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(回答先: 立花隆さんの「メディア ソシオ-ポリティクス」の海外アーカイブを阿修羅のスレッドでまとめて保存してくれないかと、。 投稿者 ROMが好き 日時 2008 年 12 月 05 日 18:06:37)
第5回 浮き彫りになったアメリカ金融資本“むしりとり”の構図 (2005/03/25)
http://nikkeibp.jp/style/biz/topic/tachibana/media/050325mushiritori/
http://www.nikkeibp.co.jp/archives/366/366538.html
2005年3月25日
この一連のできごとで、誰が一番儲けたかというと、それは文句なしにリーマン・ブラザーズである。リーマン・ブラザーズの利益は、二つのルートから生み出される。一つは堀江社長に用立てた800億円の資金の金利(それがどのような約定になっているか確かなところはわからないが、相当な高金利と推定してまちがいないだろう)である。
もう一つは、堀江社長から譲り受けた膨大なライブドア株を市場でカラ売りしては買い戻すことを繰り返すことによって得られる利益である。ライブドアはニッポン放送・フジ連合軍に対してこれほどあざやかな勝利をおさめたのだから、普通に考えたら株価が市場で急騰しても不思議ではないのに、事実はそうなっていない。反対に若干ジリジリと下げてしまう局面すらあった。
リーマンのカラ売りが作りだす“巨大ブラックホール”
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事実問題としては、ライブドア株に相当の買い注文が入り、値上がり圧が一貫してかかっているのだろうが、市場の動きを見ながらリーマン・ブラザーズが手持ち株のカラ売りをずっと続けているから、結局、市場の値上がりエネルギーはリーマン・ブラザーズの巨大なカラ売りが作り出すブラックホールの穴に全部吸い取られてしまうのである。ブラックホールに吸い取られた値上がりエネルギーは、結局、リーマン・ブラザーズのカラ売り株の買い戻し操作によって、キャッシュの利益となって、同社の懐に入っていく。
カラ売りをし過ぎて株価がどんどん下がっても、それは買い戻しの時の利益を増やすだけだ。もし、市場の値上がり圧のほうが強くなって、株価が上がったりしたら、リーマン・ブラザーズは今度は転換社債を株にすることによって儲けを回収することができる。その際、リーマン・ブラザーズは株価より一割程安い価格で入手できることになっているから、転換して株をすぐ市場で売ったとしても10%の利益は保証されるわけだ。
要するに、このスキームでは、リーマン・ブラザーズはどうころんでも必ず儲かるようになっているのである。誰が考え出したのか知らないが、ほとんど天才的なスキームといっていいだろう。このスキームによって堀江社長がむしり取られる(株価上昇で堀江社長に入ったはずの利益は全部リーマン・ブラザーズの懐に入ってしまった。堀江社長はライブドアの株の大株主だから、その失った利益=リーマン・ブラザーズに与えた利益はとてつもない巨額なものになっているはず)とともに、勝ち組の堀江社長に乗って一儲けしようと、市場でライブドア株に手を出した人たちも皆リーマン・ブラザーズにむしりとられることになる(ライブドア株を買っても期待した利益は全く得られず、買いのエネルギーは全部、ブラックホールを経由してリーマン・ブラザーズの懐に入っていく)。
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http://nikkeibp.jp/style/biz/topic/tachibana/media/050325mushiritori/index1.html
リーマン以外の全当事者が損するスキーム
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これは知れば知るほど呆れたスキームで、堀江社長も含めて、リーマン・ブラザーズ以外の全当事者が損する一方のスキームである。目はしがきき、これまではあらゆる場面で巧妙なビジネスをやってきた堀江社長がなぜこんなバカげたスキームにのったのかと不思議な気がするかもしれないが、実は堀江社長にはこのスキームに乗る以外、他に資金調達の方法がなかったのだ。
その辺の裏事情を、「WEDGE」4月号の「日本で猛威を振るい始めた日本金融軍団“ 荒稼ぎ”の極意」は、次のように解説している。
「昨年末、堀江社長は買収資金を工面しようと、内外の金融機関を走り回っていた。ライブドアの内実を知る外資が応じた金額は、100億円程度だったとされる。200億円を提示した投資銀行もあったようだが、とても足りなかった。資金不足で買収断念かと思っていた矢先に、突然話がまとまった。『外資の担当者が、この案件を持ってリーマンに移ったからだ』と関係者はいう。」
要するに、800億円という身の程知らずの一大借金(CB発行)をしなければ、堀江社長はこのニッポン放送乗っ取りという一大バクチを敢行することが出来ず、800億円借りるためには、このように唖然とするほど屈辱的条件のスキームを呑まなければならなかったということである。
この後、堀江社長はいったいどうなるのか。手に入れたニッポン放送を利用して、意外な成功を収める(フジ産経グループとの連携による事業拡大)可能性もないではないが、逆の可能性(フジとの連携もならず、ニッポン放送を利用しての事実拡大もならず、結局は、リーマン・ブラザーズに丸裸になるまでむしりとられてスッテンテン)も同様にあるというところだろう。
小泉改革が後押しするアメリカ金融資本一人勝ちの構図
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先の「WEDGE」の記事は、これが、バブル崩壊以後、日本で続いているアメリカの金融資本による日本の富のむしりとり路線の流れの上にでてきたものであることを指摘している。要するにリップルウッドによる新生銀行再生プロジェクトでの2200億円荒稼ぎ、ゴールドマン・サックスによる三井住友支援等での1700億円荒稼ぎがいろいろあったが、そういうむしりとりの一環だということだ。
この記事は、グローバル化の波の中で、各国の金融資本が海外に出て稼ぐことが基本的に自由化されたが、その自由化(国際的金融ビッグバン)によって稼ぎまくっているのはもっぱらアメリカの金融資本であるということを指摘して、次のような数字を示している。
米国の海外直接投資による収益率は全世界に対して、10.3%。逆に、米国以外の国からの対米直接投資の利益率は、平均で4.2%(欧州が4.5%。日本は5.0%)。要するに、アメリカ金融資本の一人勝ちなのだ。そして、特に、むしりとられ方が激しいのが日本なのだ。
先に述べたようにアメリカの対外直接投資からの平均収益率は10.3%だが、その内訳をみると対欧投資からは9.6%にとどまっているのに対して、対日投資からは、実に13.9%もの収益をあげている。これだけ日本からのむしりとられ方が異常に進んでいるというのも、いわゆる小泉改革がアメリカの利益を計るためとしか思えない方向性をもって推進されてきたからであるという。(この項、次回に続く)
立花 隆
評論家・ジャーナリスト。1940年5月28日長崎生まれ。1964年東大仏文科卒業。同年、文藝春秋社入社。1966年文藝春秋社退社、東大哲学科入学。フリーライターとして活動開始。1995-1998年東大先端研客員教授。1996-1998年東大教養学部非常勤講師。
著書は、「文明の逆説」「脳を鍛える」「宇宙からの帰還」「東大生はバカになったか」「脳死」「シベリア鎮魂歌―香月泰男の世界」「サル学の現在」「臨死体験」「田中角栄研究」「日本共産党研究」「思索紀行」ほか多数。講談社ノンフィクション賞、菊池寛賞、司馬遼太郎賞など受賞。
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