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BREAKING NEWSコラム / 2007-12-06 15:16:48
続・「GE事件」について考える
ざわめき立つ大手メディアと政界激震の予兆
11月28日、守屋武昌前防衛次官が東京地検特捜部によって逮捕された。これによって、日本の防衛政策を司る事務方のトップが、実は国際的な贈収賄疑獄の真っただ中にいたという驚くべき事件が、次なるフェーズに入ったわけである。
大手メディアたちはというと、連日連夜のように守屋容疑者、そして同時に逮捕されたその妻、さらには家族に至るまで、「タカリ」の実態を、これでもかというほど報じ続けている。お決まりのメディア・スクラムであるわけなのだが、その一方でさらにここに来て、この事件が次なるフェーズ(第3フェーズ)に入りつつあるとの情報が流布され、大手メディアたちが密かに色めき立っているとも聞く。―――ついに、強制捜査が政界に及ぶというのだ。
この「情報」の中心人物は、久間章生・元防衛庁長官である。疑惑が発覚して以来、まずは入院という政治家お決まりの「雲隠れ」を果たした同元長官であるが、現在は退院し、都内某所に潜伏しているのだという。「X-DAY」を控え、鬼の東京地検特捜部検事たちの形相を思っては、眠れない日々を過ごしていることだろう。
12月中旬には、守屋容疑者の公訴時効がまずやってくるというのが、物事をかけ足に進めさせている原動力だとも聞く。久間章生・元長官といえば、疑惑の巣窟と目されている防衛商社・山田洋行と密接な関係にあると言われてきた人物である。かつては同社の専務という要職にありながらも、守屋武昌容疑者とペアとなってきた宮崎元伸容疑者(日本ミライズ)とは一線を画してきたともいわれている。そのため、久間章生・元長官が逮捕ということになれば、喧嘩両成敗ではないが、防衛利権を欲しいままにしてきた両陣営を、検察当局という「超権力」が共に抑え込んだ形になるのだろう。ある意味、大変分かりやすい構図だ。
しかし、果たしてこれでストーリーは終わるのだろうか。いや、もっと言えば、「終わりにすべき」なのだろうか?
私は、外務省にキャリア職員として在職していた際、いわゆる「外務省不祥事」に遭遇した。その際、事態の収拾のため、省内に設置された特命チームの一員として、約2年間にわたり、一連の不祥事(いわゆる「鈴木宗男・佐藤優事件」を含む)の実態をつぶさに見てきた経験を持つ。
その中で得た教訓の一つが、「捜査当局は真実の追及ではなく、落とし所のある分かりやすいストーリーで得点を挙げることに躍起になっている」ということであった。これを「国策捜査」などと分かりやすいキャッチフレーズで言い切るべきかどうかは別としても、捜査当局が歩留りのある捜査を心掛け、世論による後押しを常に気にしていることは事実だ。その意味で、「分かりやすい構図」へと落とし込もうとする彼らの意図は、いずれの大事件についてもうかがえるような気がしてならないのである。もちろん、今回の事件も例外ではない。
「GE事件」をめぐる盲点
このコラムで以前書いたとおり、私は今回の防衛疑獄全体を「GE事件」と呼ぶべきだと考えている。キーマンとしてまず逮捕された守屋容疑者の名をとって「守屋事件」と呼ぶのが適当だという声もあるだろう。しかし、私は決してそう思わない。
なぜなら、この事件の本質は、非主流派から主流派へと転じた一防衛高級官僚による「タカリ」にあるのではなく、日本を中心とした東アジアにおける軍需マーケットでの壮絶なシェア獲得合戦にあるからだ。さらにいえば、それは現在、マーケットのみならず、国内外のすべての情勢を動かしている一つの「世界の潮目」とも関連している。つまり、事件は単なる「不祥事」ではなく、著しく国際性を帯びた壮大なスケールで展開している物事の一シーンにすぎないのである。その意味で、米国を代表するコングロマリットであり、ジャック・ウェルチがCEOに就任して以降、無敵と言われてきたGE(ゼネラル・エレクトリック)の名に触れることこそ、この事案のスケールにはふさわしいのである。
「事件」は、東京地検特捜部の描かれたシナリオどおりに今後リークされ、その構図が大手メディアによって形作られていくことであろう。しかし、そうした「演出」の中だからこそ、ここであらためて確認しておきたいポイントを列挙しておきたいと思う。
●事件発覚より早々にGEは、自社が本件とは一切関係が無いとの対プレス説明を行っている。しかし、現在もアップされている山田洋行のHPにも明確に記載されているとおり、同社は「GE オフィス c/o General Electric Company」と記載されるオフィスを持つほどGEと「密接不可分」な関係なのである。本件に何ら関わりが無いというからには、東京地検特捜部との間で情報提供の代わりに「無罪放免」を得た可能性はあるが、それでも黒い霧が晴れてはいないというべきだろう。
