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(回答先: 奥克彦氏の不審死の理由を問わず、アメリカに隷従せよと説く岡本行夫氏(2) 投稿者 クマのプーさん 日時 2007 年 11 月 28 日 19:30:54)
http://amesei.exblog.jp/6643487/
2007年 11月 28日
奥克彦氏の不審死の理由を問わず、アメリカに隷従せよと説く岡本行夫氏(3)
(前回の記事の続き)
奥克彦氏の不審死の理由を問わず、アメリカに隷従せよと説く岡本行夫氏(2)
<日本のイラク復興支援15億ドルの資金の「箇所づけ」をしていた岡本―奥コンビ>
『砂漠の戦争』では、岡本行夫氏が現地で活動する奥克彦氏の事実上の指揮官として連絡を受けていたことが記されている、と先ほど述べた。アラビア語のできる、井ノ上書記官と奥氏らは、時々岡本氏を連れてイラク国内を東西南北を案内し日本の復興支援資金のうちの無償資金援助15億ドルの使用目的を決めていった。
http://www.jnews.jetro.go.jp/cgi-bin/newsb/wlnews.cgi?id=iraq&no=620
岡本氏は、外務省に出向している経済産業省の古田肇・経済協力局長たちの通産官僚たちとも連絡を取り合い、現地での調査や開発のプランについて検討していったようだ。この古田肇氏というのは、2002年頃外務省改革の一環として、ODA省結成が噂されたときに、外務省に出向した通産官僚である。日本の復興支援計画の作成に置いてかなり重要な位置を占めていたことが分かる。
以前、このサイト内で通産省の産業政策としてイラク復興支援を位置づける分析を副島隆彦が行ったことがある。イラクの復興支援では、日本政府からイラクに対して、パトカー150台の供与が行われている。このパトカー支援の構想を考えたのが、何を隠そう、奥氏であったということを岡本氏は明らかにしている。
(引用開始)
奥が2003年6月末に一時帰国してきたとき、アザデガン油田の話を彼にした。官邸の僕の部屋には、中東の大きな地図が貼ってあった。北アフリカからイランの西半分までを示す横四メートル、縦ニメートルの壁いっぱいの地図だ。100万分の1の航空用の地図を一二枚貼り合わせて作ったものだ。
奥はそこへ立っていって、アザデガン油田の東側にある川を指さした。
「ここにカルーン渓谷というところがあります。日本は、イランがここに作るダムに円借款を出したんです。そしたらアメリカが圧力をかけてきて、日本は結局止めました。また同じことをやってるんですかあ。しょうがないなあ。そりゃイラン怒りますよ」彼が言ったのは、日本が1993年にカルーン第4ダムに386億円の借款を供与したものの、約束していた第二期工事への支援をアメリカの圧力で止めて、当時のラフサンジャニ大統領を怒らせた件だ。
アメリカは、イランが大量破壊兵器を作りテロリストを援助している山のような証拠があるからイランヘの援助は認められないと言ってきた。日本側は援助は放棄させられたが、「証拠」の方は、結局見せてもらえなかった。
11月に入って、東京に駐在するイランのアリ・マジェディ大使が何回か訪ねて来た。イランに行ってくれと言う。「イラン政府はここまで日本に対して悪化した国民感情を修復したい、イランに行ってマスコミに語りかけてくれないだろうか。あなたは総理の補佐官だから、行けばそのこと白体が小泉首相がイランとの関係を重視しているというメッセージになる」
僕が行っても何の役に立つわけでもない。それは外務大臣や特使のような偉い人の仕事だと断ったが、大使は「問題はタイミングで、今でないといけない」と引かない。あんたなら大した責任もないんだからすぐ動けるだろう、と見透かされていた。大使は執拗だった。
イランに勤務したことのある奥と相談した。
「是非、行ってください。行って、ついでにイラクとのボーダー・コントロールの話をしてきてくださいよ」
イラクの安定化にとって重要なのはボーダー・コントロール、つまり国境警備である。過激イスラム主義者集団のアンサールイスラムの勢力は、既に大部分がイランからイラク領内に入ってしまっているとの情報もあったが、国境を通るテロリストや不法入国者の往来を防がなければならない。イラクと国境を接するクウェート、サウジ、ヨルダン、シリア、トルコ、イラン六ヶ国のうち、特にイラン、シリアとの国境警備は、CPAにとってもイラク内務省にとっても重要な関心事だった。
奥はこう考えた。イラン、シリアの国境地帯をパトロールするイラク警察に何百台かの警備車輔を提供できないか。無線機のような機材も供与できないか。更に、もう一歩進めた。
