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第1回 ライブドア、ソニー、西武鉄道報道のミッシング・リンクを読み解く (2005/03/25)
http://www.asyura2.com/08/senkyo56/msg/528.html
投稿者 ROMが好き 日時 2008 年 12 月 06 日 00:44:06: Dh66aZsq5vxts
 

(回答先: 立花隆さんの「メディア ソシオ-ポリティクス」の海外アーカイブを阿修羅のスレッドでまとめて保存してくれないかと、。 投稿者 ROMが好き 日時 2008 年 12 月 05 日 18:06:37)

第1回 ライブドア、ソニー、西武鉄道報道のミッシング・リンクを読み解く (2005/03/25)
http://nikkeibp.jp/style/biz/topic/tachibana/media/050325lss/
2005年3月25日

 このページは、今月の終わり(3月30日)から公開される「立花隆の『メディア ソシオ-ポリティクス』」のページのテスト版である。

 実際に走り出してみないと、これが公開後どう展開していくか、今のところは、自分でもよくわからない部分があるが、とりあえず、私がどんなことをどんな風に書こうとしているのかについて、一言しておく。

 これは基本的に、そのときどきで私が発言しておきたいと思ったことを、かなり自由に発信するページである。いってみれば、一種の個人的ブログと考えていただいてもよい。

 

時流の話題すべてがテーマに
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 内容的には、政治、経済、社会的事件、国際問題、科学技術、文化(映画、文学、読書、ジャーナリズム、インターネット、風俗)などなど、そのときどきで、あらゆるものに筆を及ぼしたいと思っている。

 書き方としては、即物的な最新情報をいっぱいに詰め込んだページとして展開するのではなく、むしろ目の前の現実から一歩引いて、より広い視野からそれを捉え直したときに、何がみえてくるかを中心に書きたいと思っている。ファクトそのものを伝えるより、私がそれをどう解釈しているか、それに対してどのような意見を持っているか、かなり主観性を帯びた、解説的オピニオンを付け加えたページになると思う。

 かつて週刊現代で、かなり長期にわたって「情報ウォッチング」「同時代を撃つ」などのタイトルで、時評コラムを持っていた(そのかなりの部分が今でも講談社文庫に入っている)が、そのインターネット版と考えてもらってもよい。

 一つのサブジェクトについてどれだけ書くかは、そのときどきで長短さまざまになると思う。ほんのちょっとした意見表明になる場合もあるし、延々と一つのテーマで長文を書きつらねることもあるということだ。

 発信は、毎週何曜日の何時と決めての書きかえではなく、インターネットというメディアの自由度の高さに甘えて、書きたいときに随時発信するという形にする(同時進行でいろんな仕事をしている関係上、そうせざるを得ない)。場合によっては、毎日、あるいは一日に何度も発信することもあるかもしれないし、何日も書きかえられないこともあると思う(最低週一回程度は書きかえるつもりだが、他の仕事のスケジュールが詰まっているときは、それも可能ではない)。

 テーマの選択と、内容そのものは筆者の自由に任されているが、内容が言論の自由の範をこえているとページの管理者が判断する場合(他人を度を越えて誹謗中傷し名誉棄損に問われ得る場合。あるいは、犯罪を使嗾するなど、社会常識を超えた過激な意見表明など)には、ページの管理者が待ったをかけて、話し合いをすることになっている。というわけで、このページにアップされている内容の文責は基本的に筆者にある。

 

ライブドア、ソニー、西武問題で問われる「会社は誰のものか」
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 最近の社会的事件で、何といっても興味をひかれるのは、ライブドアの堀江社長によるニッポン放送乗っ取り事件だ。それにソニーの首脳陣交代事件、西武鉄道の堤義明会長の転落などもある。このすべてがコーポレート・ガバナンスにかかわる問題で、その背景を分析していくと、資本主義システムの古くて新しい重大問題、「会社は誰のものか」という問題にぶつかる。

 「会社は誰のものか」に対する単純な答えは、「会社は株主のもの」であり、ライブドアの堀江社長はいつもそれを声高に主張している。西武の堤会長に問えば、彼もそう答えるだろう。そして、「株主はオレだ。だから会社はオレのものだ。文句あるか!」と付け加えるかもしれない。しかし、そういう堤会長に文句があちこちから出てきて、文句のほうに相当の理があることがわかってきたのが、西武問題の本質ともいえる。