●これは外務省不祥事を「内部調査」していた中でも痛感したことなのであるが、世間はとかくキャリア官僚に冷たい。そのため、捜査当局はストーリーの中心人物となるキャリア官僚を定めると、その人物をターゲットとしたバッシングを煽り、「疑惑」はたちまち「事実」となり、糾弾の嵐が巻き起こる。
しかし、今回の事案でいえば、かつての防衛庁における調達の現場を知る者たちからは、捜査当局がリークする単純なストーリー展開に呆れた声すら聞こえてきている。なぜなら、防衛調達の現場で権力を握っているのは、何も知らない事務次官などではなく、現場を取り仕切る制服組だからである。山田洋行もその点を抜け目なく知り、将来、幕僚となっていくことが予想される制服組が地方に勤務している最中から、接待攻勢をしかけてきたと聞く。やがて幕僚となっていった彼らの「下支え」がなければ、疑惑の調達が成立することはなかったに違いない。
●このことがなぜ重要なのかといえば、事件の前面に出てこない制服組たちを通じてこそ、この事件が持つ本当の「闇」である、日米コネクションへと連なるからである。日本の制服組のカウンターパートは米国の制服組であるというのが基本であり、現に少なくとも90年代前半の段階で、かつて「大佐」まで米軍で昇級した人物(米国人)が当時の山田洋行でにらみをきかせていたという情報がある。また、山田洋行の社員は在日米軍基地のリクリエーション施設にフリーパスで入ることができ、その特権を現に享受していたとも聞く。この事件の影に、在日米軍の黒い闇が見え隠れすることも忘れてはならない。
●もっとも、そうであれば在日米軍ではなく、中央情報局(CIA)だけでも日本に駐在するケース・オフィサー(本国から派遣された作戦要員)を200名も抱えているという米国のことである。いざとなればむき出しの実力まで用いることで、やがて自らに疑惑が及ぶに違いないこの事件の発覚を陰に日向に防ぐことができそうなものである。
この関連で、たとえば山田洋行の社内ITシステムは、米国のIBM製であったとも聞く。米国が世界中にインターネットという網の目を張り巡らせたのは、とりわけ日本のように「中の人間でなければ、何をしているかわからない」ような社会から、根こそぎ情報を取ることにある。当然、山田洋行をめぐる現在の騒然とした動きも、事前に察知することができたことであろう。しかし、実際には米国ですら「抑え」を利かせることはできなかったのである。米国以外の一体何者が事件を操っているのだろうか。
●近現代の世界史を考える時、すべてには金融利権が絡んでおり、「仕掛ける側」と「仕掛けられる側」がいることを踏まえた時、今回の事案ではたして「誰が本当の仕掛け人であるのか」が焦眉の課題となってくる。ここで一つの手がかりとなるのが、今回の事件のきっかけとなった最新型輸送機「C-X」に搭載するエンジンを選定する際、検討対象として掲げられたのは全部で3社あったということである。もっといえば、GEを含む米系は2社であった。
それでは残りの1社はというと、英国系のR社であったとの情報がある。実はこのR社、一連の報道の中で、海上自衛隊の装備をめぐって同じくGEと争った形跡が報じれられたことがある。―――ここに、知られざる大英帝国の影がちらつき始めるのだ。
●さらにいえば、この一件、どういうわけか米国の大手メディアでは真正面から「自らに関わるもの」として報じられた形跡がない。ワシントンの連邦議会筋においても、ややまともに扱われはじめたのは守屋容疑者の逮捕(11月28日)からである。それであっても、ほぼ同時期に(なぜか)起こった中国による米軍艦船の香港寄港拒否の方がむしろメインテーマであり、さらには北朝鮮についでようやく関心を集めているというのが、ワシントンの連邦議会筋における感触であったように見受けられる。
しかも興味深いのは、そこで語られるのが事件の真相というよりも、「この案件によってフクダは大丈夫か」といったものであったという点である。捜査の指揮権は法務大臣にあり、その法務大臣を選任するのは内閣総理大臣・福田康夫だ。ところが、事件が進展すればするほど、福田総理の「総理」としての政治生命が危ういとはいったい何を根拠にしての危惧なのだろうか。気になるところである。
「反転」する世界、そして彷徨う日本がたどり着く先は何なのか
さしもの日本の大手メディアの中にあっても、まだ曇った目をしていない良心的ジャーナリストたちは、今回の事件が実は巨大な国際的構図の中でとらえるべきものであることに、徐々に気づき始めているようだ。この関連で、次の2つの論点に対する注意を喚起させていただければと思う。
