牛耳っていた時代は終わって、コンテンツ力だけで勝負に出てくる、中小の地方局、インデペンデント系のプロダクション、カンパニー、個人などが群雄割拠する世界に変っていくだろう。
既得権益にとらわれる放送業界
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と思いきや、この答申には、バカげたしばりがかかっていて、そうはならないのだという。
現在の放送制度は、県単位の放送エリアを越えて放送することが許されないようになっているのだが、IP時代になっても、その県単位のエリア制度を守れということになっているのだという。
next: IP電話がいま急速にシェアを伸ばしているのは…
http://web.archive.org/web/20060422002949/http://www.nikkeibp.co.jp/style/biz/feature/tachibana/media/060227_net/index2.html
IP電話がいま急速にシェアを伸ばしているのは、インターネットの回線にさえつながっていれば、全国津々浦々、どこにある電話から、どこにある電話にでも自由に電話をかけられ、しかも料金がどんな遠くにある電話に対してでも一定でよい(インターネット網への接続料金だけ)というインターネット・プロトコル通信の最大の利点を生かしているからである。
ところが、この答申に従うと、このインターネット・プロトコル通信網のメリットがなくなってしまうのだ。これでは、いまどこからどこにでもかけられるIP電話をこれからは地域限定的にしかかけられないようにしますというのと同じくらい、退歩的なアイディアである。
これまでの放送メディアは、巨大な資本によって巨大なパワー電波の発信力を持たなければならなかった。そのパワー電波を、巨大な電波塔から発信するか、衛星(BSまたはCS)から発信することで発信エリア全体にあまねく電波の雨を降らせねばならなかった。
しかし、インターネット時代は違うのである。一つのエリア全体に隅々まで電波の雨を降らせる必要はない。従って、パワー電波をいかなる形でも発信する必要はない。IP光通信網にアクセスして、受信者一人ひとりに、一定のコンテンツを直接送り届ければよいのである。いいコンテンツを発信できる人は誰でも、IP通信網を利用することで、個人的にナショナルメディアを作りあげることができるのである。
パワー電波の雨を降らせる必要がなく、インターネット網につなぐだけで済むから、費用は極小で済む。しかも、個々の視聴者に直接伝達するから、視聴者があちこちに散在していてもいい。オンデマンド方式でいくから、特定の放送時間に縛られることもない。
日本を未来の負け組みに
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このように考えていくと、IP放送というものが、従来の放送と全く違う新しいメディアで、とんでもない未来の可能性を持つということがわかるだろう。
ところがこの答申に従って、IP放送も、県単位の放送エリアを守れということになると、このような未来の可能性が全部なくなってしまうのだ。
これは、地域に跋扈(ばっこ)することで生き延びている既得権益集団の利益を守るための改悪としかいいようがない。これは、小泉改革がめざしてきたものを正面から否定する愚行ではないか。
いま通信の世界は、IPを取り込むことによって、これまでとはちがう可能性の世界がどんどん広がりつつあるのが世界の大勢である。そういう可能性をいちはやく取り入れ、新しい技術開発をどんどん進めていく国が未来の勝ち組になる。ところがこれでは、日本を未来の負け組みにすること必定である。
立花 隆
評論家・ジャーナリスト。1940年5月28日長崎生まれ。1964年東大仏文科卒業。同年、文藝春秋社入社。1966年文藝春秋社退社、東大哲学科入学。フリーライターとして活動開始。1995-1998年東大先端研客員教授。1996-1998年東大教養学部非常勤講師。2005年10月から東大大学院総合文化研究科科学技術インタープリター養成プログラム特任教授。
著書は、「文明の逆説」「脳を鍛える」「宇宙からの帰還」「東大生はバカになったか」「脳死」「シベリア鎮魂歌―香月泰男の世界」「サル学の現在」「臨死体験」「田中角栄研究」「日本共産党研究」「思索紀行」ほか多数。講談社ノンフィクション賞、菊池寛賞、司馬遼太郎賞など受賞。
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