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(回答先: 偽装事業主 労働ダンピング あの手、この手 【神奈川シティユニオン】 投稿者 hou 日時 2008 年 3 月 26 日 21:55:36)
http://www1.ocn.ne.jp/~kcunion/
構造の崩壊
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『日本社会の構造崩壊は必然なのか』
神奈川シティユニオン 労働相談スタッフ 上泉 歩
共謀罪・入管法・教育基本法・労働契約法・・社会秩序を崩壊させかねない法案がめじろ押しです。国の財務状況を見れば、膨大な借金を抱え、増税は不可避です。その一方、高齢者、障害者、貧困者に対する福祉施策は、削減されています。私たちが生きる、子どもたちが生きてゆく社会が軋んで来ています。社会の構造がある時点で崩壊するのではないかと予感されます。一握りの勝ち組と大多数の負け組で構成される社会は、崩壊の危機に直面する社会なのではないでしょうか。
はじめに
「直感精読」、この言葉は将棋棋士、加藤一二三さんの座右の銘です。加藤九段は、将棋の指し手を決めるとき、最初に閃いた手を重視しますが、それを丹念に読み、着手するのです。私たちは、毎日、新聞を読みます。ただ、漫然と新聞を読んでいると、記事の背後に存在する大きな問題や、時代の変化の兆しを見逃すこととなります。新聞記事の多くは、官庁や企業のプレスリリースを要約したものです。そこには、表面的な出来事が記載されているに過ぎないことが多いのです。今、私たちには直観力を磨くことが求められています。併せて、出来事を読み解く力が求められています。
5月21日の朝日新聞に少子化対策を巡って、注目すべき記事がありました。・・・・少子化対策、猪口氏に異論。6専門委員、抗議声明へ「経済支援より環境整備」 政府が6月にまとめる少子化対策案をめぐり、優先するのは「経済的支援」か、「働き方の見直し」や「地域・家庭の子育て支援」か、猪口少子化担当相と、同氏がトップを務める少子化社会対策推進専門委員会の委員が対立している。経済的支援を重視する同氏が18日に経済財政諮問会議に示した「新たな少子化対策案(仮称)」に対し、環境整備を重くみる専門委の委員6人が「我々がまとめた報告書とは大きく異なる」として、週明けにも抗議声明を公表する。
少子化対策は、自民、公明両党の案と、専門委の報告書をたたき台として現在、政府・与党協議会で検討中だ。
同氏が「政府や与党の検討会などで提案されている事項を再編成した」として諮問会議に示した案には、「出産無料化」や「乳幼児手当の創設」「不妊治療の公的助成拡大」など経済的支援が明記された。若年層の経済負担軽減の必要性を訴える同氏の意向を反映したものとみられる。
だが、子育て支援や労働の専門家ら8人で構成する専門委が10回の議論をへて15日に提出していた報告書は、「子育て支援の環境が整備されていない現状では経済的支援のみでは子育ての安心感にはつながらない」として、「働き方の見直し」と「地域と家庭の多様な子育て支援」を「まず取り組むべき課題」と位置づけ、「乳幼児手当」などはあえて盛り込んでいなかった。佐藤博樹東大教授(人事管理)ら6人は「これまで話し合ってきたのは何だったのか」「報告書の内容はほとんど反映されていない」と反発。連名で抗議声明を出すことを決めた。・・・・
新しい制度や法律を作る時、法改正を行う時には、査問会議を開き、専門家・有識者の意見を求めるのがこれまでの通例です。査問会議の形式化についての批判は多いのですが、専門委員が抗議声明を出すというのは異例の展開です。専門委員の主張する「働き方の見直し」や「地域と家庭の多様な子育て支援」は、今や常識的な意見です。「男女共同参画社会基本法」の具体化を求める意見と評価することも可能な意見です。猪口少子化対策担当大臣の主張する「出産無料化」は、これまでのところあまり評価されていないアイデアなのです。むしろ、最近では、地方を中心に出産できる病院が少なくなっていることが問題となっているのです。
猪口大臣は、少子化担当相と、男女共同参画担当相を兼務しています。2005年末に閣議決定された第二次男女共同参画基本計画について。猪口大臣は日本経済新聞の紙上でこう答えています。・・・・ 「少子化対策とも大きくかかわるが、家庭と仕事の両立支援も重要な柱だ。育児休業がとりやすい環境づくりなど、多様な働き方の普及についても明記した。現在、働く女性の7割が育休を取得しているが、それ以前に出産を機に退職している人が七割いることを見落としてはならない。男性の取得率は1%以下で、スウェーデンなど先進国との差は歴然としている」
