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安倍と麻生「小泉切り」の密議(1)
2007年9月10日 文藝春秋
カラ手形飛び交う内閣改造劇。揺れる総理はついに――
東北を湿らす雨もまだ関東までは届かず、東京・永田町にも、あの一カ月前の参院選惨敗の日と同じような重苦しい熱気が漂い広がっていた。八月二十六日。公邸に籠もる首相安倍晋三の心もまた、重く沈んでいた。翌日に迫った党役員人事と内閣改造の根幹二つのポストを決め切れていないのである。
いや、幹事長はいい。ここまでくれば唯一絶対の盟友である外相・麻生太郎だと以前から決めている。問題は、「お友達内閣」の象徴だと党から痛罵された塩崎恭久の後任の官房長官と、野党が参院で過半を制した国会の司令塔となる国会対策委員長である。
総務相・菅義偉の事務所費問題が誤算だった。「お友達内閣」では数少ない手堅い手腕と党内での評価の高さから、後任官房長官は菅だとひそかに決めていた。ところが外遊から帰国する直前の二十四日、こともあろうに改造当日発売の週刊誌で、二千万円近くにのぼる不明朗な事務所費スキャンダルがスクープされるとの情報が飛び込んできた。
人事は、白紙に戻った。そしてその隙を狙うかのように、元首相・森喜朗から電話が入る。「町村信孝官房長官、古賀誠国対委員長の布陣で臨むべきだ」。
やはり、のむしかないのか。
参院選惨敗を受けての挙党態勢確立という大義名分のもと、党内実力者との密談を重ねてきた森のこと、すでに手形を切っていることは容易に想像がつく。しかし、選挙後も一向に内閣支持率が上向かず、党内の反安倍勢力の伸長に神経を尖らせる安倍にとって、そうそう簡単に突っぱねられる申し送りではなかった。
午後四時、安倍はようやく、東京・神山町の麻生の私邸に電話を入れた。
「あす午前九時、自民党本部にお越しいただきたい。ついては、この件は明日まで内密に」。小泉政権以来の人事の決まり文句を口にすると、電話口に麻生の甲高い笑い声が響いた。
「もういいじゃないですか。オレがこれまで、その手の話を事前に外に漏らしたことがありますかね?」。つられて安倍も笑い、続けて聞いた。「町村官房長官と菅副長官、そして古賀国対委員長ではダメですか?」
麻生の返答に迷いはなかった。
「ここは総理のリーダーシップで自前の人事を断行すべきです。挙党態勢は大事だが、派閥に押し込まれた形は絶対によくない。妥協が過ぎれば一年前と同じことになってしまいます」
実は、麻生もまた、森から安倍と同様の申し送りを受けていたが、それをのむわけにはいかない相応の理由があった。そもそも一年前の政権発足時、安倍が望んだ「麻生幹事長」案を退け、代わりに腹心の中川秀直の起用を安倍と麻生の両者にのませたのは他ならぬ森である。
それだけではない。
森は参院選惨敗の七月二十九日夕、中川に参院議員会長・青木幹雄を加えた三者会談で、安倍退陣やむなしと一度は断を下すと同時に、元官房長官・福田康夫後継の可能性を協議していたのである。退陣要求自体は会談後、ひとり公邸を訪れた中川の進言を安倍が即座にはねつける形で収束はした。だが、選挙二日後、「福田後継」の話が永田町に流布したことは、キングメーカーへの野望を捨てきれない森の思惑の一端を窺わせるに十分だった。古賀や町村、元財務相・谷垣禎一ら、政権に半身の実力者を新体制の要路に並べようとする森の動きは、安倍の解散権をコントロールし、果ては「ポスト安倍」選びで主導権を握るための布石ではないのか?
だから麻生は八月五日夕刻、私邸を訪れた森にクギを刺していたのである。
「安倍君は今度こそ、あなたを中心の体制を考えている。ところで、幹事長の話はもう、彼からあったんだろう」。そう腹を探ってきた森に対し、「まだですねえ」ととぼけた上で、「これから大事なのは、政党間協議です。だから、内閣に勝るとも劣らず、今回は党執行部人事が大事でしょう」と誘い水を向ける。
大きくうなずいた森が「国対委員長をどうするかだな」と踏み込んでくると、麻生は即座に「大島理森でしょうなあ、ここを凌ぐには」と言い放った。
森は思わず目を剥いた。二階俊博の留任か、あるいは古賀の起用だと算段していた最中だっただけに、麻生が自分と肝胆相照らす仲の大島の名前を出してきたのは衝撃だったに違いない。
「とにかく挙党態勢だ。古賀副総理くらい考えたらどうだ」。そう粘る森の言葉には黙った麻生だったが、別れ際、本心を見透かすようにこう告げたのだ。
「いいですか、森さん。森さんが福田康夫を立てようとするなら、オレはそのときは本気で喧嘩しますよ」
与謝野起用の裏事情
反安倍連合と福田後継への芽を摘むその一点で、安倍と麻生の利害は完璧に一致する。森の人事案は到底のめない。それでなくとも、常に先輩風を吹かせる町村が官邸の番頭役に座れば、安倍にとって目の上のタンコブ以上に厄介な存在になりかねない。麻生にしても、自らの派閥の合従連衡に直結する「大宏池会構想」の一方の手綱を握る古賀に、政権の命運を握る国会の司令塔を任せるわけにはいかない。
だから二十六日の電話で、麻生は口を極めて、官房長官には町村でなく、手堅い手腕で「政策職人」と言われる与謝野馨を、国対委員長には古賀ではなく従前通り大島をそれぞれ起用するよう迫ったのである。ともに故・梶山静六門下の与謝野を含め、「首相―官房長官―幹事長―国対委員長」のホットラインだけは、異分子の関与を許さず、自分と安倍だけで仕切るという意思表示であった。
※各媒体に掲載された記事を原文のまま掲載しています。
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