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岩国基地問題:3 動きだす住民 初の訴訟 負担主張へ/4 基地城下町 経済効果 膨らむ期待(中国新聞)
http://www.asyura2.com/08/senkyo46/msg/474.html
投稿者 クマのプーさん 日時 2008 年 1 月 25 日 14:49:44: twUjz/PjYItws
 

(回答先: 岩国基地問題:1空爆の後ろ側 米世界戦略に直結 /2沖縄の教訓 米運用、効かぬ歯止め(中国新聞) 投稿者 クマのプーさん 日時 2008 年 1 月 25 日 14:43:01)

3動きだす住民 初の訴訟 負担主張へ
  「協力的」から意識変化

 「『厚木』を持ってきてもいいと決められたのは、基地負担の大きさをきちんと主張してこなかったからだ」―。年の瀬の十二月二十八日、岩国基地(岩国市)への米空母艦載機部隊の移転に反対する住民団体が市内で会合を開いた。同基地では初の騒音訴訟が、この日動きだした。

国家賠償の対象

 出席した約二十人のうち、基地周辺で国の防音工事の対象となるWECPNL(うるささ指数、W値)七五以上の住民は三人。他の基地の騒音訴訟の判例では国の賠償の対象となる。飛行ルートの直下、滑走路から約二キロ弱の三笠町で茶葉製造業を営んできた石原幸男さん(75)は、訴訟の原告となる決意をした。

 家族七人と暮らす店舗と自宅のW値は防音工事基準をはるかに上回る八五。「戦闘機が飛ぶと、腹の底にこたえる」。家族の会話も取引先との電話もままならない。爆音に眠りを妨げられる事もしばしばだ。艦載機部隊の受け皿となる沖合移設の滑走路が完成しても、W値はなお七五以上になる見通しだ。

 厚木(神奈川県)、嘉手納(沖縄県)、横田(東京都)…。国内の他の基地の街の住民が相次いで訴訟に立ち上がるのを横目に見てきた。「岩国でも…」と周囲に持ち掛けたことはあるが、反応は冷たかった。「基地絡みの商売人も多いから、文句を言えない空気もあった」とみる。

撤去運動は下火

 だが、石原さんは在日米軍再編を機に、基地に対する住民意識の底流が変化してきているのを実感している。騒音軽減の願いを託した沖合移設が基地機能強化を招いたからだ。「『裏切られた』との思いから、住民も基地との付き合い方を考え始めた。これから原告も集まるはずだ」

 全国的に「基地に協力的な街」とされてきた岩国。反基地闘争に火がついた時期はあった。ベトナム戦争が続いた一九六〇―七〇年代。米兵犯罪が多発し、核疑惑も浮上。基地撤去を求めるデモや大規模集会が繰り返されたが、活動の中心を担ったのは労働組合や革新政党だった。住民全体のうねりとはならず、いつしか力を失った。

 八三年から三期、岩国市議を務めた斉藤光正さん(69)は、そんな動きをはがゆい思いで見てきた。朝鮮戦争の開戦から三カ月後の五〇年九月。自宅から二軒先の祖父方に中型爆撃機が墜落し、祖母と小学校入学前のいとこを失った。悲惨な記憶から基地撤去運動に打ち込んできたが、住民意識の壁は厚かった。

複雑な思い抱え

 山口県は八人の宰相を送り出した保守王国。岩国市も基地関連交付金への依存を続けた。「市民は基地の安定運用に協力し、国から静かでおとなしいと見られてきた」と斉藤さんは振り返る。

 今、米軍再編を機に、もの言わぬ住民も動きだした。「もう黙っていられない」。十二月一日、錦帯橋近くの河原で開かれた市民集会。基地近くに住む主婦竹下節子さん(69)は壇上に立ち、米軍再編計画を進める国を非難した。実行委員会の副代表を引き受けた。

 それまで政治問題にかかわった経験はない。「人前で主張するのは、勇気が要った」。八年前、夫の定年退職を機に戻った古里。空母艦載機移転計画を機に、活動に加わった。

 ただ、いまだに複雑な思いも引きずっている。「基地に勤めている人も艦載機移転容認の人もいる。近所ではまだ、この話をしてはいけないような気になるんです」

(写真説明)岩国基地に着陸した戦闘攻撃機。背後の丘陵地に住宅が立ち並ぶ
http://www.chugoku-np.co.jp/iwakuni/bakuon/2008010401.html


