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(回答先: 第36回 近代国家日本の歴史に迫る「私の東大論」番外編 (2005/08/10) 投稿者 ROMが好き 日時 2008 年 12 月 06 日 19:03:39)
第37回 衆院解散、派閥解体で小泉首相が狙う次の一手 (2005/08/10)
http://web.archive.org/web/20051231032541/http://nikkeibp.jp/style/biz/topic/tachibana/media/050810_kaisan/
2005年8月10日
ついに衆院解散が決まった。
先週土曜日、「否決されたらあくまで解散」を主張する小泉首相のところに、森前首相が最後の説得に出かけたが、「これしかない」と、缶ビール10本と干からびたチーズひとかけと、同じく干からびたサーモンひとかけで追いかえされ、「自分は命がけで解散を断行する」「お前さんは変人以上だよ」のやりとりで説得は不調に終わったとメディアはいっせいに報じた。
このやりとりのニュースを聞いて、これはただごとではないと思った。前から小泉首相が森前首相をバカにしきっていて、その政治的忠言説得をすべて拒否してきたことは、よく知られているが、ここまできては森前首相に対して公然たる侮辱を加えたに等しい行為といわれても仕方ないだろう。
これが意味するところは、小泉首相は森派と訣別したということだろう。
徹底的に森前首相のプライドを傷つけた小泉首相
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森前首相はこれまで小泉首相にどんなに冷たくされても、小泉首相から、じぶんは森派の人間ではないと通告されても、四十女の深情けというか(六十男の深情けというか)、「それでも小泉首相を支えているのは森派だ」といいつつ、自民党内の空気の親小泉方向への取りまとめ役を勝手に任じて陰でさかんに行動してきた。
もし森前首相のそのような陰にかくれての支援がなかったら、小泉首相はとっくに自民党内で孤立無援になって政権を失っていただろうといわれるが、小泉首相のほうでは、その森前首相に対して、一向に感謝の念を示さなかった。それどころか、最後には、後ろ足で砂をぶっかけるようなことをして、徹底的に森前首相のプライドを傷つけたわけだ。
小泉首相としては、もともと森などという政治家は自分という浮き袋にしがみついて生きのびてきただけのつまらない男で、歯牙にかけるにも値しない政治家とみなしてのつきはなしだということだろうが、これが森前首相のプライドを心の奥底の奥底で傷つけてしまった可能性は大いにあり、森前首相はこれからの政治の修羅場において本格的な小泉首相の引きおろしの側に走る可能性が出てきた。
これから、選挙がはじまるまでの約3週の間、日本の政治は未曾有の権謀術数の場と化すことは必至で、政界の表でも裏でも、幾多の政権構想が浮かんでは消え、浮かんでは消えする日々がつづくことになるだろう。
それがどのような展開をたどるか、いまのところ、まるで予測がつかないし、予測しても外れること必至だろうが、私はこの解散にいたる最後の場面での小泉首相の言動を見ていて、小泉首相の覚悟のようなものが見えてきたような気がする。
next: 小泉長期政権下で弱体化した自民党派閥…
http://web.archive.org/web/20051023102952/http://nikkeibp.jp/style/biz/topic/tachibana/media/050810_kaisan/index1.html
小泉長期政権下で弱体化した自民党派閥
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最近の小泉首相のやることなすこと、オーソドックスな政治的計算の公式から考えると、してはならないことの連続で、まるで、ヤケのヤンパチの自爆行動のようにも見えていたが、どうやらはっきりしてきたのは、第一次小泉内閣を作るころから公言していた「自民党をぶっこわす」宣言が本気の宣言だったのではないかということだ。
自民党の旧体制の指導者たちは、小泉政権下の徹底的な冷遇措置で片端から政治力を失っていった。