――ジェンダー(社会的性差)の記載や定義については各方面から様々な意見が出された。
「現場でかなりの混乱が起きているという指摘を受けて、まず『社会的性別(ジェンダー)』という簡潔な日本語表現を打ち立てた。『男は仕事、女は家庭』と いった、社会的に作られた固定的な役割分担を意識するには不可欠な視点だ。諸外国や国際機関では一般的な概念として使われており、ほかの言葉では言い換えられない」・・・・(日本経済新聞 夕刊 2006年1月23日)
猪口大臣の発言に対する、日本経済新聞編集委員、岩田三代さんのコメントは以下の通りです。・・・・「少子化の行方も左右」 「猪口大臣がいなかったらジェンダーの言葉は消えていた」。内閣府の担当者はこうもらす。今回の計画改定は「ジェンダー」論争の観があった。
背景には固定的性別役割をめぐる攻防がある。伝統的な男女観、家族観をよしとする人にとって、ジェンダーの考え方はそれを否定する象徴と映る。自民党の一部議員は男女同室の着替えなど極端な例をあげ削除を迫った。これに対し、異例ともいえるほどの詳しい説明をつけ、担当相が「私が全国をまわって正しい概念を周知します」と断言してなんとか収拾した。
こうした論争が繰り広げられること自体、意識改革がいかに難しいかの証明でもある。男女共同参画社会基本法はあらゆる分野で男女が活躍し、責任を分かち合う社会の実現をうたっている。だが、日本は「夫は外で働き妻は家庭を守るべき」に賛成する割合が先進国では目立って高く、管理的な地位に占める女性の割合は低い。
内閣府の最近の調査によると、女性が働く環境が整っている国ほど出生率が高いという。猪口担当相が少子化と男女共同参画を兼務する意味もここにある。これまでの基本計画には「わかりにくい」「身近でない」という批判があった。第二次計画はその壁をどう破るか。成否は少子化社会の行方ともからんでいる。・・・・
この記事から僅か2ヵ月後、朝日新聞は、ジェンダーフリーについてこう報道しています。・・・・ 昨年5月には自民党の「過激な性教育・ジェンダーフリー教育実態調査プロジェクトチーム」が初のシンポジウムを開催。総選挙後の組閣で、同チームの座長だった安倍晋三氏が官房長官に、事務局長だった山谷えり子参院議員が内閣府政務官に就いた。
同年末の同党の内閣部会は、第2次男女共同参画基本計画案の中にあったジェンダーの用語をめぐって紛糾。「ジェンダーフリーの名のもとに各地で過激な性教育が行われている」として、国際的に定着しているジェンダーという言葉まで削るよう求める意見が出た。
猪口男女共同参画担当相は「国として今後『ジェンダーフリー』という言葉は使わない」と宣言。今年1月、内閣府は「ジェンダーフリーは使用しないことが適切」と、使用自粛を自治体に要請した。
ジェンダーという用語を残した第2次基本計画は年末に閣議決定され、直後から猪口氏は全国の自治体関係者を回る「大臣行脚」を始めた。そこで、猪口氏は「今回の計画では、発達段階を踏まえない行き過ぎた性教育、男女同室着替え、男女同室宿泊などは極めて非常識であると具体的に書いた。現場で混乱がないようお願いしたい」と強調、自治体が計画を改定する際には「(ジェンダーフリーを使わない)国の改定を守っていただきたい」と念を押した。・・・・(朝日新聞 2006年3月23日)
猪口大臣の考え方は明らかに変化しています。これをどう読み解くのかが重要なのです。あなたの直感はどのようなものですか。権力の内部に入り、変節したと感じる方も多いと思います。これは多分当たりだと思います。では、この変節の政治的意味はどこにあるのでしょうか。男女雇用機会均等法、ドメステック・バイオレンス(DV)法、男女共同参画基本法と、続いて来た「男女格差」解消への流れに対するゆり戻しと読むことができるのではないでしょうか。
伝統的な政策決定過程を無視する猪口大臣の発言は、先の衆議院選挙で自民党大勝の一因となった小池環境相のような「刺客」の役割を担っているのではないでしょうか。今、教育基本法や、国民投票制度を巡る国会審議が行われています。又、労働法制についても、審議会段階での検討が行われています。こうした議論を無視して、議席の数を頼りに政策決定を強行しようとする姿勢が窺えます。こうしたことが、構造崩壊に繋がるのです。小さな地味な記事ですが、見逃すわけには生きません。 (5月22日)