 堀江社長もニッポン放送の乗っ取りに成功したとたん(高裁の判決勝利)、「会社は株主のもの。だからニッポン放送はオレのもの」というトーンの主張を極端にやわらげた主張に転じた。3月23日の記者会見では、ニッポン放送は社員さまのものであり、取引業者各位=スポンサーなど=のものであり、リスナーのものであるという意味のことを気持ち悪いほどの猫なで声で語っていた。

 会社は株主のものにはちがいないが、株主だけのものでもないこともまた明らかである。むしろ、「会社はどこまで株主のものか?」を問うほうが正しい問いになる。その答えはさまざまあり、その多様な答えの中に現代資本主義がかかえる本質的な問題点が次々噴出してくる。その議論は簡単にはすまないので、しばらくこの評論は先送りする。

 

next: 「ちょっと怪しい情報」のクレディビリティ判断
http://nikkeibp.jp/style/biz/topic/tachibana/media/050325lss/index1.html

「ちょっと怪しい情報」のクレディビリティ判断
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 以上、三つの事件、いずれも下世話な意味で大変面白いから、その裏側とか、その後の展開の予測とか、いろいろ知りたくなる。事実、多くのメディアがそういう情報を盛んに伝えている。しかしそのようなメディアで伝えられる、「これが真相だ」式のウラ情報が、どれだけ客観的事実を伝えているかというと、かなり疑問が残る。

 一般論でいうと、その辺のメディアに載るような情報は、よくて表面から皮膜一枚下どまりの情報であって、客観的事実からは相当に遠い。何か大きな社会的事件が起きて、大衆の関心がググッと盛り上がり、連日の取材合戦、報道合戦が続くという状況をさして、マスコミの業界用語は、“修羅場”という。報道記者が一人前と認められるためには、最低修羅場を二度はくぐる必要がある。

 記者は修羅場の中で、他社に抜かれるとか、誤報をする、ないし、誤報寸前の誤れる思い込みに陥るといった、手痛い失敗を何度か重ねてはじめて一人前になる。そのような失敗を重ねることで、はじめて、「ちょっと怪しい情報」のクレディビリティ判断が的確にできるようになる。ニュースバリューの判断が正しくできるようになる。

 なぜ手痛い失敗が必要なのかというと、人間は本性上、このような判断において簡単に「思い込みによる誤り」を犯しがちだからである。人間は何かが「そうであってほしい」と思っているときは、そうである側に有利な証拠を無意識のうちに優先的に集め、その証拠価値の評価にあたっても、自分の願望に有利な方向にバイアスをかけて判断するのである。自分ではあくまで客観的に公正に判断したつもりでも、無意識のうちに、自己に有利に資する主観的判断を下しているものである。

 

ミッシング・リンクの在り処を突き止める
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 このような「客観性を装った主観性の罠」にはまるの愚の犯しやすさは、ほとんど人間のDNAに埋め込まれているといっていいぐらい強い習性である。それから逃れるためには、何度かの手痛い失敗経験の学習効果によって、その習性に対する本能的警戒心を養うほかない。そういう学習を経て、はじめて若い報道記者は、二つの判断能力を身に付け、一人前になる。

 報道記者に一番必要なのはこの二つの判断能力であって、よく世間で思われているように、いいネタをつかんでくる猟犬的臭覚能力が何よりも大切というわけではない。

 そして、もう一ついうなら、いいネタをつかむために最も大切な能力は、情報の所在を嗅ぎつける能力ではなくて、いま最も大切な情報のミッシング・リンク(欠落部分)がどこであるかを突きつめて考えていく、分析能力、推論能力のほうである。足と耳を使って、情報の所在を探しだすのは、その後の作業になる。


立花 隆

評論家・ジャーナリスト。1940年5月28日長崎生まれ。1964年東大仏文科卒業。同年、文藝春秋社入社。1966年文藝春秋社退社、東大哲学科入学。フリーライターとして活動開始。1995-1998年東大先端研客員教授。1996-1998年東大教養学部非常勤講師。2005年10月から東大大学院総合文化研究科科学技術インタープリター養成プログラム特任教授。

著書は、「文明の逆説」「脳を鍛える」「宇宙からの帰還」「東大生はバカになったか」「脳死」「シベリア鎮魂歌―香月泰男の世界」「サル学の現在」「臨死体験」「田中角栄研究」「日本共産党研究」「思索紀行」ほか多数。講談社ノンフィクション賞、菊池寛賞、司馬遼太郎賞など受賞。  

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