4基地城下町 経済効果 膨らむ期待
「協力的」から意識変化

 クリスマス前の金曜日。米海兵隊岩国基地(岩国市)正門前に続く川下地区の歓楽街は、夜通し閑散としていた。

隊員ら移住4000人

 「川下は死の街になった…。『厚木』だけを楽しみに耐えている」。スナックを営む朝来野(あさくの)大作さん(75)は漏らした。厚木基地(神奈川県)からの空母艦載機部隊移転が地区再生への望みだ。隊員と家族で四千人近くが移り住むとされている。

 一九五九年、店を開いた。周りには同業者が百店舗以上。最盛時は約三十人の従業員を抱え、厚木基地近くにも店を出した。活況を支えたのは米兵が落とすドルだった。

 六〇年の市の調査では米兵の一カ月の娯楽費は市職員初任給の倍以上の一万七千円。空母寄港も相次ぎ、「水兵が詰めかけて朝九時に開店した」。だが、七一年のニクソン・ショックでドル安に。ベトナム戦争も終結して客足は遠のいた。

 今も、基地には米兵や家族ら約六千人がいる。基地内には米国から空輸した品がそろう百貨店、飲食店などが日本の「思いやり予算」で完備。外出先も広島、福岡など都市圏へシフトした。艦載機が来ても、直接的な経済効果が生まれる保証はないが、それでも朝来野さんは自らに言い聞かせる。「川下だけじゃない。市全体が活気を取り戻せるはず」

10年間で134億円

 十二月二十九日、岩国商工会議所に約二百人が集まった。前日付で市長を辞職し、移転反対を掲げて二月の市長選に臨む井原勝介氏(57)の対抗候補を選ぶ集会だ。「夢のある街づくりをできるリーダーが必要」。福田良彦衆院議員(37)=山口2区=に、立候補を求めた。

 商議所はもともと基地と関係が深く、米軍との交流や艦船寄港の誘致などを進めてきた。現在の長野寿会頭(71)が就任したのは、移転反対が多数を占めた二年前の岩国市の住民投票の直後。一貫して容認を掲げてきた。

 「企業が元気になってこそ街が繁栄する」。市内はホテルなど地場企業が相次ぎ倒産し、商議所の会員数も十年間で二割に当たる約五百も減った。長野さんが期待するのは、基地人口増に伴う恩恵より、米軍再編で負担が重くなる自治体に国が出す「再編交付金」を活用した公共事業だ。

 市が容認すれば、十年間で最大百三十四億円が出る。JR岩国駅舎の改修、駅前広場の整備、国際交流センター…。設計事務所を経営する長野さんは、経済界で膨らむ「夢」を代弁する。「これほど巨大な基地の撤去などはあり得ない。存在する以上は、最大限に活用すべきだ」

「プラス思考で」

 岩国出身の漫画家弘兼憲史さん(60)は、政治家を主人公にした作品「加治隆介の議」で米軍再編が浮上する前の古里の姿を描いた。米軍基地と共生する街として…。

 弘兼さんは幼いころ、米兵の子どもと遊んだ。基地のラジオ放送を聞き、プレスリーを口ずさんだ。日常生活で国際性が身に付き、広い視野を持てたという。「基地の街であることをプラスにとらえるべきだ。他の街にない個性として国際的な雰囲気を出せば、周辺からも人が集まる」―。弘兼さんの持論だ。

 ただ、昨秋の広島市での米兵暴行事件などもあり、基地との共存に不安を抱く住民は少なくない。米軍再編後、極東最大級の基地として固定化される可能性は、極めて高い。今以上に基地に依存した「基地城下町」へと変わる覚悟があるかどうか。市民はその決断も迫られている。

(写真説明)ネオンもまばらな岩国市川下地区の歓楽街。通りを歩く米兵は減った(撮影・今田豊)
http://www.chugoku-np.co.jp/iwakuni/bakuon/2008010501.html

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