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http://www.niigata-nippo.co.jp/editorial/index.asp?syasetsuNo=776 から転載。
62回目の終戦記念日 平和の輝きを忘れまい
酷暑の中、今年も八月十五日の終戦記念日を迎えた。
六十二年前、「玉音放送」が終戦を告げたこの日も暑かったという。
巡り来る季節に変わりはないようにみえても、そこに流れる「時代の風」は一様ではない。
戦火に倒れた数百万の同胞を悼み、旧日本軍による侵略の犠牲になったアジアの人々に思いをはせる日が、八月十五日である。
その原点がぼやけていないだろうか。自らの体験として戦争を語ることができる世代は一割程度だ。
戦争の記憶が次第に風化する一方で、憲法九条の改正を視野に入れた動きが進む。格差社会が生んだ憤まんをぶつけるかのように、多様な考えを許さぬ不寛容の精神が一段と広がっているようにもみえる。
◆歴史認識が問われる
二〇〇八年度用の高校教科書から、従軍慰安婦に日本軍が関与したとの記述が消えた。過去の検定を踏まえ、出版社が申請段階で自粛したのだ。
沖縄戦での住民の集団自決についても、検定意見が付き、軍の強制という文言が削られた。
この七月には、久間章生防衛相(当時)が広島、長崎への原爆投下を「しょうがない」と発言し、被爆者らの抗議を受けて辞任に追い込まれた。
従軍慰安婦問題では安倍晋三首相が「狭義の強制性」を否定し、米議会下院が日本政府に公式の謝罪を求める決議を可決する事態を招いた。
一連の出来事に共通するのは、戦争に対する国家の責任を意図的に「なかったこと」にしようとする動きだ。
「日本だけが悪いのではない」「自存自衛のための戦争であり、アジアの解放につながった」。そうした歴史観に基づく発言は、一部の保守系政治家の間で繰り返されてきた。
これらの発言に共通するのは、ゆがんだ歴史認識と人権意識の希薄さだ。だが、首相や閣僚までがこのような見解を述べるのは極めて異例である。
戦争の経緯や責任の所在をあいまいにし、歴史の流れを逆転させる試みといわねばならない。
◆戦争を語り継ぎたい
いまここで、「終戦」という言葉の意味を問い直す必要があるかもしれない。軍国日本と枢軸関係にあったドイツとイタリアは「降伏の日」をナチスから解放された日ととらえる。
日本も終戦によって軍国主義と決別し、全く新しい国になったのだ。戦争への反省と平和への願いは、国民的な記憶として刻まれた。それこそが終戦記念日のゆえんである。
奇跡ともいえる経済成長を遂げ、国民の意識は大きく変わった。だからこそ戦争を語り継がなければならない。
一九九五年八月、当時の村山富市首相が戦後五十年の談話で、植民地支配に対し、「心からのお詫(わ)び」を表明したことは記憶に新しい。
だが、それ以降も首相の靖国神社参拝問題などに絡んで中国や韓国などの抗議は繰り返され、「いつまで謝罪すればいいのか」と日本国内の反発は高まった。
バブル経済の崩壊により、アジア一の経済大国の地位が脅かされていることも、中国脅威論に輪を掛けた。
「美しい国」を唱え、日本らしさを取り戻そうと訴える安倍首相の誕生は、時代の閉塞(へいそく)感の象徴ともいえよう。
平和憲法を軸とする「戦後レジーム(体制)からの脱却」を目指す安倍政権は、改憲を視野に国民投票法を成立させた。改正教育基本法には愛国心を育てることが盛られた。
戦争責任に対するあいまいさと同様、「戦後」とは何なのか、戦後的価値観のどこが問題なのかという説明は首相の口から発せられないままだ。
しかし、国民が「戦後からの脱却」にお墨付きを与えていないことは、先の参院選の結果からも明らかだ。
◆重み増す日本の存在
戦前の最大の反省は言論や思考の多様性が失われ、戦争遂行一色になってしまったことである。
今の日本は、価値観が揺らぎ、混迷が深まっているようにみえる。だが、希望がわき上がるのはそのような時だとはいえないか。
六十二年前の八月十五日、敗戦に打ちひしがれながらも、多くの国民は頭上の青空に未来を託したに違いない。
日米安保という傘はあったにせよ、平和のうちに経済成長を遂げるという、世界に類を見ないモデルを日本はつくり上げた。このように長い年月、戦争をせずに済んだことは誇っていい。
半面、経済至上主義がモラルの崩壊や、弱者に冷たい競争社会を生んだことも認めるべきだろう。
戦争で最も過酷な犠牲を強いられるのは、弱者である庶民である。平和があってこその繁栄だ。あらためてその意味をかみしめたい。
世界は内乱と戦争が絶えない。不戦と平和を国是とする日本の存在は、ますます重みを増している。平和の尊さを訴え続けることが、戦後六十二年目の夏を迎える私たちの責務である。
[新潟日報8月15日(水)]
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