経世会は橋本、野中を最後にとっくに力を失い、最後の世代の旧経世会指導者である青木も、綿貫も、今回の政争で政治力を使い果たし、次世代の額賀や藤井も力不足歴然で、事実上、この派閥は消えたも同然の状態にある。旧宏池会勢力(旧宮沢派)も、「加藤の乱」以後は、四分五裂状態がつづき、大宏池会構想も、構想があるだけでさっぱり実りがない。
亀井派は、前回総裁選以来、徹底的に干し上げられたし、今回の政争の影響で多くの議員が公認も得られないということになると、壊滅的な打撃を受けるおそれがある。
残る大派閥は森派だけだが、森前首相を徹底的にだめ男にすれば、森派は丸ごと小泉派になると小泉首相は思っているのではないか。実際、小泉政権下で急速に勢力を伸張したのは、森派だけで、若手はすべて小泉首相の息がかかっているから、事実上の小泉派といってよい。
森派の中で唯一小泉首相の足元をおびやかしそうなのは安倍幹事長代理だが、安倍は自分の政権下にとりこんでしまっている。しかも、幹事長をやめさせてから幹事長代理にするという屈辱をなめさせたうえでのとりこみだから、小泉首相との上下関係ははっきりしている。当分の間、安倍幹事長代理が独立して小泉首相に弓を引くなどということがあるとは考えられない。
このように考えてくると、自民党内の反小泉勢力は、総力をあげて郵政法案に反対してみても、あれくらいの票数しかあげられなかったのだから、郵政法案を参院で否決したとはいえ、反対派の力はそれほど大きなものではなかったことを証明したようなものだ。
next: 次の選挙で自民党は“小泉党”に…
http://web.archive.org/web/20051212183625/http://nikkeibp.jp/style/biz/topic/tachibana/media/050810_kaisan/index2.html
次の選挙で自民党は“小泉党”に
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小泉首相自身の今回の政争の評価は、おそらく自分の足元が急速におびやかされつつあるという評価ではなくて、「なんだ、反小泉勢力の力なんかたかがしれている。あとは処分に名を借りて、反乱軍すべてをたたきつぶすだけだ」くらいに思っているのではないだろうか。
実際、すでに、自民党の体力は、一連の小泉改革と徹底的な旧経世会勢力の排除によって足腰は完全に弱っており、自民党全盛時代の集票マシーンはすでに消えたも同然で、小泉首相の「自民党をぶっこわす」宣言は実はかなりの実質において成功しているといえる。小泉首相に正面きって反抗できる政治勢力は、すでに自民党の中に残っていないといってよい。
次の選挙で、小泉首相がかつてのような大衆的な人気を発揮し、自民党は、もっぱら小泉首相の力で当選させてもらったと感謝感激するような人々の集まりということになってしまえば、自民党が事実上の“小泉党”になってしまうということはおおいにあり得ることだと思う。
直近のニッポン放送の簡易世論調査では、小泉支持が6割を超えているというが───あまりにも簡易な調査なのでにわかには信じがたいが、大衆レベルではこれは大いにあり得ることではある───総理大臣のメディア露出度は大きすぎるほど大きいから、当分の間、小泉人気がそう簡単に落ちるとは考えられない。
自民党旧指導者達が連合軍がポスト小泉で動く
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このような小泉首相による徹底的な派閥つぶしが進行する中で、小泉首相に対する自民党内旧勢力の怨磋の声は党内に満ち溢れ、それが今回の政争を深刻なものにしたいちばんの原因だが、この解散総選挙にいたる過程で、それはさらに激しいものになりつつある。そちらの側に森前首相が身を寄せることになると、事態は相当深刻なものになるというのが私の言いたいことである。
たとえば、森前首相が中心になって森派の福田康夫前官房長官を担いだり(大いにありうる)、安倍晋三幹事長代理を担いだり(森前首相は安倍幹事長代理に対する警戒心も強いから可能性は低い)するようなことがあったら、小泉首相は足元をすくわれて政権がたちまちひっくり返る恐れがある。
自民党内権力というのは、結局、自民党の中で、自分を支持してくれる党員をどれだけ集められるかにかかっているから、小泉首相にコケにされつづけてきた自民党旧指導者達が連合軍を作って、それに森前首相が加わって、有力次期首相候補を担ぐようだと、選挙に勝っても小泉首相は政権を作れない可能性がある。