一つは、米側において最初の「とばっちり」を受ける可能性の高い人物との関係である。その名はリチャード・アーミテージ、つい先頃まで国務副長官をつとめていた人物である。米海軍閥に属しつつ、政治・ビジネスを問わず日米関係のドンとして居座り続けている同氏をめぐっては、早くも日本の報道で山田洋行との「黒い関係」が明らかにされつつある。
そのことの真相については、さらなる事態の展開を待たなければならないのであるが、その一方で日本において全く語られていないのが、同氏をめぐるインテリジェンス関連の訴訟にまつわる顛末だ。詳しくは米国科学者連盟(FAS)のブログ(11月2日付"Court Authorizes Subpoenas of Senior Officials in AIPAC Case")に譲ることにしたいが、要するに現在、米国では政府関係者によるイスラエル・ロビー(もちろん、イスラエル本国に通じている人物たち)への機密漏洩をめぐり訴訟沙汰となっており、アーミテージもこれに巻き込まれているというのである。具体的には被告側、すなわち米国政府関係者から機密漏洩を受けたといわれるイスラエル・ロビーの人物たちを擁護する証人として、「そうした情報提供は米・イスラエル間では日常的に行われていた」ということを証言せざるを得ない立場に、ライス国務長官、さらにはウォルフォウィッツ元国防副長官などと並んで置かれているのである。
つまり、これまで日本が頼りにし、とりわけ日本国外務省の「アメリカン・スクール」が絶対的に頼りにしてきたアーミテージが、法廷の場で下手をすると八つ裂きにあう可能性が出てきているというわけだ。これを可能にしたネオコンを除く米国のエスタブリッシュメントたちが一体どちらを向いているのかが気になりつつも、同時にこれまで大手をふって「日米同盟神聖論」を語ってきた日本人たち(含・共和党系日本人外交官たち)の震感する姿が目に浮かぶ。
もう一つは、今回の事件が明らかに日本という隠された巨大軍事マーケットをめぐる争奪戦であり、そこに巧妙な形で英国の姿が見え隠れするということの持つ意味である。
実は、英国がこのように極東の島国・日本をめぐる軍事マーケットの取り合いに、珍しく分かるように顔をのぞかせたことが過去1回だけある。それは、いわゆるシーメンス事件(1914年)の時である。この時、ドイツを代表するシーメンス(SIEMENS)による旧日本海軍への贈賄をすっぱ抜いたのは英国のロイター電であった。
ちなみに、この事件の発覚直後、第1次世界大戦が勃発。日本は連合国側で参戦し、大戦景気に沸いた。当然、大陸への出兵には艦船が必要なのであって、それのみならず、一連の軍事装備品が大いに求められるという典型的な「軍需相場」となったことはいうまでもない。英国が、あからさまなまでに日本という軍事マーケットでドイツとつばぜり合いを演じたことの理由は、「その後の展開」を見れば十二分に分かる気がするのは、私だけだろうか。
英国勢、ひいては欧州勢は無駄なことをしない。密やかに、そして一打必殺で獲物を仕留めるのが彼らのやり方で、そこがパフォーマンス好きの米国勢とは違うところだ。彼らが徐々に顔を出してきた日本の軍事マーケットは、したがって「高騰する瞬間」がそう遠くない将来あり得るということなのだろう。しかし、その結果、軍事攻撃という惨劇が生じるのは東アジアのどこなのか?―――多くの日本人が忘れた95年前の歴史は、今を生きる私たちにやがて「真実の時(moment of the truth)」となって多くを教えることになるだろう。
2007年12月5日
原田武夫記す
[新世紀人コメント]
8日(土曜日)の東京新聞に「◆高まるイスラエル・ロビー批判 米タブー崩壊?」との記事が出た。
高まるイスラエル・ロビー批判 米タブー崩壊? 主流派 業煮やす泥沼イラク戦争威信失墜に危機感 東京新聞
http://www.asyura2.com/07/war98/msg/572.html
投稿者 TORA 日時 2007 年 12 月 08 日 16:09:06: GZSz.C7aK2zXo
この記事は、これだけを読んだ限りでは、米国内での権力の主導権争いのように見える。
しかし、実態は米国内の事情を越えたものであろう。もっと国際的な動きである筈で、その一部が米国内で現れたものを映し出した情報であろう。
権力争いの内情は直接には表に出てはこない。これは日本の政界の在り方にも似ている。
「暗闘」なのである。
ネオコン批判にブレジンスキーも加わっていると言うのだから、暗闘の実態を想像出来るのではないだろうか。
深部を探れば「信仰上の問題」に行き着く筈である。
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