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【岩国基地 厚木機能移転問題】特集:深層を追う―危険回避の沖合移設
http://www.asyura2.com/08/senkyo47/msg/784.html
投稿者 クマのプーさん 日時 2008 年 2 月 28 日 16:59:17: twUjz/PjYItws
 

http://www.chugoku-np.co.jp/iwakuni/Special/Is08021805.html

'08/2/18

 米空母艦載機部隊の移転容認派の支援を受け、岩国市長選を制した福田良彦市長の就任で、岩国基地への受け入れに向けた動きは加速する見通しとなった。国との協議が本格化するのを前に、米軍再編全体でも重要な役割を果たした滑走路の沖合移設事業が、どんな時代背景の中から生まれ、どのような道筋をたどってきたのか検証する。(岩崎誠、金崎由美、田中美千子)

 ▽九大事故、運動の契機 「地域振興」の側面も

 二百十三ヘクタールの埋め立て部分は整地がほぼ終わり、新滑走路の建設を待つ。防衛省が沖合移設の完成予定とする二〇〇八年度末まで一年余り。厚木基地(神奈川県)から移転する空母艦載機部隊の格納庫をはじめ、数百億円規模とされる米軍再編関連の追加工事は移転目標の一四年まで続く。

 滑走路を一キロ沖合に移す巨大事業の原型となるアイデアが岩国市内部で浮上したのは、一九六〇年代前半。ある出来事がきっかけだった。当時の基地司令官が、北側の工場群にある帝人岩国工場の煙突を飛行に危険だとして切るよう求めた。

 その時は煙突に照明を付けることで折り合ったが、その後も危険回避策を基地側と協議した。「滑走路の角度変更などいろいろな案が検討され、沖合移設に落ち着いた」。市商工課長として基地対策を担当した白井正司さん(82)は明かす。

 ▽官製談合明るみ

 具体化に向けて火がついたのは、全国に衝撃を与えた米軍機の事故だった。六八年六月、福岡市の九州大構内にファントム機が墜落。岩国基地所属と同型機だったため、岩国市議会は「基地移設」を決議。さらに三年後に現在の計画に直結する「沖合移設」を再度、決議した。現滑走路部分の返還を求め、跡地を活用したい思いもあった。

 市長や市議らが繰り返し上京し、自民党の国会議員らへ陳情。地元出身の故佐藤栄作首相の配慮もあってか、七三年度に初めて調査費がついた。官・民それぞれの期成同盟会の活動や岩国、東京での大会開催…。運動は盛り上がりを見せた。

 ただし、地元が当初、要望したのは「千五百メートル沖」への移設。六千億円かかるとされ、実現は困難視されていた。調査費だけが毎年、計上される足踏みが続いた。

 政府・与党が着工を決定したのは九二年。曲折の末、計画は「千メートル沖」への移設となった。環境影響評価と山口県の埋め立て承認を経て九七年、着工にこぎつけた。

 事業費は全額「思いやり予算」を充てた。着工当時で千六百億円。その後の計画変更で二千四百億円に膨らんだ。旧防衛施設庁幹部が業界の意向を聞き取り、受注企業を割り振る「官製談合」の構図は一昨年、東京地検特捜部の捜査で明るみに出て、一、二審とも有罪判決が出ている。

 ▽面積1.4倍に拡大

 巨額な土木利権が中央の建設業界を潤す一方、「跡地返還」は棚上げとなった。埋め立てで面積が一・四倍に膨らみ、港湾機能も充実する基地の拡大が地元の要望で実現する―。国にとって戦後、例のない成果は、米軍再編の中で重要なカードとなった。

 「イワクニでは最新鋭の航空機を収容し、維持補修機能を提供するために現在、改善が進められている」。これが在日米海軍司令部の認識だ。沖合移設に対する地元の受け止めとは大きな開きがある。

 白井さんは市職員から実業界に転じ、岩国商工会議所会頭も経験。今も民間の期成同盟会で会長を務める。「沖合移設は基地の存在を永久に承認したということでもあった」と振り返り、艦載機部隊の受け入れはやむを得ないとする。

 これに対し、負担軽減が狙いだった事業が、基地機能強化につながったことに納得しない市民も少なくない。艦載機の受け入れに伴う国の手続きが、県への埋め立て事業の書面上の変更でとどめたことにも批判がある。

 立命館大の中逵(なかつじ)啓示教授(アメリカ外交史)は広島大助教授だった九五年、沖合移設事業の論文をまとめた。事故防止や騒音軽減という建前とは別に、本音では地域振興が目的だったと分析。事業を「成功」と位置づけた。

 その段階では、今日の米軍再編までは想定していなかった。「沖合移設が決まった段階で跡地返還に備えた将来のまちづくり計画をつくり、議論していれば、状況は変わっていたかもしれない」と中逵教授は考える。

 ▽埋め立て土砂確保と宅地造成 愛宕山開発事業、中止で米軍住宅案

 岩国基地を見下ろす愛宕山を切り開いた「愛宕山地域開発事業」。厚木基地から四千人近くが移転する空母艦載機部隊の隊員・家族らの住宅地として国が検討する造成地は、基地滑走路の沖合移設とセットの関係だ。

 沖合移設への埋め立て用の土を確保するとともに跡地を住宅団地にして人口増を図る―。一九九四年に山口県、県住宅供給公社、市で協定書を締結。九八年十二月に着工した。事業面積は百二ヘクタール。

 ところが、地価下落などから二〇〇一年に完売を疑問視する外部監査意見が出され、事業は見直しに。沖合移設の工期の三年遅れに伴う調整も余儀なくされた。〇六年には中止の場合に県と市が負担する借入金の総額が二百五十一億円とする試算が示され、土砂搬出の終了から三カ月後の昨年六月、県と市が事業中止で合意した。

 昨年十一月、国は山口県との協議で買い取りに基本合意。新年度の防衛省予算案に米軍住宅の用地調査費として一億一千万円を計上した。しかし、愛宕山周辺の住民の拒否反応は強い。

【写真説明】新年度に、新しい滑走路の建設が始まる沖合移設事業。結果的に米軍再編の受け皿となった(撮影・藤井康正)

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