それだけではない。すでにしばらく前から言われていることだが、そもそも小泉首相が選挙に勝てない可能性が大いにある。前にも書いたように民主党が選挙に勝って、(単独で、あるいは連立で)政権をとってしまう可能性が現今の選挙区の情勢分析では大いにあるのである。
next: 小泉首相はそこをどう考えているのか…
http://web.archive.org/web/20050814003757/http://nikkeibp.jp/style/biz/topic/tachibana/media/050810_kaisan/index3.html
小泉首相はそこをどう考えているのか。負けたら、民主党に政権をとらせ、日本でも2大政党制が有効だということを示すことを狙っている説もある。民主党にしばらく政治をあずけてみても、どうせろくな政治ができないんだから、やっぱり小泉政権時代がよかったと自分の手元にもう一度政権が戻ってくると期待しているという説である。
ただ私はこの説はとらない。
小泉首相はこのような運を天にまかせるタイプの政治家ではない。小泉首相はあくまで政治に主体的にかかわって、自分の意思の力で政治を動かそうとする政治家である。
次の選挙で民主党の分断狙う小泉首相
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では、目先の選挙を、その結果を受けての次の政権作りの中で、小泉首相はどう動くのか。
民主党が選挙に勝って、次の政権は民主党のものになることが必至という見方が強いという話は前にも書いた。小泉首相をそのような不利な客観的情勢を承知の上で、あえて誰も賛成しない解散、総選挙に踏み切ったのはなぜか。
自暴自棄の行動なのかというと、私はそうではないと思う。たぶん大きな計算が背後にあるのではないか。
自民党が分裂選挙に走ったら、自民党が民主党に敗北すること必至といわれるが、私は必ずしもそうではないと思う。自民党が分裂選挙になるなら、民主党も分裂選挙になるように誘導すればよいのである。かつて小泉首相が総裁公選に負けつづけていたころ、今度小泉首相が負けたら、民主党の一部勢力と手をむすぶことになるにちがいないといわれ、実際その一部勢力が名前入りで報道されたこともある。
もともと民主党は、憲法問題のイデオロギー面で一つの党でいるのが不思議といわれるくらい、考え方に大きな違いがある党員がより集まっている。今回の自民党が発表した改憲草案にしても、民主党の中には、あれでいいと賛成するような勢力がある。選挙の結果次第で、改憲問題など、民主党の中で統一がとれない問題をもちだし、民主党の一部勢力に小泉首相が声をかけたらどうなるか。党を割って小泉勢力と合流するなら、自民党を完全に再起不能にしたうえで政権がとれるぞと声をかけたら、必ずグラッときて、小泉首相と合流してしまうような流れが民主党の中にある。
今からそこまで予測することはかなりはずれる危険をともなうが、私はごく近い将来に、小泉首相が民主党を分裂させるような動きにでてくると思う。
自民党が分裂して、民主党が分裂しなかったら、自民党の敗北(小泉政権の終わり)は必至である。小泉首相はそれ以前に必ずや民主党員の懐の中に手をつっこんでくるだろう。93年に自民党、社会党、さきがけが合流して、権力をとったことがあることを思い出せば、自民党と民主党がそれぞれ分裂して、組み合わせを変えることなど、大いにありうる話だと思う。
これからしばらくの間、これまでは考えられもしなかったような政権抗争が次々生まれてくる時期なのだと思う。
立花 隆
評論家・ジャーナリスト。1940年5月28日長崎生まれ。1964年東大仏文科卒業。同年、文藝春秋社入社。1966年文藝春秋社退社、東大哲学科入学。フリーライターとして活動開始。1995-1998年東大先端研客員教授。1996-1998年東大教養学部非常勤講師。
著書は、「文明の逆説」「脳を鍛える」「宇宙からの帰還」「東大生はバカになったか」「脳死」「シベリア鎮魂歌―香月泰男の世界」「サル学の現在」「臨死体験」「田中角栄研究」「日本共産党研究」「思索紀行」ほか多数。講談社ノンフィクション賞、菊池寛賞、司馬遼太郎賞など受賞。
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