「イランとシリアにも警備車輌をやれないですかねえ。彼らにもイラクと協力して、内と外から国境線を固めてもらんですよ。イラクの安定化は進みます。イラクも国境警備のアメリカ軍もイギリス軍も喜びますよ。東京で検討してもらいたいんです」
それにしても、すっかり悪くなってしまった日本とイランとの関係をどのように修復できるのか。僕のレベルで動かせる話ではないが、奥の声に押された。もうひとり、経済産業省の石油天然ガス課の片瀬裕文課長の強い要請があった。
アザデガン交渉はまだ望みがあります。イラン側と懸命に話をしているが、イラン国内には反対勢力もいて、とにかく内容を合意するまでの間、岡本さんがテヘランに行つてイランとの政治的関係をつなぎ止めて相手を説得してくださいと。
資源エネルギー庁と協議をつめ、総理と官房長官に報告して許しを得て、11月30日に日本を発つた。テヘランに着いたのは真夜中だつた。イランとシリア行きを勧めてくれた奥は2日前に殺されていた。
岡本行夫 『砂漠の戦争』(256−258頁)
(引用終わり)
以上引用したとおり、日本の経済産業省は、中川昭一・大臣のもとアメリカが反対するイランのアザデガン油田(とイラクのマジュヌーン油田)の開発を強硬に推し進めようとした。その際には現地の情勢安定化が必要となるが、奥氏が岡本行夫氏にアイデアとして提示したのが、イラク復興支援としてのパトカー供与だったというわけである。しかも、その供与決定は、漫然と行われたのではなく、日本の中東での石油資源確保という「地政学的目的」を十分に考慮したものである。ここがきわめて重要なポイントである。
岡本―奥・井ノ上コンビは日本の国益を最大限増やすための復興支援のための資金の「箇所づけ」をイラク国内で行っていたのである。岡本氏の対米人脈について先ほど記述したが、この辺の油田開発に岡本氏がかかわっていたあたりの事実を考えると、岡本氏と米国が謀議をもって、奥氏の殺害の背後にいるということは考えにくい。
ただし、岡本氏は奥氏を殺した犯人が誰であるかは知っているはずである。だから、3月中旬という中途半端な次期(主権移譲前)に補佐官を辞任したのであろう。
奥克彦氏はアメリカから見れば、まさに日本のアメリカに対するスパイとして映っていたことは間違いない。それから、岡本氏が、米軍需産業と太いパイプを築いていたということも事実である。
<メッキが剥がれた知日派・アーミテージ氏の正体>
岡本氏の対米人脈を掘り下げた資料としては、ジャーナリストの歳川隆雄氏の『文藝春秋』(2004年3月号)の記事が詳しい。この「首相補佐官・岡本行夫『二つの顔』」という物々しいタイトルの記事には次のような記述がある。
(引用開始)
もう一つ、気がかりな疑惑がある。外国企業が「岡本アソシエイツ」のクライアントに入っているかもしれないのだ。首相補佐官は国家機密を知りうる立場であり、国家間の公電も閲覧できる。それを外国企業のコンサルティング、情報交換に使わないという保証があるだろうか。取材によると、クライアントの可能性がある外国企業は二つ。「ベクテル」と「レイセオン」である。
ベクテルは、共和党政権と一体といわれるゼネコン・エンジニアリングであり、今やイラク復興を一手に受注して米国内でも問題になっている。
「ベクテル社は岡本さんと古くから関係があると聞いています」(政界の知人)
レイセオンは、米国トップのミサイルメーカーであり、イラク戦争でも大量の同社製のパトリオットミサイルが使われた。日本も本年度、MD構想の一環として地対空ミサイル配備のためレイセオンから購入する。
岡本氏の友人であり、アーミテージ人脈につながるパターソン米大使上級顧問は、98年から00年まで、レイセオン日本支社長をつとめていた。99年5月当時、岡本氏はコソボ問題のNATO空爆をめぐって、
「とにかく、儲かって仕方がないとアメリカのミサイルメーカーが喜んでいたけれど、最近じゃ『これでは申し訳ない、何か人道的なことに使えないか』といってきましたけどね(笑)」(『外交フォーラム』99年8月号)
と交流をうかがわせる発言をしている。もし今、両者がクライアントなら、国家機密上、許されない問題である。
歳川隆雄 「首相補佐官・岡本行夫『二つの顔』」 『文藝春秋』(2004年3月号)
(引用終わり)
なんと、知日派人脈として民主党外交族議員とも交流の深い トーケル・パターソン氏は元レイセオン日本支社長であったというのである。すでに述べたように、アーミテージ氏はエンジン会社の、ゼネラル・ダイナミック社の重役を務めていたことがあり、この線から日本の自衛隊に攻撃用ヘリのエンジン売り込み攻勢がかかっているだろう。日本は性能のよいロールスロイス社ではなく、無理矢理米国製のエンジンを選ばされるように圧力がかかっている。最近、飛行機のエンジンの開発でも、ホンダとアーミテージの古巣のGD(ジェネラル・ダイナミクス)社が合弁を組むことが報道されている。
また、日本のMD構想もアーミテージ氏やパターソン氏らの軍需産業の「アドバイザー人脈」によって良いように壟断(ろうだん)されているのだろう。知日派といってもメッキをはがしてみれば、この程度のものであるということを日本人は脳にたたき込むべきである。日本はやはり兵器の自力開発と情報収集の自力開発にもっと力を入れなくてはならない。
「憲法9条改正」と日本の自衛隊の海外進出はこういう人たちのビジネス上の利益にもつながっている。どうせなら、日本の企業に儲けさせなければいけない。こんなことは当たり前のことである。
私は憲法9条の改正無くしても、日本が自立の戦略をとることが可能であると常々書いてきた。むろん、憲法改正に絶対反対ではないし、場合によってはアメリカ側に拒否できるという前提があるのであれば、戦場レベルでの集団的自衛権行使も完全に否定はしない。
<18年に一度の、軍需経済サイクルがないと生き延びられないアメリカ>
しかし、アメリカという国は、「崩しては壊し」を行う国である。アメリカは軍需産業なしには生きていけない国であり、ほぼ18年に一回軍需予算がピークになるという「軍需景気循環」(ミリタリー・ビジネス・サイクル) がある。チャルマーズ・ジョンソン氏の『アメリカ帝国の哀しみ』(2004年)に示された図表を視ればそのことは一目瞭然である。ちょうとイラク戦争が発生した2003年に軍需予算のピークが来ているところに注目して欲しい。アイゼンハワーが警告し、フォレスタルが悩み自殺し、ケネディを暗殺した「軍産複合体」というものの姿がこのグラフから浮かび上がってくる。
出典:The Sorrow of Empire,2004 Charmaers Johnson; Metropolitan Books page 55
岡本行夫氏の今回のイラク復興利権に関する報道の真贋判定をしなくてはいけない。上の歳川氏の記事の示すとおり、岡本氏と「知日派」の関係はかなり深い。特に、ベクテルの関係は、後で述べる、ウムカスル港の土砂の浚渫(しゅんせつ)利権ともかかわってくる。しかし、今の段階で岡本氏が「黒色高官」(こくしょくこうかん)であると断定する決め手には欠ける。アザデガン油田開発問題に関する、岡本氏の行動がその反論となりうる。
この辺は読み手の「想像力」にゆだねたい。
<アメリカの虎の尾を踏んだ奥外交官>
ここまでで、これをお読みの方は、奥克彦氏の殺害事件がテロリストの一過性の犯行とか、米軍の誤射であるとかそういう可能性のほかに、“日本の高級情報将校”として奥氏がアメリカから狙われていた、という可能性がある,というのが私の分析である。外交官殺人事件は、日米スパイ戦争ではないか。
私の仮説は、いわゆる「アメリカの虎の尾」理論に基づいているのである。これはジャーナリスト・田原総一朗氏が若き日に書いた論文にちなんで私が勝手に考案した名前である。言うまでもなくロッキード事件による田中角栄失脚に、ヘンリー・キッシンジャーと立花隆、堀田力らが絡んでいた一連の謀略工作を指す。
中曽根康弘元首相は、著書『天地有情』のなかで、概要「田中君はヨーロッパやソ連で石油取得外交をやった。それがアメリカの琴線に触れたのではないかと思います。世界を支配している石油メジャーの力は絶大ですからね。のちにキッシンジャーは『ロッキード事件は間違いだった』と密かに私に言いました」と打ちあけている。その他の箇所でも、キッシンジャー元国務長官は、ロッキード事件は自分の演出による謀略であったことを認めている。
それでもなお、立花隆は、2000年ころに発表した『田中真紀子研究』(文芸春秋社)の中で、まだ「角栄失脚謀略説はありえない」と言っている。
最近の虎の尾理論による説明ができる事件は、鈴木宗男、田中真紀子両衆院議員の「失脚」である。鈴木氏は「エクソンモービル」の、田中氏はアーミテージの虎の尾を踏んだと推定される。
「虎の尾」理論とは、簡単に言えば、“アメリカの利権を横取りしたり、邪魔したりした者はアメリカの情報機関によって失脚、暗殺させられる”という理論である。
この理論に奥克彦氏らの事件が当てはまるのか。その手がかりを残しているのは、誰あろう、奥克彦氏自身であった。
(続く)
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